小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

慢性蕁麻疹の病態解明へ

2017年09月03日 09時30分59秒 | アトピー性皮膚炎
 蕁麻疹の診療には難渋します。
 蕁麻疹=アレルギーというイメージをお持ちの方は多いと思われますが、実際にアレルギー機序が関与する蕁麻疹は全体の1わりにとどまります。

 私の知り合いの皮膚科専門医は、自分が蕁麻疹持ちなのでそれを治す目的で皮膚科医になったそうです。
 専門医学書を一通り読み、「ああ、蕁麻疹って治らないんだ」と理解して開き直り、それ以降はあまり気にならなくなったと言ってました。

 一部は自己免疫疾患とされていますが、今回、血液凝固系が関わるという報告が出ました;

■慢性蕁麻疹の病態に血液凝固反応が関与-広島大
2017年09月01日:QLifePro
抗ヒスタミン薬無効の患者もいる慢性蕁麻疹
 広島大学は8月30日、慢性蕁麻疹の病態に血液凝固反応が関与する機序を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬保健学研究科の柳瀬雄輝助教と秀道広教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」オンライン版に掲載された。
 慢性蕁麻疹は明らかな誘因が無く、毎日膨疹が出没する疾患。発症機序としては、皮膚組織内のマスト細胞からヒスタミンが遊離され、皮膚の微小血管内皮細胞に作用して膨疹が形成されると考えられている。しかし、その詳細は未解明な部分が多い。また、一般的な蕁麻疹の治療には、主に抗ヒスタミン薬が用いられるが、慢性蕁麻疹では抗ヒスタミン薬が無効の患者が少なくない。
血管内皮細胞の組織因子発現、アデノシンが制御
研究グループは、組織因子を発現させる因子として、末梢血好塩基球から放出されるヒスタミンと、慢性蕁麻疹の増悪因子として知られるリポポリサッカライド(LPS)等の微生物由来物質の働きに着目し、これらが血管内皮細胞の組織因子発現と、それに続く血液凝固反応への影響について検討した。
 その結果、LPS等の微生物由来物質とヒスタミンが同時に血管内皮細胞に作用すると、別々に作用するよりも多くの組織因子が発現することが判明。また、高発現した組織因子は局所的な血液凝固反応を引き起こし、その過程で生じた活性化血液凝固因子により血管透過性が高まったという。
 血管外に漏出した血漿成分は小さな膨疹を形成し、さらに血管外に存在するマスト細胞を刺激して、大量のヒスタミンを放出させ、蕁麻疹を形成するものと予想される。また、ヒスタミンとLPSの同時刺激によって引き起こされる組織因子発現は、生理活性物質のアデノシンによって制御されることもわかったという。
 今回の研究成果より、血液凝固反応を制御する薬物やアデノシン類似物が慢性蕁麻疹の新しい治療薬として応用されることが期待される、と研究グループは述べている。

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ヒルドイドの功罪

2017年09月03日 09時05分11秒 | アトピー性皮膚炎
 今から20年近く前、当時保湿剤としてアレルギー学会で評価されていたヒルドイドを勤務していた病院に採用しました。
 使用感がよく、世間的にも話題に上るようになり、患者さんから希望されることも少なからず経験しました。

 いい薬だなとずっと使い続けてきたのですが、約12年前に開業し、その値段の高さに気づきました。
 100gで約3000円もするのです(保険が効くので実際に払う金額は3割)。

 「このまま使い続けると“高価な薬を乱用”と非難されるようになる」

 と感じ、ジェネリック医薬品「ヘパリン類似物質」に変更しました。それでも、本家本元の2/3の値段です。
 成分が同じでも添加物が異なるらしく、使用感と患者さんの評判は今ひとつでしたね。

 さらに安価な保湿剤で代用できないか模索して今日に至ります。
 このことが医療経済的な視点から話題に上るようになりました;

■高級美容クリームより処方薬 医療費増、乏しい危機感
2017年8月31日:朝日新聞
 医師や患者のコスト意識が低いことを背景に、医療費が押し上げられている。将来的には、保険適用される医療が制限される可能性も浮上している。
 美容には、何万円もする超高級クリームよりも、医療用医薬品「ヒルドイド」がいい――。
 ここ数年、女性誌やウェブに、こんな特集記事が続々と出る。保湿効果があるヒルドイドは、医師が必要だと判断した場合のみ処方されるが、雑誌には「娘に処方してもらったものを自分に塗ったらしっとり」といった体験談も載る。
 ソフト軟膏(なんこう)タイプの50グラム入りで1185円。保険がきくので、患者負担は現役世代なら3割の350円余り、子どもなら自治体によっては無料になる。東京都内の40代の開業医は「患者に『多めに出して欲しい』と言われれば、出さざるを得ない」と話す。
 販売元のマルホは記事を見つけるたびに出版元に意見書を提出。「社会保障費の増加への対応が課題とされる中、保険適用の医療用医薬品を美容目的に使うのは、医療費の無駄遣いにつながるとの指摘がある」などとして記事の撤回を求めるが、消えては、また出る。
 こんな支出の積み重ねでも医療費が増えるという危機感が浸透していない。


 ちなみに現在私がメインに使用している保湿剤は、プロペト、親水クリーム、ベルツ水など・・・全て安価です(500gで1000円!)。
 使用感に満足できない方には、市販品として資生堂の「2e(ドゥーエ)」をオススメします。
 成分はヘパリン類似物質ではありませんが、この保湿剤はアレルギーのハイリスク赤ちゃんに使用してアトピー性皮膚炎の発症を3割減らしたという医学的実績のあるもの。
 値段もそこそこに抑えられています。
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赤ちゃんのからだは「ほいっぷるん」で泡をつくって洗いましょう。

2017年08月04日 18時10分19秒 | アトピー性皮膚炎
 ダイソーの人気商品「ほいっぷるん」。



 洗顔用の泡立て器です。
 百均なので100円。
 でもamazonでメーカーの物を買うと1000円近くします。

 当院ではアトピー性皮膚炎の赤ちゃんのからだを洗うとき、泡で撫でるようにしてくださいと指導しています。
 しかしこの泡をつくることがちょっと面倒。
 泡立てネットではちょっと時間が掛かります。
 ポンプを押すと泡が出るタイプの液体石けんもありますが、泡の量が少ないので数回押すことになり、すると結果的に液体石けんを使いすぎて、かえって肌荒れの原因になる可能性もあります。

 先日、滋賀県で開催された「第34回小児難治喘息・アレルギー疾患学会」へ参加してきました。
 全国のPAE(小児アレルギーエデュケーター)が各ブロックに分かれて子どもの体を洗う「あわあわ体操」を自主制作して動画で発表する報告会に参加したところ、北海道ブロックが強調したのは「泡の作り方」。

 確かに泡作りは、アトピー性皮膚炎のスキンケアの一つのハードルになりがち。
 その動画の中で、一番簡単に泡を作る方法は「泡立て器」の使用ではないかと感じました。

 帰ってきて早速ネットで検索すると、前述のようにamazonでは1000円・・・ちょっと患者さんに勧めにくいなあ。
 スタッフから「百均で売ってますよ」と聞き、ダイソーに出かけて「ほいっぷるん」をゲット。

 そして自分で使ってみました。
 うん、簡単に泡ができる。
 液体石けんも一押しで十分。
 泡で撫でるだけでも油がしっかり落ちます。
 赤ちゃんのからだなら1回つくればOKかな。

 これなら患者さんにお勧めできます!
 なお「ほいっぷるん」は人気商品なので、売り切れの店舗もあるそうです(^^)。
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(医学雑誌拾い読み)「アレルギーマーチは湿疹から始まる」

2017年07月01日 16時51分40秒 | アトピー性皮膚炎
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 12-1:22-25,2014
松本健治(国立成育医療研究センター)

■ 経皮感作と経皮的減感作療法が両方成り立つ不思議

■ 好酸球増多に関連する乳児湿疹が、その後のアトピー性皮膚炎や喘鳴のリスクとなり、さらに湿疹が吸入抗原に対する感作のリスクにもなる。

■ 以前は「発症予防を目的とした(念のための)除去」が行われてきたが、無効であることが証明されている。
逆に摂取する方が傾向免疫寛容の弓道を介して食物アレルギーを発症しにくくする可能性が示唆されるようになった。

■ 「経湿疹感作・・・湿疹が食物感作のリスクである
ピーナッツアレルギーに関連するのは、フィラグリンの機能欠損ではなく、湿疹(アトピー性皮膚炎)の存在である。
食物アレルギーの発症は経口接種や健常部位での食物抗原曝露が促進するのではなく、湿疹部位での食物抗原曝露が重要な役割を演じている。


確かに「経皮感作」ではなく「経湿疹感作」の方が、誤解しにくいですね。
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(医学雑誌拾い読み)「アトピー性皮膚炎の自然歴と修飾因子」

2017年07月01日 16時37分24秒 | アトピー性皮膚炎
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 12-1:31-35,2014
成田政美(国立成育医療センター)

■ アトピー性皮膚炎の自然歴(ドイツ、2004)
2歳までにアトピー性皮膚炎を発症した例のその後の経過
(complete remission)3歳までに寛解:43.2%
(Intermittent)間欠的に症状遷延:38.2%
(Persistent)7歳まで持続:18.7%

■ 現在の乳児湿疹の診療(以下の内容)は正しいのか?
・離乳食開始前の乳児湿疹患者にアレルギー検査
・感作が認められたら「これらの食物は母親の母乳から移行し、児に食物アレルギー症状としてのアトピー性皮膚炎を発症している」と説明
・授乳している母親の食物制限
・児の離乳食での食物制限

これこれ!
私も伊藤節子先生の本を読んでからこのように指導してきましたが、現時点でもこれでいいのか、学会報告を聞いていると不安になりますね。


■ アトピー性皮膚炎に対するプロアクティブ療法は食物抗原のみならず吸入抗原の感作も予防する
治療開始1年後にリアクティブ療法群ではダニ特異的IgE抗体、スギ特異的IgE抗体っが有意に上昇、プロアクティブ療法群では明らかな上昇が認められなかった(論文作成中)


アレルギー疾患予防の立場からは「乳児期の湿疹はとにかく治しておくのがいい」ということが繰り返し言われています。
しかし皮膚科専門医の間では必ずしも常識ではないらしいのが悩ましいところ。

当院では治療に難渋する(mildクラスのステロイド軟膏ではコントロールできない)アトピー性皮膚炎患者さんは皮膚科へ誘導しているのですが、その皮膚科の治療方針がバラバラで、オーソドックスにストロングクラスのステロイド軟膏で治療する皮膚科医がいる一方で、ステロイド軟膏は必要ないと保湿剤だけにしてしまう皮膚科医もいて、湿疹が悪化した患者さんは混乱してしまい、困ってます。

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「守ろう、子どもの冬の肌」(山本一哉先生)

2017年02月04日 16時58分50秒 | アトピー性皮膚炎
 NHKラジオ第一放送で朝5:38頃から「健康ライフ」という番組を月曜日〜金曜日に放送しています。
 内容は専門家による6分間程度のミニレクチャーで、ちょうど私の通勤時間帯であり、時々小児科関係のお話もありますので目をこすりながら聴いています(^^;)。

 先日は小児アトピー性皮膚炎の元第一人者、山本一哉先生(総合母子保健センター愛育クリニック皮膚科部長)が再放送で登場。
 縦横無尽の語り口は時々脱線しますが、まあご愛敬。
 気になる部分を備忘録としてメモしておきます;

■ 「寒さだけではない、皮膚へのダメージ」
・寒い→ 血の巡りが悪くなる→ 新陳代謝低下→ 汗や脂、セラミドなどが出にくくなる
・服の硬い繊維による摩擦刺激・・・
① 長くて硬いスカートでこすれて湿疹がよくならない女児例、タイツを履けば解決
② 手首の湿疹・・・シャツ/ブラウスが短くて手首を守ってくれない例

■ 「子どもと洗顔」
・洗顔も皮膚を傷つける。
・表皮+真皮の暑さは2mm、表皮はその100分の1(0.02mm)しかない。
・泡で洗い、こするのは厳禁。
・口の周りをティッシュで拭くことを繰り返すとかさついて赤くなってくる。
・思春期前の子どもは脂の分泌が少ないので補う必要がある。

■ 「冬のスキンケアの必要性」
・しもやけが減り診たことのない若い皮膚科医もいるらしい。
・理由は子どもの遊び方の変化:外遊びから屋内遊びへ。
・アカギレも見なくなった。
・その代わりにアトピー性皮膚炎が増えた。
・日本の入浴方法(湯船に3分間)が乾燥肌を助長している。
・熱いお湯で流すだけで脂は落ちる(台所と同じ)が、その上に洗浄剤を使ってさらに助長。
・対策として、入浴後にたっぷりの保湿剤で補う必要がある。

■ 「冬とアトピー」
・寒さ&乾燥→ ドライスキン
・幼児期は夏に毛穴に一致してザラザラしている皮膚(アトピックスキン)は冬になると湿疹になりやすい。
・ステロイド軟膏は登場して半世紀以上経つ。
・新たに登場したプロトピック軟膏は湿疹が残っているとしみて痛いので、ステロイド軟膏でよくしてから切り替える。
・中学生以降は忙しくなって皮膚科へ通院しきれなくなり、スキンケアもなおざりになり、成人型へ移行する要因になる。
・ポイントは「よくなってもステロイド軟膏をすぐにやめない」こと。ゆっくりゆっくりやめていこう。
・皮膚科を受診したら、次にいつ受診するかを確認して通院が途切れないように。

■ 「子どもの肌は誰が守るのか」
・周りの大人の仕事です。寄ってたかって守りましょう。
・保育園ではスキンケアをしてくれない(処方薬しか使えない)→ ウイークデイの日中は無治療になる。
・日本では9〜11月生まれの赤ちゃんはアトピー性皮膚炎になりやすい。乾燥の季節に外に出るようになるからと考えられている。ブラジルでは3〜4月(=秋)生まれに多い。

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新生児期の飼い犬との触れ合いがアトピー性皮膚炎のリスク低下に関与

2017年01月15日 06時56分06秒 | アトピー性皮膚炎
 卵やピーナツの食物アレルギーは早期に経口接種を開始すると予防できるかもしれない、というのがアレルギー分野でのトピックスの一つ。

 ペットアレルギーはどうでしょうか。
 ネコアレルギーに関しては、長期に接触していると症状がなくなっていく例が存在することが学会レベルで認められたのは、もう15年ほど前になるでしょうか。
 でも、イヌに関してはあまり触れられてきませんでした。

 紹介する報告は、乳児早期、それも新生児期(生まれてから1ヶ月間)にイヌと接触するとアトピー性皮膚炎の発症率が低くなるという、驚きの内容。ただし、お母さんが喘息というハイリスクの場合のみの効果とのこと・・・アレルギー家系でない家庭では差がなく無意味らしい;

■ 新生児期の飼い犬との触れ合いがアトピーのリスク低下に関与
2017/01/10:ケアネット
 デンマーク・コペンハーゲン大学のSunna Thorsteinsdottir氏らは、コペンハーゲン小児喘息前向きコホート研究(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood:COPSAC)から2つの独立した出生コホートを用い、生後3年間における室内犬への曝露がアトピー性皮膚炎発症に影響を及ぼすかどうかを検討した。その結果、新生児の室内犬への曝露はアトピー性皮膚炎のリスク減少と強く関連しており、その関連は飼犬頭数に依存的であることを明らかにした。著者は、「機序は不明だが、今回の結果は胎児のときの曝露量がアトピー性皮膚炎のリスクに影響を及ぼす可能性を提起するもので、疾患の経過について早期における環境要因の重要性を強調するものである」とまとめている。Allergy誌2016年12月号(オンライン版2016年8月9日号)掲載の報告。

 COPSACは、進行中の前向き出生コホート研究で、研究グループは、COPSAC2000から喘息を有する母親から生まれた児411例と、COPSAC2010から任意抽出した児700例のデータを解析した。
 児のアトピー性皮膚炎はHanifin-Rajka基準に従って診断され、親の喘息、皮膚炎または鼻炎の既往歴は自己申告に基づく医師の診断と定義された。8つの吸入性アレルゲンに対する母体の特異血清IgEは、COPSAC2000コホートでは児の出生後、COPSAC2010では妊娠24週に評価された。
 Cox比例ハザード回帰モデルを用い、室内犬への曝露とアトピー性皮膚炎との関連を検討した。
 主な結果は以下のとおり。

・COPSAC2000およびCOPSAC2010の両コホートにおいて、アトピー性皮膚炎のリスクは室内犬曝露がある小児で有意に低かった。COPSAC2000コホートの補正ハザード比(HR)は0.46(95%信頼区間[CI]:0.25~0.87、p=0.02)、COPSAC2010は同0.58(0.36~0.93、p=0.03)であった。
・COPSAC2010において、アトピー性皮膚炎のリスクは飼犬頭数の増加に伴って減少した(補正後HR:0.58、95%CI:0.38~0.89、p=0.01)。
・防御効果は、任意抽出のCOPSAC2010コホートにおいて、アトピー性疾患を有する母親から生まれた児に限定され(補正後HR:0.39、95%CI:0.19~0.82、p=0.01)、アトピー性疾患のない母親から生まれた児ではみられなかった(補正後HR:0.92、95%CI:0.49~1.73、p=0.79)。
・父親のアトピー性疾患の状況、アトピー性皮膚炎のリスクによる影響はみられなかった。
・両コホートとも、室内犬曝露とCD14のT/T遺伝子型との間に、重要な相互作用は認められなかった(COPSAC2000のp=0.36、COPSAC2010のp=0.42)。


<原著論文>
Thorsteinsdottir S, et al. Allergy. 2016;71:1736-1744. Epub 2016 Aug 9.
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アトピーにはステロイドより熱いキス!?

2016年09月14日 07時38分55秒 | アトピー性皮膚炎
 こんな報告もあるのですねえ・・・コメントは控えます(^^;)。

■ アトピーにはステロイドより熱いキス! 日本人医師、イグ・ノーベル賞を受賞
CIRCL
 アトピー治療には、ステロイドよりもキスのほうが効果があるらしい。「そんな馬鹿な」とおっしゃるかしれないが、れっきとした世界的な賞を受けた研究なのだ。その名も「イグ・ノーベル賞」医学賞。世の中を笑わせ、考えさせた研究や業績に贈られる賞で、2015年9月にアメリカで受賞式が行われた。受賞したのは大阪府寝屋川市でアレルギーの専門クリニックを開いている木俣肇院長。アトピー性皮膚炎の患者に、パートナーと30分間の熱いキスをしてもらったところ、アレルギー反応が弱まったという(※1)。

◇ 情熱的なキス30分 アレルギー反応が大幅減
 研究テーマは、「情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験」。タイトルはいかめしいが、実験はいたってシンプル。次の人たちに協力してもらって行った。
•アトピー性皮膚炎患者30人
•アトピー性鼻炎患者30人
•アトピー患者ではない30人
 被験者たちは個室に入り、それぞれの恋人やパートナーと30分間のキスをした。部屋には映画のラブソングが流されたというから、ムード満点の室内で、さぞや熱いキスが繰り広げられたことだろう。キスの前と後にはアレルギー反応の強さを調べるための皮膚テストや血中成分を測定した。

◇ キスの前後でアレルギー反応が大幅減
 その結果、患者の場合はキスの後、キスをする前と比べてダニやスギ花粉に対するアレルギー反応が大幅に抑えられた。2週間後に再び同じカップルが集まり、今度はキスはせずに30分間の抱擁だけをした。すると、抱き合うだけでは効果は確認されなかった。性行為をした場合は、キスと同様の効果があることも確かめられた(※2)。
 木俣院長はキスや性行為によって、アレルギーの強さの目安であるIgEという免疫グロブリン(抗体)が減り、アレルギー反応が抑えられたと結論付け(※3)、成果を専門誌に発表していた。

◇ キスは効果あるのに、ハグでは効果ないのはなぜ?
 キスや性行為がなぜ、効果があるのだろう。キスによって「愛情ホルモン」と言われるオキシトシが分泌されるせいでは、と見る向きが多いようだ。しかし、キスや性行為には効果があるのに、抱き合うだけでは効果がないことの説明はできない。そこで、キスと性行為にはあって抱擁にはないものを考えると、あるものにたどり着く。「粘膜の触れ合い」だ。正しいかどうかはともかく、ひとつのヒントになるかもしれない。

◇ 花粉症は良くなったけど、舌と唇が…
 木俣院長は米国マサチューセッツ工科大学で行われた受賞記念講演で、この研究を知って試してみたという英国の男性のネット投稿を紹介した。「恋人と30分間キスをしたら、花粉症はすっかり良くなった。しかし、舌と唇が少し、しびれた」とのエピソードだ(※4)。
 確かに、30分間の情熱的なキスを続けては舌も唇もしびれるだろう。でも、効果があったのだから大満足のはずだ。恋人との愛の確認も十分にできたはずだから。もっとも、「治療だから」と30分間ものキスを嫌々続けても、効果があるかどうか定かではない。
 この楽しくて夢のある研究のさらなる進展を待ちたい。特に、熱烈なキスをするパートナーがいない人はどうしたらいいのか。さらには“成人向き”のキスができない子どもたちはどうしたらいいの? この問題の解決もぜひお願いしたい。

<参考・引用>
※1:キスの魔法、アレルギーに効果? 大阪の医師ら、イグ・ノーベル賞
※2:Reduction of allergic skin weal responses by sexual intercourse in allergic patients 
※3:Pub Med
※4:「キスで花粉症治っても、舌しびれた」と反響
http://www.yomiuri.co.jp/science/20150921-OYT1T50064.html?from=ycont_top_txt

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乳児のアトピー性皮膚炎の治療の鍵は?

2016年08月02日 21時25分19秒 | アトピー性皮膚炎
 当院では現在、乳児アトピー性皮膚炎を対象にプロアクティブ療法を行っています。
 すると、従来のリアクティブ療法と異なり、湿疹がよくなってステロイド外用剤を離脱できる患者さんが増えてきて、その効果を実感しています。
 一方で、なかなかステロイド外用薬塗布間隔を開けられず、結局副作用を熟知した皮膚科専門医へ誘導する例も存在します。

 この2群はどこで分かれるか・・・初診時の月齢かな、と感じています。
 生後1〜2ヶ月の顔面湿疹の時点で当院を受診し、スキンケア指導を受けてしっかり保湿剤を使用し、FTUを守ってステロイド外用薬を塗った患児は予後良好。
 しかし、他の医院をショッピングしながら生後5ヶ月以降に当院にたどり着いた患児は、すでに全身に湿疹が広がって重症化していることが多く、しっかり指導してスキンケア&軟膏塗布をしてもらっても、なかなか手応えが感じられないのです。

 同様のことが、アレルギー学会でも報告されていましたので記事を紹介します。 

■ 乳児のアトピー性皮膚炎の治療の鍵は? 第65回日本アレルギー学会
2016.07.22:メディカル・トリビューン)より抜粋

 アトピー性皮膚炎(AD)に対して外用抗炎症薬を定期的に塗布するプロアクティブ療法は、ガイドラインで寛解導入・維持療法として推奨されている。Ⅲ群ステロイド外用薬の週2日塗布を4〜5カ月継続しても重篤な副作用はないとの報告はあるが、プロアクティブ療法のステロイド外用薬の減量方法や、保湿剤のみへの移行に明確な基準はないという。国立成育医療研究センターアレルギー科の山本貴和子氏らは、生後4〜5カ月でプロアクティブ療法を施行した乳児を対象に、1歳時においてプロアクティブ療法継続群(PP群)と保湿剤のみに移行した群(PR群)それぞれの成績を比較した結果から、生後4〜5カ月時に重症度が高く、IgE感作があるほどプロアクティブ療法を継続軽症でIgE感作が進展しないうちに治療介入できれば、早期にプロアクティブ療法を終了できる可能性を示唆した。

◇ プロアクティブ療法でステロイドの副作用なく有意にADが改善
 山本氏によると、同院のAD患者に対するプロアクティブ療法は、寛解導入期ではステロイドを連日塗布、その後の寛解維持期はステロイド外用薬の投与間隔を空けて塗布量を漸減し、保湿剤のみに移行するステップダウン法を実施している。ただ、プロアクティブ療法を受けている患者からは、「いつプロアクティブ療法から保湿剤のみにできるのか」「ステロイドをいつやめられるのか」と質問されるという。そこで、同院のPETIT研究に参加している生後4〜5カ月のAD患児でプロアクティブ療法を施行した80例を対象に、1歳時においてPP群57例と、PR群23例の成績を比較検討した。
 その結果、性、母親のAD既往歴、ペット飼育歴、湿疹発症月齢などは両群に差がなかった。治療経過を見ると、両群ともに、医師がADの重症度を評価するSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)スコア、養育者が湿疹の重症度を評価するPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)スコア、血清活性化制御ケモカイン(TARC)値の改善が見られ、1歳時に有意な低下が認められた。また、ステロイド外用薬による副作用はなかった。
 PP療法群では生後4〜5カ月時のSCORADスコアがPR療法群に比べて高い傾向にあり、重症であるほどプロアクティブ療法を継続している傾向があった。血清TARC値と総IgE値は生後4〜5カ月時、1歳時ともに、PP群ではPR群に比べて有意に高値であることが分かった。
 同氏は「今回の検討でステロイド外用薬を用いた標準治療としてのプロアクティブ療法による重症ADのコントロールが可能であった」とし、「生後4〜5カ月時にADの重症度が高く、総IgE値が高い患児では1歳時にもプロアクティブ療法を継続、言い換えると、軽症でIgE感作が進まないうちにプロアクティブ療法を施行することで、早期に保湿剤のみに移行できる可能性がある」と述べた。


 私の印象と全く同じです。
 アトピー性皮膚炎を心配しているお母さん、お父さん、生後1〜2ヶ月で顔面湿疹が気になったら、アレルギー専門医&小児アレルギーエデュケーターの在籍する医療機関を探して受診してください。
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福家先生の講演「小児アトピー性皮膚炎〜診療のポイントと治療への活かし方〜」を聴いてきました。

2016年07月01日 06時15分25秒 | アトピー性皮膚炎
 第6回群馬小児アトピー性皮膚炎学術講演会(2016.6.30)に参加し、アトピー性皮膚炎に対するプロアクティブ療法の伝道師である福家辰樹先生のお話を聴いてきました。

<参考>
■ 「アトピー性皮膚炎の外用療法-プロアクティブ療法」 (Clinical Derma, 2014年冬号)
■ 「小児アトピー性皮膚炎」(第9回 日本小児耳鼻咽喉科学会)

 相変わらずまじめで腰の低い先生だなあと感心した次第です(^^)。
 講演で印象に残った事項を2つ。

1.異所性汗疱
 中等症以上のアトピー性皮膚炎に対するプロアクティブ療法中に、全身の皮疹は軽快したタイミングで手掌/足底にとてもかゆい皮疹が出ることが報告されています。
 なかなかやっかいで、ステロイド外用薬の副作用を疑って治療を弱めると、手湿疹として難治化・遷延化するとのこと。
 福家先生の勤務先である国立成育医療センターでは、II群(Very Strong)をしっかり使って押さえ込むことでしのいでいるそうです。 

 私は汗関係の皮疹が遷延した場合、漢方薬を処方しています。漢方医学では、汗が出やすい状態を「表虚」と捉え、皮膚の機能が落ちていると考えます。その表虚には黄耆という生薬が有効です。多汗症で手の皮が剥けやすい患者さんに黄耆入りの方剤(黄耆建中湯、桂枝加黄耆湯)を飲んでいただくと、汗の出方が変わり改善する例が多く、リピーターが結構います。

 実はこの汗疱、私自身経験があります。中学生〜大学生時代に、夏が近づくと手の指の付け根付近に小さな硬い水疱がいくつかでき、たまらなく痒いのでした。あまりにも痒いので近所の皮膚科も標榜している外科系病院を受診したところ、担当医師は皮膚科の本をペラペラめくって「うん、これが一番近い」と指さしたのが「Hebra湿疹」という、現在は消えてしまった怪しい皮膚病でした(^^;)。何回か通って注射を打ちましたが、効いたような効かないような・・・でドロップアウト。1-2ヶ月くらいで萎んで皮が剥けて自然に治ることがわかり、それ以降は医者に行かずにいます。

2.フィラグリン遺伝子変異による手のしわ(hyperlinearity)
 手掌のしわが多い(掌紋増強、hyperlinearity)患者さんはフィラグリン遺伝子変異が見つかる頻度が高いということを、写真を交えて提示されました。とてもわかりやすい。
 ぜひ診察に取り入れて、手のひらをよく観察したいと思います。


 実は約1年前に、小児難治喘息・アレルギー疾患学会で彼の講演を聴いたことが、当院でプロアクティブ療法を導入するきっかけになりました。
 紆余曲折を経て、最近ようやく手応えを感じつつあります。
 特に生後2ヶ月前後で湿疹の相談にみえる赤ちゃんにしっかりスキンケアを指導するとともに反復遷延例にプロアクティブ療法を導入すると、肌がキレイになってしまうので、アレルギー検査の必要性を忘れてしまうのですね。

 ただ、プロアクティブ療法を勧める課程で、いろいろな疑問が発生しました。
 そのうちのいくつかを講演終了後に質問させていただきました。

□ ステロイド外用薬塗布間隔を開けていく過程で、塗る範囲と塗る量は初期のまま維持すべきか?
 ステロイド外用薬を2週間ほどしっかり塗るとほとんどの皮疹が消えてキレイな肌になります(寛解導入)。
 その後1日おき、2日おきと塗布間隔を開けていくことになりますが、キレイな皮膚にたっぷりステロイド外用薬を塗ることに、どうしても患者さんは抵抗感を覚えてしまいます。相談しながらそれなりに減らしていくのですが・・・しかし、範囲と量を減らしていいとはっきり書いてある文献が見当たらず、困っていました。
 福家先生に質問したところ、「皮疹の改善に伴い、塗布範囲と量が自然に減っていくのはかまわない。FTUの半分位までは大丈夫」との回答をいただき、自分たちの方針が間違っていないことが確認できました。

□ 眼周囲のプロアクティブ療法
 目の周りはステロイド外用薬の副作用による緑内障のリスクがあるので、できるだけ使わないのが原則です。
 しかし、プロアクティブ療法では、湿疹が治った後も定期的に長期間塗ることになり、どうしても副作用が気になってしまいます。
 この質問に、「100%安全と言い切れないが、自分たちの施設ではプロアクティブ療法中のステロイド緑内障の経験はない、2歳以降は緑内障のリスクがないプロトピック軟膏へ変更している」との回答。

□ プロアクティブ療法は何年も続けても安全?
 プロアクティブ療法の維持療法は週2回治療薬を塗る方法です。そこまでたどり着いた患者さんは、どれだけ続けるべきなのか・・・何年続けても安全なのか、疑問がありました。
 福家先生の回答は、「文献では1年以上経過を追った報告はない。アメリカでは、1年以上の処方が許されていないステロイド外用薬もある。ただ、自分たちの施設では年余にわたるプロアクティブ療法中に皮膚萎縮を来した例は経験していない。」とのこと。


 講演終了後は、群馬大学小児科アレルギーグループの先生方と旧交を温めて、帰路につきました。
 充実した一夜になりました。
 明日からの診療に役立てたいと思います。
 
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