小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

江藤先生の“アトピー対談”シリーズを読んで

2015年07月24日 06時44分38秒 | アトピー性皮膚炎
 製薬メーカーのノバルティス社のHP内「アトピー性皮膚炎ドットコム」に“アトピー対談”シリーズというコーナーがあります。
 アレルギー関連学会ではアトピー性皮膚炎のご意見番の一人である東京逓信病院皮膚科部長の江藤先生がインタビュアーとなり、専門医と患者さんの本音を引き出すという企画。 
 その内容は、アレルギー専門医の私が読んでもフムフムと頷いて勉強になるレベル。特に片岡葉子先生のお話は強力なインパクトがありました。

 「治療はシンプルなのになぜうまくいかないのか?」という私が日頃感じている疑問に、ストライクの回答が記されています。
 それは「説明不足」。
 ステロイド軟膏を処方するだけで、具体的な使い方(塗る場所・塗る量・塗る期間)の説明が乏しいので、患者さんはネットで調べる・・・するとそこにはステロイド軟膏に否定的な怖い情報が溢れていて怖くなり使用を控えてしまい湿疹は改善しない、そして脱ステロイドの落とし穴へ・・・という構図が見えてくるのです。

 ただ、総合病院の専門外来でもできないことを、開業医院の一般外来の中で行うのは困難です。
 当院では看護師さんに勉強していただき、スキンケア指導を担当してもらうことにしました。

 実は医師側にも迷いがあります(皮膚科医にもあるそうです)。
 ステロイド軟膏は有効だけど、なかなかやめられない患者さんも少なからず存在します。
 そこを「FTUを守れば必ずよくなる」「やめられなくても副作用が出にくい使い方がある」と皮膚科専門医に太鼓判を押してもらったような気がしました。


<メモ>
 自分自身のための備忘録。

■ 第一回:大矢幸弘先生(国立成育医療センターアレルギー科医長)
ステロイド忌避問題
 皮膚科医が患者さんに対してステロイドをはじめとするスキンケアの指導を十分に行わなかったことが大きな原因のひとつ。ステロイド薬が正しく使えていないために症状はよくならず、中途半端な使い方をするので副作用だけが起こる。そして医師に不信感をもち他の皮膚科に、と病院を転々としているうちに、脱ステロイドを唱える医師に出会い、そこではまってしまう。
 脱ステロイド治療を経験した患者さんの中には、その医師に対しあまり悪い感情をもっていない方もいる。診察のときに長時間話を聞いてくれて心身の辛さに共感してくれた、と言う。自費診療で、患者さんの話を聞く時間が十分にとれるのは脱ステロイド治療の長所かもしれない。
ステロイド軟膏減量にはスキンケア継続が必須
 アトピー性皮膚炎の治療ではスキンケアがとても重要だが、症状が改善すると、なかなかスキンケアを続けてもらえない。「副作用が出ない程度にステロイド外用薬を使いながら治療することも可能ですが、きちんとスキンケアを続ければステロイド外用薬を減らしていけます」と説明すると、スキンケアをがんばる親御さんが多い。
悪化因子としての親子関係
 兄弟がいるお子さんの場合、アトピー性皮膚炎が治ってしまうと母親にかまってもらえなくなるので、症状をよくしたくない、治療をしたがらないケースがある。親御さんが早くその関係に気付いて、症状が悪いときに注目するだけでなく、むしろお子さんの具合のよい時に特に相手をしてあげるようにしないと、この状態から脱出できない。意図的ではなく、無意識のうちに湿疹が悪化するような行動をとってしまい、親御さんは、そんなお子さんに振り回されている、という状況がある。

■ 第二回:丸山恵理氏(NPO法人「日本アレルギー友の会」事務局長)
ピア・カウンセリング
 活動の一番の特徴は患者による療養相談を行っていることで、全国のアトピー性皮膚炎の患者から寄せられる不安や悩みの相談に対し、長年病気とつき合い、同じ患者だからこそ理解できる患者がカウンセリングを行っている。このピアカウンセリングは、不安や悩みを共有し、そのうえでどう対処していったらよいかをアドバイスすることにより、治療ヘの意欲と希望を見いだせるメリットがある。
 アトピー性皮膚炎の患者は「なぜ自分だけがこんなつらい病気になってしまったのだろう」と考えがちだが、充実した人生を送っている先輩患者の例を示し、アトピー性皮膚炎があってもそれを乗り越えるための知識や希望を持つことで、自分らしく生きることができるようにサポートしていきたい。
療養相談から浮かび上がる、アトピー性皮膚炎治療の問題点
 当会への相談でもっとも多いのは、皮膚科でステロイド外用薬を処方されているのに改善しないという内容。話を聞いていると、先生がちゃんと使い方を説明しないまま外用薬だけ出しているため、自分でいろいろ調べてステロイドは怖いくすりだという情報を入手してしまい、不安を持ちながら使っているという方がとても多い。
 処方する医師側の指導が重要だが、実はステロイド薬処方に腰が引けていて、2週間分の処方なのに、3日でなくなってしまうような量しか処方しない医師もいる。処方する先生に少なめに使うように言われたり、同じ医療者である薬剤師さんにも「ステロイドはあまり使わないほうがいいですよ」と言われることがあり、「やはり危ない薬なのか」と患者はますます怖くなってしまう。
 相談を受けていて、塗るという行為は人によってやり方が大きく違うということを実感している。内服薬は1錠といえば誰でも同じ用量を飲めるが、外用薬はそうではない。やはり先生がきちんと毎回の診察で指導しないとうまく使えないと思う。
 アトピー性皮膚炎の患者さんは、もともと皮膚のバリア機能が弱い体質。虫歯にならないよう一生懸命歯磨きするように、ていねいなスキンケアを行ってほしい。その上で、悪化する因子があれば少しずつ除去し、悪化したらしっかりとした薬物療法を行うことが重要。中途半端な治療をしているからステロイドが悪化させる原因であるかのように誤解が生まれる。

■ 第三回:片岡葉子先生(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科部長)
脱ステロイドの功罪
 脱ステロイド組の中には、100人に1人程度確かに症状がよくなる患者さんがいる。私たちもそれを期待して患者さんの希望に応じた治療を続けていたが、大多数は何年脱ステロイド治療を続けても改善せず、不登校になったり、仕事に就けなかったり、中には非常に残念なことですが自殺してしまったりした方もいて、やはり脱ステロイドではアトピー性皮膚炎は解決しないのではないかと気付いた。
よくならないのは不十分な治療が原因
 2008年に京都で開催された国際シンポジウムの際に国内外の有志が集まって患者教育のワークショップが行われ、そこでアトピー性皮膚炎患者さんの多くは治療不十分で悪化しており、これを改善するためには患者教育が大切だというコンセンサスが得られた。そこで病院に帰ってすぐに患者教育プログラムを立ち上げた。
 医師、薬剤師、看護師、栄養士、臨床心理士といった多職種のチームで、アトピー性皮膚炎をうまくコントロールするために必要な知識、方法などについて講義、指導、支援している。患者さん同士のグループミーティングなどのプログラムもある。「アトピーカレッジ」のほかに、小中学生の夏休み期間中に行う「アトピーサマースクール」や、重症のアトピー性皮膚炎の赤ちゃんをもつお母さんを対象に、外来の「乳幼児アトピー教室」も行っていて、スキンケアは看護師さんの指導で実習したり、栄養士さんには食品のアレルギー表示の見方や離乳食の指導をしてもらったりしている。この教室により、重症の赤ちゃんの予後が劇的に改善した。くすりが少なくても皮膚がよい状態に保てるのはもちろん、食物アレルギーの赤ちゃんが、過去と比べ明らかに減少した。
乳児アトピー性皮膚炎の不十分な治療は食物アレルギーのリスク
 乳児のアトピー性皮膚炎は1歳前後になると3分の1ほどは自然寛解するので、親御さんがステロイド外用薬の使用を嫌がる場合には、では自然によくなるのを待ちましょうか、という方針で以前は治療を行っていた。でもその結果、食物アレルギーをもつ子どもが非常に増えてしまった。何という申しわけないことをしていたのだ、と悟った。
 でも患者さんの中には、食物アレルギーが原因でアトピー性皮膚炎が悪化するのではないか、といまだに考えている方もいる。医師もそれは違うと言い切っていないから、患者さんも混乱してしまう。まず皮膚をプロテクトしてアレルゲンにできるだけ感作しないようにすることが重要だと理解してもらわないといけない。日本人が虫歯予防のために毎食後に歯を磨く、あの当たり前さで早期からスキンケアすれば、多くの皮膚疾患はもっと改善するはず
指導はFTUだけじゃ足りない
 ステロイド外用薬は、ちびちび使わないで必要量をしっかり使用することが重要だが、その合い言葉がFTUだと思う。いや、FTUだけでは足りない。「どこに」「何を」「どれだけ」「いつまで」塗るかを示す必要がある。多くの湿疹が体にバラバラとある場合、多くの医師は、赤くなっている部分にチョンチョンと、モグラたたきのように塗るよう指示すが、皮疹のある範囲全体に塗るよう指示する必要がある。
ステロイド軟膏使用のコツは「ワン、ツー、スリー」
 私は最近、ワン・ツー・スリーで使いましょう、と説明している。ワンでドンと使用して、ツーで維持して、スリーで使用間隔を開けていく。間隔が開けば、ステロイドの副作用はどんどん減りますよ、と説明している。腰が引けている医師のところに通って何となく治療しているというのは、アトピー性皮膚炎が難治化している患者さんの特徴とも言える。
アトピー性皮膚炎治療のジレンマ
 アトピー性皮膚炎治療の難しさは、くすりを使用するのに腰が引けたり、治療すべきときに、自然に治るのではないかと考えてしまったりすること。早期に治療を開始すれば、すぐに治療が終わり、くすりが必要なくなる時期も早いのに腰がひけているために、かえって長引いてますます不安になってしまう悪循環にはまっている方がとても多い。
・アトピー性皮膚炎治療混乱の背景に2つのトリック:
 アトピー性皮膚炎の治療がこれだけ混乱している背景に、私はアトピー性皮膚炎が元来持っている2つのトリックがあると思う。
 ひとつは、アトピー性皮膚炎という炎症がアレルギーを増やして悪循環に陥っているのに、逆にアレルギーがアトピー性皮膚炎を引き起こしていると誤解されていること。2つ目はステロイドとアトピー性皮膚炎の関係で、腰の引けた塗り方のせいで炎症がひどくなっているのに、ステロイドが悪いと誤解されて炎症を止めずに、アレルゲン除去に躍起になっていることです。アトピー性皮膚炎の勢いが強いのに、ステロイド外用薬を少しだけ使用しても、炎症の勢いは当然どんどん強くなります。
 この2つのトリックに、医師さえもいまだに翻弄されていると思う。

■ 第四回:根本治先生(札幌皮膚科クリニック)、中川秀己先生(慈恵会医科大学皮膚科)
治療不足/説明不足が慢性化を招いている
 成人の重症患者さんの8割ほどは、実はアドヒアランスが悪いだけで、finger tip unit(FTU)をしっかり指導すれば改善する。
 きちんとコントロールすればよい状態を保てる病気だから、そのためには治療や病気そのものを患者さん本人がしっかり理解した上で、私たちの指導に納得していただくことが重要。このような状況を作ることができれば、ほとんど治療は成功する。しかし実際にはそうでない場合の方が多い。患者さんとの十分なコミュニケーションがとれるようになるには、かなりの時間と労力が必要。
 症状がなかなか改善しない方は、ひとりの先生と、しっかり信頼関係を築いて長く付き合っていくことが必要。
痒疹タイプはステロイド軟膏だけでは治らない
 大学病院へは、痒疹が全身の6~7割を占めているような方が来院するので、なかなかよくならない。しかも外用薬の塗り方が適切ではないので、皮膚が薄くなり痒疹だけが残ってしまっている状態の方が結構いる。そのような場合は当然外用薬だけでは改善しないので、次の手段として、短期間できれいにしなければならない患者さんにはステロイドを内服で使ったり、中長期(数ヵ月間使用する)の場合には免疫抑制剤内服薬を使ったりする。長期に及ぶ場合には紫外線療法を行う場合もある。
小児アトピー性皮膚炎4つのタイプ
 小児の場合にはいつ頃よくなるかの4つのパターンを考える必要がある。
 1つめは3~4歳をピークにすっと治ってしまうパターンで、7割以上を占める。
 2つめは症状がずっと続いていくパターン、
 3つめは1回治ってその後再発するパターン、
 4つめが大人になって発症するパターン。
 治療の目標がどこにあるかを見極め、家族の方と考え方を共有することが重要。この子はステロイド外用薬を使ってきちんとコントロールしていけば短期間で治るなと思えば、はじめからステロイド外用薬をしっかり使っていくし、長引きそうだと思えば、まずはQOLの改善を目的として、免疫抑制剤を積極的に使い、ステロイド外用薬の長期使用で起こる皮膚の萎縮を避けるようにする。1度治った子どもについては、保湿剤をずっと使い続けていれば再発しないこともあり得るので、観察を続ける必要がある。
患者さんには「病識」を持って欲しい
 患者さんには「病識」をもっていただきたい。病識とは2つの意味があり、ひとつは病気に関する知識、もうひとつは自分が病気であるという意識という意味。
 もし相性のよい先生に巡り会えない場合は、患者会に相談してみるのもよい。そこで新しい情報に触れることが、新しい先生と出会うきっかけにもなる。

■ 第五回:アトピー性皮膚炎の患者さん達
アトピー性皮膚炎は自分を責めてしまう不思議な病気
 アトピー性皮膚炎は根治しづらくよい悪いを繰り返すので、コントロールが上手くいかないと、どうしても自分を責めてしまいがち。乗り越えられない自分が弱い、悪化させた自分が悪い、とか。花粉症だったら罪悪感はないのに、何故かアトピー性皮膚炎の場合は罪悪感がとても強い。
皮膚科への要望
 私は今まで3~4ヵ所の病院を受診して、結局、江藤先生のところに来るまで正しい治療が受けられなかったので、あの治療は何だったんでしょうか?と言いたい。どの先生も、独自の治療法に固執していたり、外用薬を塗っていればいいよという感じだった。
 日常の不快感が強く、ステロイドをはじめ治療に対する大きな不安を抱えているので、診察ではそれをわかってほしい。せっかく長時間待って診察を受けても「何のくすりが要るの?」だけで症状のつらさを訴えても何も対処をしてくれないと「わかってくれない」と思い不安になる。
 病院を転々としてきたが、以前は毎回同じくすりを受付で渡されるだけの病院も多く、「これでいいの?」と、すごく不安になった。あとはくすりの正しい情報。ステロイドにランクがあることや、正しい塗り方、副作用、スキンケアなどについて、説明してほしい。日常生活の中で、実際に治療するのは医師でなく自分自身だから。
 (江藤先生)最近は診察時に質問に答えてもらえないとインターネットで調べて、嘘の情報に染まってしまう。皮膚科は特に多くの患者さんを診なければならない。これは医療制度の問題でもあるが、そこは、話を聞いてくれる看護師さんとワンセットにするとか、冊子を渡すといった工夫をしなければいけない。「今日は時間がないけど、パンフレットもあるし、不安だったら友の会に相談してみたら」と、一言あるだけでも全然違う。
 アトピー性皮膚炎はよくなったり悪くなったりを繰り返すから、脱ステロイドを行った時期がよくなる時期に当たると、脱ステロイドでよくなったと錯覚してしまう人が多い。成長に伴ってアトピー性皮膚炎の症状が消失したりする時期と重なる場合もある。
患者の心構え
 病院を何度も変えていると、自分から治していこうという意識がどんどん薄れていくが、自分自身が治したいという気持ちを持ってきちんとくすりを塗らないと、よくならない。人のせいにしてはいけない。
 アトピー性皮膚炎の患者さんのほとんどが現在の治療や将来に対し不安を持ちながら治療しているのが現状。毎日治療を続けるのはつらいし、ステロイドは危険だと聞けば、やっぱり心が揺れる。でも、みんな同じでつらい思いをしながらも治療を続けている。正しいステロイドの情報を得て自ら前向きに治療していけば、絶対によくなる病気。症状がひどいときは、独りで抱え込んで孤独になってしまいますが、患者会など他の人と話す機会があると、早く抜け出せる
(江藤先生)確かに、行き着くところはセルフコントロール。このくらいくすりを塗ったらこれだけ効く、くすりを塗らないとこれだけ悪くなる、というのが一番正しい指標。

■ 第六回:古江増隆先生(九州大学皮膚科)
ステロイド軟膏を塗る範囲
 私は皮疹よりも広めに塗るよう説明している。塗り薬では、皮疹が見えている部分にだけくすりを塗ると、一見健康な皮膚にみえる皮疹予備軍にはまったく届かない。だからいつまでたっても、モグラたたきのように繰り返すことになる。予備軍の部分にもステロイドを塗る必要がある。保湿剤では解決できない。このような方法により、重症だと思っていた患者さんの多くは、比較的弱いステロイドでコントロールできるようになる。
 喘息の場合はステロイドを吸入すれば気道のすべての部分にいきわたるので治療効果が高いが、塗り薬では異なる。
合い言葉は“FTU”
 よく患者さんから「くすりを塗っているのに治りません」と言われるが、塗っているけど治らないのは塗り方が足りないから。自転車に乗るとき、恐る恐るペダルをこいでもうまく乗れないけれど、思い切ってグーッとこぐと上手く乗れる、このグーッとこぐのがFTU。
 たとえば1FTUは0.35~0.5gほどだからなどと、患者さんに正確に塗るよう指導しても、これはあまり意味がない。FTUはあくまで多めに塗るよう誘導するためのひとつの目安で、正確な量を塗ることが目的ではない。
 ステロイドは炎症が治まるまでしっかり使って、その後は少しずつ減らしていくことが大切なのに、みんな早くやめたいので、ちょっと改善するとすぐにやめて、それでまた再燃してしまう。治療を受けても治らないという患者さんはくすりの量が圧倒的に少ない。
ステロイド軟膏を薄めて使う方法もある
 最近、ステロイドを保湿剤などで16倍まで薄めても、効果はあまり変わらないというデータが出ているので、薄めたステロイドを処方して、量を多く使ってもらうようにしてアドヒアランスを上げるのも、ひとつの方法。使用量と使用範囲の両方を満たすには、薄めて十分量を使用してもらうのはとてもよい方法。
プロアクティブ療法という考え方
 全身に皮疹があった患者さんは、全身の病変として、ステロイドを全身に塗っていくことが大切。そうするとステロイドの使用量が大変なことになると思われるが、1週間、全身に塗ったら、その後は1日おきにして、1ヵ月ほど再発がなければ1週間に2回全身に塗るようにする。こうすれば、一生ステロイドを塗り続けたとしても副作用が起こることはあり得ない。
ステロイド以外の薬に期待
 免疫抑制剤内服薬は、かゆみに対し明らかにステロイドよりも早く効く。アトピー性皮膚炎でもかゆみが強いタイプには、ステロイド内服はファーストチョイスではない。ステロイド以外にはない、というネガティブな考えではなくて、今後新たなくすりが登場するまでステロイドを使う、と考え方を変えていただきたい。
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“保湿剤”を塗り比べてみました。

2015年07月16日 09時42分37秒 | アトピー性皮膚炎
 乾燥肌/アトピー性皮膚炎の治療に使用する保湿剤にはいろいろな種類があります。
 基本的な特徴は、以下の通り;

軟膏タイプ:半固形で伸びが悪くベトつくが持続時間は長い。
クリームタイプ:軟膏とローションの中間。
ローションタイプ:液体なので塗りやすい・広げやすいが、持続時間が短くすぐカサカサになってしまう。

 最近、吸水クリームと親水軟膏に興味がわき、現在採用している保湿剤と共に、院内スタッフで実際に塗り比べてみました。
 
白色ワセリン:軟膏タイプの代表。ステロイド軟膏の気剤として頻用されている。プロペト以前に使用していた。
・ベタついて伸びが悪い。
・しっかり塗るとべとつくので、すぐに服を着る気にならない。
・冬は硬くなりやすい。

プロペト:別名「眼科用ワセリン」。唯一「目に入っても大丈夫」な保湿剤なので顔面はこれが基本。
・白色ワセリンより伸びがよいがギトギトしてしまう。

ヒルドイド・ソフト軟膏:軟膏という名前であるが使用感はクリーム。
・伸びがよく塗りやすい。
・シットリ感が続く。

吸水クリーム:ワセリンが40%入ったクリーム。
・広がらない、塗りにくい。
・白色ワセリン/プロペトやりもテカテカしないのでよい。
・粘土のようなニオイがする。

親水軟膏:ワセリンが25%入った軟膏という名のクリーム。
・軟膏とクリームの中間の固さ。
・伸びやすくギトギト感がない。
・ニオイもよい。

 従来当院ではプロペト、ヒルドイドのジェネリックであるビーソフテン油性クリーム、ビーソフテンローションを使用してきました。プロペトの売りは「安全&効果長持ち」ですが使用感は不良、ビーソフテンクリーム/ローションは使用感良好ではあるものの、効果が長持ちせず、添加物による湿疹悪化の問題が残ります。
 今回の「塗り比べ」で親水軟膏の使用感がよいことがわかり、プロペト/白色ワセリンではベタつきに耐えられない患者さん用にラインナップに入れることにしました。
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津村直幹先生(久留米大学小児科)の講演を聴いてきました。

2015年07月03日 07時24分48秒 | 予防接種
昨夜「第18回群馬県小児感染免疫研究会」に参加しました。
いろいろお役立ち情報がありましたので、メモメモ。

■ 百日咳問題
 重症化しやすい新生児の百日咳がなくならない。2010年代になり成人の百日咳が増えてきた。大人から赤ちゃんに感染するルートが問題である。
 新生児にマクロライド系抗菌薬を使用すると肥厚性幽門狭窄症の副作用が出やすい。従来はEMの報告のみだったか、2014年には母親がEMを内服しても同様のリスクが増えること、2015年にはAZMでも関連が報告されている。

■ ヒブ&肺炎球菌ワクチン導入のインパクト
 両者による侵襲性感染症(IPD)の頻度は激減したが差がある。
 ヒブによる髄膜炎は100%減少(つまりゼロ)、一方の肺炎球菌による髄膜炎は71%減にとどまる。

■ 肺炎球菌ワクチンと菌株のいたちごっこ
 肺炎球菌ワクチンは7価→ 13価となった。7価に含まれる菌株は100%消失したが、13価で追加された菌株はまだ発生例がある(接種回数の問題か?)。さらに、13価でもカバーされない菌株の発生はなくならない。

■ 溶連菌性咽頭炎の治療
・従来はペニシリン系抗菌薬10日間投与がゴールデンスタンダードだったが、除菌失敗が35%存在する。耐性菌はないはずなのにこれはなぜ?
→ ①周囲にβ-ラクタマーゼ産生菌(モラクセラ・カタラーリス等)がいるため、②口腔内常在菌の減少によるGASの増殖・再定着、③服薬期間が長いため服薬コンプライアンスが悪い、④GASの細胞内侵入(があるらしい)、など。
AMPC10日間とメイアクト5日間の臨床効果(症状軽減効果)・除菌率は同等であり、メイアクトの方が口腔常在菌への影響が少ない

■ 溶連菌性咽頭炎の反復感染(再燃・再感染)の実像
 再燃(relapse)と再感染(re-infection)を区別すべし。
□ 再燃(relapse):抗菌薬投与によっても除菌されなかった菌株が感染を起こす。菌の性状が同一。
□ 再感染(re-infection):新たに獲得した菌株が感染を起こす。菌株の性状は異なる。
・・・データによると間隔が1ヶ月以内の反復感染は再燃、1ヶ月以上の反復感染は再感染の可能性が大。


 今回の講演を拝聴して、溶連菌性咽頭炎の治療薬をペニシリン系からセフェム系へ変更する決心ができました。
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