小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

妊娠中の服薬に関する情報

2016年10月26日 11時45分42秒 | 医療問題
 お役立ち情報です。

■ 妊産婦に強い薬への抵抗感、正しい薬の知識の普及を――持病を抱える妊婦は医師、薬剤師との相談が不可欠
HealthDay News 2016年10月24日
 妊婦や授乳婦は、胎児や新生児への悪影響を懸念して、市販薬だけでなく処方薬でも服用を我慢するなど、薬に対する抵抗感が依然として強いことが、くすりの適正使用協議会が行った調査でわかった。先ごろ、東京都内で開かれたメディアセミナー(主催=同協議会)では、聖路加国際病院女性総合診療部の酒見智子氏が登壇し、調査結果を踏まえたうえで、妊産婦でも正しく使用すれば薬は安全であることを強調。糖尿病、てんかん、喘息やうつ病などの持病をもつ女性はとくに、服薬に関して自己判断せず、主治医や薬剤師と十分に話し合うべきと助言した。
 『妊娠・授乳と薬に関する調査』は、9月8~10日に、妊娠を希望中あるいは過去5年間に出産・授乳の経験がある女性300人を対象に実施されたもので、妊娠・授乳中の服薬に関する知識の有無や薬に対して不安を抱いた場面などについて回答してもらった。
 その結果、
・「胎児がもっとも薬の影響を受けるのは妊娠5~7カ月」(正解はもっとも影響を受けやすいのは妊娠2~4カ月のため『誤り』)
・「多くの薬は授乳期中に服用しても新生児にほとんど影響しない」(正解は『正しい』)
 を正しく理解していたのはそれぞれ39%、15%にすぎず、妊娠・授乳中の服薬はすべて胎児や新生児に著しい悪影響を及ぼすと考える女性が多いことがわかった。
 また、妊娠に気づかずに服薬して不安を抱いた妊婦は3人に1人に、妊娠・授乳中に薬への抵抗感から自己判断で服薬を我慢した経験のある女性は3人に2人に上り、疑問や不安を抱える女性が多い現状が浮き彫りにされた。処方薬よりも市販薬に対する抵抗感が強いことや、疑問や不安の解消にはインターネットなどを利用する女性が多いものの、実際に解消するには医療従事者の役割が大きいことも判明した。
 妊娠・授乳中の服薬についての不安は、正しい知識が不足していることで生じており、妊娠中の薬の胎児への影響が薬の種類、量、妊娠時期で異なること、授乳中は服薬できる薬が多いことなど、基本的な知識を理解することで軽減できる。同氏によると、薬について疑問や不安をもった場合には、躊躇せず医師や薬剤師に相談することや、同協議会が発行する、薬の知識を分かりやすくまとめた冊子『妊娠・授乳とくすり』を参照するようアドバイスしている。
 出産年齢の高齢化に伴い、持病をもちながら妊娠を希望する人や妊娠後に慢性疾患を発症する女性も増えている。こうした女性は妊娠・授乳中も服薬して病気をコントロールする必要があるケースも多いことから、同氏は4つの重要なポイントとして、
1)主治医にはなるべく早め(できるだけ妊娠前に)相談すること
2)納得できるまで相談すること(セカンドオピニオンなど)
3)家族も一緒に相談を受けること
4)別の専門医を紹介されたら必ず受診すること
-を挙げ、これらを実践するとともに、自分で病気の記録をつけるなど、妊産婦自身が積極的に行動するよう強く勧めている。

なお、同協会では、10月17日から始まった「薬と健康の週間」にあわせて、上記の冊子をホームページ上で公開している。

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予防接種による副反応の障害認定(2016年10月)

2016年10月26日 11時37分11秒 | 予防接種
 厚生労働省から公表されました;

■ BCGやHPVなど11件の疾病障害認定- 厚労省が公表、急性脳症も
2016.10.25:CBニュース
 厚生労働省は、疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会の審議結果を公表した。結核に対する予防効果があるBCG や子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)などを接種した15件について審議した分科会は、11件で予防接種と疾病との因果関係が否定できないとした。


具体的な内容はこちら
情報は定期的に公表されています;
□ 「疾病・障害認定審査会 (感染症・予防接種審査分科会)
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ダニによるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の効果

2016年10月20日 08時10分48秒 | アレルギー性鼻炎
 ダニに対するアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法の治療薬は、2016年10月時点の日本では2種類発売されています。
アシテア®(塩野義製薬)
ミティキュア®(鳥居薬品)

『ミティキュア』と『アシテア』、同じダニアレルギーの減感作療法の薬の違いは?(わかりやすいブログ)

 処方するには一定の資格が必要ですので、どの医療機関でも扱っているわけではありません。
 最低でも数年間毎日使用するという気の長い治療法で、効果が実感できるまでに半年くらいかかることが多いようです。
 当院でも中学生で一人、はじめています。
 その効果に関する最近の報告を紹介します;

■ ダニアレルギーが舌下免疫療法で改善、日本の968人が参加 アレルギー性鼻炎に対する効果を検証
2016.10.20:MEDLEY
ダニはアレルギー性鼻炎の原因(アレルゲン)のひとつです。過敏反応を抑えるため、体をアレルゲンに慣らす治療法が知られています。日本の患者を対象に効果を確かめる研究の結果が報告されました。

◇ ダニアレルギーに対する舌下免疫療法の研究
 アレルギー専門誌『Allergy』に報告された研究を紹介します。この研究では、日本でダニ(チリダニ)によるアレルギー性鼻炎の患者を対象として、舌下免疫療法の効果を調べています。

◇ 舌下免疫療法とは? 
 アレルギーは、異物に対して免疫が過敏に反応することで起こります。花粉症もアレルギーの一種です。治療法のひとつとして、アレルギーを起こす物質(アレルゲン)を体に与え続けることで、免疫を慣らして過敏反応を抑える方法があります。舌の下に入れて溶かすタイプの薬を使う場合は特に「舌下免疫療法」とも呼ばれます。
 ダニによるアレルギー性鼻炎に対しては、日本でも2015年にアシテア®ダニ舌下錠が発売され、舌下免疫療法が行われています。

◇ 日本で968人が研究に参加
 この研究には、ダニによるアレルギー性鼻炎の患者968人が参加しました。参加者はランダムに3グループに分けられました。

・300単位(IR)の薬剤を使うグループ
・500単位(IR)の薬剤を使うグループ
・有効成分を含まない偽薬を使うグループ
 ・・・300単位(IR)、500単位(IR)というのは薬剤の強さを表します。
 52週間の治療が行われ、最後の8週間に症状の重さをスコアで評価して、治療効果を検討しました。

◇ 症状に改善あり
 次の結果が得られました。
 治療期間の最後の8週間におけるAASSは、偽薬群に比べて300IR群と500IR群でともに有意に改善した。
 ほとんどの有害事象は軽度であり、16件の深刻な有害事象が報告されたが、薬剤関連のものはなかった。300単位でも500単位でも、症状のスコアに改善が見られました。薬が原因で起こったと見られる深刻な副作用はありませんでした。

◇ まとめ
 アレルギー性鼻炎は多くの人を悩ませています。免疫をコントロールする方法が進歩することで、くしゃみや鼻水が楽になる人が増えるかもしれません。

<参照文献>
House dust mite sublingual tablet is effective and safe in patients with allergic rhinitis. Allergy. 2016 Jul 29.
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ワクチンに対する不信感の大きい国ランキング2016 ・・・日本は何位?

2016年10月18日 08時13分19秒 | 予防接種
 こんな報告が目にとまりました。
 日本は上位に食い込んでると思いきや、なんと「安全と考えている国」の上から3番目!
 世界の中で見ると、日本におけるワクチン反対派は少数派であることを確認できました。

 そして、栄えある第一位は・・・フランス!
 ヨーロッパ諸国が「ワクチンを信じていないランキング」上位を占めている一方で、アジアは全体的にワクチンを信じている国が多いと報告されています。

ワクチンに対する不信感はフランスが最も大きい
Last Updated: 2016-09-09 15:58:51 (Reuters Health)
By Kate Kelland

ロンドン(ロイター) - 新しい調査によると、国民の予防接種に対する信頼感は世界各国で大きく異なり、ワクチンの安全性に対して最も強く疑念を抱いているのはフランスであるとのことである。
 近年、予防接種率の低い地域では、麻疹、百日咳、そして他の感染症が流行していることを受け、調査に尽力した科学者らは、政策立案者がそういった問題に取り組む際に、この所見が役に立つだろうと述べた。
 この研究は67か国で実施され、ワクチンを重要、安全、効果的、宗教的信念と両立し得ると考えるか否かについて、約66,000人の人々の見解が調査された。
 免疫学のパイオニア、ルイ・パスツールの出生地であるフランスは、ワクチンの安全性に対して抱く確信が最も低く、ワクチンは安全であるという見解に不賛成であった調査対象者は41%で、12%という世界平均の3倍以上となった。
 フランス以外にも、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ロシア、ウクライナ、ギリシャ、アルメニア、スロベニアというヨーロッパの国々が、不信感の最も強かった10か国のうち6か国を占めていた。
 EBioMedicine誌に掲載が予定されている報告の中で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院、Vaccine Confidence ProjectのHeidi Larson先生率いる研究者らは、否定的な姿勢は疑われる副作用を巡る議論と、躊躇するかかりつけ医がいることが原因であるかもしれないと述べた。
 国民の予防接種に対する信頼は国際的に懸念される重要な問題であり、信頼を寄せない人々は、生命を守り得るワクチンを拒絶することになる。
 ワクチンの拒絶は、近年、米国、欧州、アジア、太平洋沿岸諸国、そしてアフリカにおける麻疹を含めた疾患の流行と関連付けられており、ポリオ撲滅という世界的な大志を大いに妨げてもいる。
 「世界の公衆衛生にとっては、信頼度が低下している国もしくは集団を迅速に特定できるよう、ワクチンに対する姿勢を定期的にモニタリングすることが肝要である。そうすることによって、起こり得る疾患の流行を予防するための最大のチャンスが得られる」と、Larson氏は述べた。
 安全性に最も信頼を置いているのは東南アジアで、バングラデシュでは、ワクチンは安全でないと考えていた人々が1%未満であったことが分かった。
 またフランスを含めた数か国は、ワクチンの安全性に対する信頼度よりも、その重要性に対する確信度の方が大幅に高かったことも判明した。
 「これは、ワクチンの受け入れが確固たるものではないことを示している」と、Larson氏は述べ、科学者と公衆衛生当局は、「国民の信頼をもっと上手く築く」必要があると付け加えた。




(説明文)Vaccine confidence by world region and differences between perceived safety and importance A World map of percentage negative (“tend to disagree” or “strongly disagree”) survey responses to the statement “overall I think vaccines are safe”. B Summary of Likert responses by world region. C Differences in the proportion of people responding that they believe vaccines are important but unsafe (with 95% confidence intervals).

<原著>
The State of Vaccine Confidence 2016: Global Insights Through a 67-Country Survey
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A群レンサ球菌咽頭炎に最良の抗菌薬は?

2016年10月17日 06時00分26秒 | アレルギー性鼻炎
 古くて新しい話題、溶連菌性咽頭炎の治療に関する論文を紹介します。
 従来、ペニシリン系抗菌薬10日間投与がスタンダードでした。
 しかし、別系統のセフェム系抗菌薬5日間でも治療効果は変わらないことが報告され、現在は混在しています。

 当院では長らくペニシリン系抗菌薬で治療してきましたが、約5%に薬疹が出現するため、「ペニシリンアレルギーを作っているのではないか?」との疑問が拭えず、数年前にセフェム系へ変更しました。

 紹介する論文では、ペニシリン系、セフェム系、それともう一つマクロライド系(※)を比較検討し、治療効果に大きな差は認められなかったという内容です。そして、コストの面からペニシリン系が依然として第一選択薬になるだろう、と結論づけています。
 おかしいなあ・・・薬疹の話題が出てこない(^^;)。

※ マクロライド系抗菌薬は、ペニシリン系抗菌薬が副作用や耐性菌で使えないときに選択します。


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第53回日本小児アレルギー学会(2016.10.8-9)へ参加してきました。

2016年10月10日 10時29分54秒 | 小児医療
 今年は群馬県前橋市(ベイシア文化ホール他)での開催です。
 地元ですが、土曜日は午前診療終了後に前橋に向かう予定も疲労でたどり着けず、10/9のみの参加となりました。

 最近、アレルギー関連学会に参加すると「食物アレルギー」と「アトピー性皮膚炎」のセクションばかり聴いてきたので、今回は違う分野の最新情報を仕入れて明日からの診療に役立てようと考えました。
 乳児喘息関連では、目新しい知見はありませんでしたが、知識の整理に役立ちました。
 PAE(小児アレルギーエデュケーター)企画では、自分の診療スタンスを反省し、より深く患者さんのサポートを心がけようと思いました。
 聴講したシンポジウム、講演などの印象をメモしておきます。

□ シンポジウム「プライマリーケアにおける乳児喘息治療を再考する」

1.「乳幼児の喘鳴と鼻副鼻腔炎」西村龍夫Dr.
 「子どもの風邪とは鼻副鼻腔炎である」と断言し、「かぜ薬は百害あって一利なし、咳止めはハチミツで十分」「抗菌薬も極力使わない」という、目立つ先生です。小児科系MLでネット上の議論はよく目にするのですが、実物の講演を聴くのは初めての経験でした。
 小児の鼻咽頭の解剖図を使い、成人との違いを巧みにわかりやすく説明し、中耳炎でも副鼻腔炎でも抗菌薬は必要なし、鼻を吸い取ってあげましょうという結論でした。

2.「プライマリー気餡立場から考える、乳幼児喘息の鑑別と吸入ステロイドの適正使用」重田誠Dr.
 重田Dr.は私が勝手に“師匠”と呼ばせてもらっている臨床のエキスパート。発表内容も開業医のレベルを遙かに凌駕していました。脱帽。
 乳児の喘鳴を聴取したとき、喘息疑いとして漫然と同じ薬物療法を続けるのではなく、それが喘息なのかどうか、常に自問自答しながら診療することの大切さを教えてもらいました。

3.「β2刺激剤の有用な使い方を考える」亀崎佐織Dr.
 お母さん達の間では“咳止めテープ”として有名なホクナリンテープ®は、喘息発作に対する気管支拡張剤であり、風邪の咳には効かない、「気道閉塞症状を伴う気管支炎」に適応が通っているため乱用されがち、と従来から言われていることを再確認。

4.「ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の適切な使い方」寺田明彦Dr.
 冗談を交えながらのテンポよいお話で、「あれこの先生、こんなキャラだっけ?」とイメージが変わりました(^^)。
 小児アレルギー性鼻炎に適応のあるLTRAはオノン®のみで、他のジェネリックはダメ、という事実を再確認。

□ 教育セミナー「小児にどう使う?プロトピック®軟膏の使い方と指導方法」
 お昼(横川の釜飯)を食べて睡魔が襲ってきて、内容をはっきり覚えていません・・・(^^;)。
1.馬場直子Dr.
 小児皮膚科として超有名な先生。基本的なことをわかりやすく解説。
2.川田康介Dr.
 プロトピック®の発がん性は心配しなくてよいというエビデンス情報が役に立ちそう。

□ エデュケーター企画「PAEだからこそできること!ケアの視点と技の実際」
 PAEの現状と、事例報告とその分析が中心。
 資格取得者が在籍する医療機関は、一般総合病院が4割弱、専門病院が3割、開業医が3割弱、そして意外だったのが5%しかいない大学病院。
 話の方向も、中心となる総合病院/専門病院のアレルギー専門外来レベルとなり、当院のような開業医とはちょっとズレを感じました。
 
 私が考えるPAEの役割とは・・・

 アレルギー疾患の治療は、喘息では吸入、アトピー性皮膚炎では軟膏塗布が中心となります。
 つまり内服薬を処方して「これを朝晩食後に飲んでください」ではすまないのです。
 吸入には正しいやり方があり、それから外れると効きません。
 軟膏塗布も、処方医がイメージする「たっぷり塗る」を実行してくれる患者さんは少ない。

 飲み薬を半分しか飲まなければ効きません。
 同様に吸入も軟膏も指示された方法・量を守らなければ効かないのです。

 しかし、診療時間が限られている医師がそれらを全て説明するのは現実的ではありません。
 そこを埋めるのがPAEの仕事。

 発表を聞いていると、皆さんその先を見ていることに気づきました。
 十分な指導をしているのによくならない、コントロール良好だったのに悪化した、という事例を取り上げ、「なぜそうなったのか?」「問題点はどこか?」とカウンセリングをして解決することに重点を置いている印象。
 それは疾病利得であったり、親に対する「こっち向いて行動」だったり。
 すばらしい!と感心する一方で、「開業医でそこまで掘り下げるのは無理かなあ」という印象も。
 冬のインフルエンザ流行期には100人を超える患者さんが来院します。
 混雑してフル回転状態の外来中に、一人の患者さんに30分も時間をかけて話を聞きカウンセリングを行うことは無理ですね。

 まあ、できる範囲で対応しようとは考えていますが・・・
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卵は早く開始した方がアレルギーになりにくい?

2016年10月03日 07時27分51秒 | アレルギー性鼻炎
 上の子が食物アレルギーやアトピー性皮膚炎だと、弟や妹が生まれたとき、アレルギーが心配で卵やピーナッツなどを食べさせないようにしがちです。
 しかし近年、摂取開始を遅らせる方がむしろ危険であり、早期から摂取させる方が食物アレルギーになる率が低くなると報告されてきました。
 なんだか逆説的でピンときませんよね。
 これは2008年に発表されたLackらによる「二重抗原曝露説」(人体にアレルゲンが入る際、少量の経皮接触ではアレルギー感作が誘導され、多量の経口摂取では免疫寛容が誘導される)以降の流れです。
 教科書やガイドラインも、それに沿ってどんどん書き換えられている最中なのです。
※ ただし、これはあくまでも予防の話であり、すでに食物アレルギーを発症して食べると症状が出る方は除去が基本ですので誤解なきよう(^^;)。

 紹介する論文は近年の論文を集めてメタ解析したものですが、同じ路線の内容です;

■ 乳児期の卵・ピーナッツ摂取でアレルギーのリスク低下/JAMA
2016/10/03:ケアネット
 乳児食として、早期に卵およびピーナッツを導入すると、これらのアレルゲン食品によるアレルギー性疾患のリスクが低減することが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDespo Ierodiakonou氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。アレルゲン食品の導入時期が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患のリスクに及ぼす影響への関心が高まっている。乳児食のガイドラインは、両親にアレルゲン食品の導入を遅らせることを推奨しなくなっているが、多くの場合、早期の導入を勧めてもおらず、最近の6つのアレルゲン食品の早期導入の無作為化試験(EAT試験)では、いずれの食品でも予防効果は認められていない。

◇ 導入時期の影響をメタ解析で評価
 研究グループは、アレルギー性疾患および自己免疫疾患のリスクに及ぼすアレルゲン食品の導入時期の影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国食品基準庁の助成による)。
 医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CENTRAL、LILACS)を用いて、1946年1月~2016年3月までに報告された文献を検索した。
 生後1年以内の乳児において、アレルゲン食品(牛乳、卵、魚類、甲殻類、ナッツ類[tree nuts]、小麦、ピーナッツ、大豆)の導入時期を検討し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患、アレルギー感作との関連について報告した介入試験および観察試験を対象とした。
 主要評価項目は、喘鳴、湿疹、アレルギー性鼻炎、食品アレルギー、アレルギー感作、1型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチであった。

◇ エビデンスレベルは低いが、魚類の早期導入が鼻炎を抑制
 146試験の204編の論文が解析に含まれた。介入試験のうち、24件(39論文、1万3,298例)がアレルギー性疾患、5件(6論文、5,623例)は自己免疫疾患に関するものであった。また、観察試験のうち、69件(90論文、14万2,103例)がアレルギー性疾患、48件(69論文、6万3,576例)は自己免疫疾患に関するものだった。
 日本の研究を含む5試験(1,915例)のメタ解析では、乳児食に早期(生後4~6ヵ月時)に卵を導入した乳児は、これより遅い時期に導入した乳児に比べ卵アレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンス(moderate-certainty evidence)が得られた(率比[RR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.87、I2=36%、p=0.009)。
 卵アレルギーの発生率が5.4%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり24例(95%CI:7~35)であった。
 また、2試験(1,550例)のメタ解析では、早期(生後4~11ヵ月時)にピーナッツを導入した乳児は、これより遅い時期に導入した場合に比べピーナッツアレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンスが得られた(RR:0.29、95%CI:0.11~0.74、I2=66%、p=0.009)。
 ピーナッツアレルギーの発生率が2.5%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり18例(95%CI:6~22)だった。
 エビデンスの確実性は、効果の推定値の不正確性および試験の集団や介入の間接性によって、低下した。卵およびピーナッツの導入時期は、他の食品に対するアレルギーのリスクとは関連しなかった。
 一方、早期の魚類導入のアレルギー感作および鼻炎の低減との関連を示す、確実性が非常に低い~低いエビデンスが確認された。グルテンの導入時期とセリアック病のリスク、アレルゲン食品の導入時期と他のアウトカムは、いずれも関連がないことを示す、確実性の高いエビデンスが得られた。
 著者は、「これらの知見は、各試験の限界との関連を考慮して解釈すべきである」と指摘している。
<原著論文>
Ierodiakonou D, et al. JAMA. 2016;316:1181-1192.

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