小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

COVID-19における、医師の「軽症」と患者から見た「軽症」のイメージのギャップについて

2022年01月23日 08時19分36秒 | 新型コロナ
当院でも新型コロナウイルスのPCR検査に対応しています。
基本的に保健所から指定された“濃厚接触者”に対して検査を行っています。
感染対策として、一般診療と別の時間に、時間・空間隔離状態で行っています。

そこで“陽性”との結果が出ると、オンライン報告することになります。
HER-SYSというシステムで、入力項目が詳細で多く、一手間かかります。

そこで使用される単語の定義を確認しておきます。
まあ、自分へのメモですので、興味のない方はスルーしてください。

<参考>

症例定義

これは、陽性の場合に報告するので「患者(確定例)」ですね。

濃厚接触者の定義

これは繰り返し出てくるものなので、頭に刻み込まれていますね。
ただ、4番目の「15分以上の接触」はオミクロン株に対しては甘すぎるかもしれません。

検査方法の定義

当院では「ID NIOW」という検査機器を導入しています。これは「等温核酸増幅法」に分類される「拡散検出検査」に入ります。
また、「ID NOW」の検査方法は「鼻咽腔ぬぐい液」「鼻腔ぬぐい液」のみで、「唾液」は適応外です。小学生以上では「鼻腔ぬぐい液」法で行っています。ただ、「鼻腔ぬぐい液」法はどの検査方法でも無症状者には許可されていません。

入院対象

②の「呼吸器疾患」には喘息児も含まれるのか?疑問です。
⑥の「当該症状が重度または中等度であるもの」は次項で。

 HER-SYSについて
手書きで報告書を保健所にFAXする方法も残されていますが、
私は「保健所の負担軽減」目的でオンライン報告しています。


患者さんが日々の健康状態を報告する「My HER-SYS」というソフト・システムもありますが、
担当保険福祉事務所は使用していません。

重症度分類

重症度は酸素飽和度(SpO2)の数値により分類され、HER-SYSにも酸素飽和度の記入欄があります。
今のところ、酸素飽和度<96%の患者さんはいません。

テレビでよく「医師の考える“軽症”と、患者が考える“軽症”にはギャップがある」と報道されています。
実はその通りで、
「咳がつらくて夜眠れない状態」
なら一般の人は“中等症”と感じると思われますが、
つらさにかかわらず酸素飽和度が96%以上なら、
上記分類に従い医師は“軽症”と判断します。

こちら(アメリカの内科医、安川康介Dr.のツイッターより)に分かり易いラストがありましたので引用されていただきます;
なので、「患者の気持ちがわからないヤブ医者」と言わないでください。

軽症患者のマネジメント

当院は開業医院ですので「軽症」しか担当しません。
前項の「中等症」以上は入院が必要になるため病院へ紹介します。
ただ、診断後の軽症患者のフォローの方法が現時点ではあやふやです。
基本的に、保険福祉事務所が対応することになっており、
我々開業医が介入することはありません。

しかし今後、患者数が増えてくると対応を要請される可能性が大です。
その際、当院では電話診療を予定していますが、
直接患者さんに対面しないため、酸素飽和度が測定できません。
酸素飽和度計をすべての患者さんに配布するほど数を用意できるのか疑問ですし、
乳幼児はじっとしていないのでふつうの酸素飽和度計では測定できず、
乳幼児専用のプローブが必要になります。

今後の動きを注視していきたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“軽症新型コロナ患者”の治療薬、開発の現状(2021年12月)

2022年01月23日 07時52分18秒 | 新型コロナ
新型コロナウイルスに対する薬の開発が進み、
次々に新しい薬剤が登場してきました。

しかし今までは、点滴が必要な薬がメイン、
2021年末になり、ようやく内服薬・経口薬が使えるようになりました。

一方で、過去に開発された薬の中には、
変異株に対応できず消えている薬も存在します。

ですから、治療薬に関しては、常に情報をアップデートする姿勢が必要です。
これはワクチンについても同様ですね。

このブログでも、経口抗ウイルス薬である「モルヌピラビル(ラゲブリオ®)」「パクスロビド」を紹介してきました。
2021年末に倉原優Dr.が抗新型コロナ薬全般を分かり易く説明している記事を紹介します。

オミクロン株によって新型コロナ軽症者の治療はどう変わった? 新型コロナ治療薬まとめ
倉原優:呼吸器内科医(2021/12/26)より一部抜粋;

◇ オミクロン株と新型コロナ治療薬

・・・現在の新型コロナ治療薬は図1のようになります。数が多くなってきたため、詳しい使い分けなどは割愛しますが、大事なのは「いろいろな治療薬がある」ということです。


 表1. 新型コロナ治療薬のメカニズム


 図1. 2021年12月26日時点の新型コロナ治療薬まとめ

 それぞれ作用メカニズムや役割が異なることから、患者さんの病態に応じて使い分けています(表1)。
 有効性が確認された治療・確認されなかった治療が吟味・淘汰され、国内外のガイドラインが改訂されています(3-5)。その中でも、エビデンスが日々動いている、軽症例に対する治療薬をみてみましょう。 

◇ オミクロン株に抗体カクテル療法の使用は推奨されない

 抗体療法は、外来や入院軽症例で用いる注射剤です。
 図1および図2にあるように、オミクロン株の治療で重要なポイントは、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ®)の効果が激減するということです。厚労省の通達においても「患者の感染しているウイルス株がオミクロン株であることが明らかである場合、ロナプリーブを投与することは推奨されない」と記載されています(6)。
 反面、もう1つの抗体療法であるソトロビマブ(ゼビュディ®)は有効と考えられます。これはスパイクタンパクの基礎的な部分に作用し、効果の減弱が起こりにくいためです。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインにおいても、オミクロン株に対するソトロビマブが積極的に推奨されています(4)。
 さて、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブは、往診だけでなく濃厚接触者や無症状感染者に対しての予防投与も可能となっていました。しかし、今後オミクロン株が優勢株となった場合、抗体カクテル療法を使う頻度が激減します。ソトロビマブは予防投与が認められていないため、濃厚接触者や無症状感染者に対して予防投与を行う戦略自体は一旦白紙になるかもしれません(※)。

※アストラゼネカ社のチキサゲビマブ/シルガビマブ(エブシェルド®、日本未承認)の予防投与はオミクロン株に対しても有効とされています(7)。

◇ オミクロン株に軽症者向け経口抗ウイルス薬は有効

 2021年12月24日、経口抗ウイルス薬であるモルヌピラビル(ラゲブリオ®)が特例承認されました。また、ファイザー社のニルマトレルビル/リトナビル(パクスロビド®)の効果も期待されており、国内でもいずれ承認申請される見込みです。
 新型コロナウイルスのスパイクタンパクの変異とは関係のない作用機序であり、いずれの薬剤もオミクロン株に有効と考えられます(表2)。


 表2. 新型コロナ軽症者向けの経口抗ウイルス薬(筆者作成)

 アメリカ感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、オミクロン株の軽症者に対してニルマトレルビル/リトナビルの使用が推奨されています(4)。
 いずれの経口抗ウイルス薬も、高齢、肥満、基礎疾患があるといった重症化リスクのある人が対象となっています。発症から5日以内に内服する必要があります。自宅療養者では、診断した医療機関が特定の薬局へ処方箋を送付し、薬局から患者さんの自宅などへ配送する計画になっています。

◇ 使い慣れた点滴抗ウイルス薬が軽症例に有効

 レムデシビル(ベクルリー®)は、中等症以上の患者さんに点滴で用います。コロナ病棟ではかれこれ1年以上活躍している、馴染みの抗ウイルス薬です。もともと海外で作られたもので、発売当初オシャンティーな英語のパッケージで病棟にやってきました。
 最近、重症化リスクがある外来患者さんに、発症7日以内にレムデシビルを3日間点滴すると、入院あるいは死亡のリスクがプラセボより87%減少したという研究結果が報告されました(8)。
 上述の経口抗ウイルス薬が潤沢ならば敢えてレムデシビルを外来や軽症例で用いる必要はないかもしれませんが、使い慣れた薬剤であることはメリットと言えます。いずれ、軽症例に対するレムデシビルも適応になるかもしれません。

<参考>
(1) Sheikh A, et al. (査読前論文) 
(2) Wolter N, et al. medRxiv preprint doi: 10.1101/2021.12.21.21268116(査読前論文)
(8) Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 22. doi: 10.1056/NEJMoa2116846

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナの重症化を89%防ぐ内服薬、「パクスロビド」登場。

2022年01月23日 07時25分21秒 | 新型コロナ
新型コロナ対策として、
「予防と治療が確立すれば人類の勝利」
と言えます。

ワクチンは「mRNAワクチン」という、想定外に有効性の高いものが登場し、
世界中の人々が恩恵を受けていますが、その限界も見えてきました。

一方の治療薬の開発は遅れ、
当初は既存の薬を代用して有効性が検討されましたが効果は今ひとつ、
続いて抗体薬が作られ効果も認められましたが、変異株に対応しきれずトーンダウン、
そして現在、経口抗ウイルス薬の開発が進み、次々と登場しつつある段階です。

先日、2021年12月に日本で認可された新型コロナウイルスに対する経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル(ラゲブリオ®)」を紹介しました。このような経口薬が増えて患者さんへの投与が簡便になると、季節性インフルエンザと同じレベルの感染症に近づけます。

今回は、日本で次に認可されるであろう「パクスロビド」の記事を紹介します。
はじめにポイントを押さえておきます;

・パクスロビドはPF-073213323CLプロテアーゼ活性阻害薬)とリトナビル(抗HIV薬)の合剤である。リトナビルはPF-07321332の血中濃度を高値に維持する目的で併用される。

・パクスロビドは武漢株以外の変異株にも有効。

・投与対象が重症化リスクのある患者のみか、すべての新型コロナ患者になるかは不明。

執筆者はTVでおなじみの忽那Dr.です。


新型コロナの重症化を89%防いだ ファイザーの新型コロナ飲み薬 パクスロビドはどんな薬?
忽那賢志:感染症専門医(2021/11/6)より一部抜粋;
 11月5日、ファイザーより新型コロナに対する飲み薬の抗ウイルス薬であるパクスロビドが重症化を89%防いだ、と発表しました。このパクスロビドとはどういった薬なのでしょうか。

新規抗ウイルス薬と既存の抗HIV薬を組み合わせた薬剤

 このパクスロビドは新しい抗ウイルス薬(PF-07321332)と、既存の抗HIV薬であるリトナビルとを組み合わせた合剤です。
 このリトナビルは、プロテアーゼ阻害薬という種類の抗ウイルス薬と併用することで、プロテアーゼ阻害薬の血中濃度を高く維持する効果があり、やや厨二心をくすぐる「リトナビルブースト」という名称がついています。感染症医にとっての「リトナビルブースト」は、世間一般の「界王拳10倍」に相当するとお考えいただいて問題ありません。
 抗HIV効果そのものよりも、このブースト効果を期待して使用されることが多く、このリトナビルとロピナビルという抗HIV薬との合剤である「カレトラ」は一時期HIVの治療の中心を担っていました。そして、カレトラは新型コロナにも有効性があるのではないかと一時期新型コロナにも使用されていたことがあります(現在は有効性は否定されています)。
 このパクスロビドでも、リトナビルはPF-07321332の血中濃度を高く維持するために用いられています。


新型コロナウイルスの細胞への侵入と複製(国立研究開発法人理化学研究所「SPring-8で新型コロナウイルスと闘う」より)

 一方、PF-07321332という抗ウイルス薬は、コロナウイルスの複製に必要な酵素である3CLプロテアーゼの活性を阻害することでウイルスの増殖を抑えます。
 新型コロナウイルスは、ヒトの細胞の中に侵入して自分を複製します。この過程で、複数のタンパク質が一度に繋がって作られますが、これを切り分けて別々のタンパク質にしているのが3CLプロテアーゼです。3CLプロテアーゼを阻害することで、繋がっているタンパク質が切り分けられず、ウイルスの複製がストップします。
 中国の武漢市から広がったオリジナルの新型コロナウイルスだけでなく、様々な変異株にも抗ウイルス効果を有するとのことです。

発症3日以内に内服し重症化を89%防いだ

 今回発表された第2/3相試験およびその中間解析結果の概要は以下の通りです。
・2021年9月29日までに1219名の成人の新型コロナ患者が登録
・少なくとも1つ以上の重症化リスクを持つ、発症から5日以内の軽症から中等症の患者が対象
・発症3日以内にパクスロビドを投与された患者のうち登録後28日目までに入院した患者は0.8%(3/389人が入院し、死亡はなし)であったのに対し、プラセボ(偽薬)を投与された患者のうち、入院または死亡した患者は7.0%(27/385人が入院し、7人がその後死亡)であり、パクスロビドは入院または死亡のリスクを89%減少させた。
・発症5日以内に治療を開始された患者でも同様の傾向がみられた。
・有害事象は、パクスロビド(19%)とプラセボ(21%)で同等であり、そのほとんどが軽度のものであった。重篤な有害事象や有害事象による試験薬の中止もプラセボの方が多かった。
 まだ詳細なデータは発表されていませんが、この結果からはパクスロビドは非常に効果の高い経口抗ウイルス薬であると考えられます。また副作用についても大きな問題はなさそうであることも安心材料です。
 この中間解析の結果を受けて、この研究は追加の登録が中止となり、今後アメリカなどで緊急承認申請が行われることになります。
・・・
 飲み薬での新型コロナ治療薬の意義は非常に大きいと言えます。
 現在は重症化リスクのある酸素投与を必要としない軽症・中等症患者には抗体カクテル療法(カシリビマブ/イムデミマブ)と、ソトロビマブのモノクローナル抗体が使用できるようになりましたが、どちらも点滴での投与となっています。第5波では入院患者だけでなく外来患者にも、ホテル療養者や自宅療養者にもこのモノクローナル抗体の治療が行えるようになり、重症化を防ぐことができた事例が増えたことは間違いありませんが、点滴での治療は医療へのアクセスの点ではややハードルがあることは否めません。
 飲み薬であれば、医療者にとっても点滴準備などが不要となり、診断時に速やかに処方することができるようになります。
 Merck社のモルヌピラビルと同様、今回のパクスロビドの第2/3相試験も重症化リスクの高い人が対象であることから、緊急承認される場合も対象患者はこの条件に該当する患者となることが見込まれます。
 残念ながら抗インフルエンザ薬のタミフルのように「新型コロナと診断されたら誰も彼もすぐに処方してもらえる」ということにはすぐにはなりません。
 しかし、パクスロビドはワクチン接種者を含む重症化リスクのない新型コロナ患者を対象とした臨床研究も行われており、薬価の問題はありますが持病のない若い方でも良好な成績が得られれば今後対象が広がる可能性はあります。
 また、家庭内での濃厚接触者を対象とした臨床研究も進められており、抗体カクテル療法と同様の発症予防効果が認められれば、より容易に暴露後予防を行うことが可能となります(あくまで予防の最善の方法はワクチンですが)。
 今回のパクスロビドの発表は、そのような治療や予防がそう遠くない未来に行えるようになるかもしれない、という希望をも抱かせてくれるものではないかと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オミクロン株感染予防にはワクチン3回接種が必要

2022年01月17日 22時19分42秒 | 新型コロナ
新型コロナワクチン2回接種者でも、オミクロン株に対する効果は数ヶ月で減少していく・・・
と不安になる情報が流れています。
そのために3回目接種(ブースター接種)が必要になると。

まあ、減ってきた抗体価が再上昇するのは当たり前、
と考えるのがふつうです。

しかし以下の報告を読むと、
そう単純なものではなさそうです。

ブースター接種による各株(野生、デルタ、オミクロン)に対しての抗体価は、
それぞれ異なる反応を示すようなのです。

結論から申し上げると、
ワクチン2回接種は野生株やデルタ株への効果は十分であるがオミクロン株への効果は期待薄
3回接種の効果は野生株やデルタ株よりオミクロン株で最大限発揮される
ということ。
3回目接種の重要性がクローズアップされることになります。

しかし、ここで素朴な疑問が生まれます。

ファイザー社やモデルナ社は最初の野生株に対して作られたワクチンです。
それが野生株よりも最新の変異株であるオミクロン株に効果が高いとは如何に?

それから、2回目接種後3ヶ月で抗体が減少し、ブレークスルー感染が問題になっているmRNA ワクチンです。
3回目接種で抗体が上がったとしても、その後またすぐに減少してしまうのではないか・・・。

いったいこのワクチン、何回接種を繰り返せばいいんだろう。

2022年3月までには完成するそうです。

おそらく今後は、新たな変異株の出現が繰り返され、
それを後追いするように新たなワクチンが造られ、
毎年のように追加接種するようになる状況が目に浮かんできます。
・・・これ、インフルエンザと同じですね。


mRNAワクチン3回目接種がオミクロンに‟著効"〜中和抗体価が2回目完了者の19~27倍

・米・Massachusetts General HospitalのWilfredo F. Garcia-Beltran氏らは、米国の医療従事者および地域住民239人から得られた血清検体を用いてオミクロン株、デルタ株、野生株に対する各種ワクチンの有効性について検討。

・オミクロン株に対しては、mRNAワクチンの2回目接種完了から3カ月以内の人でも中和抗体価は極めて低かったが、3回目のブースター接種を完了している人では2回目接種完了者と比べて19~27倍高いことが示された。

・Garcia-Beltran氏らは今回、米国で承認されている2つのmRNAワクチン
 ファイザー製のBNT162b2
 モデルナ製のmRNA-1273
とアデノウイルスベクターワクチン(J&J製のAd26.COV2.S)
についてオミクロン株を含む3種のSARS-CoV-2に対する有効性を検証した。

・これら3種類のいずれかのワクチン接種(mRNAワクチンは最低2回、Ad26.COV2.Sは最低1回)を完了しているマサチューセッツ州の医療従事者および地域住民239人(18~78歳、中央値38歳、女性63%)を組み入れ、
①(recent vax群)SARS-CoV-2感染歴がなくワクチン接種完了後3カ月以内の群
②(distant vax群)SARS-CoV-2感染歴がなくワクチン接種完了から6~12カ月が経過している群
③(distant vax+infection群)SARS-CoV-2感染歴がありワクチン接種完了から6~12カ月が経過している群
④(booster vax群)SARS-CoV-2感染歴がなく過去3カ月以内にmRNAワクチンのブースター接種を済ませている群
ーに分類した。

・ハイスループットSARS-CoV-2疑似ウイルス中和アッセイを用いて、各群の血清検体におけるオミクロン株、デルタ株、野生株のそれぞれの疑似ウイルスに対する中和抗体価を比較検討した。

野生株に対する中和抗体価(幾何平均値、以下同)
mRNAワクチン2種のrecent vax群で高かった(mRNA-1273:1,362IU/mL、BNT162b2:2,402IU/mL、Ad26.COV2.S:42IU/mL)。
distant vax群ではいずれのワクチン接種群も中和抗体価が大幅に低下していた。
distant vax+infection群ではAd26.COV2.Sを含めた全てのワクチン接種者で高い中和抗体価が認められた。
booster vax群ではmRNA-1273で3,862IU/mL、BNT162b2で2,219IU/mL、Ad26.COV2.Sで1,201IU/mLと、最も高い中和抗体価が示された。

デルタ株に対する中和抗体価
全てのサブグループにおいて野生株と比べて低く、先行研究と一致した結果が得られた。
distant vax群のほとんどで中和抗体が検出されなかった
recent vax群とdistant vax+infection群、booster vax群では中和抗体価の低下度は軽度であった。

オミクロン株に対する中和抗体価
mRNAワクチンの2回目接種を完了してから3カ月以内のrecent vax群でも50%超で中和抗体が消失
野生株に対する中和抗体価と比べたオミクロン株に対する中和抗体価はmRNA-1273で43倍低く、BNT162b2で122倍低いことが示された。
distant vax+infection群では、そのほとんどで検出可能なレベルの中和抗体が維持されていたものの、中和抗体価はmRNA-1273で9倍、BNT162b2で12倍、Ad26.COV2.Sで17倍の低下が認められた。
booster vax群では、オミクロン株に対する中和抗体価は野生株に対する中和抗体価と比べても4~6倍の低下にとどまっていた(mRNA-1273:6倍低下、BNT162b2:4倍低下)。

・mRNAワクチン2回目接種完了後3カ月以内のrecent vax群とbooster vax群の比較から、2回目接種と比べたブースター接種による中和抗体価の上昇度は野生株やデルタ株では1~9倍であったのに対し、オミクロン株ではmRNA-1273で19倍、BNT162b2で27倍と大幅に上昇していることも確認された。

・これらの結果について、Garcia-Beltran氏らは「mRNAワクチンの2回接種は野生株およびデルタ株に対する中和免疫の誘導には有効であるが、オミクロン株に対する中和応答を誘導するには不十分であることが示された」と説明。「今回の研究からmRNAワクチンの3回目の接種によって、オミクロン株に対する強力な交差中和反応が生じることが明らかになった」と述べ、「多くの変異を持つSARS-CoV-2変異株の発生および感染拡大を抑制するための公衆衛生策として、mRNAワクチンの追加接種を迅速かつ広範に導入する必要性が裏付けられた」としている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

その医療用マスク、安全ですか。

2022年01月17日 06時47分36秒 | 新型コロナ
一般用マスクではなく、主に医療用マスクの話です。

医療現場でふつう使われているのは「サージカルマスク」という、
不織布で作られたものです。

新型コロナ患者と対峙する際にはサージカルマスクでは用が足りず、
「N95」という規格のマスクを使います。
医療用マスクの最高峰ですが、新型コロナ禍でメディアで取り上げられる機会が多く、皆さん耳にしたことがあると思います。

このマスク、実際に正しく装着すると息をするのが大変で、時間がたつと苦しくなります。
「苦しくならない」場合は、正しく装着されていない可能性があるくらいです。

さて、医療用レベルのマスクの規格はいくつもあるようで、
それを整理した記事が目にとまりました。

DS2、FFP2/FFP3、KN95 → N95と同等
KF94、P2 → 医療レベルと評価されず

とのこと。
KF94は、いわゆる“韓流マスク”ですね。
不織布が直接口に接触しないので使用感がよいのですが、
効果は一般使用レベルのようです。


N95マスク、医療従事者が知っておきたいこと
ケアネット:2022/01/17)より抜粋;

・わが国では、マスクの品質管理の一環として、日本産業規格(JIS)が2021年6月に制定された。しかし、適切な基準を満たさない製品も多く流通していることが懸念され、医療機関それぞれが対策しなければならない。

・国立感染症研究所が作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年6月2日改訂版)」では、N95マスクはエアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、気管内挿管、下気道検体採取等)を行う際に装着し、使用に際しては、事前のフィットテストと着用時のシールチェックが推奨されている。
・正しい着用方法はN95マスクを開発したスリーエム(3M)作成の「医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイド」が参考になる。

・「N95」とは、米国の労働安全衛生研究所で定められた防塵マスクの規格(NIOSH-42CFR84)。
・わが国では以下に示す他規格の製品についても、品質を確認し問題がなければN95マスクと同等に扱うとされている。

DS2(日本規格:厚労省2018)
※労働安全衛生法に基づく防塵マスクの性能規格
FFP2、FFP3(欧州規格:EN149-2001)
KN95(中国規格:GB2626-2006)

・ただし、海外製品についてはFDAで緊急使用承認を受けたものに限られる。
・DS2マスクは、患者の血液や体液等が浸透する恐れのある手術や処置を行う場合には使用できない(検体採取は該当しないので使用可)。

・安全なマスク製品かどうかの確認方法については、医療用感染防護具の適正使用を支援する一般社団法人 職業感染制御研究会が「KN95等の不良品マスクを見分ける方法」を公開している。
・同会ホームページでは、フィットテストの解説動画やマスクの再利用、サージカルマスクの規格基準などについても、網羅的に情報提供している。

・マスクの国際規格について、3Mの技術情報によると、韓国の規格「KF94(KMOEL-2017-64)」や、オーストラリア・ニュージーランドの規格「P2(AS/NZA 1716:2012)」などもN95マスクに近い性能を持つとされるが、わが国の資料には記載されていない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ、小児患者の治療(2022年1月現在)

2022年01月16日 22時15分50秒 | 新型コロナ
新型コロナのオミクロン株流行が席巻しています。
あちこちの中学・高校の部活レベルでクラスターが発生し、モグラ叩きの様相を呈してきました。

これから、ワクチンを接種していない世代(12歳未満)の新型コロナ流行が本格化すると思われます。

さて、小児患者はどう治療すべきでしょうか。

インフルエンザには抗ウイルス薬としてタミフル、イナビルなどが用意されています。
新型コロナに対してもラゲブリオ®(GSK社)が認可されましたが、
現状では適応は18歳以上のハイリスク患者です。
これから認可される薬パクスロビド(ファイザー社)もありますが、
それでも12歳以上が適応と、
小児に処方できる内服薬は今のところ存在しません。

現時点では、従来の対症療法で回復待ち、ということになります。
熱がつらかったら解熱剤、
咳がつらかったら鎮咳剤・・・

まあ、もともと小児は重症化しにくく、
オミクロン株はさらに重症化しない傾向がありますから、
それで済めば御の字です。

私は漢方薬に注目しています。
漢方薬は即効性がない体質改善の薬、というイメージが先行していますが、
漢方の原典である約1800年前の「傷寒論」は急性熱病の治療マニュアルなのです。

そこには、カゼの経過と共に適切な薬を選択して治癒に持っていく職人技が書かれています。
例えば・・・

1.風邪の引き始め
  ⇩
2.カゼが長引いて熱が上がったり下がったり
  ⇩
3.風邪がこじれて高熱が続く
  ⇩
4.回復せず体が冷えて命の危険

漢方的には1〜4を以下のように位置づけています。

1.太陽病期
2.少陽病期
3.陽明病期
4.太陰病期

という経過を辿るカゼの諸相に対応する薬が用意されています。
どのフェイズでも同じ咳止めが使用される西洋医学とはきめ細かさが異なります。

1.太陽病期→ 熱を出す手助けをして病原体をやっつける
2.少陽病期→ 身体の炎症の熱を冷ます
3.陽明病期→ 病気の元を身体から追い出す
4.太陰病期→ 身体を温めて免疫システムを回復させる

私はこの中でも、2.の少陽病期に注目しています。
新型コロナに罹った初期はカゼ症状ですが、
1週間後くらいに回復するヒト(8割)と重症化するヒト(2割)に分かれます。
重症化は免疫システムが暴走する「サイトカインストーム」が起きている状態です。
このフェイズに用意されているのは「柴胡剤」(例:小柴胡湯、柴胡桂枝湯)です。

私はふだんから風邪患者さんに対して、
熱が数日以上続いて治りが悪いときに処方しています(希望があれば、ですが)。




これは風邪の前半、やや長引くまでの病期ですが、
フェイズと体力により、すでに13種類の漢方薬を使い分けるべし、
と記されています。
・・・職人技ですね。
風邪の全経過まで入れると、使い分ける漢方薬の種類は、軽く20種類を超えるでしょう。
私は風邪の漢方を使いこなせるレベルが一人前の漢方医の目安、と考えています。




(解説文)
 これは大野修嗣先生の提唱されている「ハンス・セリエのストレス学説と傷寒論」の対応を改変したものです。セリエがストレス疾患の病期で治療法を変えたように,漢方治療においてもストレス疾患は病名ではなく病期によって治療法が変わります。
 副交感神経優位の太陽病期は実証なら「発表」により病邪を散じるため麻黄剤を使用し,虚証なら「解肌」により免疫を賦活するため桂皮を使用する。
 体がストレスに抵抗して交感神経優位の少陽病期なら,「和解」で炎症・緊張・興奮反応を適切に制御するため,「胸脇苦満型」には柴胡・黄芩を含む柴胡剤,「心下痞硬型」には黄連・黄芩を含む瀉心湯類が適応になる。
 体が疲弊して交感神経すら反応しにくい太陰病期には「温裏」で体を温め活性化する乾姜や桂皮,人参を使用する、などです。

かぜウイルスが体に入って起こす感染症も、
広く“ストレス反応”と捉えることが可能、ということですね。

西洋医学で少陽病期・太陽病期に適応するのは、
昔から使われてきたステロイド薬くらいしかありません。
ご存じのように、ステロイド薬はその使用のタイミングを間違うと、
病状が悪化する可能性があります。

前置きが非常に長くなりました。

先月(2021年12月)、日本小児科学会が「小児COVID-19 軽症から中等症の治療フローチャート」を発表しました。
さて、どんなことが書いてあるのか、読んでみましょう。
まずはフローチャートを引用させていただきます;


当院のような小児科開業医で診療する患者さんは、ふだん健康で酸素飽和度(SpO2)が正常範囲(>95%)に保たれていますから、基本的に経過観察・対症療法のみです。
まあ、思った通りですね。

酸素飽和度が正常範囲でも、重症化リスク因子がある患者さんはモノクローナル抗体(カシリブマブ/イムデビマブあるいはソトロビマブ)の投与を考慮します。ただし、年齢12歳以上、体重40kg以上かつ発症7日以内という条件が付きます。
まあ、これは病院に紹介して入院治療するレベルですので、開業医レベルではありません。

同じ条件を満たす患者さんで、胸部画像検査(X線撮影やCTスキャン)でCOVID-19に矛盾しない肺炎像を認めると、レムデシベルの登場です。

上記フローチャートの他に、忽那先生が作成したイラスト入りの経過表が掲載されており、こちらの方がイメージしやすいですね。



この図でもわかるように、軽症患者に使用されるモノクローナル抗体(カシリブマブ/イムデビマブあるいはソトロビマブ)は静脈注射薬のみなので点滴が必要です。

私はこの図の中の「軽症」の途中から「柴胡剤」を使えば、一定比率で重症化を抑制できるのではないかと期待しています。
江戸時代までの日本の医師であれば、おそらくそうしたでしょう。


<参考>
■ 「小児における COVID-19 治療薬に対する考え方:第1版」(日本小児科学会、2020年6月初出〜2021年12月最終更新)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ステロイド外用薬のランク付け、日米比較。

2022年01月16日 08時07分19秒 | アトピー性皮膚炎
ステロイド外用薬を処方する際、私は「強さのランク」について説明しています。

・ステロイド外用薬はその強さにより5つのランクに分けられ、当院で処方する軟膏類は以下のランクに入る;
 I群(最強)
 II群(とても強い)
 III群(強い):リンデロンV、メサデルム、リドメックス(IIIとIVの間?)
 IV群(中くらい):ロコイド
 Ⅴ群(弱い)
・小児科医は臆病者なのでIII群までしか使わないが、皮膚科ではもっと強い軟膏類が処方される
・皮膚の厚さにより吸収率が異なるため、塗る部位により複数の軟膏類を使い分ける必要がある

等々。

実はこの「5ランク分類」は日本独自の物で、外国では別の分類法が存在します。
例えばアメリカでは5ランクではなく7ランクに分類され、さらに同じステロイド外用薬でも、その性状(軟膏、クリーム、ローション)によりランクが異なることがあります。

I.Very High Potency:
II.High Potency:
III-IV.Medium Potency:リンデロンV(軟膏・クリーム・フォーム・ローション)
Ⅴ.Lower-Medium Potency:ロコイド(軟膏・クリーム・ローション)
Ⅵ.Low Potency:
VII.Lowest Potency:

当院採用の外用薬はその性状によりランクが異なるものはありませんが、
種類によっては別ランクになるものも存在します。

例)フルメタ:軟膏はII群、クリームはIII-IV群

外用薬の選択の際は、このような背景も確認する必要がありますね。

さて、ドラッグ・ストアで販売されている市販薬にもステロイド含有製品がありますが、
どのランクのモノなのでしょう。

答えは・・・日本分類でIII・IV・Ⅴランクに限定されています。
I群とII群は効果が強い反面、副作用が出やすいため許可されていないのです。

では、III〜Ⅴ群ならどこに塗ってもよいかというと、そうでもありません。

皮膚の薄い部位(顔、首、デリケートゾーン)は基本的にIV群を使用するのは医師の間の常識です。
もしIV群で効きが悪いときは、他の病気を鑑別した後にIII群を使うことがありますが、
これは医師レベルの専門的判断が必要です。

医師の使用する一覧表がネット上で閲覧できました。
安全性の目安として「期間」と「使用量」も記載されているのが特徴です。



この表のように、医師は場所により塗るステロイド外用薬を使い分け、
かつ副作用に気をつけて治療をしています。
軟膏だけもらって自己流で長期塗る行為は危険ですので、ご注意ください。


<参考>
■  ステロイド 外用剤 使い分け/類似薬 皮膚疾患〜同ランク内のステロイド外用剤の強さ
■ 国が変わればステロイドのクラス区分も変わる

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“ with コロナ時代” の医師の働き方〜“濃厚接触者”でも働ける、いや働かされる?

2022年01月13日 06時52分29秒 | 新型コロナ
従来、医師あるいは医療従事者が濃厚接触者と判定されると、
14日間の自宅待機が指示されました。

しかし感染者が増えてくると、医療従事者がどんどん“自宅待機”となり、
医療が維持できなくなる事態が発生してきました。

そこで政府は、医療者の制限緩和に踏み切りました。
ここ数日、相次いで医師の働き方に影響する政府の方針が発表されました。

一つは「自宅待機の医師でも(電話やオンラインの)診療可能」。

これは以前から気になってきたことです。
もし自分が濃厚接触者となり自宅待機になった場合、
無症状なら当然元気ですから、診療できないのは私にとっても患者さん側にとっても不幸です。
電話診療くらいできないものか・・・と考えていたので、
今回の発表は頷けるものです。

もう一つは「濃厚接触者でも毎日検査により陰性確認できれば勤務可能」です。

実は2021年8月に日本政府からの通知がありましたが、まだ一般化しているとは言いがたい状況です。
「自宅待機(外出はダメ)だけど、医療機関勤務は可能」という、ちょっと無理のある内容。
苦肉の策ですが、これは検証が必要になりそうですね。

外国でも制限緩和が進んでいます。
従来は「濃厚接触者は14日後に検査陰性なら隔離解除」だったものが、
イギリスでは「濃厚接触者は5日後に検査陰性なら隔離解除」
アメリカでは「濃厚接触者は7日後に検査陰性なら隔離解除」
と短縮してきています。

しかし、「検査陰性を条件に隔離なし」まで進んでいる国はまだ耳にしたことがありませんので。


<参考>

自宅待機中の医師による電話・オンライン診療は「可能」と明示
 厚生労働省は2022年1月7日付で、医師が自宅または宿泊療養施設などで療養・待機を行いながら電話・オンライン診療を行うことが「条件付きで可能」と明示する事務連絡を発出した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の流行拡大を受けた措置。感染や感染疑い、または濃厚接触者となり、ほぼ無症状にもかかわらず自宅などで待機を強いられる医師が増えている中、懸念される医師不足に対応する。
 COVID-19流行下で特例的に認められている「電話・オンライン診療」を行う医師の所在については、現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で、「医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はない」と記載している。その上で、オンライン診療を行う医師が「最低限遵守する事項」(表1)をまとめている。

表1 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」における医師の所在に関する記述(抜粋)

(1) 医師の所在

1. 考え方
 医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はないが、騒音のある状況等、患者の心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所でオンライン診療を行うべきではない。
 また、診療の質を確保する観点から、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を確保しておくべきである。
 また、オンライン診療は患者の心身の状態に関する情報の伝達を行うものであり、当該情報を保護する観点から、公衆の場でオンライン診療を行うべきではない。
 なお、患者の急病急変時に適切に対応するためには、患者に対して直接の対面診療を速やかに提供できる体制を整えておく必要がある。また、責任の所在を明らかにするためにも、医師は医療機関に所属しているべきである。

2. 最低限遵守する事項
i オンライン診療を行う医師は、医療機関に所属し、その所属を明らかにしていること。
ii 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと。
iii 医師は、騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れる等、オンライン診療を行うに当たり適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない。
iv オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合には、この限りでない。
v 第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない。

 一方、平時の診療報酬における「オンライン診療料」では、算定の留意事項として「オンライン診療は、当該保険医療機関内において行う」という一文が設けられている。COVID-19流行下で行う電話・オンライン診療での扱いはこれまで明確に示されていなかったが、今回の事務連絡で、表1の「最低限遵守する事項」を守っていれば、電話・オンライン診療を医師の自宅や宿泊療養施設など、所属医療機関以外で行っても診療報酬を算定できると明示した。

□ 関連文書
自宅療養又は宿泊療養中等の医師によるオンライン診療等について(周知)
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その64)


日本医師会長“医療従事者確保のため濃厚接触者も勤務可能に”
 新型コロナの感染が急拡大する中、日本医師会の中川会長は、医療従事者を確保するため、濃厚接触者になった場合でも当日の検査で陰性になるなどの条件を満たせば、勤務できるようにすべきだという考えを示しました。
 オミクロン株の感染が拡大している沖縄県では、新型コロナウイルスに感染したり、濃厚接触者になって宿泊施設などでの14日間の待機を求められたりして、勤務できない医療従事者が増え、医療提供体制がひっ迫する事態が懸念されています。
 こうした状況を受け、日本医師会の中川会長は記者会見で「今後、全国的に同じような状況になる可能性が高い。医療提供体制のひっ迫を生じさせない、社会機能をいたずらに停滞させないように、濃厚接触者の扱いは柔軟に変化させるべきだ」と述べました。
 そのうえで中川会長は、去年8月に厚生労働省が出した通知では、医療従事者は濃厚接触者になっても、

▽2回のワクチン接種を済ませていること
▽症状がないこと
▽当日、業務を開始する前に検査を行い陰性であること

の条件を満たせば、勤務が可能になっているとして
自治体はこの通知に沿って運用すべきだという考えを示しました。


 濃厚接触医師ら、検査で勤務可 自宅療養1.6万施設対応
後藤茂之厚生労働相は12日、医療従事者の新型コロナウイルス感染や濃厚接触が相次いでいることを踏まえ、毎日の検査で陰性を確認することで濃厚接触者は勤務が可能だと示した。沖縄県では医師や看護師らの自宅待機で医療逼迫の懸念が出ていた。2021年8月に厚労省が自治体に通知していたが、改めて周知した。


コロナ感染者と濃厚接触した医療従事者、「無症状」「毎日の陰性確認」などの要件満たせばコロナ対応業務に従事可―厚労省
 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい医療提供体制が逼迫する地域では、
▼ワクチン接種済
▼無症状
▼毎日のPCR検査等での陰性確認
―などの一定の要件を満たせば「コロナ感染症患者と濃厚接触した医療従事者」でも、一定のコロナ対策業務に就くことを認める(不要不急の外出と扱わない)―。
 厚生労働省は8月13日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について」を示し、こうした考えを明らかにしています(厚労省のサイトはこちら)。
 ワクチン接種済で、無症状かつ毎日のPCR検査での陰性確認などが要件
新型コロナウイルス感染症の猛威は衰えるところを知りません。4度目の緊急事態宣言は範囲も期間も拡大されており、「感染防止策の徹底」と「医療提供体制の確保」が継続した最重要施策となることは述べるまでもありません。
後者の医療提供体制の確保に関しては、各医療機関等の努力で
▼重症患者や中等症患者などを受け入れる病床の確保
▼重症患者や中等症患者などに適切に対応するための手厚い人員確保
―が進められています。しかし、東京都などでは、感染力が非常に強いデルタ株(いわゆるインド型の変異株)の猛威に追い付けず、すでに「コロナウイルス感染を確認したものの、受け入れ医療機関が見つからず(ベッドが空いておらず)、入院できない」という医療提供体制の逼迫が生じています。
 このため政府は、重症化リスク(高齢、基礎疾患保有など)のない軽症者のみならず、中等症の患者についても、健康管理体制を確保したうえで宿泊・自宅療養を求めていく方向に舵を切りつつあり、感染急拡大時には、例えば次のような対応をとることも可能である旨を示しています。「重症患者が入院できない」事態を回避することが最大の狙いです(関連記事はこちらこちら)。
◆入院医療
▽「重症患者」や「特に重症化リスクの高い者」に重点化することも可能である
▽自宅・宿泊療養者の「症状悪化」に備えて空床を確保する
◆宿泊・自宅療養
▽入院患者以外は「自宅療養を基本」とする
▽自宅療養者への健康観察を更に強化し(パルスオキシメーターの配布や往診・オンライン診療等の医療支援体制の確保)、症状悪化の際は速やかに入院できる体制を確保する(入院への移行時の搬送手段の整備なども整える)
▽家庭内感染の恐れや自宅療養ができない事情などがある場合に宿泊療養を活用する
▽健康管理体制(往診やオンライン診療など)を強化した宿泊療養施設を増強する
▽HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)を改善し、スマートフォンでも健康管理・IVR(自動音声応答システム)を活用した自動電話等の機能を活用した健康管理を推進する

 ところで、前者の感染拡大防止に関連して、いわゆる「濃厚接触者」に関しては、感染症法に基づいて「不要不急の外出はできる限り控え、やむを得ず移動する際にも、公共交通機関の利用を避ける」ことが求められています。
 しかし、医療提供体制が逼迫する地域では、「感染拡大防止策」を徹底したうえで、この規定を柔軟化し、「1人でも多くの医療従事者に、コロナ感染症対応などにあたってもらう」ことが重要と政府は判断。次のような要件・注意事項を満たした場合には、極めて例外的な取扱いとして「コロナ感染症対策に従事する医療従事者について、家庭内感染等により濃厚接触者となった場合でも、『コロナ感染症対策に従事することは不要不急の外出に当たらない』として外出自粛要請を行う」ことが認められます。
 各地域において、感染状況、医療提供体制の逼迫状況を踏まえて上記のような対応をとるべきか否か、選択することになります。なお「コロナ感染症対策に従事する医療従事者『以外』の関係者」における考え方は、別途示される見込みです。

【要件】
▽コロナ感染症対策に従事する医療従事者である
▽コロナワクチンを2回接種済みで、2回目の接種から14日間経過した後に、コロナ感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者である
▽無症状であり、毎日、業務前に核酸検出検査(PCR検査)または抗原定量検査(やむを得ない場合は、 抗原定性検査キット)により検査を行い陰性が確認されている
▽濃厚接触者である当該医療従事者の業務を所属の管理者が了解している

【注意事項】
▽当該医療従事者が感染源にならないよう、業務内容を確認し、基本的な感染対策を継続する(マスクの着用、手指衛生等に加え、処置時における標準予防策の徹底)
▽引き続き「不要不急の外出」はできる限り控え、通勤時の公共交通機関の利用をできる限り避ける
▽家庭内に感染者が療養している場合は、当該者との濃厚接触を避ける対策を講じる
▽当該医療機関の管理者は、当該濃厚接触者を含む関係する医療従事者の健康観察を行い、当該濃厚接触者を感染経路とするコロナ感染症患者が発生していないかの把握を行う

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナの内服薬「ラゲブリオ®」(モルヌピラビル)認可(2021年12月)

2022年01月12日 08時13分17秒 | 新型コロナ
2021年12月に新型コロナ治療薬の経口薬(飲み薬)「ラゲブリオ®」が日本で認可されました。
これまでは静脈注射(点滴)薬がメインでしたので、入院治療が原則というレベルでしたが、飲み薬の登場で発熱外来の様相が一変しそうです。

さて、新型コロナ感染症の治療薬はその作用と使用される時期から大きく2種類に分けられます;
1.抗ウイルス薬(発症初期に使用)
2.抗炎症薬(こじれたときに使用)

従来は1も2も既存薬(すでに存在していた薬)を流用してきたのですが、
今回初めて新型コロナ用に開発された飲み薬が登場したわけです。
ただし、2022年1月現在、医療機関ならどこでも手に入るわけではなく、登録制になっており、国が流通を管理している状況です。

一方、治療薬として一時期話題になった免疫抗体を直接体に入れるロナプリーブ®はウイルスが変異すると効果が減弱し、オミクロン株には効果が期待できないとされています。
賞味期限(薬は使用期限?)があるのは致し方なく、抗体薬の宿命ですね。

現時点での治療薬をわかりやすくまとめた文章を見つけました;

モルヌピラビル承認、軽症COVID-19治療薬の選択肢は?
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

この中で、一覧表にしたものがわかりやすいですね。

期待されるラゲブリオ®ですが、小児科医の私にとっては「18歳以上」という対象年齢が残念でなりません。
さらに、日本感染症学会が推奨(2021.12.24)する投与対象は、
① 61歳以上
② 活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)
③ 慢性腎臓病(CKD)
④ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
⑤ 肥満(BMI 30kg/m2以上)
⑥ 重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)
⑦ 糖尿病
⑧ ダウン症
⑨ 脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症など)
⑩ コントロール不良のHIV感染症およびAIDS
⑪ 肝硬変などの重度の肝臓疾患
⑫ 臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
と公表されており、陽性者に全員処方されるタミフル®のような薬ではなく、ある程度処方対象が限定されそうです。
なお、現時点では無料配布となっています。

ただ、ラゲブリオ®治験データを見ると、1000人以下の投与データしか存在せず、緊急措置的に認可された経緯が読み取れます。
つまり、何万人〜何百万人に投与した際の副作用のデータはなく、広く使われるようになって初めてわかる副作用が出てくる可能性が残っていることを認識すべきです。

他の抗ウイルス薬もこれから話題になるでしょう。
日本ではまだ未承認ですが、パクスロビド®(ニルマトレルビル・リトナビル)は対象年齢が「12歳以上」なので、こちらの承認を期待したいですね。


<参考>
 新型コロナウイルス感染症:関連製品の承認状況
PMDA
コロナ初の経口薬、使用上の注意点・入手法は

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする