小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

平成のアレルギー医療史

2019年03月16日 06時55分43秒 | 医療問題
 私が小児科医になったのは、昭和63(1988)年です。大学で研修していた年明けに、元号が「平成」に変わりました。
 当時のアレルギー疾患の診療を振り返ると、現在とけっこう異なることに気づかされます。例示しますと、
【気管支喘息】
 発作性疾患と捉え、発作時の治療をメインに組み立て、現在のような予防治療・定期治療は行われていなかった。
【アトピー性皮膚炎】
 小児科医は食物アレルギーが原因、皮膚科医は皮膚疾患として捉え、双方の議論がかみ合わず、その間で患者さんは翻弄されました。治療に関しては、「ステロイドを使わずに治す医者が名医」という考えも一部にありました。
【アレルギー性鼻炎】
 対症療法の他に、減感作療法(皮下注射法)が細々と行われていましたが、近年、舌下免疫療法が登場し、いわゆる体質改善が再注目されるようになりました。

 実際に診療していて、喘息もアトピー性皮膚炎も寛解と悪化を繰り返し、ラチがあかない印象がありました。
 その後、喘息では吸入ステロイド療法が登場して発作を予防管理できるようになり、アトピー性皮膚炎では近年ですがプロアクティブ療法が登場して喘息と同じように「最低限の局所ステロイド療法でコントロールする」という時代になり、患者さんの負担もずいぶん楽になったと感じます。
 しかし局所ステロイドは治癒に直結するわけではなく、今後はもう一歩・二歩、医学が進む必要がありそうです。

 長らく小児アレルギー分野のオピニオンリーダーであった西間三馨先生(元・国立病院機構福岡病院院長)が平成のアレルギー医療史を振り返るインタビュー記事「平成の医療史30年◆アレルギー疾患編」を見つけたので、気になった箇所を抜粋メモしておきます。

Vol. 1 ステロイド叩きを乗り越えて
Vol. 2 食物アレルギーの対策が未熟だったと痛感
Vol. 3 アレルギー専門医の育成がこれからの鍵
番外編:平成でアトピー減、鼻炎・花粉症は倍増

<メモ>

1982〜2012年のアレルギー疾患有症率


アレルギー疾患の平成30年略史


アトピー性皮膚炎
・1990年代に「ステロイドバッシング」(ステロイド叩き)が一世を風靡し、ステロイド軟膏の使用を忌避する患者が増えた。
・1999年(H11年)にタクロリムス軟膏(プロトピック®)が発売され、アトピー性皮膚炎診療が大きく変わった。
・皮膚のバリア機能に欠かすことができない「フィラグリン」遺伝子などの異常がアトピー性皮膚炎患者から多く見つかり、スキンケアの重要性が注目されるようになった。
・2018年(H30年)に抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体であるデュピルマブ(デュピクセント®)が認可され、ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏でも十分な効果が得られなかった重症患者に光が当てられた。

アレルギー性鼻炎
・アレルギー性鼻炎はアレルギー疾患の中で最も多く、その原因の多くはスギ/ヒノキ花粉であり、昭和の終わりから平成中期にかけて患者数が激増した。
・アレルギー性鼻炎の治療は、長年抗ヒスタミン薬(≒抗アレルギー薬)オンリーだったが、2000年代に導入された舌下免疫療法で一変、それまでの皮下注射による減感作療法に取って代わられた。現時点でスギ花粉とダニのみなので、その他の花粉症を引き起こすイネ科、キク科、カバノキ科に対する舌下免疫療法の開発が期待される。

小児気管支喘息
・2017(H29)年に喘息で亡くなった小児の数がはじめてゼロになった。西間先生が石になった1968(S43)年は272人が亡くなっていた。その背景は吸入ステロイドの普及である。
吸入ステロイド薬の変遷
(平成初期)CFC-BDP:フロンガスであるCFCを含有したベクロメタゾン
(2003年)HFA-BDP:代替フロンであるHFAを用いたベクロメタゾン
(   )ドライパウダー製剤のフルチカゾン
(   )ステロイド薬と長時間作用性β-2刺激薬との合剤
ロイコトリエン受容体拮抗薬の登場
 それまで使われてきたテオフィリン徐放製剤より安全域が広くて使いやすいことが特徴。
(1995年)プランルカスト(オノン®)
(   )モンテルカスト(シングレア®、キプレス®)
・オマリズマブ(ゾレア®)登場は難治喘息患者にとって大きな福音となった。

食物アレルギー
・「茶のしずく石けん事件」(2009年〜);石けんに含まれていた加水分解小麦が原因で小麦アレルギーを発症し、被害者数は2000人以上。視点を変えると、これは壮大な人体実験であり、食物アレルギーが皮膚感作から発症し、それがアナフィラキシーショックまで引き起こすことが図らずも証明されてしまった。これを機に、正しい情報提供を目的とした「アレルギーポータルサイト」(日本アレルギー学会&厚生労働省)が創設された。
・2012(H24)年に東京都調布市で牛乳アレルギーの小学5年生女児が給食に出たチーズ入りチヂミを食べてアナフィラキシーショックを起こして死亡するという痛ましい事件が起こった。エピペンを所有していたが、それを使いタイミングが遅れたことが残念である。この事件を教訓に、日本小児アレルギー学会が「エピペンを使用すべき13の徴候」を作成・発表した。これを機に、学校側の体制が一気に変わった。それまでは「学校の中に医療は絶対持ち込ませない、薬を飲ませるのだって抵抗する、注射なんて論外」という風潮があったが、事故後はエピペンが普通に学校に使われるようになり、学校生活管理指導表(アレルギー疾患についての詳しい情報を主治医が記した用紙)が提出されればきちんと対応をとるようになった。
・経口免疫療法の開発が進んでいるが、まだ確立されておらず、今後に期待したい。

アレルギー疾患ガイドライン(GL)とその周辺の歴史
(1993年)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の診療GL公表
(1995年)アレルギー性結膜炎のGL公表
(2007年)気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーをまとめた「アレルギー疾患診療・治療GL」公表
(2014年)「アレルギー疾患対策基本法」公布(2015年施行)
(2019年)アレルギー研究10ヵ年戦略公表予定

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食物アレルギーとアトピー性皮膚炎(相原雄幸Dr.)

2019年03月11日 06時47分29秒 | アトピー性皮膚炎
 前項と同じく、「小児科」2019年2月号(Vol.60 No.2)特集「クリニックで診る小児アトピー性皮膚炎のプライマリ・ケア」より。
6.食物アレルギーとアトピー性皮膚炎(相原雄幸Dr.)

 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎・・・長らく皮膚科医と小児科医で意見が食い違い、患者のみならず医師も混乱してきた問題ですが、この10年でデータが揃い、皮膚科医・小児科医共に納得できる結論が出ました。
 それは「アトピー性皮膚炎は食物アレルギーの原因になり得る」ということ。
 食べ物は消化管から吸収されると栄養分になりますが、皮膚(湿疹病変)から微量でも体に入り込むことにより、アレルギー体質を作ってしまうことがわかったのです。

 そして、食物アレルギー診療も変わってきました。
 まず湿疹があればその治療をしっかりして、皮膚から食物アレルゲンが侵入することを阻止すること。
 さらに、食物アレルゲンになりやすい食材を、症状が出ないレベルで早期から少量はじめること。
 この2つの方法を導入することにより、もしかしたら食物アレルギー発症を予防できるのではないか、というところまで来ました。
 ただし、食物アレルギー患者さんの1/3は湿疹とは無縁の乳児期を過ごしており、これですべて解決するわけではありません。

 相原先生はアトピー性皮膚炎に対する軟膏治療の反応が悪い例にはアレルギー検査を行い、低年齢では6ヶ月間隔で、3歳以上では1年毎に再検査を繰り返しているようです。
 私も昔は乳児湿疹が改善を悪化を繰り返す例には、離乳食開始頃にアレルギー検査を行ってきました。しかしプロアクティブ療法を導入してからその頻度が激減しました。なぜかというと、湿疹がみんなよくなってしまうからです。もし、ステロイド外用薬を2週間しっかり塗布しても改善しない湿疹は、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患がかくれている可能性がありますので、食物アレルギーのチェックより皮膚科専門医の診察を優先しています。食物アレルギーに関しては、経過中に即時型食物アレルギー症状(〇〇を食べると蕁麻疹が出る等)を経験してはじめてアレルギー検査を行っています。
 この辺は、どちらが正しいかという問題ではなく、小児科医/アレルギー科医のスタンスや、診療対象の重症度により異なる点ですね。


<メモ>

湿疹患者の問診
・発症時期
・症状の詳細:部位、皮膚所見、その他
・これまでの経過:他院での治療状況
・栄養法:母乳/人工乳、離乳食
・発育状況
・家族のアレルギー歴:食物アレルギー、気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、口腔アレルギー症候群など
・動物飼育歴

湿疹患者に食物アレルギー合併を疑うとき
(軽症)スキンケア/軟膏塗布が適切であっても皮疹の改善が不十分な場合には血液検査を実施し、抗アレルギー薬内服を追加して1週間後に再診。
(中等症/重症)初診時に血液検査を実施し抗アレルギー薬内服を開始し1週間後に再診。
(最重症)病院小児科に紹介入院

アレルギー血液検査
・内容:末梢血、白血球分画(好酸球数)、総IgE、特異的IgE抗体3大抗原(卵白、ミルク、小麦)/ペット
・結果判定:
(好酸球増加)+(特異的IgE抗体陽性)→ アレルギー検査陽性
(好酸球増加)+(特異的IgE抗体陰性)→ アレルギー検査陽性(好酸球性炎症あり)→ 治療への反応が良好なら正常化、反応不良で皮疹の改善が不十分で好酸球数が低下しない場合は再検査で特異的IgE抗体が陽性になることがある。
(好酸球正常)+(特異的IgE抗体陰性)→ 食物アレルギーの関与は否定的
(特異的IgE抗体弱陽性)→ アレルギーありと判断して対応
・検査間隔;
(3歳まで)6ヶ月間隔
(3歳以降)1年間隔
・検査項目;2回目以降は1回目の検査で陽性項目の経過判定と、利用可能なアレルギーコンポーネントを追加。生後6ヶ月以降ではダニ、1歳以降であればスギも追加。ただし、食物アレルギーの症例で食物制限が解除された場合には、抗体が陽性であってもそれ以降の検査は必ずしも必要ではない

原因食物除去
・特異的IgE抗体陽性で単品であれば除去試験(母親も完全除去)を行い判定する。陽性例では除去を段階的に解除していく(母親→ 患児)。
・複数項目陽性では、抗体高値の食物を完全除去とし、その後単品ずつ負荷をしていく。この場合、皮疹の改善した状況で食品解除を実施しなければ判定は難しい

アトピー性皮膚炎治療の問題点
・小児科医の使用するステロイド外用薬は不十分で、低ランクのものを長期に漫然と使用する傾向があり、薬剤の選択が適切とは言えない状況も多い。
・皮膚科医によっては乳児の顔面にはステロイド外用薬を控えるなど、統一されていない状況もある。
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小児アトピー性皮膚炎の診断と治療(池澤善郎Dr.)

2019年03月10日 13時58分48秒 | アトピー性皮膚炎
 引きつづき、「小児科」2019年2月号(Vol.60 No.2)特集「クリニックで診る小児アトピー性皮膚炎のプライマリ・ケア」より。
3.小児アトピー性皮膚炎の診断と治療ー年齢別ポイント

 池澤先生は、横浜市立大学皮膚科教授としてアトピー性皮膚炎の世界では有名でした。退官後は開業されたのですね。
 内容は、まず小児アトピー性皮膚炎の病型を6〜8つに分類し、それぞれ診断と治療を記述しています。はじめは「そんなに種類があるかな〜、面倒だな〜」と半分疑いながら読み進めると、実際の臨床で出会う「あるある」がたくさん出てきて驚きました。そして病型により治療アプローチも異なるので、大変参考になりました。

 その一つは、亜鉛華軟膏の使い方です。
 ステロイド外用薬の必要であり有効な皮疹の特徴は「乾燥+かゆみ+発赤」ですが、間擦部(頚部しわ部分、腋窩、鼡径部しわ部分)が蒸れてふやけて赤くなっている場合に私は亜鉛華軟膏を使用してきました。
 池澤先生はさらに広く適用しており、以下の場合に亜鉛華軟膏とステロイド外用薬を重ね塗りしています;
(1歳半未満)
・おむつ部の赤い刺激性皮膚炎
・食べ物やよだれで赤くなった口囲や頬部などの刺激性皮膚炎
・頚部・肘窩・膝窩などの間擦部に赤い間擦疹
・乳児脂漏性湿疹/汗疹湿疹型
・膿痂疹様/ざ瘡合併の乳児湿疹型
(1歳半以上)
・口唇・口角・口囲の湿疹病変(唾液で傷つきやすい)
・陰部(陰嚢・陰唇・陰股部・肛門)の湿疹病変(湿潤化しやすい)

 それから、軟属腫(水いぼ)/疣贅に紫雲膏外用と書いてあることに驚きました。
 漢方好きな私は、痛い皮膚病変(おむつ皮膚炎、擦過傷、火傷など)に多用してきましたが、水いぼに使用したことはありませんでした。今後は試してみたいと思います。

 それから、手掌の異汗性湿疹(汗疱状湿疹)は治療困難例が多く、皮膚科通院してもよくならない患者さんが当院に流れてきます。漢方薬が一部有効ですが、完治はせず悩ましい疾患です。この異汗性湿疹は金属アレルギーの可能性があることを知りました。要検討ですね。


<メモ>

アトピー性皮膚炎の分類(成人・小児・乳児別)
 思春期以降の成人アトピー性皮膚炎は8つの病型に分類される。
①皮膚バリア障害による乾燥性湿疹型
②食物アレルギー関与の湿疹/蕁麻疹型
③ダニ/ペット/花粉などの環境アレルギー関与の湿疹
④マラセチア/汗アレルギー関与の湿疹/蕁麻疹型
⑤金属アレルギー関与の汗疱状湿疹型
⑥皮表常在細菌叢が関与する酒さ様皮膚炎/ざ瘡合併型
⑦疣贅合併/非合併の痒疹/苔癬化型
⑧心因性の嗜好性掻破による痒疹/湿疹型
これらの臨床病型を、さらにABCの3つのサブタイプに分類した。
A:基本タイプ:アトピー性皮膚炎の基本病態である皮膚バリア障害による
B:アレルギータイプ:食物・環境などのアレルギーの関与が示唆される
C:特殊タイプ:A、B以外の病因・病態が合併

上記を参考にして1歳半未満の乳児アトピー性皮膚炎を6つに、1歳半以上の幼児・学童期アトピー性皮膚炎を8つの病型に分類する。

(1歳半未満の乳児アトピー性皮膚炎の臨床病型)
A-① 皮膚バリア障害による乾燥性乳児湿疹
B-② 食物アレルギー関与の乳児湿疹/蕁麻疹
B-③ ダニ/ペット/花粉などの環境アレルギー関与の乳児湿疹/蕁麻疹
B-④ 容易に軽快しない乳児脂漏性湿疹/汗疹湿疹
C-⑤ 膿痂疹/ざ瘡合併の乳児湿疹
C-⑥ 刺咬症/軟属腫/疣贅合併の乳児湿疹

(1歳半以上の幼児・学童期アトピー性皮膚炎の臨床病型)
A-① 皮膚バリア障害による乾燥性小児湿疹型
B-② 食物アレルギー関与の小児湿疹/蕁麻疹型
B-③ ダニ/ペット/花粉などの環境アレルギー関与の小児湿疹/蕁麻疹型
B-④ マラセチアアレルギー関与の小児脂漏性湿疹/汗疹湿疹/蕁麻疹型
B-⑤ 金属アレルギー関与の小児汗疱状湿疹型
C-⑥ 皮表常在細菌関与の膿痂疹様/ざ瘡様小児湿疹
C-⑦ 刺咬症/軟属腫/疣贅合併の小児湿疹/ストロフルス型
C-⑧ 心因性反応関与の掻破嗜好性の小児湿疹/痒疹型

□ アトピー性皮膚炎の治療
(1歳半未満の乳児アトピー性皮膚炎の臨床病型)
A-① 皮膚バリア障害による乾燥性乳児湿疹
 保湿剤+ステロイド外用薬(Medium〜Strong)で容易に軽快する。
 これにくわえて、
・おむつ部の赤い刺激性皮膚炎
・食べ物やよだれで赤くなった口囲や頬部などの刺激性皮膚炎
・頚部・肘窩・膝窩などの間擦部に赤い間擦疹
ーがある場合は、保湿外用薬の代わりに刺激性皮膚炎によく効き、皮膚の保護作用がある亜鉛華軟膏をまず塗布してからM/Sのステロイド外用薬を重ね塗りする。

B-② 食物アレルギー関与の乳児湿疹/蕁麻疹
 通常のスキンケアで容易に軽快しない代表的タイプ。軟膏両方を粘り強く行うと共に、食物アレルギーの関与を検討し、DSCG(インタール®)の投与も考慮する。
 著者はこのタイプの可能性が高い例には抗ヒスタミン薬とDSCG経口薬を内服させながら、原因となる食物を少しずつ摂取させ、問題の食物アレルギーの寛容を図る(ただしアナフィラキシータイプは除く)。

B-③ ダニ/ペット/花粉などの環境アレルギー関与の乳児湿疹/蕁麻疹
 通常のスキンケアで容易に軽快しないタイプ。
・絨毯の上でハイハイするときに直接触れる膝や手に発疹が出る
・室内飼育しているペットに触れるか舐められて発疹が出る
・花粉の飛散時期に顔面などの露出した皮膚に発疹が出る
ーといった特徴があり、眼症状や鼻症状を伴うことがある。
 対策として、軟膏療法を粘り強く行うとともに、環境アレルゲン対策を行う。

B-④ 容易に軽快しない乳児脂漏性湿疹/汗疹湿疹
 ふつう乳児脂漏性湿疹は頭部・前額部にできて乳児期以降自然軽快する。
 しかし最近、自然寛解せずに、赤みの強う浸潤性紅斑が、前述した脂漏部位だけでなく、汗疹ができやすい間擦部にも生じ、そのまま「容易に軽快しない乳幼児アトピー性皮膚炎」に移行する例が増えている印象がある。
 治療として、M/Sのステロイド外用薬と亜鉛華軟膏の重ね塗りに汗疹対策(除湿換気やシャワーの励行)を加える。
 それでもコントロールできない場合には、上記に加えて抗真菌薬ケトコナゾールの外用を併用する。

※ 小児科医の私は抗真菌薬をアトピー性皮膚炎患者さんに使用した経験がありません。

C-⑤ 膿痂疹/ざ瘡合併の乳児湿疹
 掻爬性の湿疹病変に皮表の常在細菌叢が増殖して生じる臨床病型。
 通常のスキンケアでは軽快しにくく、亜鉛華軟膏とM/Sのステロイド軟膏と抗菌薬軟膏の重ね塗りと一緒に、抗ヒスタミン薬に加えて有効な抗菌薬を全身投与する。
★ 新生児ニキビ;生後1週間から3ヶ月頃の赤ちゃんのおでこや頬部に生じるニキビで、通常は治療の必要がなく自然軽快するが、赤く腫れる場合は高に機微作用のある抗菌薬軟膏ナジフロキサシンを塗布する。

※ 小児科医の私は、伝染性膿痂疹(皮膚が毒素で溶けて広がる皮疹)のないアトピー性皮膚炎患者に内服抗菌薬を処方した経験がありません。新生児ニキビは石けんで洗うことにより軽快するので、こちらも抗菌薬軟膏を使用した経験がありません。

C-⑥ 刺咬症/軟属腫/疣贅合併の乳児湿疹
・刺咬症:M/Sのステロイド外用+抗ヒスタミン薬内服
・軟属腫/疣贅:紫雲膏外用+ヨクイニン散剤内服

(1歳半以上の幼児・学童期アトピー性皮膚炎の臨床病型)
A-① 皮膚バリア障害による乾燥性小児湿疹型
 小児アトピー性皮膚炎の基本タイプで、通常の保湿保護・抗湿疹抗炎症のスキンケアで容易に軽快する例が多い。
 学童期・思春期に近づいてM/Sランクのステロイド外用薬では抑えられずに痒疹・苔癬化病変を伴う例ではVS(very strong)ランクへ変更する。
 口唇・口角・口囲の湿疹病変は唾液で傷つきやすく、陰部(陰嚢・陰唇・陰股部・肛門)の湿疹病変は蒸れやすく湿潤化しやすいため、どちらの病変にも皮膚の保護作用があり、刺激反応を抑える作用がある亜鉛華軟膏をまず塗布し、湿疹病変の症状と部位を考慮してM/S/VSのステロイド外用薬を重ね塗りする。

B-② 食物アレルギー関与の小児湿疹/蕁麻疹型
 食物アレルギー関与の乳児アトピー性皮膚炎よりも即時型症状を呈する比率が高くなる。
 DSCG経口薬による改善効果は乳児に比べるとあまり顕著でないが、それでも明らかに食物アレルギーがあるアトピー性皮膚炎に対してはある程度の効果が認められる。

B-③ ダニ/ペット/花粉などの環境アレルギー関与の小児湿疹/蕁麻疹型
 これらの環境アレルゲンに直接触れる部位の皮疹の悪化や新たな痒い皮疹の出現が特徴。

B-④ マラセチアアレルギー関与の小児脂漏性湿疹/汗疹湿疹/蕁麻疹型
 現時点では、小児脂漏性湿疹における常在真菌のマラセチアとそのアレルギーの果たす役割は不明である。成人アトピー性皮膚炎と脂漏性湿疹では関与が指摘されている。
(成人の脂漏性湿疹)
 マラセチアは脂腺から分泌される皮脂を栄養源としているため、皮脂の量が多くなるとマラセチアが増え、それ自体の刺激作用に加えて、皮脂成分の一つであるトリグリセライドを遊離脂肪酸に分解し、その遊離脂肪酸が皮膚に刺激反応を起こし脂漏性湿疹を発症するとされている。

B-⑤ 金属アレルギー関与の小児汗疱状湿疹型
 金属アレルギーは成人より少ないが、最近は小児でも、微量の金属が含まれている砂場での砂いじりや、金属歯絵のおもちゃを舐めたりすることにより、手足や顔、口囲などの赤みや痒みといった症状が出ることがある。
(成人におけるアトピー性皮膚炎と金属アレルギー)
 成人ではIgE値が低い内因性アトピー性皮膚炎患者に金属アレルギー(Ni、Co)の比率が高いことが報告されている。
 アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず、全身型金属アレルギー患者は、発汗の多い手掌足蹠・手指足趾・体幹四肢などに異汗性湿疹(汗疱状湿疹)の症状を呈する傾向あり、DCSG経口薬が有効とされている。

C-⑥ 皮表常在細菌関与の膿痂疹様/ざ瘡様小児湿疹
 通常のスキンケアでは軽快しにくい。
 亜鉛華軟膏+M/Sのステロイド外用薬+抗菌薬軟膏(フシジンレオ®、アクアチム®など)の重ね塗り+抗ヒスタミン薬/抗菌薬内服。また、漢方薬(桂枝茯苓丸加薏苡仁、十味敗毒湯、排膿散及湯)も今後の検討課題である。

C-⑦ 刺咬症/軟属腫/疣贅合併の小児湿疹/ストロフルス型
 1歳半未満と同じ対応。

C-⑧ 心因性反応関与の掻破嗜好性の小児湿疹/痒疹型
 通常の湿疹皮膚炎病変に不釣り合いな顕著な掻破痕を伴う痒疹・苔癬化皮膚炎が特徴的である。掻破痕が顕著な場合は、ステロイド外用薬に亜鉛華軟膏や紫雲膏の重ね塗りを追加する。心身症の要素が顕著な場合、心身症の専門医に紹介する必要がある。

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「糖質制限」その食べ方ではヤセません(大柳珠美著、青春新書、2017年)

2019年03月10日 06時52分14秒 | 糖質制限
 ゆるい糖質制限(ロカボ)をはじめて、3年以上になります。
 体重は平均+αで、増えることは止められましたが、やせてはいませんね。
 自分の食生活を見直すきっかけになるのでは、と期待してこの本を手に取りました。
 帯には「減らした糖質の代わりに何を食べていますか?」という興味をそそるフレーズ。

 それから、糖質制限に関する漠然とした疑問も残っています。
1.体脂肪は、食べた脂肪分ではなく、処理できない過剰な糖質(炭水化物)がたまったものであるとされているが、では脂肪はどこへ行くのか。
2.糖質を制限すれば、タンパク質は制限なく食べてよいとされているが、過剰なカロリーはどう処理されてどこへ行くのか。

 さて、これらを解決してくれる内容でしょうか。

 結論から申し上げると、私の疑問を解消してはくれませんでした。
 それから、食物アレルギーに関する記述が間違っています。近年、食物アレルギーは「ばっかり食べ」が原因ではなく「経皮感作説」に落ち着きました。

 著者にはさらなる最新の情報収集&精進を期待したいと思います。


<メモ>

・「糖質制限」ブームの始まりは、「主食を抜けば糖尿病はよくなる!」(江部康二著、2005年発行)である。

・糖尿病の治療食として広がった糖質制限が、ダイエット食として世間一般に広がったのは「dancyu」という食関連の月刊誌の別冊ムック本として2009年に出版された「満腹ダイエット」である。

・イギリスの栄養学の教科書「ヒューマン・ニュートリション」には、狩猟採集時代が長い人類の進化の歴史から考察すれば、ヒトの消化管機能は、まだ穀物ベースの栄養摂取には適応していないと書かれている。

・糖質制限に潜む落とし穴の一つが、「糖質量にばかり気をとられ,食べるべき栄養素についての総合的な視点が欠如してしまうこと」である。糖質制限の成功の鍵は糖質以外のところにあるのだ。

・タンパク質のうち、アミノ酸の種類によってはインスリンを出すものがあるとか、I型糖尿病になればタンパク質も血糖値を上げることがわかってきたが、一般の人にとっては、基本的に血糖値を上げる栄養素は糖質のみである。

・人体のメインのエネルギー源として使われるのは、体脂肪として蓄えられている糖質である。タンパク質と脂質はカロリーが不足しているときはエネルギー源として使われるが、基本的には体の構成材料として優先的に使われる。糖質はエネルギーとしてしか使い道がないため、余った糖質は体脂肪に変えられ、非常時のエネルギーとして蓄えられる。

・炭水化物・糖質・糖類の違い
(炭水化物)ー(食物線維)=糖質
(糖質)多糖類、糖アルコール、二糖類、単糖類
(糖類)二糖類、単糖類

(多糖類)オリゴ糖、デキストリン、でんぷん、セルロース ・・・ 米や野菜に含まれる甘くない糖質
(単糖類)ブドウ糖、果糖
(二糖類)砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖
(糖アルコール)エリスリトール、マルチトール ・・・ 甘味はあるが体に吸収されにくい甘味料

※ 今ひとつわかりにくいので、KIRINのHPからわかりやすい図表を;




「糖質ゼロ」「糖質オフ」の真実
(糖質ゼロ)食品100gまたは飲料100ml当たり0.5g未満
(糖質オフ/カット/低等)食品100g当たり5g以下、飲料100ml当たり2.5g以下

・利用可能炭水化物:炭水化物の好青成分のうち、ヒトの消化酵素で消化できるのものの総称

二つのエネルギーシステム:ヒトは糖と脂肪からエネルギーを得ている
1.ブドウ糖-グリコーゲンシステム
 食事を通して体内に入った糖質(ブドウ糖)を使う経路
2.脂肪酸-ケトン体システム
 体脂肪として蓄えられている脂肪酸と、それを燃やしたときに副産物として得られるケトン体を使う経路

 1が2に優先される。つまり、糖質を摂取して血糖値が上がれば、体脂肪の燃焼はストップしてしまう。その糖を使い切るまでは、体脂肪はエネルギーとして使われない。

糖質制限ダイエット
 糖質をとらなければ、その間は体脂肪を燃焼させてエネルギーに変えるしかなくなる。この生理学的メカニズムを利用したのが、糖質制限ダイエットである。
 糖質制限で制限するのは、ご飯やパン、パスタといった主食と呼ばれるもの。一方で、肉や魚、卵、大豆製品と言ったタンパク質、つまりおかずはしっかり食べてよい。
 タンパク質をとることのメリットは、筋力が落ちないこと。すると筋肉によって消費されるエネルギー量が増える。
 また、肉や魚に多く含まれるビタミンB群は、脂質などエネルギーの代謝に欠かせない栄養素である。
 「低炭水化物ダイエット」「ケトン食ダイエット」などは言葉を換えているだけで、要は糖質制限と同じである。

低カロリー食は筋肉が落ちるが脂肪は落ちにくい。
 そうめんや春雨のようなカロリーが低めのものを食べていれば、体重が落ちることもある。しかしそれは、タンパク質やカロリー不足によって筋肉が落ちた結果であることが多く、また、これらは糖質が高いため、体脂肪は落ちにくい。

低インスリンダイエット
 ブドウ糖を100としたときの血糖値の上がり具合を示すGI値の低い食品を積極的にとる一方で、高GIの食品を避けるよう推奨している。糖質の量ではなく、血糖値を上げる速度に注目したダイエット法と言える。
 しかし、GI値と糖質量は違うことを認識しておく必要がある。

糖質制限がうまくいかない原因食品
(バナナ)糖質が高い果物の代表格。半量(50g)でも糖質は10.7g。
(ニンジン)糖質高めの野菜。さらにスムージーにして液体にすることで、かんで食べるよりも体への吸収が速くなり、血糖値を急激に上げてしまう。
(ヨーグルト)タンパク質がとれるからいいと思っている人が多いが、無糖であっても乳糖という糖質が含まれている。また、乳脂肪も多いため、1パックも食べればカロリー過多になる。
(春雨)カロリーは低いが糖質は高め。
(唐揚げ)揚げ物なのでカロリーが高い。また揚げ油の質や時間が経った油の酸化も気になる。
(そば)そば粉100%の十割ソバなら血糖値を上げにくいと言われているが、糖質の量は十割ソバであっても小麦粉入りのソバであっても、さほど変わらない。これは白い精製された食パンか黒いライ麦パンか、あるいは白い精製された白米か黒い玄米ご飯か、でも同じ事が言える。
(ミックスナッツやチーズ)糖質制限中のおやつの定番で、糖質は確かに低い。問題はその量で、1パックずつ開ければカロリーの取り過ぎに也、糖質制限しているので太りはしないが痩せもしない。
(ジャイアントコーン)油で揚げてある上、トウモロコシの一種なので糖質が高い。
(ワイン)醸造酒では唯一辛口ワインならOK。

めまいや脱力感はカロリー不足が原因
 ダイエットでは、ついカロリーを抑えようと、肉の脂身を覗いたり、ノンオイルにしようとする、あるいはサラダや野菜たっぷりのスープでお腹を満たしたり、肉や魚などの動物性たんぱく質を避けて、豆腐などの植物性たんぱく質ばかり選んでしまう。しかしこれではカロリー不足でガス欠になってしまう。
 とくに小食の人が主食を抜く場合、主食から得た板カロリーが失われるにもかかわらず、サラダやスープ、豆腐などの水気の多い低カロリーな食材で満腹になってしまうと、さらにカロリー不足が深刻になりやすい。

糖質制限をしても痩せない人は、カロリー過多が原因
 豚肉や牛肉は赤身肉よりバラ肉を、鶏肉はささみよりも皮付きのもも肉を好んだり、マヨネーズやバターなど調味に使う油脂の量が多くなりがち、といったオイリーな味覚を好む方は、結果的にカロリー過多になりやすい。

→ カロリー過多(油脂摂取量が多い)の場合に体に残るのは筋肉と脂肪のどちらかなのか、書いていない(残念!)。

デブ菌「ファーミキューテス菌」と痩せ菌「バクテロイデス菌」
 ファーミキューテス菌と呼ばれる腸内細菌が肥満に関連していることが科学雑誌「Nature」に報告されたが、肥満の人は痩せている人よりもこの菌が多い。一方、痩せている人にはバクテロイデス菌が多い。
 ファーミキューテス菌を減らし、バクテロイデス菌を増やすのが、食物線維と発酵食品である。

・糖新生〜糖質制限をしても低血糖にはならない
 おもにアミノ酸を材料II、肝臓と骨格筋を介しながらブドウ糖を作り、血糖として利用できる循環システム。その結果、糖質をとって血糖値を上げなくても、人体は赤血球に最低限必要な血糖を維持できる(人体を構成する細胞は、脳を含めてすべて脂肪酸から作られるケトン体をエネルギーにできるが、赤血球だけは唯一ブドウ糖をエネルギーとする)。
 逆に、ブドウ糖を作り出す肝臓の機能が、過度の飲酒や長い期間の投薬などで低下していたり、極端なやせなどで筋肉のボリュームがあまりに少なすぎると、肝臓と筋肉を解して行われる血糖(エネルギー)の合成がままならなくなりやすい。すると低血糖の症状が出てしまうことがある。

・糖質制限すると便秘がちになる?
 このような人は食物線維が不足している可能性がある。生野菜サラダの小鉢程度では足りない。海藻、キノコ、こんにゃくなども組み合わせ、毎食たっぷり主食代わりに取り入れてみよう。

・リーキーガット症候群

→ アレルギー関連学会に所属している私はこの病名を聞いたことがありません。まだ正式に医学的評価をされていない病名のようですね。このような単語を取り上げると、この本全体の信用性を落としてしまうと思います

・現代人が陥りがちな「新型栄養失調」
 忙しい現代人の食事の特徴として、安価で手軽な糖質に偏った食事内容が挙げられる。現代人は、糖質や外食や昼食で使われる酸化した油から太るほどのエネルギーを得る一方で、体や脳の材料となるタンパク質や良質な脂質、エネルギー代謝に欠かせないビタミン類やミネラル、腸内環境を整える食物線維などが不足している傾向がある。それらは肉や魚介、卵、大豆製品、海藻、キノコ、野菜などに含まれている。

・甘味料の整理
1.糖質系甘味料:砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコール
※ このうち、全く血糖値を上げないのは糖アルコールの仲間のエリスリトールだけ。
2.非糖質系甘味料
①天然甘味料:ステビア、甘草(グリチルリチン)
②人工甘味料:サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース

・人工甘味料の問題点
 日本では食品添加物として認可され使用が認められているが、世界的に見ると、人工甘味料の使用に関しては見直しを訴えるケースが多い。
①『Nature』に発表された研究論文:糖尿病のリスクを高めている可能性あり。
②米国のハーバード大学関連病院の研究チームは、人工甘味料がリンパ腫や白血病のリスクを増大させる可能性があると発表。

・塩分過多から逃れられない日本の食
 忙しい日本のビジネスパーソンは外食や中食になりがちで、するとどうしても塩分摂取量が多くなってしまう。
 ナトリウムを排泄してくれるカリウムは野菜や海藻に含まれる。
 ハムやソーセージなどの肉の加工食品は、意外に塩分量が多いので注意。

・油の質に気をつけていますか?
 トランス脂肪酸は、原料は植物油だが、水素添加という処理を加えることで常温で固まるようにしたもの。代表食材はマーガリン。
 欧米では早くからトランス脂肪酸の危険性が指摘され、規制が行われてきた。米国ではトランス脂肪酸が肥満や心臓病に関係するとして、2018年までに全面使用禁止にすることを発表している。
 しかし日本では、加工食品やパン、お菓子、ドレッシングやマヨネーズ、コーヒーフレッシュなどに使われ続けている。食品表示に「植物油脂」「ショートニング」「マーガリン」と書かれたものは、トランス脂肪酸と思って避けた方がよい。
 ファストフードや中食の揚げ油も、トランス脂肪酸が含まれているケースがある。一般的なサラダ油でも、高温調理を繰り返しているとトランス脂肪酸が発生すると言われている。
 外食・中食の揚げ物でもう一つ心配になるのが油の酸化だ。油は高温で調理をし、さらに調理してから時間が経てば経つほど酸化は進む。
 酸化した油をとると、体内で活性酸素が発生し、老化や病気の原因にもなり得る。酸化した油は、それを食べた人の体内の脂肪酸も酸化させてしまう。
 並行して抗酸化栄養素(ビタミンA・C・E)の摂取も心がけよう。ビタミンAは緑黄色野菜から。ビタミンEはアーモンドやクルミから。

・糖質制限中はマグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)不足に注意
 マグネシウムとカルシウムはセットで働く“ブラザーイオン”であり、Mg:Ca=1:2が理想的な比率である。
 乳製品にはCaが多く含まれるが、Mgは少ない。両方含むのが魚介や大豆製品である。
 亜鉛はインスリンの構成成分である。アルコールの分解とも関わっている。
 肉ばかり食べても糖質制限はできるが、ミネラルの摂取に関しては魚介類や大豆製品に軍配が上がる。

・日本人は糖質依存症
 糖質を取り過ぎている人は、単に糖質が好きというより、糖質依存状態になっている。つまり、仕事や人間関係のストレス解消のはけ口として、食べるという行為で心のバランスを保っている。
 そのような人が糖質制限をしたらどうなるか。
 確かに体重は落ちるが、それまでのストレス解消の手立てを失い、今度は「心の栄養不足」になってしまうかもしれない。その結果、「糖質に代わる何か」に依存してしまう。
 どんなに理屈で正しいとしても、それがストレスになるようでは本末転倒だ。自分なりの新たなストレス解消法を見つけることも大切だ。
 中でも、筋肉を維持するような趣味がお勧めだ。筋肉というのは、糖の貯金箱のようなものである。ある程度筋肉があれば、糖質を摂取しても血糖は貯金箱に貯まりやすく脂肪に変わりにくいし、代謝がアップして糖新生がうまくいく。

・“ばっかり食べ”はアレルギーを作る可能性?
 毎日食べているもの、好物でよく食べるものほど、実はアレルギーの原因食材(アレルゲン)になりやすい。
 一説によると、ひとつの食材をとったら2日は開けるようにするとアレルギーのリスクを減らせるといわれている。
 仮によく食べる食品がアレルゲンになってしまった場合は、その食材を3ヶ月くらいに断てばまた食べられるようになることが多い。

この考え方は、現在は否定されています

<参考>(「アレルギーi」より)
Q. 同じ食物を続けて食べるとアレルギーを起こしやすいのでしょうか?
A. 同じものを続けて食べたからといって、その食物に対してアレルギーを起こしやすくなるということはありません。以前は、「同じ食物ばかり続けて食べるとその食物のアレルギーになりやすい」という考え方があり、「回転食」といって同じ食物を続けて食べないようにする指導が行われていたことがありました。しかし、今ではこのような考え方に根拠がないことがわかっています。


・肉食だけでは不足する栄養素
(オメガ3)魚の脂に多いEPA、DHAなど
(ビタミンD)魚からしか摂れない。カジキマグロ、サケ、身欠きニシン、サンマ、ウナギ、ヒラメ、イワシの丸干しなどの魚に豊富に含まれる(他には干しシイタケやキクラゲ)。

・大豆製品はミネラルバランスがよい
 大豆食品はCaとMg、Kがバランスよく含まれている。
 また、脳の神経伝達物質を作るレシチンという脂質も含まれている。

・「卵は1日1個まで」は迷信
 かつては「卵は1日1個まで」と言われていたことがあった。卵に豊富なコレステロールを摂り過ぎると動脈硬化のリスクを高めるとして悪者扱いされていた。
 しかし実は、コレステロールは食事を通して得られるだけでなく、私たちの体内でも作られており、食事で摂り過ぎた場合は体内で作る量を減らすなどして調整する仕組みが備わっている。そのため、「日本人の食事摂取基準2015年版」では、食事によるコレステロール摂取量の上限値は撤廃されている。

→ 「ゲンキの時間」(2019.5.12)「イチから知ろう!脂質異常症〜コレステロール別対策法」では、「卵(特に卵黄)は2日に1こまでにしてください」と専門医が解説していました・・・?
 どっちがホントなんだろう・・・検索してみると「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」(日本動脈硬化学会)には「肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす」とありました。


・糖質制限をしていると便秘がち
 食物線維の摂取量が少なくなるため。
 野菜摂取の適量は、満腹の状態を10とすると、その半分を食物線維で満たすイメージ。
 野菜意外に食物線維が豊富なものにはキノコ類、海藻類、こんにゃく、おからなど。

・糖質制限中の脂質の摂り方
 脂質は血糖値を上げないため、制限の対象ではない。むしろ、糖質に変わるエネルギー源として積極的に摂取すべきである。
 ただし、「どんな油をとるか」が問題である。
 脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる;
(飽和脂肪酸)肉の脂肪や乳製品に多く含まれる(肉、バター、ココナッツオイルなど)。常温で固体。動脈硬化の原因になる。
(不飽和脂肪酸)魚や植物に多く含まれる(オリーブオイル、ベニバナ油、亜麻仁油、魚油など)。常温で液体。さらに多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸に分かれる。
→ 多価不飽和脂肪酸:
  オメガ3:α-リノレン酸、エゴマ油、亜麻仁油、EPA/DHA
  オメガ6:リノール酸、サラダ油、ベニバナ油
 オメガ3とオメガ6は正反対の働きをする。オメガ6が過剰になると炎症が促進されてアレルギー症状につながりやすい。
→ 一価不飽和脂肪酸
  オメガ9:オレイン酸、オリーブオイル

・オレイン酸(オメガ9脂肪酸)
 一価不飽和脂肪酸-オメガ9脂肪酸。
 腸をなめらかにしてぜん動運動を高め、便秘の予防や改善をしたり、抗酸化作用やほかの脂肪酸に比べて酸化しにくいという特徴がある。
 このオレイン酸を多く含むのがオリーブ、アーモンドなどの食品の他、市販の液体の油ではオリーブ油となる。

・EPA/DHA(オメガ3脂肪酸)
 オメガ脂肪酸にはα-リノレン酸、EPA/DHAがあり、α-リノレン酸は体内でEPA/DHAへ変換される。
 α-リノレン酸を多く含む食品がクルミであり、亜麻仁油、えごま(シソ)油である。
 オメガ3脂肪酸はがんやアレルギーなどの現代病を予防する。

・リノール酸(オメガ6脂肪酸)
 オメガ6脂肪酸の代表格がリノール酸でサラダ油などの植物油の多くがリノール酸を多く含む。
 リノール酸は必須脂肪酸ではあるが、非常に酸化されやすいのが特徴で、体内で過酸化脂質を生じさせ、がんの罹患率が高まることが指摘されている。リノール酸から合成されるアラキドン酸はアレルギー症状を進めるので、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症などを引き起こす。

・トランス脂肪酸
 常温で固体(人工的な油)。マーガリン(バターの代用)、ショートニング(ラードの代用品)にトランス脂肪酸が多く含まれる。世界中で使用を禁止しているが、日本は禁止していない。

・人類はその進化の大半を「糖質制限」で過ごしてきた。
 稲作以前の狩猟採集時代は炭水化物の乏しい「糖質制限」時代であり、700万年中699万年を人類は糖質制限で過ごしてきた。なので、糖質過剰の現代の食生活では体調を崩してもおかしくない。工夫が必要であり、その提案の一つが糖質制限である。

・糖質制限ダイエット ≠ 低インスリンダイエット
(糖質制限)血糖値を上げる糖質の摂取量を制限する
(低インスリン)血糖値を緩やかに上げる糖質を選んで食べるというアプローチ
 インスリンは別名「肥満ホルモン」といわれるように、血糖をエネルギーとして使い切れない場合、脂肪に変えて蓄える。そのため、かつてGI(Glycemic Index、グリセミック・インデックス、食後の血糖値の上昇度)の低い食品を選んで江合えっと使用という「低インスリンダイエット」が話題になった。
 すでに糖尿病を発症している人には無意味である。GI値の高低にかかわらず(例:玄米であっても精白米であっても)、1gの糖質は血糖値を3mg/dl上昇させる。
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アトピー性皮膚炎のスキンケア指導のポイント(佐々木りか子Dr.)

2019年03月09日 16時23分30秒 | アトピー性皮膚炎
 当院では乳児アトピー性皮膚炎に対して積極的治療を行っています。
 その基礎は「スキンケア」。
 最近発行された小児科系医学雑誌にアトピー性皮膚炎の特集を見つけたので、知識をアップデートすべく早速購入して読んでみました。

「小児科」2019年2月号(Vol.60 No.2)特集「クリニックで診る小児アトピー性皮膚炎のプライマリ・ケア」より
2. スキンケア指導のポイント(佐々木りか子Dr.)

 保湿剤について囲皮と通りのことが記述されており、あまり目新しい記述はありませんでした。
 特徴と言えば、紫外線対策も項目に入れているところでしょうか。

<メモ>
・スキンケアは外用薬を使用しないで皮膚を手入れすることである。アトピー性皮膚炎にとっては、スキンケアは治療の補助というよりその一端を担う重要な方法といえる。スキンケアは通常、①清潔、②保湿、③紫外線防御の3つに大別される。

・ベビー用スキンケア製品は、弱酸性、無香料、無着色、アルコールフリー、パラベンフリー、無添加など、不必要な成分を可能な限り除いた設計になっている。

・石けんとは、植物油(パーム油、ヤシ油、大豆油など)や動物油(牛脂、豚脂など)を原料とし、それらを苛性ソーダで鹸化したもので、脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩の総称である。したがって、石けんという化合物はアルカリ性である。石けんを使用した後の皮膚には、水道水中の金属イオンと脂肪酸が結合した、金属石けん(石けんカス)が残留する。

・皮膚の表面のpHが弱酸性であることの意義;
1.角層のバリア機能や水分保持機能の維持
2.皮膚の病原菌を増加させない(正常細菌叢の維持)

・ベビー用洗浄剤にはアルカリ性、中性、弱酸性の製品がある。市場に出ているベビー用ボディーシャンプーの半数は石けんを主成分としている。アルカリ性や中性の製品は、泡立ちがよくしつこい皮脂汚れには洗浄力を発揮するが、皮脂を取り過ぎる点や皮膚への刺激性があることを考えると、やはり乳幼児には弱酸性の洗浄剤を選択するのがよい。

※ 弱酸性のベビー用ボディーシャンプーを検索してみました;
キューピー 全身ベビーソープ(泡タイプ) ポンプ400mL 560円
キュレル 泡ボディウォッシュ ポンプ 480ml 1250円
ママ&キッズ ベビー全身シャンプー フレイチェ 460ml 1512円
ピジョン 全身泡ソープ しっとり 本体 500ml 980円(?)
・あわぴよ 全身泡シャンプー 本体500ml 579円


・正しい洗い方;弱酸性の洗浄剤をよく泡立ててから皮膚におき、手でそっと皮膚表面を撫でるように洗う。戸外遊びの機会が増える1歳以降は手だけでは汚れが落としきれない場合があるので、柔らかい綿タオルを用いてそっと洗う。

・保湿の三要素と保湿剤
1.天然保湿因子:NMF(アミノ酸、尿素、乳酸、塩基類)→ ヘパリン類似物質(NMFの一種であるヒアルロン酸に類似)
2.角質細胞間脂質:セラミド、コレステロール → セラミド含有保湿剤(市販) 
3.皮脂膜:トリグリセリド、スクワレン → 白色ワセリン

※ NMF(natural moisturizing factor)は、角化細胞(ケラチノサイト)が分化する過程でフィラグリンなどのたんぱく質から作り出される。
※ 角質細胞間脂質:角化細胞が分化する過程で作られ、スフィンゴ脂質(セラミドなど)、コレステロール、コレステロール・エステル、遊離脂肪酸などで構成される。

・サンスクリーン剤は、午前10時から午後2時くらいまでの、紫外線照射量が多い時間帯に、衣類から出ている部位に補助方法として使用する。SPF(sun protection factor)は15-20くらいで十分で、取れたら塗り替えることが大切である。発汗量の多い乳幼児は2時間以上は持たないと考えた方がよい。

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