インフルエンザワクチンの効果が薬により左右されるという報告を紹介します。
ステロイドの全身投与(内服や注射)や免疫抑制剤使用中は、生ワクチンは発症する危険性あり、不活化ワクチンは危険ではないけど“やり損”になる可能性があることは有名です。
しかし、他の薬剤でも影響が出ることがわかってきました。
注目すべきはイミキモドクリーム(商品名ベセルナ)。
尖圭コンジローマや日光角化症,基底細胞がんの治療に用いられる外用剤らしいです。
この薬剤を塗ってからワクチンを接種すると、免疫効果の増強を期待できるとして研究中。
効果増強を期待できる初めての薬になるかもしれません。
■ 2つの薬剤がインフルエンザワクチンの効果を左右する可能性
(2015.11.11:Medical Tribune)
ステロイドや免疫抑制薬がワクチンの効果に影響を及ぼすことが知られている。最近,ある2つの薬剤がインフルエンザワクチンの有効性を弱める,あるいは増強させる可能性を示す報告が相次いだ。
◇ 中高年期のスタチン使用がインフルエンザワクチンの効果減弱に関連
中高年者の心血管疾患の予防に広く用いられるスタチンの使用が,インフルエンザワクチンの有効性減弱に関連するとの2つの報告が米国感染症学会(IDSA)の機関誌に同時発表された。スタチンには脂質低下作用の他に抗炎症作用があり,ワクチンにより惹起される免疫反応に影響するのかが注目されていたようだ。
1つは米・Center for Global HealthのSteven Black氏らがNovartis Vaccines社による資金提供を受けて実施した研究(J Infect Dis 2015年10月28日オンライン版)。米国を含む4カ国で実施された65歳以上の高齢者約7,000人を含む2009~10年の2シーズンに行われたインフルエンザワクチン〔A/H1N1,A/H3N2,B/Brisbaneの3価でアジュバント(MF-59)あり,なしの両方〕の臨床試験データを統合し,スタチン慢性使用の有無による同ワクチン接種後の抗体価上昇の違いを比較した。
解析の結果,スタチン使用群では非使用群に比べ,3つのワクチン株に対する抗体価上昇が38~67%減少していた。同氏らは「抗体上昇の減弱はアジュバント添加の有無にかかわらず見られた他,スタチンによる影響の差もあった」と述べている。
もう1つは米・Hubert Department of Global HealthのSaad B. Omer氏らによる大規模医療保険データベースの後ろ向きコホート研究(J Infect Dis2015年10月28日オンライン版 )。2002~11年の9シーズンのデータから,導入基準を満たした14万人を抽出。インフルエンザワクチン接種者の,スタチン使用の有無によるシーズン中の同ワクチンの有効性(急性呼吸器疾患による病院受診率の減少)を比較した。 複数の関連因子を調整し,解析を行った結果,スタチン使用群では非使用群に比べ同疾患による病院受診率の減少に対する有効性は弱いとの結果が示された。 同氏らは,今後より強固な評価項目であるインフルエンザ確定診断による詳しい検討が必要と述べている。
なお,IDSAは同日のプレスリリースで,2件の新たな報告は妥当な方法で実施され,重要な問題点を提起したが,臨床現場に影響を与える結論の段階ではないと説明している。
◇ 皮膚クリームがブースターに!? 後期臨床試験の成績
インフルエンザウイルスは変異を繰り返し,周期的な流行は避けられないからこそ,より有効なワクチンの開発に向けた研究が進められている。そのような中,日本でも承認されている皮膚外用剤をインフルエンザワクチンの「ブースター」に使用できないかとの試みが後期臨床試験に進んでいる。
中国・University of Hong KongのIvan Fan-Ngai Hung氏らはイミキモドクリーム(商品名ベセルナ)のインフルエンザワクチン皮下接種前の塗布が,同ワクチンの免疫原性を増強させるかどうかを,健康ボランティア160例による臨床第b/相試験で検討。その結果をLancet Infectious Disease2015年11月8日オンライン版に報告した。
イミキモドクリームは尖圭コンジローマや日光角化症,基底細胞がん(日本では承認外)の治療に用いられる。ウイルスへの直接的な増殖抑制作用はないが,塗布部位で各種サイトカインの産生を促進し,細胞性免疫応答を活性化させる機序などが知られている。
同氏らは2013/14シーズンに,18~30歳の健康ボランティア160人を①イミキモド+3価ワクチン皮下接種,対照群として②プラセボクリーム+同ワクチン皮下接種③プラセボクリーム+同ワクチン筋肉内接種④イミキモド+生理食塩水接種―の4群に分け,各群の抗体陽転率を比較した。
②~④の3つの群における試験7日目の抗体陽転率が45~75%に対し,①の抗体陽転率は98%に上っていた。有害事象は少なく,発症頻度に差は見られなかった。また,同氏らは「検討対象のワクチンに含まれない,A/H3N2などの非ワクチン株に対する抗体陽転率の上昇も確認された」とも報告。今後,他の注射ワクチンなどでの有効性や安全性に関する検討が必要と述べている。
ステロイドの全身投与(内服や注射)や免疫抑制剤使用中は、生ワクチンは発症する危険性あり、不活化ワクチンは危険ではないけど“やり損”になる可能性があることは有名です。
しかし、他の薬剤でも影響が出ることがわかってきました。
注目すべきはイミキモドクリーム(商品名ベセルナ)。
尖圭コンジローマや日光角化症,基底細胞がんの治療に用いられる外用剤らしいです。
この薬剤を塗ってからワクチンを接種すると、免疫効果の増強を期待できるとして研究中。
効果増強を期待できる初めての薬になるかもしれません。
■ 2つの薬剤がインフルエンザワクチンの効果を左右する可能性
(2015.11.11:Medical Tribune)
ステロイドや免疫抑制薬がワクチンの効果に影響を及ぼすことが知られている。最近,ある2つの薬剤がインフルエンザワクチンの有効性を弱める,あるいは増強させる可能性を示す報告が相次いだ。
◇ 中高年期のスタチン使用がインフルエンザワクチンの効果減弱に関連
中高年者の心血管疾患の予防に広く用いられるスタチンの使用が,インフルエンザワクチンの有効性減弱に関連するとの2つの報告が米国感染症学会(IDSA)の機関誌に同時発表された。スタチンには脂質低下作用の他に抗炎症作用があり,ワクチンにより惹起される免疫反応に影響するのかが注目されていたようだ。
1つは米・Center for Global HealthのSteven Black氏らがNovartis Vaccines社による資金提供を受けて実施した研究(J Infect Dis 2015年10月28日オンライン版)。米国を含む4カ国で実施された65歳以上の高齢者約7,000人を含む2009~10年の2シーズンに行われたインフルエンザワクチン〔A/H1N1,A/H3N2,B/Brisbaneの3価でアジュバント(MF-59)あり,なしの両方〕の臨床試験データを統合し,スタチン慢性使用の有無による同ワクチン接種後の抗体価上昇の違いを比較した。
解析の結果,スタチン使用群では非使用群に比べ,3つのワクチン株に対する抗体価上昇が38~67%減少していた。同氏らは「抗体上昇の減弱はアジュバント添加の有無にかかわらず見られた他,スタチンによる影響の差もあった」と述べている。
もう1つは米・Hubert Department of Global HealthのSaad B. Omer氏らによる大規模医療保険データベースの後ろ向きコホート研究(J Infect Dis2015年10月28日オンライン版 )。2002~11年の9シーズンのデータから,導入基準を満たした14万人を抽出。インフルエンザワクチン接種者の,スタチン使用の有無によるシーズン中の同ワクチンの有効性(急性呼吸器疾患による病院受診率の減少)を比較した。 複数の関連因子を調整し,解析を行った結果,スタチン使用群では非使用群に比べ同疾患による病院受診率の減少に対する有効性は弱いとの結果が示された。 同氏らは,今後より強固な評価項目であるインフルエンザ確定診断による詳しい検討が必要と述べている。
なお,IDSAは同日のプレスリリースで,2件の新たな報告は妥当な方法で実施され,重要な問題点を提起したが,臨床現場に影響を与える結論の段階ではないと説明している。
◇ 皮膚クリームがブースターに!? 後期臨床試験の成績
インフルエンザウイルスは変異を繰り返し,周期的な流行は避けられないからこそ,より有効なワクチンの開発に向けた研究が進められている。そのような中,日本でも承認されている皮膚外用剤をインフルエンザワクチンの「ブースター」に使用できないかとの試みが後期臨床試験に進んでいる。
中国・University of Hong KongのIvan Fan-Ngai Hung氏らはイミキモドクリーム(商品名ベセルナ)のインフルエンザワクチン皮下接種前の塗布が,同ワクチンの免疫原性を増強させるかどうかを,健康ボランティア160例による臨床第b/相試験で検討。その結果をLancet Infectious Disease2015年11月8日オンライン版に報告した。
イミキモドクリームは尖圭コンジローマや日光角化症,基底細胞がん(日本では承認外)の治療に用いられる。ウイルスへの直接的な増殖抑制作用はないが,塗布部位で各種サイトカインの産生を促進し,細胞性免疫応答を活性化させる機序などが知られている。
同氏らは2013/14シーズンに,18~30歳の健康ボランティア160人を①イミキモド+3価ワクチン皮下接種,対照群として②プラセボクリーム+同ワクチン皮下接種③プラセボクリーム+同ワクチン筋肉内接種④イミキモド+生理食塩水接種―の4群に分け,各群の抗体陽転率を比較した。
②~④の3つの群における試験7日目の抗体陽転率が45~75%に対し,①の抗体陽転率は98%に上っていた。有害事象は少なく,発症頻度に差は見られなかった。また,同氏らは「検討対象のワクチンに含まれない,A/H3N2などの非ワクチン株に対する抗体陽転率の上昇も確認された」とも報告。今後,他の注射ワクチンなどでの有効性や安全性に関する検討が必要と述べている。