徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザワクチン2017/18予約受付中

2017年10月03日 07時09分05秒 | 小児科診療
 2017/18シーズンのインフルエンザワクチン予約を受付中です。
 受付窓口、あるいは電話でお問い合わせください。

 当院の今シーズンの方針と、日本標準方式、WHO推奨方式、米国の指針を下表に示します;

★ 当院の方針


★ 日本標準方式・WHO推奨・米国の指針


 厚生労働省が定めた日本方式では、
13歳未満は2回接種、13歳以上は1回でもよい
 ですが、当院では2シーズン前から
3歳以上13歳未満でも(条件付ですが)1回接種でもOK
 を導入しています。
 条件とは、「過去に2回以上接種している場合」です。
 いろいろなパターンが想定されますが、以下のどれでもOKです。
(例)
・昨シーズン2回接種
・昨シーズン1回、一昨年に1回
・2年前に1回、5年前に1回
・・・・


 もちろん、強制するものではありませんので、厚生労働省推奨の日本方式を希望されても全く問題ありません。
 なぜ回数を減らしたか、その理由・根拠は以下に示します;

1.3歳以上では1回接種でも有効率70%を超える。
2.3歳未満では2回目の接種の上乗せ効果が+30%期待できるが、3歳以上では+10%程度と少ない。
3.以前からWHOおよび米国の指針では、3歳以上は過去のワクチン接種回数をカウントして1回接種を導入しており、9歳以上では無条件で1回接種としている。

 詳しくは以下のパンフレットをお読みくださるよう、お願い致します。

★ 「インフルエンザワクチン2017」パンフレット
(クリックすると拡大します)
(表)

(裏)
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O157報道への疑問、犯人は本当にトングなのか?

2017年10月01日 14時02分34秒 | 小児科診療
 先日のO-157集団感染の感染源・感染経路はまだ明らかになっていません。
 トングが感染源なら、ホテルのバイキング料理での事例が過去にあるはずですが、どうなんでしょう。
 このままで終わっていいのでしょうか?

■ O157報道への疑問、犯人は本当にトングなのか? 不確かな情報をまき散らした保健所とメディアの罪
2017.9.28:JBPress
 群馬県、埼玉県で腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生し、3歳の女の子が死亡する痛ましい事態に発展した。
 記者会見に出席した前橋市の保健所長は「バイキングやサラダバーなど客が自主的に盛りつける際の管理が不十分な面が今回、見受けられる」と述べ、トングの使い回しなど何らかの原因で菌が付着し、二次汚染した可能性があると指摘した。
 この会見を受けてメディアは、まるでその店舗で使われていたトングからO157が発生したかのように一斉に報じた。
惣菜店はババを引かされた?
 しかし、「犯人」は本当にトングなのだろうか。
 今回のO157は同型の遺伝子の菌が全国12都県、100名以上に拡大した、厚労省の言い方を借りれば「広域発生」である。群馬や埼玉だけでなく、遠く富山県や滋賀県、香川県の感染者にも「同じ感染元」の菌が及んでいる。香川の感染者は感染の直前に県外に出ていなかったというから、何らかの食材を媒介にして広がったと考えるのが順当である。
「でりしゃす」で販売していたポテトサラダは自社製ではなく、別の食品製造会社から納入されたものだった。納入された基本のポテトサラダの材料はジャガイモ、タマネギ、キュウリ、キャベツ、ニンジン、マヨネーズなどだ。おそらくはこの中に菌を媒介した食材が含まれていたのではないかという推測が成り立つ。そして、それと同じ食材が遠く香川県にも出荷されていたとすれば、これほど広域に拡大したとしても辻褄が合う。
 仮に感染源が食材の上流である野菜だとすれば、惣菜店としてはとんだババを引かされた格好である。
 ある外食チェーンの店長は、惣菜店の立場をこう代弁する。「野菜そのものを店で扱うなら次亜塩素酸ナトリウムなどで洗えば菌の混入を未然に防げます。けれども半製品の形で届けられるものはいかんともしがたい。業者を信用して使うほかありません。頼むから材料をよく洗って使ってくれよという話です」
 菌の混入を水際で止めるという点では、素材そのものを加工する段階に責任があるといえるだろう。
サンプルから菌が出る可能性は低い
 今回は、たまたま群馬県の惣菜店が販売したポテトサラダを食べた人々からまとまった数の感染者が出たということで、その惣菜店とポテトサラダ、そして客が量り売りで使ったトングばかりが悪者にされている。
 しかし、女の子が死亡したケースについていえば、その子ともう1人の感染者がいた食事の席に並んだ惣菜店の商品は加熱食品だけだった。その加熱食品についても前橋市保健所は、店のトングを経由して何か他の食品から菌を拾ってきたに違いないと断定している。亡くなった女の子が親戚の持ち寄った食品を口にしていた可能性もあるのだが、前橋市保健所はそれには触れていない。手っ取り早く惣菜店を分かりやすい犯人に仕立て上げて終わらせたいかのような態度にも映る。
 保健所の検査では、惣菜店にポテトサラダを納入していた食品製造会社からは菌が検出されなかったという。保健所はこの検査と工場内の拭き取り検査で菌が検出されなかったことをもって、納入業者の食品製造会社をシロと断定した。販売者である惣菜店は全店を閉店して責任をまっとうしたにもかかわらず、製造者の責任は問われていない。この事態を見たある中堅スーパーの経営者は、「こんなふうに販売者の責任ばかりが問われるなら、食品会社から納入されたものを安心して売ることがでない」と頭を抱える。
 食品製造会社はシロと断定されたが、食品衛生の専門家によると、「たとえば何らかの野菜に菌が付着していたとしても、汚染されるのは大量に作られるポテトサラダのごく一部でしかないから、工場に残っていたサンプルから菌が出る可能性は極めて低い」という。感染源の特定は非常に難しいのだ。「過去にさかのぼっても、焼肉店以外ではO157の感染源が完全に特定されたという話はほとんど聞いたことがない」と打ち明ける。
他にやりようがないから致し方ないのだが、それでもなお感染源となった食材を特定しておかないと、同じ食材がやがて次の悲劇を生むことになりかねない。保健所も厚生労働省も、そこに全力を投入してもらいたいところである。
保健所とメディアの罪
 繰り返しになるが、今回、保健所は根本的な混入経路の特定は後回しにして、拡大要因とされた店舗の衛生管理体制を「犯人」に仕立て上げた。その結果、惣菜店を一斉閉店に追い込んだだけでなく、全国でポテトサラダの販売を激減させ、さらにはサラダバーなどバイキング形式で提供する中食や外食を震え上がらせた。
 この間、新聞やテレビ、週刊誌は惣菜店の衛生管理のずさんさにばかり光を当てて、それが「原因」であるかのように騒ぎ立ててきた。
 だが、前述のように惣菜店が菌の混入した加工品を納入された可能性は否定できない。ちなみに、厚労省によるとトングを媒介にしたO157などの汚染拡大の例は過去にないという。
 科学的根拠のない憶測を公表した保健所、その情報に飛びつきなんの検証もなく垂れ流し、感染源の特定を訴えようとしないメディア。この構図も、まさにこの国の病巣の1つといえるのではないか。


<追記>
(2017.10.6)

■ O157による集団食中毒で3歳女児が死亡〜同じ遺伝子型のO157感染が広域発生のなぜ
2017/10/6 中西 奈美=日経メディカル
 8月、群馬県で惣菜店の利用者11人が腸管出血性大腸菌O157による食中毒を発症。同じ遺伝子型の菌が関東地方を中心に多地域の患者から検出されている。問診による発症初期での診断が、感染拡大をくい止める一助になる。
 腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒で、3歳女児が死亡――。群馬県前橋市が9月13日に開いた記者会見の様子を、新聞やテレビが一斉に報道した。同市の総菜店で8月11日に調理・販売された料理を食べた人のうち、血便や腹痛、発熱などを訴えて医療機関を受診した11人の便から同じ遺伝子型の腸管出血性大腸菌(EHEC)O157が分離、ベロ毒素(VT2)が検出された。
 症状や発症時間、共通する食品などの関連から、前橋市は一連の事例を集団食中毒と判断した。11人のうち入院したのは4人で、冒頭の女児は溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症して死亡。惣菜店で提供された料理では、コールスローサラダやポテトサラダなどの各種サラダ、炒めものが感染源として疑われているが、特定には至っていない。
 その後の調査で、前橋市以外の事例で無症候者を含む感染者の便から同じ遺伝子型のEHEC(O157)が検出された。関東地方を中心に11都県で確認されている(9月27日現在)。ただし、事態は流動的で、同定には時差が生じるため、今後も増加する可能性がある。
 EHECは、経口感染がほとんどで、50~100個ほどのごく少量の感染でも発症するといわれている。食中毒の原因として国内で挙げられるのは、牛や鹿の糞に汚染された井戸水や生食肉、汚染水で洗浄された野菜、漬け物などの加工食品などだ。調理器具も汚染を広げる一因になる。ちなみに、EHECは乾燥や冷凍・冷蔵、強酸には強いが、熱に弱い。75℃・1分間または60℃・30分間の加熱で死滅する。

報告数は氷山の一角
 1980年代に我が国で初めて見つかったEHECは、これまでにも全国各地で集団食中毒を引き起こしてきた。1996年には、大阪府堺市で学校給食に入れられたカイワレ大根が原因で9000人以上の感染者、HUSによる3人の死者を出し、EHECの存在を全国に知らしめた。
 さらに、2011年4月に発生した富山県などで展開する焼肉チェーン店での集団感染事例では患者181人中82人からEHEC(O111)が検出された。21人が脳症を発症し、5人が死亡。この事件を重く見た厚生労働省は、同年11月に生食用食肉の規格基準を改正し、翌7月に牛生レバーの提供を禁止するなどの規制をかけたが、「肉の生食以外でのEHECによる食中毒は減少していない」(厚労省食品監視安全課担当者)。EHECによる食中毒の発生件数も患者数も、ほぼ横ばいで推移している。
 第3類感染症として報告されるEHEC感染症の患者数は例年3000~4500人になる。「この数は氷山の一角にすぎないのではないか」と話すのは防衛医科大学校教授の加來浩器氏。EHEC感染症は、2~8日間の潜伏期を経て、下痢や腹痛を伴って発症し、その1~2日後に腹痛の悪化と血便(血性下痢)が表れる。「不顕性感染も多く、感染者は自覚しないまま排菌している可能性がある」と続ける。
 また加來氏は、「EHEC感染症は早期診断が難しく、それが菌の蔓延や重症化の要因になっているのではないか」とみる。発症時の下痢や腹痛は比較的軽症であるため、主治医は整腸薬処方のみで経過観察としがちだ。腹痛を訴えて受診した患者が、1~2日経って「血便が出た」と再度駆け込んできてから便検査を初めて行うことも珍しくないと加來氏は言う。「下痢と腹痛が表れる疾患は多く存在する。念のため、1週間以内に肉類の喫食や動物との接触がなかったかを確認してほしい」。患者の記憶は曖昧でも、問診の効果は侮れない。
 診断の補助となる便中のEHECの培養には保険が適用される。「多く使われるのは出現頻度の高い血清型をターゲットにしている培地だ。しかし、血清型が180種類以上あるEHECの8割程度しかカバーできない」と加來氏は話す。加えて、HUS発症例ではEHECが分離されないことがあるため、「菌分離以外に、便からのベロ毒素の産生性の確認やO抗原凝集抗体の検出などが必要になる」とアドバイスする。
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