小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アンガーマネージメント〜仏教の視点〜

2024年12月12日 16時44分07秒 | 予防接種
“アンガーマネージメント”・・・最近よく耳にする言葉です。
私自身、怒りっぽい性格なので関心があります。
今までにもいろいろ、見たり聞いたり読んだりしてきました。

「相手に期待しなければ腹が立たない」
という定番の対応から、
「相手も自分もいつかは死ぬ、と考えれば“まあいいか”と思える」
という究極の捉え方もありました。

坐禅を組んで雑念を払う仏教にも興味があります。
坐禅中も雑念は浮かんでは消えますが、
その極意は「雑念を手放すこと」と昔、
NHKのバラエティ番組“ためしてガッテン“で僧侶がコメントしていました。

そう教えられても、なかなかできませんでした。

僧侶が語るアンガーマネージメントの記事が目に留まりましたので、
紹介します。

<ポイント>
・ブッダは人間が陥りやすいあしき感情として「(とん: むさぼり、限りない欲望)」「(じん: 怒り、妬み、恨みなど)」「(ち: 愚かさ)」の3つを挙げており、これらは「三毒」と呼ばれ、人間が避けるべきものとして説いている。「貪・瞋・痴」はまさに毒であり、私たち自身をむしばみ、身を滅ぼす原因となる。
・貪(欲望)が満たされないときに、瞋(怒り)が生じる。期待が裏切られたときに怒りが生まれる、という点は現代のアンガーマネジメント理論とも一致する。
・人がイライラの火種を抱えてしまうのは『自分に対する執着心』が強すぎるから。自分を大切に思うあまり、『自分が否定される』ことを極端に恐れ、思い通りにいかないときにイライラや怒りが生じるのは、防衛本能の発露である。他人を攻撃することで、大切な自分を守ろうとしている。怒りを防衛感情である。
・仏教が教える怒りへの処方箋は『瞑想』。瞑想とは、心を『無』にしてイライラを抑え込むのではなく、『イライラしている自分を認め、全身で感じる』こと。『今、自分はイライラしている』『このモヤモヤ感は、きっと怒りの感情だ』と、瞑想によって(自身の感情を)客観的に自覚すること。
・怒りやイライラの感情は、抑えつけようとすると反発して大きくなりやすい。しかし、『イライラしている自分』に気づき、『自分は今、イライラし始めている』と認めた瞬間、心を落ち着かせることができる。怒りの感情をコントロールするための有効な方法として、自身の感情に対する「メタ認知」が重要。
・イライラや怒りを鎮めるには、火が燃え上がる前の『種火』のうちに鎮火することが重要である。
・怒りへの対処法として、整理整頓や清掃が効果的である。禅寺には『作務』(整理整頓や清掃)という強力な自己鎮静法がある。作務を徹底して行うことで、心身にたまった怒りや不浄なエネルギーが見事に消えていく。その理由は以下の通り;
1. 全身の筋肉を動かすことで、怒りのエネルギーを物や他人に向けることなく身体外に放出できる。
2. 作務を心の整理整頓や清掃として徹底的に行うことで、心に染みついたモヤモヤや、絡み合った思考が整理されていく。
・怒りを収める呼吸法として「合掌低頭」こそが完璧な型であり、心を整える所作として重要である。合掌とは「両手のひらを顔や胸の前で合わせて拝むこと」、低頭とは「頭を低く下げて礼をすること(お辞儀)」。合掌してお辞儀をしながら深くゆっくり息を吸い込み、そして頭を一番下げた状態で姿勢を保ちながら息をゆっくり吐き出し、次に頭を上げる動作に合わせて、再び深くゆっくり息を吸い込む。アンガーマネジメントの観点からは、合掌低頭をイメージしながらこの呼吸法を2~3回行う。怒っているときは呼吸が速く浅くなりがちだが、この呼吸法を行うことで副交感神経が活性化して体がリラックスし、イライラや怒り(興奮状態)を鎮める効果が期待できる。

・・・仏教的呼吸法「合掌低頭」がマインドフルネスの基本だったのですねえ。


▢ 和尚に学ぶアンガーマネジメントの極意
大浦 裕之(岩手県立中央病院)
2024/12/09:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 筆者は日頃から、アンガーマネジメントに関する記事や文献、書籍などを通じ、怒りの感情をコントロールする様々な方法を学ぶよう努めています。その中でも、特に多くの学びを得ているのが、愛知県小牧市にある大叢山福厳寺の住職の大愚元勝和尚の教えです。
 大愚和尚は、YouTubeで「大愚和尚の一問一答/Osho Taigu’s Heart of Buddha」というチャンネルを運営されており、そのチャンネル登録者数は2024年11月末時点で69.3万人、投稿動画数は1064本を数えるほどの人気を誇ります。既にご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
 大愚和尚は、仏教の開祖の教えを、禅僧として一般の人々に向けて様々な媒体を通じて発信されています。・・・

▶ 人間が避けるべき「三毒」
 大愚和尚のYouTube動画では、怒りの感情をコントロールする方法について説かれた内容が数多くあります。その中でも、「知らず知らずのうちに身を滅ぼす『悪しき感情』とは何か?」という動画では、人間が抱きやすい悪感情と、その向き合い方について詳しく解説されています。
 大愚和尚によれば、ブッダは人間が陥りやすいあしき感情として、「(とん: むさぼり、限りない欲望)」「(じん: 怒り、妬み、恨みなど)」「(ち: 愚かさ)」の3つを挙げています。これらは「三毒」と呼ばれ、人間が避けるべきものとして説かれています。この貪・瞋・痴」はまさに毒であり、私たち自身をむしばみ、身を滅ぼす原因となるとされています。 
 特に印象的だったのは、貪(欲望)が満たされないときに、瞋(怒り)が生じるという指摘です。貪は「〜すべき」や「過度な期待」とも言い換えることができますが、これらの期待が裏切られたときに怒りが生まれる、という点は現代のアンガーマネジメント理論とも一致しています。ブッダの時代の約2600年前の人間も、現代の私たちと同様の課題を抱えていたこと、そしてブッダが既にアンガーマネジメントに通じる教えを説いていたことに驚きを覚えます。
怒りは防衛感情
 大愚和尚は著書の中で、「人がイライラの火種を抱えてしまうのは、『自分に対する執着心』が強すぎるから」と述べています1)。また、「自分を大切に思うあまり、『自分が否定される』ことを極端に恐れ、思い通りにいかないときにイライラや怒りが生じるのは、防衛本能の発露です。他人を攻撃することで、大切な自分を守ろうとしているのです」と説明し、怒りを防衛感情として位置付けています1)。なお、本連載第5回「脳科学的に見た『怒り』の発生メカニズム」では、怒りの本質について、脳科学の視点から解説しています。ご参照ください。

▶ 感情をメタ認知することが重要
 大愚和尚は、「では、どうすればイライラの種火を消すことができるのでしょうか。仏教が教えるその処方箋は『瞑想です」と述べています1)。ただし、ここで言う瞑想とは、坐禅を組んだり、心を静めて仏に祈ることではありません。大愚和尚は、「瞑想とは、心を『無』にしてイライラを抑え込むのではなく、『イライラしている自分を認め、全身で感じる』ことを指す」としています。「『今、自分はイライラしている』『このモヤモヤ感は、きっと怒りの感情だ』と、瞑想によって(自身の感情を)客観的に自覚することができる」と和尚は説明しています1)。
 さらに、「怒りやイライラの感情は、抑えつけようとすると反発して大きくなりやすい。しかし、『イライラしている自分』に気づき、『自分は今、イライラし始めている』と認めた瞬間、心を落ち着かせることができる」と述べ1)、怒りの感情をコントロールするための有効な方法として、自身の感情に対する「メタ認知」の重要性を強調しています(「メタ認知」については本連載第12回「怒りのコントロールに必須のスキル──『メタ認知』編」をご参照ください)。このように、仏教においてもメタ認知が重視されている点は注目に値します。

▶ 心の修行の意味
 大愚和尚の動画「一問一答/Osho Taigu’s Heart of Buddha『乱れた感情を整え《心のマスター》になる方法』」では、上述のメタ認知によるアンガーマネジメントについて詳しく解説されています。内容は、負の感情コントロールに悩む20歳代の男性が和尚に心の鍛錬法を相談するもので、アンガーマネジメントのトレーニングについて深く考えさせられる動画です。
 初めてこの動画を見たとき、私は非常に衝撃を受けました。大愚和尚は、なぜ感情のコントロールが難しいのかを、スポーツの技術習得に例えながら、丁寧に分かりやすく解説しています。「心のマスター」になることの難しさ、そして諦めずに努力を続ける重要性を力強く説いています。また、怒りを火に例え、「イライラや怒りを鎮めるには、火が燃え上がる前の『種火』のうちに鎮火することが重要」と述べ、その対処法を火事の初期対応になぞらえています。
 この動画は約30分のものですが、自身の怒りのコントロールに悩んでいる方にはぜひご覧いただきたい内容です。時間がない方は、22:57~26:13の3分16秒分だけでも見ていただければと思います(この部分では、具体的な和尚の「処方箋」が紹介されています)。・・・
 この部分で特に印象に残るのは、大愚和尚の以下の言葉(一部抜粋)です。「皆さんは今の仕事に就くために、これまでどれだけ勉強してきましたか? 生業をなすために、どれだけ時間とお金、エネルギーをかけて努力してきたでしょうか? しかし、自分の心を修めるためにそれ(時間とお金とエネルギー)を使う人はほとんどいません。だからこそ、心が未熟なままなのです」。和尚はこう喝破し、「心の修行は、人生をかけて本気で取り組む価値がある」と力説しています。
 この部分は何度見ても新たな気付きを得られ、自分の生き方を見つめ直すヒントが詰まっています。心の修行に取り組む意義を再確認するきっかけとなるでしょう。

▶ 作務がアンガーマネジメントに
 大愚和尚によれば、怒りへの対処法として、整理整頓や清掃が効果的とされています。和尚は次のように述べています1)。「禅寺には『作務』という強力な自己鎮静法があります。作務とは、整理整頓や清掃のことです。作務を徹底して行うことで、心身にたまった怒りや不浄なエネルギーが見事に消えていきます。整理とは、不要なものを捨てること。整頓とは、物を元の位置に戻すこと。そして清掃とは、新品のような輝きを保ち続けることを指します。ただ漠然と掃除をするのではなく、この意義を意識しながら作務に取り組むのです」。
 では、なぜ作務を行うと怒りが鎮まるのでしょうか。大愚和尚は、その理由として以下の2点を挙げています。
1. 全身の筋肉を動かすことで、怒りのエネルギーを物や他人に向けることなく身体外に放出できる。
2. 作務を心の整理整頓や清掃として徹底的に行うことで、心に染みついたモヤモヤや、絡み合った思考が整理されていく。
 大愚和尚は、「どうしようもなく腹が立ったときやキレそうになったとき、その行き場のないエネルギーを物や相手に向けたり押さえ込んだりするのではなく、徹底的に作務を行うことで、心身の鎮静と浄化に役立てるべき」と推奨しています1)。怒るたびに身の回りがきれいになるのは、まさに一石二鳥と言えるでしょう。・・・

▶ アンガーマネジメント的呼吸法
 大愚和尚は、全国各地で一般の方向けに講習会「大愚道場」を開催しています2)。この大愚道場は、講義を聴くだけではなく、参加者が仏教を体感できるワークショップ形式(体験型授業)で行われます。参加者は他の受講者と共に、瞑想の基本である「呼吸や姿勢に意識を向ける」練習を通じて、それが日常生活にどのような変化をもたらすかを実際に体験します。
 昨年の冬、仙台のある総合病院で行ったハラスメント防止対策研修会の翌日に、偶然にも同地で大愚道場が開催されることを知り・・・参加しました。様々な学びがありましたが、その中でも特にお伝えしたいのが呼吸法です。
 怒りを感じたときの対処法として「深呼吸を数回行う」という方法は広く知られていますが、大愚道場ではその基盤となる呼吸法の重要性について学び、実践的なヒントを得ることができました。皆様も、僧侶が「合掌低頭(がっしょうていず)」を行う場面をご覧になったことがあるかと思います。合掌とは「両手のひらを顔や胸の前で合わせて拝むこと」、低頭とは「頭を低く下げて礼をすること(お辞儀)」を意味します。大愚和尚は、この「合掌低頭」こそが挨拶の完璧な型であり、心を整える所作として重要であると述べています1)。
 合掌低頭における呼吸法についてですが、合掌してお辞儀をしながら深くゆっくり息を吸い込みます。そして、頭を一番下げた状態で姿勢を保ちながら、息をゆっくり吐き出します。次に頭を上げる動作に合わせて、再び深くゆっくり息を吸い込みます。この方法により、普段は無意識に行っている呼吸を意識することができ、「マインドフルネス」の基本を体感できます。
 アンガーマネジメントの観点からは、合掌低頭をイメージしながらこの呼吸法を2~3回行うことが勧められます。怒っているときは呼吸が速く浅くなりがちですが、この呼吸法を行うことで、副交感神経が活性化して体がリラックスし、イライラや怒り(興奮状態)を鎮める効果が期待できます。いわゆる「魔の6秒間」をこの呼吸の間にやり過ごすことができるのです。
 怒りのコントロールには、大愚和尚の教えにあるように、自身の感情を認識し、心を落ち着かせる技術が欠かせません。瞑想や作務、呼吸法といった実践的な方法を通じて心を鍛えることが、日々のストレスを軽減し、心の平穏を保つための鍵となるということでした。
・・・

<参考資料>
1) 大愚元勝:『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社、2020)
2) 大愚道場|ワークショップ形式の仏教講座| 佛心宗 大叢山福厳寺
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喘息診療ガイドライン2024

2024年12月04日 05時56分59秒 | 予防接種
この秋(2024年10月)に「喘息予防・管理ガイドライン2024」が発行されました。
成人喘息を扱った、日本の治療の標準です。

今回初めて「クリニカルクエスチョン」が導入されました。
これは近年のガイドラインに必要とされる形式です。

それを扱った記事を紹介します;

<ポイント>
CQ1.ICSへの追加はLABAとLAMAどちらが有用?
 → ICSへの追加治療としてLABAとLAMAはいずれも同等に推奨される(エビデンスの確実性:B[中])
CQ2.中用量以上のICSでコントロール良好例のステップダウンは?
 → 中用量以上のICSでコントロール良好な場合はICS減量を行うことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])
CQ3.FeNOに基づく管理は有用か?
 → FeNOに基づく管理を行うことが提案される(エビデンスの確実性:B[中])
CQ4.喘息の長期管理薬としてのマクロライドの位置付けは?
 → マクロライド系抗菌薬を長期管理の目的で投与しないことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])

略称が多くて一般の方にはよくわからないと思われますが…

CQ1は、ICS(吸入ステロイド薬)への追加はLABA(長期間作用型β刺激薬)とLAMA(長時間作用型抗コリン薬)のどちらがよいか、という質問です。β刺激薬は狭くなった気管支を広げる作用があり、抗コリン薬は気管支を狭くしないイメージです。
成人領域ではICS+LABA+LAMAの“トリプル吸入剤”が認可されたのでこのCQが取りあげられました。
小児科領域では抗コリン薬はほとんど使用されておらず、β刺激剤中心ですが、LAMAも同等の効果があるとすると、将来臨床応用されてくる可能性がありますね。

CQ2は、十分量の吸入ステロイド薬を長期間投与すると、副作用が発生するという報告が近年相次いだため取りあげられた質問です。
結論として、漫然と投与を続けるのではなく、減量が可能なら必要最低量で維持することが推奨される内容です。ただ「減量が提案される」としつつも、推奨度Cと一歩腰が引けていますね。
私は小児に対して低用量〜中用量で管理し、年1回の呼吸機能検査で病態を評価し、継続・減量を検討しています。中用量+LTRAでもコントロール不良患者は総合病院小児科へ紹介していますが、ごく稀です。

CQ3はFeNO(呼気一酸化窒素濃度)を用いた喘息管理の是非を問う内容です。
喘息患者では症状がないときも気管支の炎症がくすぶっていますが、FeNOはこの気道炎症の程度を反映するとされています。その数値を評価して管理してよいものかどうか・・・回答は「是」。
私は小児喘息患者でFeNO測定が可能になる小学生以上で年1回、FeNOを評価し、治療に反映させています。目安は20以下は良好、35以上は不良とし、臨床症状と合わせて治療薬の継続・増量・減量をしています。

CQ4は昔流行した抗菌薬(=抗生物質)の併用が有用かどうか、再確認する内容です。
マクロライド系抗菌薬は少量でも気道クリアランス効果があるとされ、併用された時代がありました。
しかし真実は、その頃標準治療であったテオフィリン系薬剤の血中濃度を上げる作用があるため、その薬効が強くなったという背景が判明しました。
今回の検討でも有意な効果は証明できず、この治療法は過去のものとなりました。

…以上、自分の日常診療を振り返るよい機会になったCQですね。


▢ 喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会
2024/12/04:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。

▶ ICSへの追加はLABAとLAMAどちらが有用?
 「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。
 喘息の治療において、ICSの使用が基本となるが、ICS単剤で良好なコントロールが得られない場合も少なくない。JGL2024の治療ステップ2では、LABA、LAMA、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれか1剤をICSへ追加することが示されている1)。そのなかでも、一般的にICSへのLABAの追加が行われている。しかし、近年トリプル療法の有用性の報告、ICSとLAMAの併用による相乗効果の可能性の報告などから、LAMA追加が注目されており、LABAとLAMAの違いが話題となることがある。
 そこで、ICS単剤でコントロール不十分な18歳以上の喘息患者を対象に、ICSへ追加する薬剤としてLABAとLAMAを比較した無作為化比較試験(RCT)について、既報のシステマティックレビュー(SR)2)のアップデートレビュー(UR)を実施した。
 8試験の解析の結果、呼吸機能(PEF[ピークフロー]、トラフFEV1[1秒量] )についてはLAMAがLABAと比べて有意な改善を認め、QOL(Asthma Quality of Life Questionnaire[AQLQ])についてはLABAがLAMAと比べて有意な改善を認めたが、いずれも臨床的に意義のある差(MCID)には達しなかった。また、喘息コントロール、増悪、有害事象についてはLABAとLAMAに有意差はなく、同等であった。
 以上から、「ICSへの追加治療としてLABAとLAMAはいずれも同等に推奨される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。ただし、谷村氏は「ICS/LAMA合剤は上市されていないため、アドヒアランス・吸入手技向上の観点からはICS/LABAが優先されうると考える。個別の症状への効果などの観点から、LABAとLAMAを使い分けることについては議論の余地がある」と述べた。

▶ 中用量以上のICSでコントロール良好例のステップダウンは?
 「CQ4:成人喘息患者の長期管理において中用量以上のICSによりコントロール良好な状態が12週間以上経過した場合にICS減量は推奨されるか?」について、岡田 直樹氏(東海大学医学部 内科学系呼吸器内科学)が解説した。
 高用量のICSの長期使用はステロイド関連有害事象のリスクとなることが知られ、国際的なガイドライン(GINA[Global initiative for asthma]2024)3)では、12週間コントロール良好であれば50~70%の減量が提案されている。しかし、適切なステップダウンの時期や方法、安全性については十分な検討がなされていないのが現状であった。
 そこで、中用量以上のICSで12週間以上コントロール良好な喘息患者を対象に、ICSのステップダウンを検討したRCTについて、既報のSR4)のURを実施した。
 抽出された7文献の解析の結果、ICSのステップダウンは経口ステロイド薬による治療を要する増悪を増加させず、喘息コントロールやQOLへの影響も認められなかった。単一の文献で入院を要する増悪は増加傾向にあったが、イベント数が少なく有意差はみられなかった。一方、重篤な有害事象やステロイド関連有害事象もイベント数が少なく、明らかな減少は認められなかった。
 以上から、「中用量以上のICSでコントロール良好な場合はICS減量を行うことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」という推奨となった1)。岡田氏は、今回の解析はすべての研究の観察期間が1年未満と短く、骨粗鬆症などの長期的なステロイド関連有害事象についての評価がなかったことに触れ、「長期的な高用量ICSの投与により、ステロイド関連有害事象のリスクが増加することも報告されているため、高用量ICSからのステップダウンにより、ステロイド関連有害事象の発現が低下することが期待される」と述べた。

▶ FeNOに基づく管理は有用か?
 「CQ1:成人喘息患者の長期管理において呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)に基づく管理は有用か?」について、鶴巻 寛朗氏(群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。
 FeNOは、喘息におけるタイプ2炎症の評価に有用であることが報告されている。FeNOは、未治療の喘息患者ではICSの効果予測因子であり、治療中の喘息患者では経年的な肺機能の低下や気道可逆性の低下、増悪の予測における有用性が報告されている。しかし、治療中の喘息におけるFeNOに基づく長期管理の有用性に関するエビデンスの集積は十分ではない。
 そこで、臨床症状とFeNO(あるいはFeNOのみ)に基づいた喘息治療を実施したRCTについて、既報のSR5)のURを実施した。
 対象となった文献は13件であった。解析の結果、FeNOに基づいた喘息管理は1回以上の増悪を経験した患者数、52週当たりの増悪回数を有意に低下させた。しかし、経口ステロイド薬を要する増悪や入院を要する増悪については有意差がみられず、呼吸機能の改善も得られなかった。症状やQOLについても有意差はみられなかった。ICSの投与量については、減少傾向にはあったが、有意差はみられなかった。
 以上から、「FeNOに基づく管理を行うことが提案される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。結語として、鶴巻氏は「FeNOに基づく長期管理は、増悪を起こす喘息患者には有用となる可能性があると考えられる」と述べた。

▶ 喘息の長期管理薬としてのマクロライドの位置付けは?
 「CQ5:成人喘息患者の長期管理においてマクロライド系抗菌薬の投与は有用か?」について、大西 広志氏(高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。
 小児を含む喘息患者に対するマクロライド系抗菌薬の持続投与は、重度の増悪を減らし、症状を軽減することが、過去のSRおよびメタ解析によって報告されている6)。しかし、成人喘息に限った解析は報告されていない。
 そこで、既報のSR6)から小児を対象とした研究や英語以外の文献などを除外し、成人喘息患者の長期管理におけるマクロライド系抗菌薬の有用性について検討した適格なRCTを抽出した。
 採用された17文献の解析の結果、マクロライド系抗菌薬は、入院を要する増悪や重度の増悪を減少させず、呼吸機能も改善しなかった。Asthma Control Test(ACT)については、アジスロマイシン群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。同様にAsthma Control Questionnaire(ACQ)、AQLQもマクロライド系抗菌薬群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。
 以上から、本解析の結論は「マクロライド系抗菌薬の持続投与は、喘息患者に有用な可能性はあるものの、長期管理に用いることを推奨できる十分なエビデンスはない」というものであった。これを踏まえて、JGL2024の推奨は「マクロライド系抗菌薬を長期管理の目的で投与しないことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」となった1)。また、この結果を受けてJGL2024の「図6-5 難治例への対応のための生物学的製剤のフローチャート」における2型炎症の所見に乏しい喘息(Type2 low喘息)から、マクロライド系抗菌薬が削除された。

■参考文献
1)『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成. 喘息予防・管理ガイドライン2024.協和企画;2024.
2)Kew KM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD011438.
3)Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2024. Updated May 2024
4)Crossingham I, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;2:CD011802.
5)Petsky HL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11:CD011439.
6)Undela K, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021;11:CD002997.

(ケアネット 佐藤 亮)
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「直美」が人気上昇中!〜“なおみ”ではなく“ちょくび”と読みます〜

2024年12月02日 06時52分21秒 | 予防接種
“直美”という単語が医療界で話題になっています。
この漢字は“なおみ”ではなく“ちょくび”と読みます。
人物の名前ではありません。

ではどういう意味かというと、
「研修期間を過ぎたら容外科へ進むこと」
という意味です。

30年以上前に医師免許を取得した私にとって、
「美容外科」は皮膚科や形成外科の一部が担うマイナーな診療科でした。
さらに雑誌広告で「包茎を治しましょう」「バストアップを」「しわを取りましょう」
など、なんとなく怪しいイメージも付随していました。

実際に「包茎手術」は金儲けしようと高須クリニックの高須 克弥氏が創作したモノとカミングアウトしています。

しかし現在、メジャーな診療科である内科や外科を選択せず、
マイナーな美容整形を選択する研修医が無視できないほど増加しており、
医療崩壊を招きかねないと問題視されてきています。

第一の理由は、医師の仕事が“ブラック企業”であること。
「働き方改革」でも医師だけ蚊帳の外でしたよね。

私自身、勤務医時代は24時間ポケベルで拘束され、
夜間点滴が漏れただけで呼ばれる総合病院小児科に在籍していて、
身体を壊して開業せざるを得なかった被害者の1人です。

第二の理由は、政府のなりふり構わない“医療費削減“方針のため、
ふつうに真面目に保険診療をしていると赤字になってしまう構造です。
なお、美容外科は自由診療ですから、収入が単純計算で1.5倍になります。

政府の医療界に対する方針は、
巷の働き方改革に逆行し、
1人でやりくりしている開業医に夜間対応を求め、
そうしないと加算が取れないしくみにしています。

開業医の平均年齢は60歳を超えています。
すると病名の一つや二つつく半病人です(私もその1人)。
満身創痍の還暦過ぎの人間に「夜も働け」という方針が、
現在の医療界を崩壊に向けているのです。

こちらを先に改革しないと、
マイナ保険証が普及しても診療する医師がいなくなります。
現場を知らない官僚の方々、再考していただきたい。

この問題を扱った記事を紹介します。

▢ 「保険医の待遇を改善しないと美容医の増加は食い止められない」
2024/11/27:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 ここ数年、初期研修修了後すぐに、美容を目的に自由診療下で医行為を行う美容医療の道に進む「直美(ちょくび)」の医師の増加が話題となっている。一方、既に何らかの専門医資格を有する中堅医師の中にも、美容医療クリニックに転職する人は決して少なくない。今、多くの医師が美容医療の道を志す背景や、保険診療の現場で起きている問題点について、日本美容外科学会(JSAPS)の理事を務める東京慈恵会医科大学形成外科学講座主任教授の宮脇剛司氏に話を聞いた。
・・・
──近年、若手を中心に美容医療の道に進む医師が増えています。この現状をどう捉えていますか。
宮脇 全ての美容医療クリニックにおける採用人数を把握するのは困難なため、正確な数は分かりませんが、ちまたでは毎年500人程度の医師が美容医療の世界に転身していると言われています。このうち、初期研修修了後すぐに美容医療クリニックに就職する、いわゆる「直美(ちょくび)」の医師は年間200人近くに上るとも推算されており、若い医師を中心に、美容医療が医師のキャリアの選択肢の1つとなっているのは間違いありません。
 こうした流れの背景には様々な要因が考えられますが、
(1)コスパ(コストパフォーマンス)とタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する医師が増えたこと、
(2)美容医療市場がここ数年で急拡大し、一大産業になったこと
──の2点が大きいと考えます。かつては、初期研修修了後は大学医局に入って専門医を目指すのが、ほとんどの医師がたどる“王道ルート”でしたしかし拘束時間や給料を考えると、コスパやタイパは決して良いとは言えません。一方、ほとんどの美容医療クリニックでは大学とは比べものにならないほどの給料が保証されており、当直もありません
 「医師たるもの昼夜問わずがむしゃらに働くべきだ」という考えの下で育ってきた我々の世代ですら、医師の働き方改革の影響で、労働時間に対する意識がかなり変わってきています。コスパやタイパを重視する今の20~30歳代の医師が美容医療の道を目指すのは、ある意味当然の流れだと思います。
 美容医療の世界は、コロナ禍以降、大手の美容医療クリニックを中心に施設数が急増し、いまや医師の巨大な収入源になり得る産業として存在感を増しています。SNS戦略などにより、一般の人にとって美容医療は以前より身近な存在になっていると感じますし、美容医療に携わっている医師の中には、SNSを通してきらびやかな私生活をアピールする人も少なくなく、こうした生活に憧れる若手医師が美容医療に流れている側面もあります。
 コスパやタイパを重視する若手医師が増えたと言うと「今の若者は意識が低いのが問題だ」という結論に帰着しがちですが、私はそうではないと考えます。もっと根本的な問題は、日本の保険医の給料が労働時間や仕事内容に対する対価としてあまりにも低く、今の経済状況に追いついていないことではないでしょうか。美容医療に転身した若手医師は、この保険診療の限界にいち早く気付いた人だと言えるでしょう。

▶ 既に大学病院のマンパワー不足は深刻、行き着く先は大学崩壊か
──若手の医師のみならず、形成外科や皮膚科の専門医や、そもそも別領域が専門の中堅医師の転身も相次いでいます。
宮脇 一生懸命努力してスキルアップしても、日本の診療報酬の仕組みにおいては、手術などの保険診療は教授クラスが行っても研修医が行っても診療報酬は一律であり、その結果、給料は役職や経験年数に応じて多少違うものの、横並びになりがちです。専門医資格を取得し、努力して研さんを積んできた中堅医師では、こうした点に対する不満が噴出しやすく、モチベーション低下につながっているのだと考えます。
──一方で、美容医療を選ぶ医師が増えることで、保険医の減少や医師偏在の加速を懸念する声も聞かれます。
宮脇 まさにそこが一番の問題で、医師の働き方改革の影響で、医師数が十分に確保できている東京都ですら、診療科によっては、患者が受診したいタイミングで受診できず、医師を求めて病院を探し回らなければいけない事態が起こり始めています。
 大学病院は、時間外労働の制限などによって人手不足が特に顕著になり、外来を縮小したり手術件数を減らしている病院も少なくありません。当科でも、今年に入ってからは急患を断らざるを得ないケースが増えました。こうした状況の中で、美容医療へ転身する医師が増加して大学の医師不足が加速すると、いずれは講座の維持が難しくなり、大学崩壊の危機に直面する可能性もあるでしょう。保険医の数を維持するためには付け焼き刃的な対応ではなく、何かしらの抜本的な施策が欠かせないのではないかと思います。
 例えば、専門医資格を有する医師や腕のいい医師には金銭的インセンティブを与えて、給料を引き上げるのも1つの手でしょう。美容医療に転身する医師の中には、保険診療自体にはやりがいを感じているけれど、金銭的な問題で保険診療を離れてしまう医師も少なくありません。そのため、美容医療クリニックと同等の給料を保証できれば、美容医療への医師の流出をある程度は食い止められるはずです。とはいえ、今の国民皆保険制度のままでは医療費の財源が限られていますから、スキルの高い医師が診察・執刀する場合は、選定療養費のような自己負担の仕組みで患者に請求できるといった、新たな仕組みの構築が望ましいでしょう。
 このほか、初期研修修了後の何年かは保険診療への従事を義務付けることも案としては考えられますが、保険診療の魅力そのものが上がらなければ、結局はその後、美容医療などへの医師の転身を食い止めることは難しいと思います。

▶ 「保険医療機関での合併症対応は保険か自費か」の悩みも
──美容医療の質に目を向けると、不適切な施術に伴う合併症について、消費生活センターなどに寄せられる相談件数は年々増えており、その原因としてスキル不足の医師の増加を指摘する声もあります。
宮脇 厚生労働省は、今年の6月から「美容医療の適切な実施に関する検討会」(以下、検討会)を開催しており、美容医療を提供する医療機関に、年に1回、安全管理措置の実施状況の報告を義務付ける方針などを固めました(関連記事:厚労省検討会、安全で質の高い美容医療提供のための報告書案公表)。
 もっとも、日本美容外科学会(JSAPS)では、カウンセラーによるアップセル(顧客単価の引き上げ)や不適切な施術に伴う合併症などの問題に対して、相当前から警鐘を鳴らしており、例えば2020年と2022年には、安全な美容医療を提供するための「美容医療診療指針」を関連学会合同で作成するなど、様々な取り組みを行ってきました。厚労省の検討会の内容を取りまとめた報告書でも示された通り、今後は関連学会で、質の高い美容医療の提供に向けた研修制度や有害事象発生時の対応などを盛り込んだガイドラインを策定予定です。
 JSAPSは、形成外科専門医資格を有する医師のみが取得可能な専門医制度を設けており、美容医療の質の担保という観点では、美容外科に携わる医師全員が形成外科専門医や、日本美容外科学会(JSAPS)専門医を取得していることが望ましいと考えます。とはいえ、実際にはSNS戦略がうまければ、専門医を持っていなくても売れっ子医師になることは可能ですし、「美容医療の世界では、スキルを磨くよりもSNSで集客できる方が重要だ」という意見も聞かれます。自由診療であり、患者に人気のある医師が必ずしも十分なスキルを兼ね備えているとは限らないため、合併症が生じた際に自院で対処できず、保険医療機関に丸投げするケースが後を絶ちません。
 保険診療が限界に来ている中で、美容医療のトラブルに対応していると、現場はさらに逼迫してしまいます。また、実際に我々がこうした患者に遭遇した際に特に困るのは、「医療費をどうするのか」という点です。
 美容医療は自費診療なので、美容医療による健康被害は基本的に全て自費診療とするのが医療機関の共通認識となっているものの、命に関わるような状態で運ばれてくる患者に対して、「お金を払えないなら診ない」というわけにもいきません。実際の判断は、合併症に対応した医師や医療機関に委ねられており、対応に苦慮することもしばしばあります。本来は、美容医療を提供する医療機関でフォローアップ体制をきちんと作るべきですが、美容医療による合併症を保険診療で診るべきなのかどうかを含めて、国は明確な見解を示すべきだと考えます。

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経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト®)〜自己投与解禁(アメリカ)!

2024年11月20日 07時54分57秒 | 予防接種
一般啓蒙用ではなく、医療関係者向けのフルミスト®解説を見つけました。

このワクチンの特徴は、
・痛くないこと
・生ワクチンであること
・乳児には適応がないこと(副反応出現のため認可されなかった)
・成人には適応がないこと(効果が期待できない)
・アメリカでは一時、推奨から外れたこと
に集約されると思います。

…と思って読んでいたら、
アメリカでは自己投与が認可された
という驚くべき記載がありました。

当院でもこのワクチンを接種していますが、
確かに手技は簡単で、医療関係者でなくても可能なレベルと思います。
将来、日本でも自己投与が可能になるときが来るのでしょうか…

<ポイント>
・米国FDAは,2024年9月に経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(以降,生ワクチンと略す)の自己投与,介護者による投与を認め、医療従事者による投与を必要としない初のワクチンとなった(ただし2~17歳は生ワクチンの自己投与はできず,介護者が投与する)。
・生ワクチンは細胞培養(Vero細胞)で増殖させた,A型としてA(H1N1)pdm09とA(H3N2)の2種の亜型,B型としてビクトリアと山形の2系統,計4種類のワクチン株を含む4価ワクチン。
 → 日本で接種されるワクチンは3価です。
・米国では2015~16年シーズンに,生ワクチンと不活化ワクチンの効果比較試験が実施され,その結果から,一時,生ワクチンであるFluMist®の使用が中止された。
・肺・気管支などに疾患がある場合,特に喘息児では接種は慎重にすべき。

…以上の内容から、生ワクチンの登場により「インフルエンザ流行が一気に解決!」は期待できないようです。
 当院では喘息児や卵アレルギー児が多く通っているので、その点に注意しながら接種をしています。


▢ 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンについて
菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院名誉参事,前神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センター長,WHO Public Health Research Agenda for Influenza委員)
2024-11-06:日本医事新報社)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミストⓇ点鼻液)は,日本でも2023年3月に認可され,2024年秋から,2歳以上19歳未満を対象に接種が開始された。本論文では,フルミストⓇ点鼻液の審議結果報告書1)を解説し,約10年前に米国で接種が中止になった経緯,不活化ワクチンとの効果の比較などを紹介する。

1. 米国での経鼻弱毒生ワクチン自己投与の承認
 米国FDAは,2024年9月に経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(以降,生ワクチンと略す)の自己投与,介護者による投与を認めた。オンライン薬局を通じての注文,購入希望者の適格性の判断,処方箋の発行,生ワクチンの発送などが決められた2)。米国では生ワクチンは,2~49歳の個人におけるインフルエンザ疾患予防に承認されているが,今回の決定により,医療従事者による投与を必要としない初のワクチンとなった。しかし,2~17歳は生ワクチンの自己投与はできず,介護者が投与することとなっている。

2. 経鼻弱毒生ワクチン
 生ワクチンは細胞培養(Vero細胞)で増殖させた,A型としてA(H1N1)pdm09とA(H3N2)の2種の亜型,B型としてビクトリアと山形の2系統,計4種類のワクチン株を含む4価ワクチンである。新型コロナワクチン出現以降,B型の山形系統は世界で分離されないので,日本では山形株は除かれる。2歳以上19歳未満では,0.2mL(各鼻腔内に0.1mL)を1回噴霧する。
 用いられる生ワクチン株は,以下の通りである。
  1. 32℃前後で増殖しやすい低温馴化株である(低温の鼻腔で増殖しやすい)。
  2. 37℃以上では増殖しにくい温度感受性株である(高温の下気道では増殖しない)。
  3. 動物モデルでインフルエンザ症状を呈さないという特性を持つ弱毒株である。
 生ワクチン株は,上記の特徴を持つA型のA/Ann Arbor株,B型のB/Ann Arbor株とWHOから選定された候補株の遺伝子再集合により作製される。したがって,生ワクチンのHA(hemagglutinin)とNA(neuraminidase)のスパイクは,WHOの候補株と同一である。
 1噴霧容器当たり(0.2mL)4種の各ウイルスが,1種当たり7log10FFU含まれている。通常,小児の鼻腔からは,4~6log10FFUのウイルスが分離されるので,生ワクチン株は,インフルエンザに自然感染した小児の鼻腔内よりも10倍から100倍多いウイルス量となる。

3. 弱毒生ワクチンの安全性
 2014年に安全性の検討を目的に,2~6歳の日本人健康小児100人に非盲検非対照試験が実施された(007試験)1)。有害事象として,鼻咽頭炎,胃腸炎,皮膚乾燥などが認められたが,重篤な事象はなかった。

4. 弱毒生ワクチンは低年齢小児で有効ではなかった
 2016年10月~2017年5月に,国内第3相試験である無作為化二重盲検プラセボ対照試験が,2〜18歳を対象に実施された(J301試験)1)。治験薬は4価の生ワクチンで,0.2mLを鼻腔内に1回噴霧した。ワクチン効果は,生ワクチン接種群と非接種群(プラセボ)にわけて,各群でのインフルエンザ発症率を比較した。インフルエンザ診断はPCR法による。
 2016~17年シーズンの流行ウイルスは,A型はA(H3N2)で,B型はビクトリアと山形系統が混合していた。生ワクチン接種群では595例中152例がインフルエンザを発症し(25.5%),プラセボ群では290例中104例が発症した(35.9%)。したがって,すべてのインフルエンザ(A型とB型の合計)に対する発症防止効果は,28.8%〔95%信頼区間(CI):12.5~42.0〕となった。A(H3N2)に対する発症防止効果は28.8%(95%CI:9.0~43.1)であったが,A(H1N1)pdm09については,症例が4例のみで評価はできなかった。またB型に対する効果は,ビクトリアと山形系統を合計して22例で,統計的に有意ではなかった。
 年齢群別での,すべてのインフルエンザに対する発症防止効果は,2~6歳群で21.6%(95%CI:−8.6~43.4),7~12歳群で30.6%(95%CI:6.7~48.2),13~18歳群で41.4%(95%CI:−9.6~68.7)であり,2~6歳群と13~18歳群では統計的に有意ではなかった。
 J301試験の結果を見ると,生ワクチンのインフルエンザ発症防止効果が28.8%と低く,経鼻生ワクチンの接種対象として期待される低年齢層(2~6歳群)で,有意な結果が得られなかった点が問題である。また抗原性一致株と不一致株にわけてワクチン効果を解析し,すべてのインフルエンザでは36.6%としているが,2016〜17年シーズンは特に抗原変異はなく,その上,方法などが提示されていないので,評価できない。

5. 不活化ワクチンの発症防止効果は低年齢小児で高い
 J301試験と同時期(2016~17年)に,日本で実施された4価の不活化ワクチンの発症防止効果が,慶應小児インフルエンザ研究グループ(代表:菅谷憲夫)から発表されている。6カ月~15歳の3869例の小児発熱患者を対象に,発症防止効果をtest-negative case-control design(以下,TND法と略す)で検証し,診断は迅速診断キットによって行われた3)。
 すべてのインフルエンザに対する発症防止効果は,39%(95%CI:28~49)で,A型は41%(95%CI:32~50),B型は41%(95%CI:21~56)であった。慶應の報告はTND法であり,一方のJ301試験はコホートという違いはあるが,生ワクチンに比べ,不活化ワクチンの安定した高い効果が示されている。特に1~2歳群の発症防止効果は高く,A型は46%(95%CI:2~60),B型は69%(95%CI:26~87)であった3)。慶應の不活化ワクチンの成績では,低年齢層での効果が全年齢層を通じて最も高いことが示された3)。学童や中学生よりも,1~6歳児での効果が高い。

6. 米国での弱毒生ワクチンの使用中止の経緯
 米国では2015~16年シーズンに,生ワクチンと不活化ワクチンの効果比較試験が実施され,その結果から,一時,生ワクチンであるFluMist®の使用が中止された。試験の1つは,New England Journal of Medicine(NEJM)誌に報告された4)。TND法で実施され,診断はPCR法による。2~17歳の小児を対象として(n=2047),インフルエンザが陽性反応を示した大部分がA(H1N1)pdm09とB型であった。すべてのインフルエンザに対する不活化ワクチンの発症防止効果は60%(95%CI:47~70)と高く,一方,生ワクチンは5%(95%CI:−47~39)と効果は認められなかった。
A(H1N1)pdm09に対する発症防止効果は,不活化ワクチンでは63%(95%CI:45~75)と高く,生ワクチンでは−19%(95%CI:−113~33)と効果はなかった。B型に対しては,不活化ワクチンは54%(95%CI:31~69)と高い効果で,生ワクチンは18%(95%CI:−52~56)と統計的に有意ではなかった。本論文によれば,2015~16年シーズンにおいて,小児では,不活化ワクチンは,A(H1N1)pdm09とB型に高い効果があったが,生ワクチンはどちらにも効果が認められず,特にA(H1N1)pdm09にはまったく効果がなかった。
 もう1つの試験は,同シーズンに外来患者1012例(2~17歳)を対象に,生ワクチンと不活化ワクチンの効果比較を,NEJMと同様の方法で実施したものである5)。結果は,A(H1N1)pdm09に対し,生ワクチンは50%(95%CI:−2~75)で統計的に有意ではなかったが,不活化ワクチンでは71%(95%CI:51~82)と高い有効率を示した。
2015~16年シーズンに,米国では2つの比較試験が実施されたが,A(H1N1)pdm09に対する発症防止効果は認められなかった。そのため,2016~17年と2017~18年シーズンは,米国では生ワクチンを使用しないよう米国CDCが勧告を出した。

7. 日本小児科学会の不活化ワクチン効果の見解
 審議結果報告書1)では,20年も前の2004年の日本小児科学会の見解6)を引用しているが,そこではわが国では,「1歳以上6歳未満の乳児については,インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み,有効率20%~30%であることを説明した上で任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向である」としている。この見解を引用したのは,J301試験での生ワクチンのインフルエンザ発症防止効果が28.8%と低く,生ワクチン接種の意義があるかという疑問の出るレベルであるが,学会見解には合致しているとしたいのであろうか。しかし,学会見解の根拠とした報告は,返信用ハガキにより,発熱,咳などについてアンケート調査したものであり,インフルエンザ検査診断を実施していないので,現代のワクチン研究のレベルでは通用しない。
 さらに報告書では,「患者の年齢が低下すると,不活化インフルエンザワクチンの効果は低下する」としているが1),慶應小児科の2013~14年シーズン以来のデータでは3)7)8),1~6歳未満の年齢群では,全年齢層で最もインフルエンザ発症防止効果が高いことは明らかである。

8. 今後の弱毒生ワクチンの評価
 生ワクチンは,米国でA(H1N1)pdm09には無効であったことが,NEJMなどの雑誌に報告され,2シーズンにわたり使用中止となり,現在はあまり使用されていないことを考えると,今後,生ワクチン効果の慎重な見きわめが必要となる。日本では,低年齢児(2~6歳)には有効性は証明されておらず,A(H1N1)pdm09やB型については効果の検証もされていない。
 接種の注意として,生ワクチンのため妊婦には禁忌であり,水平感染の可能性から授乳中の母親は接種後1~2週は乳児との接触を控えることが挙げられる。また,肺・気管支などに疾患がある場合,特に喘息児では接種は慎重にすべきである。さらに,ゼラチンに強いアレルギーのある場合は禁忌となる。生ワクチンという特性から,アスピリン内服中の人は接種できず,接種後4週はアスピリンの使用は避けるべきである9)。なお安全性などについては,日本小児科学会からも見解が出されている10)。

【文献】
1)医薬品医療機器総合機構:審議結果報告書. 2023.3.6.
https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20230424001/430574000_30500AMX00102_A100_1.pdf
2)FDA News Release:FDA Approves Nasal Spray Influenza Vaccine for Self- or Caregiver-Administration. 2024.
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-nasal-spray-influenza-vaccine-self-or-caregiver-administration
3)Shinjoh M, et al:Vaccine. 2018;36(37):5510-8.
4)Jackson ML, et al:N Engl J Med. 2017;377(6):534-43.
5)Poehling KA, et al:Clin Infect Dis. 2018;66(5):665-72.
7)Shinjoh M, et al:PLoS One. 2015;10(8):e0136539.
8)Sugaya N, et al:Vaccine. 2018;36(8):1063-71.
9)Pharmacy Obo:Protocol for Live Attenuated Influenza Vaccine(FluMist® Quadrivalent). 2023.
10)日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会;経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方~医療機関の皆様へ~. 2024.

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小児喘息 アップデート2024

2024年11月16日 06時35分45秒 | 予防接種
日本アレルギー学会主催の研修講習会で小児喘息に関するレクチャーを聴講しました。
知識をアップデートするよい機会になりました。
主に改定されたガイドライン(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023)の内容ですね。

備忘録としてポイントをメモしておきます。
講師は手塚順一郎Dr.です。

▢「喘息と鑑別を要する疾患」に追加されたもの
・線毛機能不全症候群
・誘発性喉頭閉塞症(inducible laryngeal obstruction, ILO)…アイロと読むそうです。
・びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis, DPB)

▢ 乳幼児喘息の診断は難しい
・検査で診断できない乳幼児は診察・所見で判断せざるを得ない。従来は治療不足・過剰診断が少なからず経験されたため、積極的に診断して治療していこうという方針に舵が切られた。「診断的治療」という選択肢もある。
・5歳以下の反復性喘鳴のうち、以下を満たす例;
 ① 明らかな24時間以上続く呼気性喘鳴
 ② 3エピソード以上繰り返す
 ③ β2刺激薬(ベネトリンやメプチン)吸入後に呼気性喘鳴や努力性呼吸・酸素飽和度(SpO2)の改善が認められる
・β2刺激薬に反応が乏しいものの呼気性喘鳴を認める例に対しては「診断的治療」を用いる。
・診断的治療:重症度に応じた長期管理薬を1ヶ月間投与(喘鳴がコントロールできた時点で投与を中止)して経過観察し、増悪した場合には投与を再開して喘鳴コントロールの可否を判断する。治療を実施している間は症状がなく、中止している間に症状が再燃する場合を「乳幼児喘息」と診断する。

▢ 急性増悪(発作)の見分け方
・SpO2の目安;
 小発作: ≧ 96%
 中発作:92-95%
 大発作: ≦91%
・呼吸数の目安;
 小発作:正常〜軽度増加
 中発作:正常〜軽度増加
 大発作:増加
※ 年齢別標準呼吸数(回/分)
 0-1歳:30-60
 1-3歳:20-40
 3-6歳:20-30
 6-15歳:15-30
 15歳以上:10-30

▢ 吸入β2刺激薬は体格・体重により減らさない
…以前は、0.1mL/10kgが目安とされていましたので大きな変更です。

・吸入液;
 生理食塩水2mL または DSCG1アンプル
   +
 サルブタモール(ベネトリン®)または プロカテロール(メプチン®)
  乳幼児:0.3mL、学童以上:0.3-0.5mL
※ 小児では0.3mLを超える用量は保険適応がない

・pMDI; 
 サルブタモール(サルタノール®)またはプロカテロール(メプチン®)1-2パフ

▢ 全身性ステロイド薬の投与量と注意事項
…急性増悪(発作)時の治療3原則はは吸入+酸素+全身性ステロイド薬。
(静脈内)省略
(経口・内服)
・プレドニゾロン(プレドニン®): 1-2mg/kg/日(分1-3)
・デキサメタゾン(デカドロン®)、ベタメタゾン(リンデロン®):0.05-0.1mg/kg/日(分1-2)

注)
・最大使用量:PSL(プレドニゾロン)換算 2mg/kg/日(max 60mg/日)
・静脈内投与と経口投与で効果に差がない。
・全身性ステロイド薬の投与期間は3-5日間を目安とし、漫然と投与しない。
・投与期間が7日以内であれば中止にあたって漸減の必要はない。

▢ 重症度評価(成人と小児ではズレがある)
▶ 発作が週1回未満
 → 小児:間欠型(数回/年)、軽症持続型(1回/月以上)
 → 成人:軽症間欠型(週1回未満)
▶ 発作が1回/週以上だが毎日ではない
 → 小児:中等症持続型
 → 成人:軽症持続型

▢ 重症度評価と吸入ステロイド薬の適応
▶ 小児;
(軽症持続型)低用量(100)
(中等症持続型)中用量(200)
▶ 成人;
(軽症間欠型)低用量(100-200)
(軽症持続型)低〜中用量(200-400)



(略称)
LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬
ICS:吸入ステロイド薬
ICS/LABA:吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤
FP:フルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイド®)
BDP:ベクロメタゾン(キュバール®)
CIC:シクレソニド(オルベスコ®+インヘラー)
BUD:ブデソニド(パルミコート®+タービュヘイラー)
BIS:ブデソニド吸入混濁液(パルミコート吸入液®)
SLM:サルメテロール(セレベント®)
SFCFP/SLM):フルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロール配合剤(アドエア®)
FM:ホルモテロール
FFCFP/FM):フルチカゾン/ホルモテロール配合剤(フルティフォーム®)

(追加)その他の吸入ステロイド薬:
・モメタゾン(アズマネックス®+ツイストヘラー)
・フルチカゾンフランカルボン酸エステル(アニュイティ®+エリプタ)
・ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート®)
・フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロール(レルベア®+エリプタ)

記号ではわかりにくいので、商品名を組み合わせてみました;

・・・開業小児科医でカバーするのは「(中等症持続型)中用量(200)」までと考えられるので、

5歳以下の治療ステップ3:低用量ICS、コントロール不良なら低用量ICS/LABA
  → フルタイド/キュバール/オルベスコ100μg/日、コントロール不良ならアドエア/フルティフォーム100μg/日
6〜15歳の治療ステップ3:低用量ICS/LABA、あるいは中用量ICS
  → アドエア/フルティフォーム100μg/日、あるいはフルタイド/キュバール/オルベスコ200μg/日

となります。
変更点として、6〜15歳ステップ3の推奨では、低用量ICS/LABAが中用量ICSの上、
つまり優先されるイメージになったことですね。

これは、局所ステロイド薬(吸入、軟膏)でも十分量を長期間使用すると全身への影響(成長障害等)が無視できないことが近年報告されてきたからです。
ただ、アレルギー疾患の症状でつらい思いをして小児期を過ごすことと、成人した際の最終身長が1cm少なくなることと、どちらを取るかと問われると・・・正解はなさそうです。

小児喘息の長期管理プラン
・吸入ステロイド薬導入中の患児のコントロール不良の際のステップアップは、
 以前はステロイド増量であったが、2023年版ではステロイド/LABA混合薬を優先するよう変更された。
・ダニによるアレルギー性鼻炎を合併している例では、ダニ舌下免疫療法併用を推奨。

▢ 肺機能検査(フロー・ボリューム曲線)による気管支拡張薬反応性検査
・改善率
 (吸入後のFEV1ー吸入前のFEV1)/吸入前のFEV1 ×100
・改善量
 吸入後のFEV1ー吸入前のFEV1(mL)
 → 改善率12%以上かつ改善量200mL以上で有意な可逆性ありと判定

▢ FeNO(呼気一酸化窒素濃度)に影響を与えるもの
▶ 増加
・ウイルス性気道感染症
・アレルギー性鼻炎
・アトピー性皮膚炎
・硝酸塩が豊富な食べ物(レタス、ほうれん草など)
・気管支拡張薬
▶ 減少
・呼吸機能検査の実施
・線毛機能不全
・肺高血圧
・気管支収縮
・運動
・飲酒
・喫煙
・吸入ステロイド薬


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「食物アレルゲンの検査(IgE抗体)陽性だから除去してください」は正しい?

2024年11月13日 15時19分24秒 | 予防接種
食物アレルギーを心配して受診する患者さんは、
数字で白黒つけたいと血液検査(特異的IgE抗体)を希望されます。

また、乳幼児に給食を提供する保育園からは、
「保育園で出すすべての食材のアレルギー検査をしてください」
なんてとんでもない要求もありました。

アレルギー検査で陽性でも、
実際に食べて症状が出るとは限りません。
食べて症状が出なければそれが真実です。

ですから当院では、
「食べても症状が出ない食材は検査しない」
という方針です。

これがなかなか理解されず、
「検査してくれなかった」
と悪い口コミを何度書き込まれたことか…(T_T)。

ちょっと複雑ですが、解説を試みてみます。

1.アレルゲン・コンポーネント

一つの食材に存在するアレルゲン(アレルギーの原因成分)は一つではありません。
たいてい複数のアレルゲンが存在し、
その一つ一つを“アレルゲン・コンポーネント”と呼んでいます。

そして各コンポーネントは、アレルギー反応を起こす力も異なります。
つまり、
このコンポーネントに反応するヒトは激しい症状を起こし、
こちらのコンポーネントに反応するヒトは軽い症状で済む、
あちらのコンポーネントに反応する人は症状が出ない、
という現象があり得るのです。

さらに各コンポーネントは、その食材に同量含まれているわけではありません。
多かったり、少なかったり。

アレルギー検査に用いるアレルゲンは、
その食材をすりつぶして抽出したモノなので、
多量含まれれば陽性に出やすいし、
少量しか含まれなければ陽性に出にくい、
という事情もあります。

以上、単純でないことがおわかりいただけたと思います。
すると以下のような現象に遭遇することがあります;

例1)アレルギー検査(特異的IgE抗体)陽性だけど、食べても無症状。
 → アレルゲン性のないコンポーネントに反応するタイプ。

例2)アレルギー検査(特異的IgE抗体)弱陽性だけど、微量食べるとアナフィラキシー。
 → 症状が強く出るアレルゲン・コンポーネントに反応するヒトで、
 かつそのコンポーネントは食材に少ししか含まれていないので強陽性になりにくい。

2.検査試薬は生のアレルゲンから抽出している

アレルギー検査に用いる試薬は、生の食材から抽出しています。
しかし我々は、その食材を生のまま食べるとは限りません。

そしてアレルゲンは加熱・加工により変性し、
アレルゲン性が弱くなることがよくあります。

例えば「コメ」。
ふつう、炊いて食べます。
生で食べるヒトはいないですよね。
しかし検査試薬は生のコメから抽出したモノなので、
アレルギー反応を起こさない成分を検出している可能性があります。

3.IgG4抗体の存在

アレルギー症状を引き起こす血液中の抗体は「IgE抗体」です。
でも血液中にはこのIgE抗体の反応を邪魔する抗体が存在し、
それが「IgG4抗体」です。
英語では blocking antibody,  日本語では“遮断抗体”とか呼ばれます。

アレルゲンが二つのIgE抗体と結合すると、アレルギー反応が始まります。
でもそれを邪魔するIgG4抗体が存在し、
アレルゲンがIgG4抗体と結合してしまうと、
IgE抗体をたくさん持っていても反応できません。

血液検査ではIgE抗体だけ測定しています。
IgG4抗体は保険適応がないので検査できません。

つまりIgE抗体だけを測定しても、
その人がアレルギー反応を起こすかどうか、正確にはわからないのです。

このIgG4抗体は「食べることによって産生される」抗体です。
ですから、「少量食べても無症状、たくさん食べると症状が出る場合」は、
少量が出ない程度の量を食べ続ける方が有利、
IgG4抗体が増えてくればいずれたくさん食べられるようになる(耐性獲得)可能性が高くなります。
少量食べられるのに「検査が陽性だから完全除去」では治りが遅くなります。

4.腸管消化吸収能力の発達

アレルゲンとして作用するたんぱく質の分子量は1万〜7万程度とされています。
これより大きくても小さくても、IgE抗体が捉えることができないので、
アレルギー反応が起こりにくい、つまり症状が出にくいことになります。

乳児期は消化吸収能力が低いためたんぱく質が分解しきれず、
アレルゲンとして作用しやすい分子量のまま吸収されてしまいます。

しかし1歳以降はその能力が発達し、
1歳半の離乳食完了頃には大人と同じものを食べられる、
すなわち大人と同程度の消化吸収能力になるため、
アレルゲンとして作用しやすい分子量よりさらに小さく分解されて吸収されるようになります。

するとIgE抗体があっても反応する大きさのアレルゲンが入ってこないのですから、
アレルギー反応は起こらず、アレルギー症状は出ません。


…以上の4つの理由により、特異的IgE抗体陽性でも症状が出ない状況があり得るのです。
アレルギー検査の評価方法は単純ではないことがおわかりいただけたでしょうか?

最後に最新の食物アレルギーの治療・管理方法を紹介します。
基本原則は「正しい診断による必要最小限の原因食物の除去」です。

では「正しい診断」とは?
 → 食べて症状が出ること(食物負荷試験を含む)+ 特異的IgE抗体陽性

では「必要最小限の除去」とは?
 → 食べると症状が出る食物だけを除去、
 原因食物でも症状が出ない程度の量を食べ続ける

ということです。

同じ食物アレルギー患者さんの中でも、
重症度は異なり食べられる量も異なります。

例えば「卵」。
卵アレルギー患者さんの中で症状が出てしまう卵白量は、
 微量(0.2-0.3g) → 5%
 少量(4g)     → 50%
 中等量(20g)  → 90%
というデータがあります。
逆に上記の数字以外のヒトは卵アレルギーと診断されているけど食べられます。
つまり卵アレルギー患者さんの95%は微量(0.2-0.3g)食べても無症状、
そして10%の患者さんは20g(卵半分)食べても大丈夫。

例えば「牛乳」。
牛乳アレルギー患者さんで症状が出てしまう量は、
 微量(0.1-0.2mL) → 5%
 少量(4mL)     → 50%
 中等量(50mL)  → 90%
であり、牛乳アレルギー患者さんの95%は微量(0.1-0.2mL)を飲んでも無症状です。

ただし、あなたが上記のどれに当てはまるか自己判断して食べる・飲むのは危険です。
主治医に相談してください。
なぜかというと、食物アレルギーにアトピー性皮膚炎や気管支喘息を合併している場合、
それらの治療を十分に行うことが食物アレルギー診療の前提だからです。

さて、この項目のテーマである、
「食物アレルゲンの検査(IgE抗体)陽性だから除去してください」は正しい?
の答えは、
「検査で陽性だけでは除去が必要かどうか判断できません」
「食べて症状が出るヒトにのみ検査に意味があります」
となります。

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Q. 食物アレルギーは予防できますか? A.できます。

2024年11月12日 15時28分57秒 | 予防接種
私が小児アレルギーをサブ・スペシャリティとして選択した当時(1992年頃)は、
アレルギー学会の食物アレルギーのセクションを覗くとそこは一種異様な雰囲気で、
あまり科学的な印象を持てませんでした。

それを論理立てて再構築した功績は昭和大学小児科教授の故・飯倉洋二先生ですね。
少々強引なところもありましたが、食物アレルギー分野を牽引したことは確かです。

その弟子達は四天王と呼ばれ、小児アレルギー分野で大活躍しました。
そして弟子の弟子達が現在活躍しています。

それはさておき。

先日、食物アレルギー診療のセミナー(講師は福家先生)を視聴したので、
ポイントをメモ書きとして残しておきます。

Q.母親の私はアレルギー疾患があるのですが、生まれてくる赤ちゃんもアレルギー体質になりやすいですか?
A.はい、アレルギーのないご両親の赤ちゃんと比べると確率は数倍高くなります。

…親や兄弟にアレルギー疾患があると、無い場合に比べてアレルギー疾患を発症する割合が数倍高くなります。
しかし、アレルギー体質をつくる決定的な遺伝子の存在は確認されていません。
だからメンデルの法則のように「何%の確率でアレルギー体質になる」と計算できないタイプです。

ただ、影響を及ぼすフィラグリン遺伝子は知られています。
フィラグリン遺伝子が欠けていると乾燥肌になりやすく、
アトピー性皮膚炎、食物アレルギーや気管支喘息、アレルギー性鼻炎のリスクが上がります。


Q.母親の私はアレルギー疾患がある場合、生まれてくる赤ちゃんのアレルギー疾患は予防できますか?
A.(一部)可能です。

…人が生まれてから発症するアレルギー疾患は、
年齢によりある程度順番が存在することが昔から知られていました。
 乳児期:アトピー性皮膚炎と食物アレルギー、
 幼児期:気管支喘息、
 学童期:アレルギー性鼻炎、花粉症…

しかし、どうしてこの順番になるのかは不明で、
とくにアトピー性皮膚炎と食物アレルギーはほぼ同時に存在し、
どちらが原因でどちらが結果なのか、
皮膚科と小児科で喧々顎学の議論が数十年続いていました。

その結論が出たのが2000年代後半。
アトピー性皮膚炎が先(原因)で、
食物アレルギーが後(結果)、
ということがわかったのです。

湿疹(バリアの壊れた皮膚)部位から食物抗原が繰り返し侵入することにより(経皮感作)、
食物抗原に反応する体質(=食物アレルギー)になるのです。

逆に言うと、アトピー性皮膚炎の湿疹が現れたら早期に治療することにより、
食物アレルギーが予防できる可能性があります。

実際にそのような研究がなされ、実績を上げています。
ずっと謎だった“アレルギー疾患予防”の扉が開かれました。

具体的な数字を提示します。
湿疹が出始めてから治療開始までの期間により、
食物アレルギーの発症率が異なることが国立成育医療センターから報告されています。

 湿疹発生後1ヶ月 → 13%
 湿疹発生後2ヶ月 → 24%
 湿疹発生後3ヶ月 → 31%
 湿疹発生後6ヶ月 → 31%
 湿疹発生後9ヶ月 → 64%
 湿疹発生後11ヶ月 → 100%

以上の数字を見ると、できるだけ早く湿疹の治療を開始した方が有利であることがわかります。

湿疹病変のある皮膚から侵入するアレルゲンは食物アレルゲンだけではなく、
吸入アレルゲン(ダニや花粉など)もあります。
こちらも気管支喘息やアレルギー性鼻炎・花粉症の原因になり得ます。

つまり、湿疹をしっかり治療して皮膚をキレイにしておけば、
食物アレルギーを含めたアレルギー疾患を予防できるのです。

逆に乳児期のアトピー性皮膚炎を長引かせてしまうとアレルギー体質が進んでしまう…
“ひどくなければいずれ落ちつくだろう”という甘い考えはいけません。
ここで大切なことは、湿疹を完全にゼロにして、皮膚をツルツルピカピカ状態に保つ必要があります。

どうも近隣の皮膚科医は「1歳ぐらいまでに落ちつきますよ」というスタンスで、
ひどくない程度の治療にとどめる先生が多く、
近年の「アレルギー予防」という考えが欠けている印象があります。

少し視点を変えます。

ヒトは生きるために食物を食べます。
食物はヒトにとって“異物”ですから、免疫システムが働いて排除してもおかしくないはず。
でもヒトは、気の遠くなるような長〜い年月をかけて、
口から入る食物を消化吸収して栄養分として取り込むシステム(免疫寛容)を作り上げました。

一方、皮膚から侵入するモノは、積極的に排除します。
100年昔までは、皮膚から侵入するモノは寄生虫とか病原体が多く、
免疫システムが働いて排除してきました。

戦後、生活環境が整い、寄生虫を心配せずに済む生活になりました。
そして現在、皮膚から侵入するモノは、生き物ではなくダニや食物の小さなカケラに代わりました。
それでも免疫システムはダニや食物のカケラを敵と見なし、
排除するよう働きます。
これを延々と繰り返していると、それらを受け付けない体質になってしまう、
これがアレルギーです。

さて、欧米では食物アレルギーの代表の一つはピーナッツアレルギーです。
今から約10年前(2015年)に以下のような研究が報告されました。

家族にアレルギー疾患のあるハイリスク乳児に、
ピーナッツを食べさせたグループと、
食べさせなかったグループを比較したところ、
5歳時点のピーナッツアレルギー発症率は、
 食べさせなかったグループ:17.3%
 食べさせたグループ   :0.3%
と意外なことに食べさせたグループの方が圧倒的に少なかったのです。

欧米ではみんなでピーナッツを食べるので、
部屋の中にはそのカケラがたくさんあります。
赤ちゃんの口から先に入るとアレルギーにならないけど、
赤ちゃんの皮膚から先に入るとアレルギーになることが証明された報告でした。

実はイギリスではこの報告がでるまでは、
「赤ちゃんにはピーナッツを食べさせないように」
という指導方針でした。

日本では卵で同様のことが報告されています。

アトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃんを、湿疹の治療と並行して、
卵を食べさせないグループと食べさせるグループに分け、
1歳時点での卵アレルギー発症率を比べた報告です。
結果は、
 卵を食べさせないグループ:38%
 卵を食べさせたグループ :  8%
とこちらでも食べさせたグループの方が、卵アレルギーになりにくかったのです。

整理すると、
皮膚から侵入するモノは敵でアレルギーの原因となる(経皮感作)、
口から入るモノは消化吸収して栄養分となる(経口免疫寛容)。
この2つの事実から導き出せるアレルギー予防法は、
「湿疹があれば早期に治療し、食物アレルギーが心配な食物を早期に開始すべきである」
というものです。

ですから、
「食物アレルギーが心配だから卵や牛乳はまだあげていません」
という方針は間違いなのです。

現時点で推奨される離乳食の進め方は、
「いろんな食材を少しずつ赤ちゃんに食べさせる」
ことに尽きます。
その前提条件として、湿疹があれば早期に治しておくことが必須。
これは、ピーナッツや卵の食物アレルギーに限らず、
すべてのアレルギー疾患に当てはまることがわかっています。

<まとめ>
1.かゆい湿疹は早く完璧に治しましょう。
2.離乳食を遅らせてはいけません。ふつうのスケジュールで進めましょう。
3.バラエティ豊かな離乳食を心がけましょう。

日本の離乳食は世界標準から見るとかなり偏っていることが判明し、
小児科医は問題視しつつあります。
こちらの話題はまた別の機会に書きたいと思います。
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予防接種情報2024〜乳児をRSウイルスから守る戦略

2024年11月12日 07時49分07秒 | 予防接種
前項目で高齢者用のRSウイルス・ワクチンを紹介しました。

▶ 高齢者向けワクチン

使用するワクチン:アレックスビー筋注用®(グラクソ・スミスクライン社)
効果:RSウイルスによる感染症予防
用法:60歳以上に1回、0.5mLを筋肉内注射
国内製造販売承認:2023年9月25日(2024年1月販売開始)

上記ワクチンは乳児をRSウイルスから守る予防医療の一環でもあります。
現在構築されつつあるRSウイルス感染症の予防戦略を説明します。

2024年11月時点で、ハイリスク児に対するモノクローナル抗体製剤(ワクチンではありません)が2剤存在します。
接種方法、対象者が異なりますので要注意。

▶ 乳児に対する予防戦略(モノクローナル抗体)

①パリビズマブ(シナジス®)
用法:0.15mL/kg、流行期に「月1回」筋注(投与量は体重により異なる)

②ニルセビマブ(ベイフォータス®)
用法:流行期に「1回のみ」筋注

さらに妊婦にワクチンを接種して抗体を作り、
その抗体が胎盤を通して胎児に移行することにより、
出生児の命を守るという製剤も登場しました。

▶ 妊婦を介しての予防戦略(妊婦向けワクチン)

ワクチン:組み換えRSウイルス・ワクチン(アブリスボ®)ファイザー社
効果:妊婦への能動免疫による新生児及び乳児のRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防
用法:妊娠24週(推奨は28週)〜36週の妊婦、1回、0.5mL筋肉内注射
国内製造販売承認: 2024年1月18日(販売開始は未定)

なお、アブリスボとハイリスク児に対するシナジス、ベイフォータスは併用可能です。

<参考>
(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)
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予防接種情報2024〜大人のワクチン(肺炎球菌、RSウイルス)

2024年11月12日 06時25分21秒 | 予防接種
私は小児科医なので、成人のワクチンには縁がないのですが、
自分も還暦を迎え対象者に入りつつありますので、
情報をアップデートする必要があります。

ここでは肺炎球菌ワクチンとRSウイルス・ワクチンを取りあげます。
肺炎球菌ワクチンは2024年4月にルールが変更されました。

肺炎球菌ワクチン
従来の複雑な「65差異を超える方を対象として経過措置」は2024年3月31に終了し、
以下は2024年4月以降の定期接種のルールです;

接種対象
① 65歳の方(66歳以降は接種できないので忘れないように!)
② 60〜64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
③ 60〜64歳で、ひと免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
※ 上記①②③を通して、生涯で1回のみです。
使用するワクチン:23価肺炎球菌ワクチン(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン、ニューモバックスNP®、PPSV23)
※ 過去にこのワクチンを接種したことのある方は対象外です。

次はRSウイルスワクチンについて。
RSウイルスは乳児に重篤な急性細気管支炎を起こすことで有名ですが、
近年、高齢者にも重篤な気道感染症を起こすことが認知され、
それを予防するワクチンが登場しました。
いまのところ定期接種ではなく任意接種という位置づけで、
希望者が自己負担で接種する設定です。


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予防接種情報2024〜新型コロナワクチンの現在

2024年11月11日 14時16分58秒 | 予防接種
公費による接種(特別臨時接種)が2023年度いっぱい(2024.3.31)で終了し、
2024年4月1日から新型コロナワクチンは希望者がお金を払って接種するワクチンになりました。

制度としては対象者限定の定期接種(予防接種法のB類疾病)へ移行しました。
その規定は下記の通り;

対象者: 65歳以上または基礎疾患を有する60〜64歳
期間:  2024年10月1日〜2025年3月31日まで、1回接種
他のワクチンとの接種間隔:従来の14日間は撤廃

定期接種の場合、自己負担額が3000円くらいです。
任意接種の場合、自己負担額は15000〜16000円程度です。

私は60〜64歳で持病持ちなので、定期接種対象者に当てはまる…と思いきや、
障害者手帳をもつレベルでないと「基礎疾患を有する」に該当しないそうです。
なので私は任意接種対象者になります。

それから医療従事者という文言が見当たりませんが、
こちらも任意接種対象だそうです。

小児に関してはどうでしょか。
特定臨時接種期間は、「基礎疾患を有する小児に接種を推奨」というスタンスでしたが、
特定臨時接種終了後、情報が更新されず上記のままです。
今後の情報をチェックする必要があります。

さて現在使用可能な新型コロナワクチン、じつはたくさんあります(5種類)。
列記します;

コミナティRTU®(ファイザー社)  mRNAワクチン
スパイスバックス®(モデルナ社)  mRNAワクチン
ダイチロナ®(第一三共)      mRNAワクチン
コスタイベ®(Meiji Seika ファルマ) mRNAワクチン(レプリコンワクチン)
ヌバキソビット®(武田薬品)    組み換え蛋白ワクチン

対応する変異株はすべてに共通で「JN.1」です。
副反応は厚労省のHPで確認できますが、5つのワクチンの間で大きな差はありません。

レプリコンワクチンについては、
ワクチン反対派が騒ぎ、
看護師系のマイナーな学会が反対声明を出したり、
接種した人を“出禁”にする店舗が出てきたり、
製薬会社が反対声明を出す政治家を訴えたり、
一つの社会現象になっています。

私のスタンスは、
他の医薬品同様、国が審査し有効性と安全性を認めて認可された医薬品であり、
トラブルが生じた際は国が責任を持つことになるので、
現場では与えられた条件で粛々と接種するのみです。

反対する人たちは、
つまるところ、日本の厚生労働省、ひいては日本の政府を信頼していないということなのでしょう。
これは今まで医療問題を積極的に解決してこなかった日本政府の引き起こした現象であり、
水俣病や薬害エイズ問題の後遺症でもあります。

この不安を解消するには、
長い年月をかけて「国は国民の命を守っている」ことを実行し続けるしかありません。



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