小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アレルギー疾患予防のキーワードは「経湿疹感作」と「経口免疫寛容」

2019年08月30日 15時25分25秒 | アトピー性皮膚炎
 小児のアレルギー疾患は、以下の順番で発症することが昔から観察されてきました;

 (アトピー性皮膚炎)
    ⇩
 (食物アレルギー)
    ⇩
 (気管支喘息)
    ⇩
 (アレルギー性鼻炎/花粉症)

1980年代に、馬場実先生(同愛記念病院)はこの現象を「アレルギーマーチ」と呼びました。
もう40年も前のことです。
しかし当時、そのメカニズムを説明することは誰もできませんでした。
私が小児科医になりアレルギー学会へ顔を出すようになった頃は、カラクリがわからないもどかしさから「説明できないなら、馬場先生はアレルギーマーチ説を撤回すべきではないか」という厳しい雰囲気もありました。

時は流れ、近年このメカニズムを説明できる病態モデルが提唱されました。
それは「二重抗原曝露説」。
抗原(=アレルゲン)が人体に侵入する経路により、免疫系の反応が異なるという学説です。
簡単に云うと、
・口から入ると消化吸収されて栄養となり、免疫反応は起こらない(経口免疫寛容
・湿疹(皮膚の炎症部位)から侵入すると、過剰な免疫反応が起こる(経皮感作/経湿疹感作
となります。

なるほど、これにならうといろんな現象が説明しやすくなります。
しかし本当なのか? と疑問をぬぐいきれない雰囲気もありました。

そんなタイミングで、これを証明する事件が発生しました。
それは「“茶のしずく石けん”事件」です。
ある地域で、大人の女性の小麦アレルギーの多発が観察されました。
ふつう、小麦アレルギーは乳児期に発症する病気ですが、大人、それも女性だけに発症するのは不思議な現象です。
もちろん、それまで小麦を食べても無症状だった人たちに発症したのですから、担当医師は頭を悩ませました。
症状の特徴として、顔が赤く腫れ上がることが観察されました。

いろいろ調べた結果、患者さんの共通事項として“茶のしずく石けん”の使用が浮上しました。
この石けんの成分分析により、泡立ちをよくするために小麦成分が添加されていることが判明しました。
つまり、石けんの小麦成分が皮膚から微量体内に侵入し、過剰な免疫反応を惹起し、小麦アレルギーを造ったのです。
そして、石けん使用を中止することにより、症状が軽快する例がたくさん観察されました。

この事件は、はからずも二重抗原曝露説を証明することになりました。

さて、
「アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはどちらが先なのか?」
という疑問が昔から皮膚科と小児科の間で議論されてきましたが、二重抗原曝露説はこれも解決してくれました。
つまり、アトピー性皮膚炎が先で、経湿疹感作により食物アレルギーを発症するというメカニズム。

今や、二重抗原曝露説は揺るぎない理論となっています。
さて、この学説を臨床応用する番です。

経湿疹感作 → 湿疹を完璧にコントロールし、
経口免疫寛容→ 皮膚から浸入する前に経口投与を始めれば(=離乳食早期開始)、
 ⇩
食物アレルギーの発症を予防できるかもしれない!

と誰もが考えました。
現在、これを証明すべく、いろんな臨床研究が行われています。

その現況をまとめた論文を先日届いたばかりの小児アレルギー学会誌(Vol.33, No.3 2019)に見つけました。
2019年9月時点でわかっていること、わかっていないことを整理するのに役立ちます。

<ポイント>
経皮/経湿疹感作
Q. アトピー性皮膚炎、食物アレルギーは予防可能か?
A. 新生児期から保湿剤を積極的に定期塗布することにより、予防できる可能性がある(複数の報告あり)。

Q. 抗炎症薬(=ステロイド外用薬、免疫抑制剤外用薬)の早期開始は食物感作を予防可能か?
A. 現在検討中(成育医療センターのPACIスタディ)。ランダム化比較試験の報告は乏しい。

PACIスタディ:そう痒のある皮疹出現から28日以内の生後7〜13週のアトピー性皮膚炎乳児650人に対し、プロアクティブに抗炎症薬を使用する群と標準療法行う群にランダム化して鶏卵アレルギーの発症率を評価する計画。

経口免疫寛容/離乳食早期開始
Q. アレルゲンになりやすい食物を乳児早期に接種開始することによりピーナッツ・アレルギーは予防可能か?
A. 予防可能(LEAPスタディ:Du Toit, 2015)。

Q. アレルゲンになりやすい食物を乳児早期に接種開始することにより卵アレルギーは予防可能か?
A. まだ報告が一定していない(失敗例:STARスタディ、HEAPスタディ、BEATスタディ、STEPスタディ、成功:PETITスタディ)。
 メタアナリシスによると、卵の量と加熱状態がポイントになる(Al-Saud, 2017)。
 臨床研究の失敗例では、①“生”卵粉末を摂取していた、②初期量が多かった、③スキンケアに関して特別な介入を行わなかった、ことから、ゆで卵による導入と湿疹治療の同時介入を要すると考えられるようになった(Matsumoto K, et al. Are both early egg introduction and eczema treatment necessary for primary prevention of eggg allergy? J Allergy Clin Immunol 2018; 141: 1997-2001)。



スキンケア・アトピー性皮膚炎管理とアレルギー疾患発症予防
 堀向健太:東京慈恵会医科大学小児科(日小ア誌 2019;33:316-325)

気になった箇所をメモしておきます;

アトピー性皮膚炎が皮膚バリア破壊からの感作を通じてアレルギー疾患の発症リスクを上げる、いわゆる「アトピーマーチ」の起点となるという報告が増えている(Roduit C, et al. Phenotypes of Atopic Dermatitis Depending on the Timing of Onset and Progression in Childhood. JAMA Pediatr 2017;171:655-662)。そのため、皮膚がアトピーマーチ予防のターゲットかもしれないと考えられるようになった(Lowe AJ, et al. The skin as a target for prevention of the atopic march. Ann Allergy Asthma Immunol 2018:120:145-151)。

アレルギー疾患の遺伝性
 両親のうち1人にアレルギー疾患歴がある場合、児のアトピー性皮膚炎発症率は37.9%、両親ともにある場合は50.5%(Bohme M. et al. Family history and risk of atopic dermatitis in children up to 4 years. Clin Exp Allergy 2003;33:1226-1231)。

妊娠中・授乳中の食物除去やダニ抗原回避というアプローチでは、アトピー性皮膚炎は予防できないというメタアナリシスがすでに発表されている。ビタミンD仮説や衛生仮説も実現可能な予防策にはなり得ていない。そこで注目されるのが皮膚バリア機能の保護から介入する方法である。

ポストフィラグリン時代
 2006年に発表されたフィラグリン遺伝子変異(Palmer CN, et al. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Gent 2006;38:441-446)は、バリア機能からのアトピー性皮膚炎予防に注目させるようになったが、しかし最近、Netherton症候群でみられるSPINK5遺伝子多型や角質細胞同士を接着する細胞接着蛋白であるコルネオデスモシンをコードしている遺伝子もバリア機能低下をきたし、フィラグリンだけでは説明できないことも判明してきた。

皮膚バリア機能を反映する経皮水分蒸散量(transepidermal water loss: TEWL)が高値はアトピー性皮膚炎発症を予測するという結果が複数報告されている。
→ 新生児期から皮膚バリアを積極的に補強する保湿剤定期塗布をするという手法により、アトピー性皮膚炎発症を予防できるのではないか?

保湿剤塗布によるアトピー性皮膚炎予防(2014年)
 両親もしくは兄弟にアトピー性皮膚炎の既往がある生後1週間いないのハイリスク新生児118名を、介入群59名(乳液タイプの保湿剤を毎日全全身に1日1界以上塗布)と、対照群59名(悪化部位のみワセリンを塗布)にランダム割り付けし、主要評価項目を生後32週までのアトピー性皮膚炎累積発症率とした。結果として、介入群においてアトピー性皮膚炎発症率は32%有意に低下した。しかし、副次的評価項目として検討した生後32週事典での卵白・オボムコイド感作率は、介入群と対照群に有意差を認めていない。しかし、アトピー性皮膚炎発症群と非発症群で比較すると、発症群では卵白感作率が有意に高いという結果だった(オッズ比2.86:95%信頼区間[confidence interval:CI]1.22-6.73)。
Horimukai K, et al. Application of moisturizer to nenates prevents development of atopicc dermatitis. J Allergy Clin Immunol 2014;134:824-830

新生児期からの保湿剤定期使用は食物感作を減少させる(PEBBLESスタディ:Phase2、2018)
 オーストラリアでの臨床研究。生後3週間のハイリスク新生児80人を保湿剤1日2回使用する群と対照群にランダム化し生後6ヶ月まで経過を観察した上で、生後12ヶ月でのアトピー性皮膚炎発症率と食物感作率を検討し、生後12ヶ月時のアトピー性皮膚炎発症率と食物感作率が低下する傾向が認められ(有意差なし)、さらに週当たり5日以上の保湿剤使用を受けた乳児のみで解析すると、保湿剤塗布群における12ヶ月時の食物感作率の有意な減少を認めた(21人中0人[0%] vs 36人中7人[19%])
Lowe A, et al. A randomised trial of a barrier lipid replacement strategy for the prevention of atopic dermatitis and allergic sensitisation: The PEBBLES Pilot Study. Br J Dermatol 2018;178:e19-e21

ピーナッツアレルギーは予防可能(LEAPスタディ、2015年)
 生後4ヶ月〜11ヶ月未満で(重症の)湿疹または卵アレルギーのあるハイリスク乳児640人に対し、ピーナッツ摂取群・ピーナッツ除去群にランダム化し、5歳まで観察したところ、ピーナッツ摂取群は有意にピーナッツアレルギー発症が少なかった(試験開始時に皮膚プリックテスト陰性の530人において、摂取群1.9%、除去群13.7%;p<0.001)
Du Toit G, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med 2015; 372: 803-813.)

卵アレルギーの予防に成功(PETITスタディ、2017年)
 アトピー性皮膚炎を発症している生後4〜5ヶ月の乳児121人を対象に、スキンケアに加え皮膚炎の状態に応じたプロアクティブ療法を行い、卵摂取群と卵除去群にランダムに割り付け、卵摂取群は生後6ヶ月から加熱卵粉末を卵として0.2g相当で継続摂取し、1歳で卵1/2個の負荷試験を実施、卵摂取群は卵除去群と比較して、卵アレルギーの発症リスクが約1/5になった。
Natsume O, et al. Two-step egg introduction for prvention of egg allergy in high-risk infants with eczema(PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2017; 389: 276-286

卵早期開始により卵アレルギー予防を試みたランダム化比較試験6件(計3032人)に対するメタアナラシス(Al-Saud, 2017)
 卵の早期導入の卵アレルギー発症予防に対する相対リスク(relative risk:RR)は0.60(95%CI 0.44-0.82)、予防効果は卵蛋白質の摂取量が4000mg/週以下の法が、それより炉奥摂取するよりも予防効果が大きかった。
Al-Saud B, Sigurdardottir ST. Early Introduction of Egg and the Development of Egg Allergy in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int Arch Allergy Immunol 2018; 177: 350-359



 当院では約3年前からPACIスタディと同じようなプロトコールで診療してきました。
 乳児早期(生後1〜2ヶ月)に湿疹を主訴に受診された患者さんに対して、痒みのない場合はアズノール®や亜鉛華軟膏で様子観察し、痒みを伴う場合は積極的にステロイド外用薬を導入、湿疹を完璧にコントロールしながらステロイド外用薬を減量(間隔を開けていく)する方法です。
 開始後、半年くらいで卒業(ステロイド外用薬を中止)できる例がほとんどです。
 すると確かに、以前より卵アレルギーが減少してきた印象があります。
 ただ、ゼロにはなりません。
 おそらく、より効果的に予防するには一旦湿疹が発症してからの対応では遅いのではないかと思われ、新生児期にTEWL(transepidermal water loss)を測定してハイリスク児には湿疹の発症前から保湿ケアを始めるべきであると感じています。
 今後、以下の臨床研究が二本柱で行われ、アトピー性皮膚炎/食物アレルギー〜アレルギーマーチ予防が現実味を帯びてくる時代が来ることでしょう。
① 新生児期にTEWL高値のハイリスク児に対して保湿剤定期使用によるアトピー性皮膚炎予防と発症例は厳格に治療管理。
② アレルゲンになりやすい食物は遅らせることなく離乳食開始。
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小児アトピー性皮膚炎の目の周りの治療について

2019年08月16日 16時17分57秒 | アトピー性皮膚炎
 当院では乳児アトピー性皮膚炎の診療を積極的にしています。
 そのため、日々「小児科開業医がアトピー性皮膚炎の診療を安全に行う方法」を模索してきました。

 赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を治療していると、気になるのが目の周りの湿疹です。
 ほかの部位同様、ステロイド軟膏で治療するのですが、その安全性に関するデータが十分とは言えません。

 眼は脳神経が唯一むき出しになっている器官であり、ステロイド外用薬の過剰な使用は眼圧上昇(〜緑内障)のリスクがあると昔から教科書に記述されています。
 しかし、
・どのランクのステロイド外用薬をどのくらいの量、どのくらいの期間使用すると危険なのか?
逆に、
・どのランクのステロイド外用薬をどのくらいの量、どのくらいの期間使用する分には安全なのか?
をはっきり書いてある本を見たことがありません。

 2018年に改訂された、皮膚科&アレルギー科統一「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」の「眼への副作用」の項目には、

“ステロイド外用治療後の緑内障の症例は多数報告されており、緑内障のリスクを高める可能性は十分にあるが、弱いランクのステロイドを少量使用する分にはリスクは低いと考えられる。眼周囲や眼瞼皮膚にステロイド外用薬(特に強いランクのもの)を使用する際は,外用量や使用期間に注意する必要があるが、十分に炎症を抑え寛解状態に向けていくことも重要であり,タクロリムス軟膏への切り替えも検討すべきである。また、これらの眼合併症が懸念される場合は、眼科との連携が重要である。”

と玉虫色の表現で記載されています。
このどっちつかずの文章に、フツフツと怒り・・・ではなく疑問が湧いてきます。

弱いランクのステロイドを少量使用する分にはリスクは低い
→ 弱いランクとはどれを指しているのか? 少量とは標準とされるFTU(Finger tip unit)より少ないという意味か?

強いランクのステロイド外用薬を使用する際は、外用量や使用期間に注意する必要がある
→ 強いランクとはどれを指しているのか? 具体的な外用量や使用期間の安全域がなぜ書かれていないのか? 

十分に炎症を抑え寛解状態に向けていくことも重要
→ ステロイド外用薬の安全域を示さずに「目の周りのステロイド外用薬は弱いランクを少し使って治療してください、強いランクは危険なので自己責任で」では、無責任きわまりない。

タクロリムス軟膏への切り替えも検討すべきである
→ タクロリムス軟膏(商品名:プロトピック®軟膏)の適応は2歳以上なので、乳児には使用できません!

実は、このガイドラインの作成責任者である加藤則人先生(京都府立医科大学皮膚科教授)に講演会で直接質問したことがあります。

Q. 「乳児アトピー性皮膚炎の目の周りに安全に使用できるステロイド外用薬のランクと塗布量、塗布期間を教えてください」
A. 「乳児アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬と副作用としての眼圧上昇のデータはありません」

・・・これが現状です。安全性を担保できずに勧めるなんて、日本政府の原発政策と同じではありませんか。
さらに、

A. 「近年、小児の眼圧が簡単に測定できる器械が登場しましたので、近隣眼科医と連携して診療してください」

とアドバイスをいただきました。

「えっ、眼圧検査が開業眼科医でも可能になったんだ!?」
と明るい光が射すのを感じました。
早速近隣の眼科開業医&総合病院眼科に片っ端から電話で確認しました。
結果は・・・全滅です。
その機械を導入している眼科は皆無で、某眼科医から「大学病院レベルの検査ですよ」と諭されました。
そう、加藤先生は大学病院勤務なのでした。

ムムム・・・小児科開業医がアトピー性皮膚炎の診療を安全に行うことはできないのだろうか?
この疑問を持ちつつ、「目の周りに安全にステロイド外用薬を使用する方法」に関する情報を、日々アンテナを張って集めています。

さて今回、商業系医学雑誌の小児科診療2019年8月号「特集:子どものあたま、かお、くびの病気〜コンサルのタイミング」(診断と治療社)に「眼囲のアトピー性皮膚炎」(味木 幸 先生著)という項目を見つけ、購入して読んでみました。

今までの参考書と異なるところは、アトピー性皮膚炎の眼周囲湿疹にはアレルギー(あるいはアトピー性)性結膜炎を伴うことが多いので、点眼薬を併用すべし、との記載です。
あとは、従来の情報と何ら変わりはありませんでした。

執筆者は眼科医なので、当然ながら眼科との連携を勧めています。
しかし文中でも触れていますが、一般眼科医は一番弱いランクのステロイド外用薬を処方することが多く、しかもそれは抗生物質との合剤なので、長期に使用しているとかぶれ(接触皮膚炎)を起こしやすい、だから眼科医へ紹介すると悪化すると小児科医の間では囁かれています。
・・・困ったものです。

さらに「弱いステロイドを漫然と長期に使うよりは比較的強いステロイド軟膏でしっかり治療」とも書いてあるので、やはり眼圧を検査&管理できる眼科医に任せた方がよいのか・・・悩ましい。
でも、「眼軟膏でない場合は、目に入らないように気をつけなければならない」を赤ちゃんに対して言っても、無理ですね。

筆者は「眼周囲のアトピー性皮膚炎は小児科医でも初期治療を行える場合が多い」と書かれています。
結局、眼圧測定ができない小児科医は、そのスタンスで診療するしかなさそうです。


<メモ>

・眼囲の症状が強い場合には眼科専門医との連携が必要である。

・眼科的検査は小児、非協力的な患者には行うことが難しい。

・眼圧検査は必須である。眼圧測定にはいろいろな機種の器械があり、アトピー性皮膚炎合併の眼瞼は固く、まつ毛が邪魔をして制下飼うに計れないこともあるので、専門性の高い検査である。

・精密眼底検査、光干渉断層撮影、視野検査の3つの結果が一致することで緑内障と診断していく。

ステロイド緑内障の場合、たった数週間で眼圧が急上昇し、重症緑内障になってしまい、失明に至る例があり、早めにご紹介いただきたい

・治療は、①点眼治療、②ステロイド眼軟膏
 まず点眼治療である。眼瞼炎だから軟膏塗布が基本と考えがちだが、その症状の元が眼瞼皮膚のみよりも、眼瞼結膜にもあることが多いからである。眼瞼結膜に所見がある場合は、まず、点眼を第一選択として用いる。抗アレルギー点眼液が無効な場合は、ステロイド点眼液、免疫抑制薬点眼液(タリムス®、パピロックミニ®)を追加する。
 眼瞼に対してはステロイドの眼軟膏を用いる。眼軟膏は、強度でいうと(非常に弱い〜弱い)のカテゴリーに入るものが多いので、それにて効果がなく、漫然と長期的に使用する場合には中止すべきである。むしろ、皮膚科で用いている比較的強いステロイド軟膏でしっかりと治療し、落ち着かせた方がよい場合もある。眼軟膏でない場合は、目に入らないように気をつけなければならない。
 また、眼軟膏の中で、抗菌薬のフラジオマイシン硫酸塩っとステロイドの合剤(ネオメドロールEE®)が多用されているが、フラジオマイシンは頻度の高い接触アレルゲンであるため注意が必要である。

・ステロイド外用薬の使用には、眼圧の上昇に気をつけるべきである。眼瞼皮膚は薄いため、軟膏でも眼圧上昇する場合がある。

・眼周囲のアトピー性皮膚炎には、小児科医でも抗アレルギー薬の点眼薬や内服、ステロイドやタクロリムス軟膏により、初期治療を行える場合が多い。しかしながら、・・・ステロイド性緑内障などにより、失明に至るケースもあるため、眼科との連携が安全と考える。
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