古くて新しい話題です。
私が医師になった頃(30年以上前)は、
卵アレルギー患者さんはインフルエンザワクチン禁忌(接種してはいけない!)という時代でした。
時は流れ、インフルエンザワクチンに含まれる卵成分は極微量のため、
卵アレルギー患者でも問題なく接種可能とされるようになり、
WHOからも安全宣言が出されました。
でも、昔は
「投与してはいけない!」
という薬を
「問題ないからどんどん投与してください」
といわれても、
できあがった社会通念と医師の頭の中はそう簡単には変われません。
その理由の一つに、
最新情報は「安全である」と謳っても、
添付文書(薬のトリセツ)には「要注意」という文言が残っていて、
まだ医師の判断に影響を与え続けているのです。
たとえばこちら。
「接種要注意者」の項目の(6)に、
「鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のもの に対して、アレルギーを呈するおそれのある者」
と記載されています。
また厚労省発行の「インフルエンザ予防接種ガイドライン」にも、
「接種不適当者」の項目に、
「卵等でアナフィラキシーショックをおこした既往歴のある者にも、接種を行わない。」
とハッキリ書かれています。
こんな風に書かれると、医師は接種しにくいですよね。
ただし、このガイドラインは現在改訂中で、
最新版「B類疾病予防接種ガイドライン2024年度版」は2024年11月下旬に発行されるようです。
記載内容がどう変わっているのか、要確認です。
WEB情報では「アナフィラキシーを起こすような卵アレルギー患者さんも安全にインフルエンザワクチンは接種できます」と明言していますが、ルールが変わっていない以上、それに従うのが保険診療医です。
現実的な対応として小児科医の私は、
卵を食べても無症状、あるいは軽症(皮膚症状のみ)の患者さんは接種しています。
でも微量を食べてもアナフィラキシーを発症する方は病院に紹介し、
万全の体制のもとに接種することを提案しています。