徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

災害と破傷風のリスク

2015年10月05日 22時14分24秒 | 小児科診療
 自然災害では瓦礫処理でケガをしやすいですね。
 それがきっかけに破傷風菌が感染することがあります。
 先日の「関東・東北豪雨」で発症者がいました;

■ 豪雨被害の被災地 自宅の後片付けで破傷風に 茨城県で初
2015.10.5:ハザードラボ
 「関東・東北豪雨」による鬼怒川の決壊で、茨城県常総市で自宅の後片付けをしていた60代の男性が、ケガした傷口から菌が入る「破傷風」と診断されたことが、5日明らかになった。被災した常総市では、住民やボランティアに対して感染への注意を呼びかけている。
 茨城県保健予防課によると、男性は先月15日、浸水した自宅の後片付けをしている最中に左手指に釘が刺さるケガをした。先月28日に筋肉がこわばって、口が開けられなくなったため、つくば市内の医療機関を受診したところ、破傷風と診断された。
 男性の症状は軽く、今月1日に回復して退院。茨城県によると今回の水害で破傷風の患者が報告されたのは県内で初めて。
 破傷風は、土の中の破傷風菌が傷口から侵入すると、3日~21日の潜伏期間を経て、全身がこわばったり、筋肉のけいれんが起きるなどの症状が起こる感染症で、ヒトからヒトへは感染しない。感染すると、あごや首の筋肉がこわばって口が開けにくくなり、歩行や排尿・排便障害を経て、重症化すると、呼吸ができなくなり死亡する場合もある。
 県は5日、住民やボランティアに傷口に土が付いたり、ガレキなどでケガした場合は、傷口をよく洗って消毒し、万が一、ケガから3週間近くの間に症状がみられたら、医師の診断を受けるよう注意を呼びかけた。
 国立感染症研究所によると、40代以上の世代は破傷風菌に対して免疫が十分ではなく、毎年全国で100人近くの患者が報告される。被災地などケガしやすい環境で作業する人は、ワクチンの予防接種によって、2カ月程度で免疫がつけられるとしている。


関東・東北豪雨被災者からの破傷風患者の発生について(茨城県HP)

 この資料の中に「30代までの方の多くは乳児期の予防接種で免疫を持っていますが、40代以上の方は免疫が十分ではありません。」という文章があります。
 私も破傷風菌に対する免疫を持っていない可能性大です。

 2011年の東日本大震災に関連する破傷風の資料です;

IDWR 2012年第44号<速報>東日本大震災に関連した破傷風 -1:2006~2011年における全国および被災三県の発生状況-

IDWR 2012年第45号<速報>東日本大震災に関連した破傷風 -2:東日本大震災関連の破傷風症例についての報告-

 小児感染症学会の資料;

■ 「災害と感染症」(小児感染免疫 Vol. 25 No. 4
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