小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

佐橋紀男氏のスギ花粉着床状況フィールドワーク2018

2018年01月27日 08時24分32秒 | アレルギー性鼻炎
 佐橋氏は「花粉 Learning」というHPを主催し、長年自分が現場に足を運んでスギ花粉の着き具合を調べる現場派の学者です。
 気象庁やウェザーニュースなどの大手は、近年の飛散実績や前年夏の日照時間などから計算で花粉飛散予想を割り出しますが、やはり「スギが実際にどれだけ花粉を着けているか」という情報に勝るものはありません。
 毎年私は彼の報告記事を待っています。
 なかなか掲載されないと、御高齢のこともあり「健康に何か問題が起きたのかな?」などと心配してしまいます。
 ・・・今年もようやくメディカル・トリビューンに登場しました(元気そうで何より)。
 関東地方のフィールドワークによると、「(千葉県)今年の花粉飛散は過去10年平均および昨年に比べやや多くなる見込み」「(関東地方)おおむねスギ・ヒノキ合算で6,000個の飛散が見込まれ、ところによっては前年の1.5倍程度に達する可能性もある」だそうです。

■ スギ花芽はほぼ全面的に着生-野外調査から
10年平均、昨年よりやや多い飛散か
2018年01月25日:メディカル・トリビューン
 スギやヒノキの枝に着生した花芽の個数や大きさなどを観測する野外調査は、翌年の花粉飛散量を予測する上で大きな手がかりとなる。今年(2017年)11月24日、千葉県富里市において元東邦大学薬学部教授の佐橋紀男氏が実施した花芽の野外調査に同行した。
 調査では、同氏が毎年定点観測しているスギ林の各エリアから40本をサンプルとして抽出し、花芽の着生状況によりA〜Dでランク付けをした(表)。

表. スギ花芽の着生状況


 今回サンプルを抽出したエリアは2カ所で、1つ目のエリアでは着花量が非常に多いAランク12本、やや多いBランク19本、やや少ないCランク9本、着花がほぼ見られないDランク0本であった。
 2つ目のエリアではAランク5本、Bランク21本、Cランク10本、Dランク4本であった。
 観測したスギ林の全体的な傾向としては、枝に鈴なり状で花芽が密に着生しているような樹木はあまり見られなかったが、多数の花芽が全面的に着生している樹木は少なからず見られた。
 また、花芽の大きさを計測したところ、最長でも直径6mm程度で,7mmを超える大粒の花芽は観測されなかった。  観測結果について、同氏は「Aランクのスギが少なからずあり、Bランクに関しては一定数確認できた。観測エリアの日射条件なども勘案すると、来年の花粉飛散は過去10年平均および昨年に比べやや多くなる見込みである」と解説した。なお、NPO花粉情報協会の調査によると、富里市に比較的近い船橋市における来年の花粉飛散予測は9月27日時点で6,401個/cm2/season(以下、個)である。



 同氏は富里市だけでなく、多摩地区をはじめ関東地方の複数の地域で同様の観測を実施しており、それらの結果も勘案すると、同地方では来年、おおむねスギ・ヒノキ合算で6,000個の飛散が見込まれ、ところによっては前年の1.5倍程度に達する可能性もあるとした。
 さらに、今年8月に関東地方で確認された記録的な長雨や日照時間の不足について、「花芽の成長に影響を及ぼしたことは確実で、5~10年に1度発生するような、花粉の大量飛散が予測されるほどの花芽の大きさや着生状況ではない」と補足した。
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OAS(Oral Allergy Syndrome), PFAS(Pollen-Food Allergy Syndrome)

2018年01月03日 08時36分34秒 | アレルギー性鼻炎
 口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome, OAS)のわかりやすい&詳しい解説記事を見つけたので紹介します。
 病名から口の中の症状に限定されると思いがちですが、中には重篤な症状が誘発される患者さん(アレルゲン・コンポーネントのLTPに反応する人)もいるので、甘く見てはいけません。

<ポイント>
OASの概念:即時型食物アレルギーの特殊型で、食物摂取時に口腔・咽頭粘膜の過敏症状をきたすものをいい、ショックをきたすことがある。
PFASの概念:OASの中でも、花粉との交差反応性により新鮮な果物や野菜を摂取した際に生じるアレルギー反応は、PFASと提唱されている。PFASでは感作抗原と症状を誘発する抗原が異なる。まず花粉により経気道・粘膜的に感作を受け、その後、果物や野菜を食べて症状が起こる。花粉ごとに特徴があり、交差反応を示しやすい野菜や果物がある。
PFASの疫学的特徴:北欧では、シラカンバ花粉アレルギーの80%にOASを合併するといわれており、わが国でも同様にカバノキ科の花粉感作で生じるバラ科果物などによるOASが多い。PFASは本州の中でも太平洋側で多く、日本海側では少ない。
症状:症状は口腔内に限局することが多く、1人の患者が複数の食物を食べられなくなることが特徴。食物(特に新鮮な果物)を摂取した直後〜1時間以内に口唇・舌・口腔粘膜・咽頭の痒みや刺激感、閉塞感を自覚する。引き続いて鼻、耳、皮膚に症状が生じたり、また消化器や呼吸器の症状を伴い、抗原によってはアナフィラキシーショックを起こすこともある。口腔症状が発現しない場合もあるため、鼻や耳の症状について聞くことが重要。
・食物には複数の抗原が含まれており、PFASでは同じ食物で症状が発現する患者同士でも、症状を誘発するアレルゲンコンポーネントは異なることもある。また、アレルゲンコンポーネントによって発現する症状も異なる。
交差反応性:広く交差反応を誘発するのは、植物がウイルスや細菌、カビの感染などにより病的状態に陥ったときに、その身を守るために誘導する一連の蛋白質群である"生体防御蛋白質"が原因とされる。進化の過程でその構造が比較的保存されており、IgEに対する共通エピトープ(抗原決定基:抗体が認識する抗原の一部)を与えると非常に幅広い交差反応が出現することになる。
 現在、多くの植物は化学物質、大気汚染、品種改良などさまざまなストレスにさらされている。それによって生体防御蛋白質が増え、幅広い交差反応性が起こり、ヒトに影響を与えていると考えられる。
感染特異的蛋白質(Pathogenesis-related protein;PR蛋白質):生体防御蛋白質の1群で、それらもヒトに対して抗原となることが分かってきている。代表的な生体防御蛋白質としてはPR-10、プロフィリン、脂質輸送蛋白質(LTP)などが挙げられる。
プロフィリン:幅広い野菜や果物が属する(例:シラカンバ花粉症のもう1つの主要抗原Bet v 2)。プロフィリンは、ペプシンで消化されるがヒトの唾液では消化されないという特徴がある。そのため、口腔内では症状を引き起こすが、胃に入った後は症状が起こらないとされる。
LTP:花粉症を併発しないタイプの果物・野菜アレルギーの原因物質としてPR-14ファミリーに分類される。花粉に感作されなくても症状を呈し、熱や消化酵素に強い抗原蛋白質であるため、アナフィラキシー症状など重篤な症状を誘発することがある。
アレルゲンの立体構造:PFASの症状が口腔内に限局することが多いのは、原因となるアレルゲンのエピトープが立体構造(conformation epitope)を取り、加熱や消化酵素で容易に壊れ、加熱・消化の過程で誘発能を失うためと考えられる。立体構造が壊れることは、検査法にも影響する。
生活指導:症状の重篤度によりケースバイケース。重篤な症状を引き起こす可能性がある食材にはGly m 4による豆乳アレルギーの他、セリ科のスパイスアレルギーモモ(LTPなど)があり、その場合は厳格な除去が必要になる。



■ 花粉−食物アレルギー症候群の診療ポイント 〜植物の生体防御蛋白質が病態を形成
2017年03月27日:メディカル・トリビューン
 近年、口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome;OAS)、特に花粉−食物アレルギー症候群(Pollen-Food Allergy Syndrome;PFAS)の患者数が増加している。PFASの発症には、植物の生体防御蛋白質などが関与していると考えられている。PFASの病態と診療上のポイントについて、藤田保健衛生大学総合アレルギー科教授の矢上晶子氏に解説してもらった。〔読み解くためのキーワード:アレルゲンコンポーネント

花粉と野菜・果物の交差反応
 OASの概念は、「特殊型食物アレルギーの診療の手引き2015」では"即時型食物アレルギーの特殊型で、食物摂取時に口腔・咽頭粘膜の過敏症状をきたすものをいい、ショックをきたすことがある"とされている。OASの中でも、花粉との交差反応性により新鮮な果物や野菜を摂取した際に生じるアレルギー反応は、PFASと提唱されている。花粉ごとに特徴があり、交差反応を示しやすい野菜や果物がある(表1)。例えば、ラテックス−フルーツ症候群では、バナナや栗、キウイなどにより交差反応が生じることがある。

〈表1〉 花粉との交差反応を示す野菜や果物の一覧


 PFASは花粉の飛散状況に影響を受けるため、地域性がある。北欧では、シラカンバ花粉アレルギーの80%にOASを合併するといわれており、わが国でも同様にカバノキ科の花粉感作で生じるバラ科果物などによるOASが多い。PFASは本州の中でも太平洋側で多く、日本海側では少ない。また、PFASでは感作抗原と症状を誘発する抗原が異なる。まず花粉により経気道・粘膜的に感作を受け、その後、果物や野菜を食べて症状が起こる。症状は口腔内に限局することが多く、1人の患者が複数の食物を食べられなくなることが特徴。
 矢上氏は「国内のOAS症例は増えている」と強調する。OAS、PFASでは、食物(特に新鮮な果物)を摂取した直後〜1時間以内に口唇・舌・口腔粘膜・咽頭の痒みや刺激感、閉塞感を自覚する。引き続いて鼻、耳、皮膚に症状が生じたり、また消化器や呼吸器の症状を伴い、抗原によってはアナフィラキシーショックを起こすこともある。
 同氏は「口腔症状が発現しない場合もあるため、鼻や耳の症状について聞くことが重要だ」と述べる。さらに、どこで何に感作を受けたのかを把握するため、問診の際には出生地、転居歴、現在の居住地を必ず聞くようにしているという。

蛋白質の類似性で交差反応が起こる
 食物には複数の抗原が含まれており、PFASでは同じ食物で症状が発現する患者同士でも、症状を誘発するアレルゲンコンポーネントは異なることもある。例えば、シラカンバ花粉とリンゴの交差反応では、シラカンバ花粉中のBet v 1に感作された場合はリンゴのMal d 1に、Bet v 2ではMal d 4に反応する。それぞれのコンポーネントは類似しており、その類似性によりIgEが交差反応を起こす。また、アレルゲンコンポーネントによって発現する症状も異なる。
 広く交差反応を誘発するのは、植物がウイルスや細菌、カビの感染などにより病的状態に陥ったときに、その身を守るために誘導する一連の蛋白質群である"生体防御蛋白質"が原因とされる。進化の過程でその構造が比較的保存されており、IgEに対する共通エピトープ(抗原決定基:抗体が認識する抗原の一部)を与えると非常に幅広い交差反応が出現することになる。
 現在、多くの植物は化学物質、大気汚染、品種改良などさまざまなストレスにさらされている。それによって生体防御蛋白質が増え、幅広い交差反応性が起こり、ヒトに影響を与えていると考えられる。
 感染特異的蛋白質(Pathogenesis-related protein;PR蛋白質)も生体防御蛋白質の1群で、それらもヒトに対して抗原となることが分かってきている。代表的な生体防御蛋白質としてはPR-10、プロフィリン、脂質輸送蛋白質(LTP)などが挙げられる(表2)。PR-10はシラカンバの主要抗原で、シラカンバ花粉症の80%はBet v 1に対するIgE抗体を有しており、ハンノキ花粉の主要抗原(Aln g 1)もPR-10に属する他、多くの野菜や果物が属している。

〈表2〉 代表的な生体防御蛋白質

1703061_fig2.jpg
(表1、2とも矢上晶子氏提供)

 プロフィリンはシラカンバ花粉症のもう1つの主要抗原Bet v 2で、こちらも幅広い野菜や果物が属する。プロフィリンは、ペプシンで消化されるがヒトの唾液では消化されないという特徴がある。そのため、口腔内では症状を引き起こすが、胃に入った後は症状が起こらないとされる。
 LTPは花粉症を併発しないタイプの果物・野菜アレルギーの原因物質としてPR-14ファミリーに分類される。花粉に感作されなくても症状を呈し、熱や消化酵素に強い抗原蛋白質であるため、アナフィラキシー症状など重篤な症状を誘発することがある。

プリックテストは市販試薬よりも新鮮な野菜や果物で
 同大学では、OASなど即時型アレルギーの検査として、粗抗原による特異IgE抗体測定やプリックテスト、ELISAなどを実施している。矢上氏は「単回では偽陰性も見られるが、検査を重ねて"陽性"または"真の陰性"と患者に伝えられることが重要」と述べる。
 PFASの症状が口腔内に限局することが多いのは、原因となるアレルゲンのエピトープが立体構造(conformation epitope)を取り、加熱や消化酵素で容易に壊れ、加熱・消化の過程で誘発能を失うためと考えられる。そのため、生のトマトは食べられないがトマトケチャップは食べられるという患者もいる。
 立体構造が壊れることは、検査法にも影響する。新鮮な果物や野菜(リンゴ、ニンジン、セロリなど)を用いたプリックテストは感度が高いが(82〜100%)、ピーナツやエンドウ豆などの豆類では低い傾向がある(12〜62%)。さらに、市販のプリックテスト溶液ではリンゴ、オレンジ、トマトなど野菜や果物の感度が低くなるが(2〜80%)、製造の過程で立体構造が壊れたためと考えられる。

原因食物の除去を指導すべきか
 PFASには確立した診療ガイドライン(GL)は存在せず、臨床医によって対応が異なるのが現状である。米国のアレルギー専門医226人(有効回答122人)に対するPFASへの対応のアンケートでは、53%が完全除去を指導していたが、9%は除去を指導していないという結果であった。矢上氏は「今後はGLが必要となるのではないか」と考察している。
 同氏は、PFAS患者に対して
①症状を起こす食材の摂取は避ける
②加熱調理して少しずつ摂取してみる(多くの食物は60〜100℃の加熱で完全にIgE結合能が失活する)
③加工食品や調理品は、プリックテストを行い摂取が可能かどうかを確認する
④カバノキ花粉感作による豆乳アレルギー(Gly m 4)は重篤な症状を引き起こす場合もあるため注意が必要だが、味噌や醤油は摂取可能で豆腐も種類によっては摂取可能
−などの指導を行っているという。
 重篤な症状を引き起こす可能性がある食材にはGly m 4による豆乳アレルギーの他、セリ科のスパイスアレルギー、モモ(LTPなど)があり、その場合は厳格な除去が必要になるが、同氏は「患者には厳格な除去と同時に摂取可能な食物も示すべき」とし、また重篤な即時型アレルギーおよびアナフィラキシー症状への対策として、アドレナリン注射の処方が必要となることも強調している。
 PFASの根治療法について、英国免疫アレルギー学会のGLは"PFAS患者に対する現在のエビデンスでは花粉の抗原特異的免疫療法は推奨も否定もしない"としているが、将来はコンポーネントの解析により効果的な治療が望めるかもしれないとの報告もある(Clin Exp Allergy 2011; 41: 1177-1200)。今後は日本でもPFASに対する舌下免疫療法などが導入されるかもしれない。
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1960年以前の家畜への抗菌薬入り飼料によりペニシリン耐性が始まった。

2017年12月26日 05時55分18秒 | アレルギー性鼻炎
 耐性菌は人に臨床応用する前から存在していた、そしてその理由は家畜への抗菌薬使用だった、と推論した「The Lancet Infectious Diseases」掲載論文を紹介します。
 現在でも家畜飼料に入れる抗菌薬が問題視されており、未解決問題です。
 医師が「抗菌薬適正使用」しても、これを防ぐことはできません。

■ アンピシリン耐性菌は臨床導入前から存在していた?
(HealthDay News:2017/12/26:ケアネット)
 ペニシリン系抗菌薬の一つであるアンピシリンに対する耐性菌は、同薬がヒトの感染症治療に使用されるようになった1960年代よりも前から存在していたことが、パスツール研究所(フランス)のFrancois-Xavier Weill氏らによる研究で明らかになった。詳細は「The Lancet Infectious Diseases」11月29日オンライン版に掲載された。
 アンピシリンは広域スペクトルのペニシリン系抗菌薬で、英国では1961年に感染症の治療薬として発売されて以降、尿路感染症や中耳炎、肺炎、淋病などの治療に使用されてきた。しかし、同国では発売のわずか数年後(1962~1964年)にアンピシリンに耐性を示す細菌(S. Typhimurium)の感染が広がった。
 今回、Weill氏らは1911~1969年に欧州、アジア、アフリカ、アメリカの各地域における31カ国でヒト、動物、食品、家畜の餌から分離された288のS. Typhimurium株のアンピシリンに対する感受性の検査を実施。また、全ゲノムシークエンス解析を行い、アンピシリンに対する耐性獲得のメカニズムを特定した。
 その結果、ヒトから採取された分離株の約4%で多様なアンピシリン耐性遺伝子が同定された。また、ヒトの感染症治療にアンピシリンが使用されるようになる前の1959~1960年にフランスやチュニジアでヒトから採取された分離株において、アンピシリン耐性に関連する遺伝子(blaTEM-1)が認められた
 Weill氏によると、北米や欧州では1950年代から1960年代にかけて、家畜の餌に低用量のペニシリン(主に狭域スペクトルのペニシリン系抗菌薬であるベンジルペニシリン)が添加されていた。同氏は「今回の研究では直接的な因果関係を明らかにすることはできなかった」としながらも、「病気の治療以外の目的で家畜にペニシリン系抗菌薬を投与していたことが、1950年代後半の耐性菌の出現につながった可能性がある」との見方を示している。
 さらに、同氏は同誌のニュースリリースで「この研究結果は農場の土壌や排水、肥料などに残留する抗菌薬が、考えられていた以上に耐性菌の拡大に影響していることを示唆している」と指摘。「細菌には国境はない。世界レベルでヒトだけでなく動物における耐性菌の監視と調査を実施すべきだ」と強調している。
 ヒトに重篤な感染症をもたらす細菌の多くは、アンピシリンなどの抗菌薬に対する耐性を獲得している。耐性菌による世界の死亡者数(年間)は2050年には1000万人を超えると予測されている。こうした問題を背景に、世界保健機関(WHO)は最近、健康な家畜への日常的な抗菌薬の使用を中止するよう呼び掛けている


<原著論文>
・Tran-Dien A, et al. Lancet Infect Dis. 2017 Nov 29.
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米国の季節性アレルギー性鼻炎ガイドライン2017

2017年12月25日 06時23分35秒 | アレルギー性鼻炎
 季節性アレルギー性鼻炎とは、花粉症のことです。
 日本のガイドラインは「内服薬ありき」ですが、米国では「ステロイド点鼻薬ありき」とちょっと異なります。
 また、免疫療法は「注射」(皮下免疫療法)とあり、日本で普及しつつある「舌下免疫療法」は認可されていないのでしょうか。

■ 季節性アレルギー性鼻炎の薬物療法に新ガイドライン
(HealthDay News:2017/12/25:ケアネット)
 多くの人を悩ませる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)のベストな治療法に関する新たなガイドラインが発表された。米国の2学会が合同で策定したもので、「Annals of Internal Medicine」11月28日オンライン版に掲載された。新ガイドラインでは12歳以上の季節性アレルギー性鼻炎患者に対し、ステロイド点鼻薬を主軸とした治療が推奨されている。
 このガイドラインはアレルギー性疾患や喘息、免疫疾患を専門とする米国の2学会(AAAAIおよびACAAI)の作業部会が策定した。主な推奨内容は以下の通り。

(1)12歳以上の患者に対する初期療法では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬の併用療法ではなくステロイド点鼻薬の単剤治療から開始する
(2)15歳以上の患者に対する初期療法では、ロイコトリエン受容体拮抗薬よりもステロイド点鼻薬の使用が勧められる
(3)12歳以上で中等症~重症の患者に対する初期療法では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬の点鼻薬の併用療法を患者に勧めてもよい

 AAAAIによると、ステロイド点鼻薬には市販薬もあるため入手しやすく、月当たりの薬代も15~20ドル(約1,700円~2,200円)程度と比較的安価だ。しかし、専門家がこの薬剤を推奨している最大の理由は、季節性アレルギー性鼻炎の初期療法で使用する薬剤として、他のどの種類の薬剤よりも有効性が高いからだという。
 また、米ノースウェル・ヘルスのアレルギー・免疫の専門医であるPunita Ponda氏は、副作用が比較的少ないこともステロイド点鼻薬の利点として挙げている。ただし、同氏は「ステロイド点鼻薬は完璧な薬ではない。鼻の痒みや乾燥、鼻血などの副作用の可能性もある」とした上で、「適切な方法で噴霧すればこれらの副作用は軽減されるため、医師に噴霧方法を教えてもらうとよい」と助言している。
 なお、新ガイドラインは12歳以上の患者を対象とした治療に関するものであるため、12歳未満の小児患者に対する治療指針は示されていないが、Ponda氏は「ステロイド薬による成長への影響を懸念する声があり、また噴霧器の使用が難しい場合もあるため、12歳未満の患者にはステロイド点鼻薬よりも経口抗ヒスタミン薬の方が有用である可能性がある」との見解を示している。
 一方、米ニューヨーク大学(NYU)ウィンスロップ病院のLuz Fonacier氏は「ステロイド点鼻薬が奏効しない患者には、抗ヒスタミン薬の経口薬や点鼻薬のほか、ロイコトリエン受容体拮抗薬が症状の軽減に役立つ場合もある」としている。
 さらにPonda氏は、ステロイド点鼻薬にこうした薬剤を上乗せしてもアレルギー症状をコントロールできない場合には、アレルゲン免疫療法(allergy shot)も選択肢の一つとなると紹介。この治療法は通常、週1回のペースで6カ月間にわたってアレルゲンを注射し、その後は月1回の注射を3~5年続けるというもので、「患者にとっては相当の覚悟が必要ではあるが、根治が望める唯一の治療法だ」と説明している。


<原著論文>
・Wallace DV, et al. Ann Intern Med. 2017 Nov 28.


 なお、「副作用を避ける点鼻ステロイド使用のコツ」とは、少しだけ外側に向けてプッシュすることです。
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健康ライフ「アレルギー性鼻炎を本気で治すために」(浦長瀬昌宏Dr.)

2017年11月02日 14時39分08秒 | アレルギー性鼻炎
 NHKラジオ第一放送の健康ライフから「アレルギー性鼻炎を本気で治すために」(神鋼記念病院 耳鼻咽喉科科長:浦長瀬昌宏:うらながせあつひろDr.)。
 特に新しい情報はありませんでした・・・。


□ 10月16日(月)「アレルギー性鼻炎とは何か」
・鼻閉は睡眠時無呼吸症候群につながる可能性がある。
・鼻の中に入ってきた抗原を迎え撃つ抗体と反応し入ってこないようにするために狭くなる(鼻閉)、洗い流す(鼻汁)のがアレルギー性鼻炎。
・花粉が抗原になる季節性アレルギー性鼻炎、ダニが抗原になる通年性アレルギー性鼻炎。
・他の病気でも同じような症状が出ることがある。鑑別点は、風邪では眼症状が乏しく2週間以内によくなる、蓄膿症では膿性鼻汁になる、鼻中隔弯曲では片側のみの症状になる。

□ 10月17日(火)「医師の診断を受ける前に知っておきたいこと」
・生活上不都合が生じたときが受診のタイミング。
・重症度の評価:
①1日何回鼻をかむか:レベル1〜5
②鼻閉の程度:レベル1〜5 
・受診のコツ
①今までの治療歴:薬の名前がわかった方が今後の治療につなげやすい
②どの症状(鼻汁、鼻閉)を治したいのか、ハッキリさせると薬を選択しやすい。
③アレルギー性鼻炎以外の病気にかかったことがあるか。
・診察:鼻粘膜の腫れ具合、鼻粘膜の色、アレルゲンの特定(血液検査)

□ 10月18日(水)「薬の種類」
・鼻汁/くしゃみは鼻の中の自律神経を介した反応→ 神経に効く薬を選択
・鼻閉は粘膜の腫れで神経は関与せず→ 粘膜に効く薬を選択
①抗ヒスタミン薬:神経を介する症状に効く、内服薬中心、飲んですぐ効く。眠くなる副作用あり。
②抗ロイコトリエン薬:鼻の粘膜の反応を抑えやすい。内服薬。効果発現に1週間かかる。眠くならないが、下痢、肝機能障害の副作用がある。
③血管収縮薬:鼻の粘膜の血管を収縮させて鼻閉をよくする。内服薬&点鼻薬。長期間使うと効きが悪くなる(→ 薬剤性鼻炎)ので2週間以上の連用は避ける。
④ステロイド薬:内服薬&点鼻薬。よく効くが点鼻薬は1週間使わないと効果が得られない。内服薬は副作用に注意。

□ 10月19日(木)「薬の処方はオーダーメイド」
・抗ヒスタミン薬は種類が多い。
①第1世代:眠くなる。短時間しか効かない。
②第2世代:眠くなる副作用を減らして(ただし薬による差・使用する個人差あり)、作用時間を長くした。
・1日1回と1日2回使用するタイプがある。
・市販薬の使い方:使用する前にアレルギー性鼻炎かどうかの診断が必要なので、まずは受診を。血管収縮薬の連用に注意。
・症状の出はじめに開始するのがコツ。ひどくなってからだと効きが悪い。

□ 10月20日(金)「免疫療法」
・メカニズムは予防接種に似ている。スギ花粉症の免疫療法は、スギ花粉を少しずつ体に入れ続けると体が慣れてきて症状が出にくくなる。
・最近舌下免疫療法が登場した。
・舌下免疫療法の効果:有効率70〜80%(完治率:20〜30%)・・・どういう人に効果が出やすいかはやってみないとわからない。
・3ヶ月くらいで効果が出はじめ、2〜3年継続が必要。中止後に再燃することがある。
・副作用:局所アレルギー反応〜口内粘膜の腫れ(4%)、非常に希だがアナフィラキシーショック(1億回に1回)
・費用:保険適用されているので3割負担:3000〜4000円/月
・使えない人:循環器疾患でベータ遮断薬使用中、重症気管支喘息、妊娠中、悪性腫瘍
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水害に学ぶ医療支援の課題

2017年11月02日 08時31分57秒 | アレルギー性鼻炎
 災害時はすべては混乱します。
 医療も例外ではありません。
 下記記事を読み、災害医療を効率的に行うには、平時からあらかじめ準備・シミュレーションしておくことが必要とあらためて感じました。

■ 水害に学ぶ医療支援の課題 効率化に必要な連携とは 日医総研が報告書
共同通信社2017年11月1日
 2015年9月の関東・東北豪雨では、茨城県常総市で鬼怒川が決壊して市街地が水没し、死傷者が出たほか住民多数が避難した。
 避難所には県内外からさまざまな医療支援チームが集まり、住民のケアに当たった。こうした災害時に、どうすれば多くのチームが情報を共有し、効率的な支援ができるのか。
 関係者の話から教訓を探った。

▽チーム間調整
 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の王子野麻代(おおじの・まよ)主任研究員は関係者に聞き取りをして今年、災害医療支援での連携の在り方についての報告書をまとめた。
 それによると、当時、現地に入ったのは厚生労働省の災害派遣医療チーム(DMAT)、日本医師会や日本赤十字社の医療チーム、精神科医らの「こころのケアチーム」など。ほかに理学療法士、栄養士、鍼灸(しんきゅう)師らも駆け付けた。
 茨城県は決壊前の午前10時に災害対策本部を設置したが、その時点でDMATの出動要請はしていなかった。
 県の統括災害医療コーディネーターを務める国立病院機構水戸医療センターの安田貢(やすだ・すすむ)救命救急センター長が、救助が遅れれば低体温になる人などが出る危険性が高いと指摘して出動の必要性を県に伝え、同日中の出動要請につながった。
 安田さんは「東日本大震災の支援での経験から、この水害では二つのことを徹底した」と話す。
各チームの活動が重複しないようにする」と「緊急派遣チームによる支援とその後の地域医療をつなげ、医療の空白を生まない」だ。

▽危機的事例も
 違うチームが時間をおかず訪れると、避難者は何度も同じような質問を受けて休めない。支援チームが引き揚げる際に地元医療機関への引き継ぎが十分でないと、避難者の医療に支障が出る。
 安田さんは各チームに呼び掛け、決壊の2日後、活動を調整する「地域災害医療コーディネート本部」を、常総市の東隣の同県つくば市にある筑波大病院の一角に設置した。
 自身が筑波大在職中に災害医療対策の拠点として設計に関わった広いスペースで、出入りしやすい1階に、電源や通信ラインを備えている。ここに集まった各チームは行き先や時間を調整。避難者情報を毎朝夕のミーティングで共有した。
 それでも危機的な事例はあった。
 一人きりで避難していた90代男性は気付かれないまま一昼夜飲まず食わずで、脱水のため意識がもうろうとしていた。自宅でがん療養中だった男性避難者は、浸水で内服薬を失い、状態が悪化していた。いずれも医療チームが見つけて事なきを得たという。

▽チェックリスト
 王子野さんは報告書に基づき
(1)調整本部の設置
(2)情報連絡
(3)災害医療コーディネーターを中心とした体制整備
(4)チーム間の相互理解と合意形成
―の四つがポイントだと指摘。
「被災地が比較的限定され、全容が把握できた鬼怒川水害の教訓から、現状の体制を点検してほしい」と話す。
 王子野さんは自治体側、医療チーム側に向けたチェックリストの私案を作成中だ。
自治体側には「チームが集まる場所の確保」や「コーディネーターの委嘱」などを、医療チーム側には「自治体との事前の協定締結」や「他チームとの共同訓練」などを例示した。
 一方、安田さんは「自治体が持つ最新情報をチームに伝えたり、出動中のチームと連絡を取ったりする事務機能が不足していた」と振り返る。
「災害医療の実務に精通し、下支えする人材が、自治体にも医療チームにも必要だ。双方で普段から学ぶ機会を増やさなければならない」と強調した。
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肩こりと枕

2017年10月29日 06時09分03秒 | アレルギー性鼻炎
 「枕の上手な選び方」解説。
 読売 vs 朝日、どちらがわかりやすいですか?
 まずは読売新聞の記事;

■ 頭痛、肩こり…枕が原因?
(鈴木敦秋/取材協力=山田朱織・16号整形外科院長、岡田晃・枕工房「待夢」代表)
2017年10月18日;読売新聞

体に合ったものに替える
  Q  眠りが浅くて、夜中に目がさめる。朝から体がだるいし、集中力もないよ。
  ヨミドック  原因は、枕かもしれませんね。
  Q  えっ、枕?
  ヨ  そう、「枕不眠」という言葉もあります。枕の高さなどがあわず、寝ている間の姿勢が悪いため、ストレスが十分にとれないということがあるのです。もちろん、不調の裏には重い病気が隠れていることがあり、「枕さえ直せば」と考えることは禁物ですが、枕が合っているかどうか確認してみてください。
  Q  この枕、長く使ってきたんだけど。
  ヨ  使い慣れているからといって、あなたの寝ている姿勢が適切とは限りませんよ。
  Q  枕の調整で改善するかもしれない症状って?
  ヨ  例えば、頭痛は、睡眠によって、肩甲骨の周りや首の後ろ側の筋肉の緊張がとれれば楽になるはずなんです。しかし枕が合わないとうまく緩みません。緊張が続き、頭痛を慢性化させる人もいます。
  Q  まだ、ある?
  ヨ  肩こりや首痛。手足のしびれや痛みなども、首の骨とそこから出る神経を睡眠時に圧迫していることが原因となっている場合があります。これらの多くは、枕を替えた途端に症状が軽減します。睡眠時無呼吸症候群なども、寝ているときの姿勢との関係が指摘されています。



  Q  よい枕は、何を基準にすればよいの?
  ヨ  大事なポイントを挙げましょう。あおむけ寝で、最も首が休まる角度は15度前後とされます。首の付け根から耳までの角度が15度前後になる枕がよい枕です。
  Q  横向きで寝るときは?
  ヨ  頭、鼻、あご、胸の中心ラインが一直線でつながることが理想です。
  Q  自分が寝ている姿勢なんてわからないよ。
  ヨ  朝起きたとき、枕を見れば合っているかどうかわかります。合わない枕で寝たときの枕の特徴を表にしておきました。例えば枕がへこんでいたら、頭が沈み込んで首が不自然に反り返っている証拠です。「たかが枕」と侮るなかれ。生活習慣の改善の一つとして、ご自分の枕を見直してみてはいかがでしょうか。


 次に朝日新聞の記事;

■ 肩こりや首の痛みを予防 枕選びのポイントは?
2016年9月3日;南宏美、朝日新聞
 人生の3分の1の時間を費やすとも言われる睡眠。快眠には自分の体に合った寝具が重要です。枕の選び方を聞きました。
 枕外来を開設する16号整形外科(相模原市)には、肩こりや首の痛み、手のしびれ、頭痛、不眠の症状に悩む患者が多くやって来るという。
 山田朱織(しゅおり)院長らが2008~13年に同院を受診した410人(14~93歳)を対象に、自分に合った枕を使用する前と後で症状がどのように変わるかを調べたところ、7割強の人で肩こりや首の痛み、不眠の症状が改善した。15年の日本脊椎(せきつい)脊髄(せきずい)病学会でも発表された。



 山田さんは良い枕の条件として、自分の体に合った高さ、適度な硬さ、平らであることの三つを挙げる。「枕が高すぎたり低すぎたりすると神経が圧迫される。仰向けに寝た時、首の骨はまっすぐに伸び、床に対して15度前後になっていることが重要」と話す。
 また、人間はひと晩で20~30回も寝返りをしているという。血液やリンパ液の循環、体温調節などの役割があるため、「無意識にスムーズに寝返りができることも正しい枕の条件です」と山田さん。診療や研究をもとに開発したオーダーメイド枕を販売する一方、玄関マットやタオルケット、バスタオルを使った簡易枕の作り方も「山田朱織枕研究所」のホームページで紹介している。

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N Engl J Med の食物アレルギー総説(2017)の紹介

2017年10月24日 07時31分49秒 | アレルギー性鼻炎
 食物アレルギーに関して、重要な総説の解説記事を見つけました。
 抜粋・引用させていただきます。

■ アナフィラキシー死亡の最大原因はエピネフリン投与の遅延である!!
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
(2017年10月20日:メディカル・トリビューン)
 N Engl J Med (2017; 377: 1168-1176)に食物アレルギーの総説(Clinical Practice)がありました。この1、2年でLEAP studyという、ピーナツアレルギー治療のランダム化比較試験(RCT)が完了し、大変大きなブレイクスルー(breakthrough)が起こりました。大興奮の世界最新の食物アレルギー総説です!
 最重要点は下記6点です。

・ピーナツを生後4~6カ月で摂取すると免疫寛容が起こる!
・アナフィラキシー死亡の最大の原因はエピネフリン投与の遅延である!!
・死亡しやすいのは青年のピーナツ、ナッツ類、魚、甲殻類アレルギー、喘息の存在!
・運動、ウイルス感染、生理、情動ストレス、アルコール摂取でアレルギー閾値が下がる!
・アナフィラキシーで20%は蕁麻疹を欠く!
・アナフィラキシーは二相反応あり4~24時間観察せよ!


1.ピーナツを生後4~6カ月で開始すると免疫寛容が起こる!
 今まで、食物アレルギーは厳密なアレルゲン回避が常識でした。ところが、ピーナツアレルギーに対しては、生後4~6カ月でピーナツを投与することで免疫寛容が起こるらしいのです。免疫寛容が発達するにはどうやら window period(限られた期間)があるらしく、生後4~6カ月の間が最適なようなのです。これを外れるとうまくいかないようです。
 食物アレルギーで最も致命的になりやすいのが、ピーナツ、ナッツ類、魚、甲殻類(shell fish:エビ、カニ)です。LEAP (Learning Early About Peanut Allergy) studyは「ピーナッツを幼児早期から摂取すればアレルギーを起こさないかも」という仮説を検証したものです(関連記事:乳幼児期の抗原摂取でピーナツアレルギー発症リスクが低下)。
 生後4~11カ月の640人の重症アトピー、卵アレルギー、または両者を持つ小児640人をランダムにピーナツ摂取群と非摂取群に分けて5歳までフォローしたのです。ピーナツ摂取群は生後4~11カ月の幼児に最低週3回ピーナツを摂取させました。驚くべきことに、5歳時点でのピーナツアレルギーは、ピーナツ摂取群1.9%、ピーナッツ非摂取群で13.7%でした! 生後11カ月以内のピーナツ摂取はピーナッツアレルギー予防に極めて効果的であることが分かったのです。
  これらの結果から新ガイドラインでは、ピーナツ摂取を最初の4~6カ月に開始することを推奨することになりました(関連記事:ピーナツアレルギー予防に指針、NIH)。生後4~6カ月というとまだミルクを飲んでおり、そろそろ離乳食が始まるかもという時期です。
 LEAP studyの重大な発見からピーナツアレルギーに対しては患者を次の3つのカテゴリーに分類することが考えられています。

① 重症患者:重症の湿疹、卵アレルギーまたは両者がある幼児(infants)。アレルゲンテストを行い、ピーナッツを生後4~6カ月で開始する
② 中等度患者:ピーナツを生後6カ月で開始
③ 湿疹や食物アレルギーのない患者:ピーナツは随意に開始

 日本国内の「食物アレルギーの診療の手引き2014」(厚生労働省、外部リンク参照)には以上のことはまだ一言も書かれていません。

2.アナフィラキシー死亡の最大の原因はエピネフリン投与の遅延である!!
 また、この総説で何よりも強調されているのはアナフィラキシー時の即座のエピネフリン筋注です。アナフィラキシーの死亡例はエピネフリン投与遅延によることが最も多いというのです。またエピネフリンの半減期は数分ですから再投与も必要なことがあります。
 食物アレルギーがあるのにエピネフリンのautoinjector (エピペン)が処方されていない例が多過ぎるというのです。抗ヒスタミン薬、β刺激薬、ステロイドはあくまでも補助薬にすぎません。西伊豆健育会病院では、救急室にはアナフィラキシーセットとして、アドレナリン(商品名:ボスミン筋注)の後、d-クロルフェニラミン(ポララミン)5mg、ヒドロコルチゾン(サクシゾン)100mg、ファモチジン(ガスター)20mg、生理食塩水50mLをひとまとめにして透明袋に入れてあります。
 喘息の存在は食物による「致死的」アナフィラキシーの大きなリスク因子です。
 エピペンといえば20年くらい前、森林組合の方が、蜂アレルギーでエピペンがほしいと外来に来られました。その当時、営林署勤務で蜂アレルギーの人にはエピペンが配られていました。同じ林業といっても営林署は国家公務員、森林組合は民間業者です。労働条件も随分差があり、営林署ではチェーンソーの使用は振動病(長期の使用で手指のレイノーなどを起こす)予防のため、1日2時間以内に抑えられていましたが、森林組合では5、6時間の使用は当たり前でした。
 小生、それまでエピペンは知らなかったのですが、この一件で使用申請をして、当院が静岡県の病院でエピペン許可第1号になりました。ただこの総説によると、autoinjector以外に他の選択肢(舌下、吸入など)があるのか、追加注射の必要性、肥満または痩せた患者に対する針の長さ、患者に何本まで処方すれば良いのか、などは分かっていないとのことです。
 驚くのはエピペンの高価なことです。ボスミンは1アンプル(1mg/mL)で92円(2017年現在)ですが、エピペンは小児用0.15mgが7,979円、成人用0.3mgが1万894円もします。ほとんど容器代なのでしょう。皆様が処方して需要が広がれば安くなっていくでしょう。

3.死亡しやすいのは青年のピーナツ、ナッツ類、魚、甲殻類アレルギー、喘息の存在!
 下記は致死的アナフィラキシーに至りやすいリスク群です。喘息の存在は死因の最大リスクの1つなのです。年齢的には幼児よりも思春期から若年成人が危険であり、特に死亡に至りやすいのはピーナツ、ナッツ類、魚、甲殻類(エビ、カニ)です。
 またこのリスク因子で注意すべきは「皮膚症状の欠落はアナフィラキシー死亡のリスク」になることです! 食物によるアナフィラキシーで蕁麻疹や発赤、皮膚の痒みのない者が20%くらいいます。アレルゲン曝露後、突然血圧の低下があっても、蕁麻疹などがないと訳が分からずアナフィラキシーの診断が遅れてしまうのです。

【致死的アナフィラキシーに至るリスク】
【最大リスク】
・エピネフリン投与の遅延!!
・ピーナツ、ナッツ類、魚、甲殻類(エビ・カニ)アレルギー!!
・思春期から若年成人!!
・喘息の存在!!
【その他のリスク因子】
・中年以上で心血管疾患の存在
・妊婦
・皮膚症状の欠落!!
【食物アレルギー悪化のその他の因子】
・喘息
・慢性肺疾患
・全身性mastocytosis
・β遮断薬、ACE阻害薬、α遮断薬の使用


4.運動、ウイルス感染、生理、情動ストレス、アルコール摂取でアレルギー閾値が下がる!
 また、「へー」と驚いたのは、アレルギーの閾値を下げる因子が幾つかあるというのです。すなわち「運動、ウイルス感染、生理、情動ストレス、アルコール摂取」です。このような因子があった上でアレルゲンに曝露されると、アナフィラキシーが起こりやすいというのです。うーん、「運動、ウイルス感染、生理、情動ストレス、アルコール摂取」かあ。肝に銘じなければなりません。
 "Food dependent excersise induced anaphylaxis"といって、食事だけならなんともないけど運動が加わってアナフィラキシーが起こることがあります。

 なお、さまざまな食物アレルギーが自然寛解するかどうかですが、N Engl J Med 2008; 359: 1252-1260の総説Food Allergy (Clinical Practice)に一覧表がありました。

 大変役に立つと思いましたので、以下に載せます。牛乳、卵、小麦、大豆は自然に改善することが多いようです。下記の一覧表をよくよく見ると、歳を取っても改善しない(grow outしない)ものが致死的アナフィラキシーを起こすことに気が付きます。

【さまざまな食物アレルギーの自然歴、交差反応、予後】


 なお、ピーナツとtree nutsは、同じナッツとはいっても全く別の種類です。Tree nutsにはアーモンド、 ブラジルナッツ、カシューナッツ、チェストナッツ(クリ)、ヘーゼルナッツ、マカデミアナッツ、ピスタチオ、パインナッツ、シーナッツ、ワルナッツ(クルミ)などがあります。
 また、上記一覧表には蕎麦が出てきません。蕎麦って日本だけのものなんだろうかと調べてみました。蕎麦はもともと中国南部の原産らしく、日本には奈良時代以前に入ったようです。イタリアではピッツオケリ(蕎麦のパスタ、日本の二八蕎麦とほぼ同じ)、シャット(蕎麦粉の生地でチーズを包んで揚げる)、スロベニアのクラクフカーシャ(蕎麦の実のおじや)、フランスのガレット(蕎麦のクレープ)、ロシアのブリヌイ(パンケーキ)、朝鮮の冷麺(蕎麦粉を原料とすることがある)など一応、郷土料理でいろいろあるようです。

5.アナフィラキシーで20%は蕁麻疹を欠く!
 食物アレルギーの症状は下記4つですが、全てそろうわけではありません。アナフィラキシーで蕁麻疹、痒みは最も多いのですが、20%ではこれを欠き呼吸器、消化器症状のみ出るのです。大変重要なポイントです。

【食物アレルギーの症状】
① 皮膚症状:蕁麻疹、発赤、痒み、舌・口唇・口蓋垂腫脹
② 呼吸器:呼吸困難、喘鳴、ストライダー
③ 消化器症状:腹痛、嘔吐
④ 血圧低下:失神、失禁

 患者を見たとき、果たしてアナフィラキシーを起こしているのかどうか、診断基準があります。Criterion 1は蕁麻疹があるとき、Criterion 2は蕁麻疹が必ずしもないもの、Criterion 3は血圧低下のみで診断に迷う最もやばいものです。

【アナフィラキシーの診断クライテリア】
 以下の3つのクライテリアのどれかに当てはまればアナフィラキシーの可能性が高い。
【Criterion 1】
 アレルゲン接触数分から数時間で皮膚、粘膜、または両者の症状(蕁麻疹、発赤、痒み、口唇・舌・口蓋垂腫脹)があり、かつ次のうち1つの症状がある。
・呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴、stridor、PEF減少、低酸素血症)
・血圧低下またはend-organ dysfunctionの症状(失神、失禁、hypotonia、collapse)

【Criterion 2】
 アレルゲン接触数分から数時間で下記の2つ以上の症状がある。
・皮膚または粘膜症状(蕁麻疹、発赤、痒み、口唇・舌・口蓋垂の腫脹)
・呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴、気管支攣縮、stridor、PEF低下、低酸素血症)
・血圧低下またはそれに伴う症状(hypotonia、collapse、失神、失禁)
・消化管症状の持続(腹部疝痛、嘔吐)

【Criterion 3】
 アレルゲン接触数分から数時間で血圧低下。
・幼児、小児:その年齢平均より血圧が低いか、収縮期血圧の30%以上の低下
・成人:収縮期血圧90mmHg未満または普段の血圧より30%低下


6.アナフィラキシーは二相反応が4~24時間で起こる!
 アナフィラキシーの治療で、エピネフリン筋注は死亡回避に最も有効ですが、その半減期は数分ですからしばしば2本目が必要です。エピネフリンは致死性アナフィラキシーに最も有効であるにもかかわらず医療機関で処方されることが少なく、抗ヒスタミン薬が優先されていると、この著者は嘆いています。
 「抗ヒスタミン薬、ステロイド、吸入β刺激薬はあくまでも補助薬にすぎない!」ことを肝に銘じて下さい!「食物アレルギーによる死亡の最も大きな原因はエピネフリン筋注をしないこと」なのです!
 また食物アレルギーによるアナフィラキシーでは、10~15%でbiphasic reaction(二相反応)が4~24時間後に起こりますので、重症の場合、4~6時間以上は観察が必要です。これは経口で腸管に入った食物が腸管で吸収されて再度アレルギー反応を起こすものです。まあ、1日は入院させた方が無難でしょう。
 食物アレルギーの普段の注意としては、標準治療はアレルゲンの回避です。牛乳、卵は火を通せば安全なこともありますが、food challengeで確認が必要です。

 この総説によると、food challengeはoutgrowしたかどうかの確認に使われることが多いとのことです。
 なお、調理した卵に対する免疫寛容は生卵より前に起こるとのことです( N Engl J Med 2008; 359: 1252-1260)。ですから、調理卵でアレルギーが起こらなくても生卵でアナフィラキシーが起こる可能性はあります。
 患者教育としては必ず食物の成分表示ラベルを読ませます。またMedical-allert Jewelryってのがあります。アレルギーである旨を書いたブレスレットをいつも身に着けるのです。外部リンクに「蜂アレルギーでエピペンを使ってくれ」と書いたブレスレットを示しました。
 食物アレルギーの予防療法としてはアレルゲンの皮下注射がありますが、無論アナフィラキシーの危険があります。その他に、経口、舌下、表皮(epicutaneous)投与の3つあり、皮下注よりはるかに安全ですがまだ実験的段階です。

 なお言葉の定義として下記3つの違いに注意して下さい。

【言葉の定義】
Desensitization(脱感作):食物アレルギーの閾値を上げる。数カ月の治療を要する。
Sustained unresponsiveness:予防治療終了後も無反応が維持される。年余かかる。
Oral tolerance:生後間もなく自然に起こるもの。現在のデータでは「真の免疫寛容」は起こらない。

 免疫療法は、皮下投与以外に次の3つの方法がありますがまだ実験段階です。

① 経口免疫療法
 アレルゲンの粉を食事に混ぜるもので、効果は大きいのですが、アナフィラキシー、eosinophilic esophagitis(5%未満)、胃腸症状を起こすことがあります。経口免疫療法は食物アレルギーに比し季節性アレルギーでは有効率が低いのだそうです。ウイルス感染、生理があったりアレルゲン摂取後2分~2時間で運動する場合はアレルゲン量を減らすことがしばしば必要です。経口療法初期にオマリズマブ(ゾレア、75mg注2万3,128円、150mg注4万5,578円)使用は副作用低減に有用ですが最終的に大きな利点があるかは不明です。

② 舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy)
 主にピーナツアレルギーに対して評価されましたが、アレルゲンを毎日舌下に年余投与、1年ほどで多くで脱感作、中等度免疫変容に至るそうです。ただ長期のsustained unresponsivenessに至るかは不明です。副作用は少なく口腔咽頭の痒み、チクチク(tingling)する程度です。

③ 表皮免疫療法(Epicutaneous Immunotherapy)
 ピーナツ、牛乳アレルギーで試され、背中や上腕に24時間ごとに貼り付け数年継続します。効果は小さい(modest)ですが副作用も少ないようです。副作用はパッチ部の皮膚刺激程度で全身反応はありません。
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「ワクチン否定派はツイッターに集まる」らしい。

2017年10月23日 08時59分43秒 | アレルギー性鼻炎
 人の悪口は楽しいモノで、現代の井戸端会議としてのツイッターでは盛り上がる盛り上がる。
 一度悪評がたつと、その後正式に否定されても記憶としてはインパクトの強い「悪口」の方が残りやすいのは人間の性らしいです。

 記事の中での「ツイッターでのワクチン否定派の主張を知ることで、ワクチンに関する懸念や誤解を解く手がかりを得ることができる」という記載には頷けますね。

 ワクチン反対派の欠点は「自然感染の恐ろしさを忘れている」こと。文中の「残念ながら疾患の流行が起こって初めてワクチンの重要性が理解されるのが現状。悲しいことに私のような専門家よりもウイルスそのものの方が予防接種の必要性について教える教師としては優れているようだ」というコメントも大いに頷けます。

 要は、
・感染症の怖さを正確に知る
・ワクチンの効果と副反応を正確に知る

 機会が乏しいのが元凶と思われます。

■ ワクチン否定派はツイッターに集まる
HealthDayNews2017年10月22日:medy
 「小児用ワクチンを接種すると自閉症リスクが高まる」との考えから自分の子どもに予防接種を受けさせない「ワクチン否定派」の親たちの多くが、気持ちを吐き出したり他者と共有したりする場としてソーシャルメディアのツイッターを利用していることが、米アラバマ大学心理学のTheodore Tomeny氏らによる研究で明らかになった。
 「自閉症」と「ワクチン」の2つのワードが含まれた投稿(ツイート)約55万件を調べたところ、その半数が小児用ワクチンに否定的な内容であることが分かったという。
 詳細は「Social Science and Medicine」10月号に掲載された。
 小児用ワクチンが自閉症に関連するのではないかという懸念が広がるきっかけとなったのは、1998年に「Lancet」に発表された小児12人を対象とした英国の小規模研究の結果だった。
 しかし、この研究はデータに不備があったとして2010年に掲載論文が撤回されている。
 また、米疾病対策センター(CDC)や米国小児科学会(AAP)、米国公衆衛生局(PHS)、医学研究所(IOM)などの各団体は、このような関連はないとの見解を示している。
 しかし、依然としてこの関連性をめぐる議論が収束する兆しはみえていない。
 Tomeny氏らは今回、2009~2015年にツイッターに投稿されたツイートのうち、「自閉症」と「ワクチン」のキーワードを両方とも含んだ54万9,972件を分析した。
 その結果、50%が予防接種に否定的な内容だった。
 また、ワクチンに否定的なツイートの多さには地域差がみられ、特にカリフォルニア州、コネティカット州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州では否定的なツイート数が全国平均を上回っていた。
 また、ワクチンに否定的なツイートの数は、ワクチンに関連したニュース報道の後に増加することも分かった。
 さらに比較的裕福な家庭が多い地域や都市部、乳児を持つ母親が多い地域でワクチンに否定的なツイートが多く、40~44歳の男性による否定的なツイートも多いことが分かった。
 Tomeny氏は、ツイッターのようにユーザーの投稿する情報で成り立つサイトは、検閲がなく監視もほとんどされていないため、この種の議論を広める手段となりやすいと指摘。
 その上で、「ツイッターでのワクチン否定派の主張を知ることで、ワクチンに関する懸念や誤解を解く手がかりを得ることができる
 また、小児科医もワクチン否定派の主張を把握しておけば、議論になったときに反論しやすくなる」と話している。
 米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センターのPaul Offit氏は、誤った情報によって深刻な影響がもたらされると指摘する一方で、「目に見えない病気から身を守るために26回ものワクチン接種が必要であることを考えると、接種すべきか否かの判断は難しく、多くの親にとってSNSが気持ちのはけ口となるのは理解できる」とワクチン否定派に共感を示している。
 その上で、同氏は数年前にカリフォルニア州での麻疹の流行後に予防接種への意識が高まったことを振り返り、「残念ながら疾患の流行が起こって初めてワクチンの重要性が理解されるのが現状。悲しいことに私のような専門家よりもウイルスそのものの方が予防接種の必要性について教える教師としては優れているようだ」と話している。
HealthDay News 2017年10月9日
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ペットから人に感染する、あなどれない感染症「SFTS」

2017年10月12日 06時06分56秒 | アレルギー性鼻炎
 重症化しやすい重症熱性血小板減少症候群(SFTS)。
 死亡率は約20%!
 本来はマダニに噛まれて感染する疾患ですが、ペットを介した感染もあり得ることがわかってきました。
 先日、野良ネコに噛まれた女性が死亡したことが報告されましたが、今回は飼い犬から、それも噛まれたエピソードはないとのこと。
 
■ マダニ感染症、ペットから人に感染 世界で初確認
2017年10月10日:朝日新聞

 野良ネコによる感染例のニュースも挙げておきます。2017年7月のことでした。
 患者血液との直接接触が原因と考えられるSFTSのヒト-ヒト感染の事例も報告されていると書かれています。
 くわばらくわばら・・・。

■ 具合の悪いネコはSFTSを発症している恐れも〜野良猫に噛まれた女性、SFTSで死亡
2017/8/1 日経メディカル
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