アトピー性皮膚炎患者さんにとって、入浴は「体を清潔にする」メリットと「皮脂を落とすので乾燥する」デメリットがあります。
メリットを活かしつつデメリットを解消するには「保湿ケア」が欠かせません。
日本では毎日が当たり前の入浴ですが、アメリカの小児科学会が提示したガイドラインには「入浴は数日に1回でもOK」と記されています。
■ 小児アトピー性皮膚炎「場合により入浴は2~3日に1回でもOK」
米小児科学会が非専門医向けGL
(2014.11.26:メディカル・トリビューン)
米国小児科学会(AAP)が皮膚科やアレルギー科を専門としないプライマリケア医向けのアトピー性皮膚炎(AD)に関するガイダンス“Atopic Dermatitis: Skin-Directed Management”を発表(pediatrics 2014年11月24日オンライン版)。ADケアの行動計画として,ステロイド外用剤の使用の目安や十分な保湿などの日常的なケアに関する勧告を記載した。本人が入浴を楽しめない場合などにはその頻度を2~3日に1回とすることなどを推奨している。
□ 「ADへの早期介入でアレルギーマーチの進展が予防できる可能性」
アレルギー患者の増加に伴いAD患児は増えているとAAP。ADは再発を繰り返す湿疹が特徴であり,患児本人やその家族はもちろん診療に当たる医師もフラストレーションを感じることがあると述べている。
一方,治療薬の中心となるステロイド外用剤への誤った認識や不安などから,十分な治療効果が得られていない場合もあると指摘。AD患児の多くを診療している皮膚科やアレルギー科を専門としない小児科医が,ガイダンスにより最新のエビデンスに基づく情報でAD患児のケアの質を向上させたいと背景を説明している。
ガイダンスでは,2008年頃からADは皮膚バリア機能の原発性の異常によるとの仮説を裏付ける報告が行われており,AD治療には皮膚の直接管理(skin-directed management)が特に重要との見解を示している。一方,食物アレルギーとの関連については「複雑な関わりがあるが,その関連が強調されすぎているようだ」と指摘。「真の食物によるADはまれ」で,食物アレルギーが確定診断されていない場合,卵アレルギーなどの一部の例外を除き「ADにおける除去食の意義を支持するエビデンスは少ない」との政府機関(NIAID)ガイドラインの見解を紹介している。
一方,ADを起点に喘息やアレルギー性鼻炎を発症する「アレルギーマーチ」については,早期にADの至適治療が行われることで進展を抑制できる可能を示す報告があると説明。また,皮膚の直接管理を実施しているにもかかわらず,十分な治療効果が得られない場合にはアレルギー性接触性皮膚炎(ACD)の可能性も考慮に入れるべきと述べている。
ガイダンスではAD管理のゴールは皮膚バリア機能の修復と維持を目標としたスキンケアの継続を基本に掲げ,行動計画を示した。項目の一部は次の通り。
・子供が入浴を楽しんでいれば毎日10~15分,ぬるめのお湯に浸かっても良い。もし入浴を楽しんでいない,あるいは(保護者が)水分が子供の皮膚に刺激を与えていると感じる時には入浴を2~3日に1回にする。石けんは刺激の少ないものを汚れた場所,入浴の最後にのみ使用する
・入浴後には体の水分は軽く押さえて取り,湿ったままにしておく
・保湿剤(クリームまたは軟膏が望ましい,ガイドラインでは別途「クリームは添加剤がアトピー症状の刺激になることがある」と説明している)を顔と体全体に塗布する。処方された外用剤および保湿剤は入浴後数分以内,皮膚が完全に乾かないうちに使用すべき
・処方された外用剤は赤みや湿疹病変が無くなるまで続ける。2週間経っても湿疹が改善しない場合には医師に相談する
・湿疹がきれいになった後も顔全体,全身の保湿を継続する
□ 入浴回数「十分な検討なく議論が続いている」
ガイダンスでは,AD患児の適切な入浴回数については十分な検討がなく,議論が続いていると指摘。入浴後に保湿が行われていれば,湯船に浸かることや毎日の入浴はAD患者にとってベネフィットがあるとの報告を紹介し,個別の入浴回数は患児の状態や本人の入浴に対する意欲に応じて調節すべきとの見解を示している。
□ 日本では政府がAD治療の格差解消に取り組み
日本では国民の10人に1人がADに罹患していると推計されている。2010年頃から政府がアレルギー情報センター公式サイトなどを立ち上げ,日本皮膚科学会による治療ガイドラインの情報などを国民や医療関係者に提供。ADを取り巻く問題について「特にステロイド外用薬に対する一部の偏った情報により,ステロイド忌避,拒否症の患者が増加し,さらに医学的根拠のない治療法が一部の医師あるいは医師以外のものによってなされ,患者を肉体的,精神的,経済的に苦しめている実情がある」と説明,問題の解消に取り組む姿勢を示している。さらに,今年6月にはアレルギー疾患医療の均てん化などを盛り込んだアレルギー疾患対策基本法が施行されている。
最近、当院では看護師スタッフによる「スキンケア指導」をはじめました。
ポイントは、
・入浴の際、体は泡で洗う。
・保湿剤は毎日塗る。
・塗り薬は少量をすり込むのではなく、少しベタ付くくらいたっぷり塗る。
の3点。
これをしっかりやるだけで、同じ薬を処方しても改善度が全然違います!
メリットを活かしつつデメリットを解消するには「保湿ケア」が欠かせません。
日本では毎日が当たり前の入浴ですが、アメリカの小児科学会が提示したガイドラインには「入浴は数日に1回でもOK」と記されています。
■ 小児アトピー性皮膚炎「場合により入浴は2~3日に1回でもOK」
米小児科学会が非専門医向けGL
(2014.11.26:メディカル・トリビューン)
米国小児科学会(AAP)が皮膚科やアレルギー科を専門としないプライマリケア医向けのアトピー性皮膚炎(AD)に関するガイダンス“Atopic Dermatitis: Skin-Directed Management”を発表(pediatrics 2014年11月24日オンライン版)。ADケアの行動計画として,ステロイド外用剤の使用の目安や十分な保湿などの日常的なケアに関する勧告を記載した。本人が入浴を楽しめない場合などにはその頻度を2~3日に1回とすることなどを推奨している。
□ 「ADへの早期介入でアレルギーマーチの進展が予防できる可能性」
アレルギー患者の増加に伴いAD患児は増えているとAAP。ADは再発を繰り返す湿疹が特徴であり,患児本人やその家族はもちろん診療に当たる医師もフラストレーションを感じることがあると述べている。
一方,治療薬の中心となるステロイド外用剤への誤った認識や不安などから,十分な治療効果が得られていない場合もあると指摘。AD患児の多くを診療している皮膚科やアレルギー科を専門としない小児科医が,ガイダンスにより最新のエビデンスに基づく情報でAD患児のケアの質を向上させたいと背景を説明している。
ガイダンスでは,2008年頃からADは皮膚バリア機能の原発性の異常によるとの仮説を裏付ける報告が行われており,AD治療には皮膚の直接管理(skin-directed management)が特に重要との見解を示している。一方,食物アレルギーとの関連については「複雑な関わりがあるが,その関連が強調されすぎているようだ」と指摘。「真の食物によるADはまれ」で,食物アレルギーが確定診断されていない場合,卵アレルギーなどの一部の例外を除き「ADにおける除去食の意義を支持するエビデンスは少ない」との政府機関(NIAID)ガイドラインの見解を紹介している。
一方,ADを起点に喘息やアレルギー性鼻炎を発症する「アレルギーマーチ」については,早期にADの至適治療が行われることで進展を抑制できる可能を示す報告があると説明。また,皮膚の直接管理を実施しているにもかかわらず,十分な治療効果が得られない場合にはアレルギー性接触性皮膚炎(ACD)の可能性も考慮に入れるべきと述べている。
ガイダンスではAD管理のゴールは皮膚バリア機能の修復と維持を目標としたスキンケアの継続を基本に掲げ,行動計画を示した。項目の一部は次の通り。
・子供が入浴を楽しんでいれば毎日10~15分,ぬるめのお湯に浸かっても良い。もし入浴を楽しんでいない,あるいは(保護者が)水分が子供の皮膚に刺激を与えていると感じる時には入浴を2~3日に1回にする。石けんは刺激の少ないものを汚れた場所,入浴の最後にのみ使用する
・入浴後には体の水分は軽く押さえて取り,湿ったままにしておく
・保湿剤(クリームまたは軟膏が望ましい,ガイドラインでは別途「クリームは添加剤がアトピー症状の刺激になることがある」と説明している)を顔と体全体に塗布する。処方された外用剤および保湿剤は入浴後数分以内,皮膚が完全に乾かないうちに使用すべき
・処方された外用剤は赤みや湿疹病変が無くなるまで続ける。2週間経っても湿疹が改善しない場合には医師に相談する
・湿疹がきれいになった後も顔全体,全身の保湿を継続する
□ 入浴回数「十分な検討なく議論が続いている」
ガイダンスでは,AD患児の適切な入浴回数については十分な検討がなく,議論が続いていると指摘。入浴後に保湿が行われていれば,湯船に浸かることや毎日の入浴はAD患者にとってベネフィットがあるとの報告を紹介し,個別の入浴回数は患児の状態や本人の入浴に対する意欲に応じて調節すべきとの見解を示している。
□ 日本では政府がAD治療の格差解消に取り組み
日本では国民の10人に1人がADに罹患していると推計されている。2010年頃から政府がアレルギー情報センター公式サイトなどを立ち上げ,日本皮膚科学会による治療ガイドラインの情報などを国民や医療関係者に提供。ADを取り巻く問題について「特にステロイド外用薬に対する一部の偏った情報により,ステロイド忌避,拒否症の患者が増加し,さらに医学的根拠のない治療法が一部の医師あるいは医師以外のものによってなされ,患者を肉体的,精神的,経済的に苦しめている実情がある」と説明,問題の解消に取り組む姿勢を示している。さらに,今年6月にはアレルギー疾患医療の均てん化などを盛り込んだアレルギー疾患対策基本法が施行されている。
最近、当院では看護師スタッフによる「スキンケア指導」をはじめました。
ポイントは、
・入浴の際、体は泡で洗う。
・保湿剤は毎日塗る。
・塗り薬は少量をすり込むのではなく、少しベタ付くくらいたっぷり塗る。
の3点。
これをしっかりやるだけで、同じ薬を処方しても改善度が全然違います!