小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

HPVワクチン接種は「性行為デビュー」前がベスト

2021年07月28日 07時33分57秒 | 予防接種
と、はっきり言えないところが日本の問題の根本ではないかと以前から思っていました。
日本の性教育には「性行為を教えてはならない」というルールがあるそうです。当然、性行為に伴う性感染症が理解できるはずがありません。

このタブーを変えて解決しなければ、何度もトラブルを繰り返すでしょう。
だって「痛い注射」を「意味がわからないけどみんながするからしておこう」というモチベーションでは痛みに耐えられない、子どもにとって迷惑以外何物でもないと思います。

イギリスではHPVワクチンについて、「性行為感染症に伴うガンを予防するワクチン」としっかり本人達(子どもたち)に理解してもらい、承諾を得て接種していると聞いています。
このような方法で、接種率8割を維持し、日本のような副反応騒ぎは発生していません。

性感染症ですから当然、男性にも無縁ではありません。
世界中を見渡すと、男性への接種を推奨している国もあります。
日本では議論の話題にもなりませんが。

この辺を扱った、最近目に留まった記事を紹介します;

子宮頸がんだけじゃない! やっかいな病気をもたらすHPV…1回の性行為でも感染、ワクチン接種は「デビュー」前がベスト
2021年7月22日:読売新聞)より抜粋;

 13歳の女子中学生Uさんは、母親とともに来院した。Uさんの母親は過去に早期子宮頸がんの治療をされている。それゆえ娘が同じ病気になるリスクが減るなら、子宮頸がんのワクチンを接種させたいと考えていた。しかしその副反応のことが心配で2人で相談にきたのだった。
 小さい頃から時々受診していたUさんは、すっかり大人びて受け答えもきちんとできる女性になっていた。Uさんにはワクチン接種の意義と副反応について説明し、不安なことはないか尋ねた。Uさんはすでに母親と話し合っていたようで、接種したいとはっきりと申し出てくれた。
◆ 肛門や外陰部などのがんにも関与
 子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが強く関与していて、このウイルスは他にも中咽頭・咽頭がんや肛門がん、外陰部のがん、さらに 尖圭せんけい コンジローマ(ウイルス性いぼ)など治療に苦慮する疾患にも関わる。
 HPVはとてもたくさん種類があるのだが、がんを発症するウイルスはそのうちの一部に限られる。日本で公費で受けられるワクチンは、2種類のウイルスに対応するものと4種類のウイルスに対応するものがあり、子宮頸がんの60~70%に関わるウイルスの感染を予防する。後者には、尖圭コンジローマに関わるウイルス型も含まれ、可能であればこのワクチンを接種するのが良いと思う。
◆ 公費での接種は高1まで
 ウイルスはたった1回の性行為で感染するので、より多くのウイルス感染を予防するためにはセクシュアルデビュー(初めての性行為)前の接種が望ましい。高校1年生までが公費負担となっている理由はそこにある。
 接種回数は3回必要で筋肉内注射である。その後、筋肉痛になるが、3日ほどで軽快する。通常、1回目の1か月後あるいは2か月後に2回目、1回目の6か月後に3回目を接種する。もう少し接種間隔を狭めることができるが、最短で1回目から3回目まで4か月強かかるので、高校1年の11月までに接種を開始してほしい。
 子宮頸がんワクチン接種を受けるには、市区町村の役所・保健所に連絡すると、定期接種の用紙を自宅に郵送してくれる。現在は積極的勧奨が中止されているため、他の定期接種と違い、自分で請求しないと送られてこない。
◆ 自費なら9種類対応のワクチンも
 実は世界ではすでに使用されている9種類のウイルス型を含むワクチンが、日本でも今年2月に発売された。残念ながら公費対象にならず高額である。発がん性の強いことがわかっている13種類のHPVのうち9種類のウイルス型に対応している。公費時期を逃した方は検討しても良いかもしれない。
 パートナー間で感染を広げないため、また中咽頭がん・陰茎がんなど男性でもがんの危険があることから、海外では男児にも接種されている国がある。日本でも公費補助を今後期待したい。
◆ 重大な副反応はまれ
 子宮頸がんワクチンはその副反応について不安を抱える親御さんも少なくない。子宮頸がんワクチン接種後に入院すべき重い副反応の症状が出た人は、因果関係があるかどうかわからないものや、接種後短期間で回復した症状をふくめて、接種1万人あたり約5人と報告されている。その頻度は他のワクチンに比べ、飛び抜けて多いわけではない。
 ワクチン接種で防げるがんはまだ少ない。個別の事情や考え方はあるが、親御さんはもちろんのこと、中学生になればその意義について理解ができるので、きちんと話し、意思を確認すべきと思う。将来の健康に関わることなので、ステイホームの続く今年は、疑問や不安なども含めて家族でよく話し合ってほしい。(常喜眞理 医師)
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新型コロナクラスターが発生している飲食店の実態

2021年07月28日 06時06分14秒 | 予防接種
昨日(2021.7.27)の東京のPCR陽性者は2848人と過去最高を記録しました。
新型コロナウイルス感染症の勢いが止まりません。

“三密”になりやすい飲食店は流行拡大の度に悪者にされ、
時短や酒類提供中止など規制を受けてきました。
一方で、感染対策をしっかりやっている店が多い中、
数は少ないけど感染対策に手抜きをしている店が足を引っ張っているという情報もチラホラ。
しかしその全豹がなかなか見えてきません。

今回、厚労省のHPにようやくその情報が開示されました。
読んでみると、やはり感染対策に手抜きをしている店でのクラスター発生が多いことが判明しました。
クラスター発生店舗は、クラスター非発生店舗の半分しか感染対策を守っていないのです。

私が驚いたのは、マスク着用の不徹底さ。
クラスター発生店舗では、
「飲食時以外はマスク着用を客に促している」のが33%、
「スタッフは常にマスクを着用して接客している」のが50%、
つまり、客もスタッフも半分以上マスクをしていない現状があぶり出されたのです。
これでは責められてもしかたがありませんね。

これらの情報を根拠に、不十分な感染対策を指摘された店舗は見直していただきたい。
チェックリストを作りより安全な環境をつくることで、飲食店を再開することに結びつけていけそうです。

クラスター発生の飲食店と発生していない飲食店、違いはどこに?/厚労省アドバイザリーボード
 ※ 下線は私が引きました。
  7月14日開催の第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、飲食店における国推奨の感染対策チェックリストの遵守状況とクラスター発生との関連についての調査結果が公表された。感染対策の遵守率はクラスター発生店で低く、個別の感染対策としては、アクリル板の設置や他グループと1m以上の距離をとること、トイレ等への消毒設備の設置のほか、就業時の検温などスタッフ側の対応もクラスター発生防止との関連性が高いと考えられた。

[調査概要]
 2020年10月~2021年5月に国内でクラスター(※1)の発生した12施設に対し、有症者・接触・飛沫・エアロゾル感染対策を中心として、計18問(※3)の質問アンケート調査を実施。
※1:クラスターは、上記期間中に8人以上の感染者が生じた施設とする。
※3:有症者対策3項目、接触感染対策6項目、飛沫感染対策5項目、エアロゾル感染対策4項目の計18項目

[クラスターの有無における感染対策の遵守率]
・18項目のうち、対策を行っていると答えた割合(感染対策遵守率)は、クラスター発生群44.4%に対し、対照群では85%であった(p<0.001)。

[18項目のうちクラスターとの関連性が考えられた感染対策]
・トイレなど公共の場に消毒設備を設置:クラスター発生群(該当対策を行っていた施設の割合)50% vs. 対照群100%(p<0.001)
・他のグループとの距離を1メートル以上とっている:18.2% vs.94.7%(p<0.001)
・他のグループとの間にアクリル板が設置されている:9.1% vs.89.5%(p<0.001)
・スタッフは就業時に体温測定と体調確認をしている:54.5% vs.100%(p=0.001)
飲食時以外はマスクを着用するよう客に促している:33.3% vs.89.5%(p=0.001)
・客が入れ替わるタイミングでテーブル等を消毒している:60% vs.100%(p=0.003)
・スタッフは客が触れた物を扱ったあと手指衛生を行っている:60% vs.100%(p=0.003)
スタッフは常にマスクを着用して接客している:50% vs.94.7%(p=0.004)
・カラオケを提供していない:16.7% vs.68.4%(p=0.005)
・窓やドアを開けて定期的に換気している:60% vs.94.7%(p=0.019)
・スタッフに症状を認めるときは検査を受けさせている/保健所の指示に従っている/休ませている:40% vs.90.9%(p=0.040)
・トイレにペーパータオルを設置している:80% vs.100%(p=0.043)

<参考>
□ 第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード「資料5 飲食店における感染対策チェックリストの遵守状況とクラスター発生との関連についての調査
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新型コロナ感染対策による「手荒れ」「マスク皮膚炎」、対策のポイントは「保湿」

2021年07月23日 07時16分50秒 | 予防接種
先日、日本小児皮膚科学会があり、WEB参加しました。
最近の学会は現地開催とWEB配信、終了後のオンデマンド配信が主流です。
その中で勉強になったレクチャーのメモを残しておきます。

「小児科医と皮膚科医が知っておきたい学校保健の皮膚科的課題」(島田辰彦Dr.)から。


■ 新型コロナウイルス感染症時代の手荒れ・マスク皮膚炎

(手洗い)
手の拭き方:
・乾いたハンドタオルなどで丁寧に指間や指のしわの水分もふき取る
・硬い使い捨て紙タオルは一度クシャクシャにもんで柔らかくしてから使う
保湿剤の使い方:
・うすい膜を作るくらいの気持ちでたっぷりした量
・しわに沿ってゆっくりと塗り広げるよう

(マスク)
マスクによる皮膚トラブル:モイスチャーバランスは水分と保湿成分のバランスで成り立っている。マスクにより水分が増えるので、その分保湿も追加する必要があるが、それが不十分だとトラブル発生。
刺激性皮膚炎対策;
マスクをする前にしっかりと保湿
・不必要なときにはマスクをこまめに外す
・内側に綿ガーゼをマスクより広め1枚はさむ
・ゴム紐の刺激(耳裏)にも注意
・汗をかいたら丁寧にふき取る

新型コロナ時代の感染対策の弊害である手荒れ・マスク皮膚炎対策も「保湿に尽きる」ことを知りました。


紫外線対策
日本の鹿児島はエジプトのサハラ砂漠と緯度が同じで紫外線が強い。
太陽光線は紫外線6%、可視光線61%、赤外線33%から構成される。
「紫外線が降りそそいで暑い」という表現は間違い、暑いのは赤外線で、紫外線は眩しいだけ。
紫外線とは、可視光線より波長の短い、目に見えない光線、波長の長い方からA,B,Cに分けられる。
紫外線Cは完全に、紫外線Bはほとんどがオゾン層で吸収されて地上に届かない。よって地上で問題になるのは紫外線Aと一部の紫外線B。

紫外線の功罪
(功)
・ビタミンD生成
・光線療法(乾癬、アトピー性皮膚炎など)
(罪)
・急性:日焼け(サンバーン、サンタン)、紫外線角膜炎(雪目)、免疫機能低下
・慢性:しわ、しみ、日光黒子、良性腫瘍、前がん症(日光角化症、悪性黒子)、皮膚癌、白内障、翼状片

「ビタミンD合成に必要な日光浴は何分?」
という質問に答えはない(地域・季節・時刻・天候・服装・皮膚色等で異なるため)ため、
不足しがちな妊婦・授乳中の女性は食物(魚、きのこ類)からの摂取を増やすべき。
ビタミンD生成に必要な日光曝露時間は日焼けするより短い。

日焼け止めクリームは、十分な量を塗らないと効果が期待できない。
PAは当初+、++、+++までの設定だったが、世界的基準にする際に++++が追加された。つまり++++は白色人種用なので日本人には必要ない。
学校生活ではSPF15以上、PA++〜+++で十分。


<参考>
□ 「紫外線環境保健マニュアル2020」(環境省)2020年
□ 「学校における水泳プールの保健衛生管理」(日本学校保健会)2018年
□ 「学校生活におけるアトピー性皮膚炎Q&A」(日本学校保健会)現在改訂中
□ 「児童生徒等の健康診断マニュアル」(日本学校保健会)2017年
□ 「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」(日本皮膚科学会)2017年
□ 「学校で必要な皮膚トラブルの知識」(マルホ)養護教諭向けセミナー動画
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新型コロナの予防・治療にイベルメクチン!?

2021年07月10日 17時11分12秒 | 予防接種
その中で、興味深い事実を知りました。

ご存知の通り、2021年5月頃はインドで新型コロナが大流行して「1日感染者数40万人」と連日報道されていました。
しかし最近、そのようなニュースが聞かれなくなりました。

この番組の中で、インドの感染者減少の一因が「イベルメクチン」と紹介されました。

イベルメクチンは、日本人科学者の大村智博士が開発した抗寄生虫薬。
アフリカ中心に数十億人に投与され多くの人々を失明から救い、
その功績をたたえて大村博士はノーベル賞(2015年ノーベル生理学医学賞)を受賞しました。

当初から新型コロナ治療薬の可能性を指摘されてきた薬の一つでもあります。
それが、インドの大流行を制圧した!?

もう40年も前の薬であり、特許権は消失しています。
深刻な副作用の報告もなく安全な薬。
かつ内服薬なので、インドでは街の薬局で安価で購入可能。
しかし現在は品不足でなかなか手に入らないそうです。

それなら日本でも・・・と誰でも考えますよね。
実は既に日本で「駆虫薬」(寄生虫に対する薬)として販売されています。
しかし新型コロナウイルス感染症には認可されていません(使用できないわけでもないらしいのですが)。
必要性を訴える声はあるものの、なかなか一般的に使える状況にはなりません。

このもどかしさ、何が原因なのでしょう。

こちらの記事によると、新薬を高く売って収益を上げたいメルク社が圧力をかけているのではないかという“大人の事情”を推測しています。

やれやれ・・・。

予防に新型コロナワクチン+予防&治療にイベルメクチンの両輪で攻めれば、
新型コロナウイルス流行は制圧できるのでは?
という期待が否が応でも高まります。

・世界でも有効報告はいくつもあるが大規模な調査はされていない
・日本では興和が治験を申請したところ、イギリスでも治験開始
・「奇跡の治療薬」と賞賛される一方で、WHOは慎重姿勢
・インド以外でもインドネシア、マレーシア、フィリピンで使用されている
と紹介しています。

う〜ん、残念ながらすぐに使うことはできなそう。
効くのか効かないのか・・・早く治験の結果を知りたいですね。

こちらの記事では医師(讃井將満教授、自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長・ 麻酔科科長・集中治療部部長)が冷静かつ客観的に記述しています(一部抜粋)。

 寄生虫疾患の薬として承認されているイベルメクチンについては、新型コロナ感染症への有効性を示す研究報告が複数あり、非常に注目されています(一方で、否定的な論文もあります)。ただし、これらの研究報告はエビデンスレベル(研究の質)としては低い観察研究が多く、大規模なRCTによって有効性を示す結果はまだ出ていません。したがって、科学的・客観的に考えれば、現時点でイベルメクチンが標準治療にならず、保険診療としても承認されないのは妥当だと思います。
 実際、臨床の現場でイベルメクチンを使用している医師は現在も少数派のようです。厚労省ではかなり早い時期(昨年5月)にイベルメクチンの適応外使用を認めたので、診療報酬を「切られる」心配がないにもかかわらずです。極論すると、医師の中には、目の前の患者を救うためにいい意味でも悪い意味でもあらゆる方法を使いたいタイプと、あくまで科学的データで得られた標準治療に則って最善の治療を目指すタイプがいるのですが、やはり多くの医師はエビデンスレベルを注視しているのだと思います。

なるほど、なるほど。腑に落ちました。
「有効な薬、それも内服薬」と聞くと喉から手が出そうになりますが・・・
もう少し時間が必要ですね。

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