小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「目をさませ!乙武さん バリアフリーのために」

2017年08月27日 07時39分38秒 | 医療問題
目を覚ませ乙武さん バリアフリーのために!
(2017.8.25:NHK・・・再放送)

 障害があっても普通に生活し人生を楽しんでいます、という雰囲気にあふれていた乙武洋匡(ひろただ)さん。
 昨年の不倫騒ぎ以降、そのイメージが崩れ、人間のクズ扱いされるようになってしまいました。

 その乙武さんがバリバラ(バリアフリー・バラエティ)に登場です。

 とっても印象深い番組でした。

 まず、不倫騒ぎ前後の乙武さんの評価を健常者と障害者で比較。
 すると意外な結果になりました。

 不倫前:健常者高、障害者低
 不倫後:健常者低、障害者高
 
 えっ?
 障害者は乙武さんを「我々の代弁者」として支持していたのではないの?

 障害者から見ると、不倫騒ぎ前の乙武さんは優等生(ええかっこしい)過ぎたらしいのです。
 あんなに上手くいくはずはない、障害者が誰しもあんな風にできるはずがない、というのが実感。

 そして不倫騒ぎ後は、自分たちに近づいた親近感が生まれてようです。
 障害者だって性欲はあるし不倫することだってあるかもしれない、と。

 レギュラー出演者との対話も興味深く聞き入りました。

 「あそどっく」さんは“寝たきりお笑い芸人”です。
 乙武さんがFBやツイッターで披露する自虐ギャグを「浅い!」と一喝したのでした。
 「障害者の自虐ギャグは、そこはかとなくバリアを感じさせなければならない」という信念。

 ・・・参りました。この人、ただ者ではない。

 次に玉木幸則さんとの対話。
 乙武さんの「障害者だって普通に社会生活できる、クールに生きていける」というスタイル(半分メディアが作り上げたものですが)を乙武さん自身も、玉木さんも疑問を呈しました。
 「うまくいかないことをもっと出して見るべきではなかったか?」との玉木さんの問いに、
 「結構出したつもりなんだけど、メディアは取り上げてくれなかった、“乙武はいい人”というイメージだけ採用する傾向があった」と乙武さん。

 なるほど。
 乙武さんは「障害者を使った“感動ポルノ”の犠牲者の一人」だったのですね。

 乙武さんは今後「好きなことをやる」と宣言しました。
 番組とのタイアップして企画に参加するそうです。
 どんな展開になるのでしょうか。



<番組内容>
 マイノリティーについて発信し続けてきた、トップランナー・乙武洋匡さんが登場!
 障害者の“清く正しい”イメージを、昨年、自らのスキャンダルで破壊した。しかし、謹慎生活を経て復活したものの、迷走中でヤル気も出ないそう。乙武さんはバリアフリーな社会のために必要な存在!そこで!これまで乙武さんが世間の障害者像をどう変えてきたのか、その影響を徹底討論。過去と向き合い、新たなスタートを切ってもらう!

世間の乙武評
 今回のゲストは、マイノリティーについて発信し続けてきた、トップランナー・乙武洋匡さん。障害者のイメージを変えたいと言っていた乙武さん。去年、自らのスキャンダルによって、“清く正しい障害者像”を図らずも破壊した。謹慎生活を経て、今年1月に復活したが、そんな乙武さんを現在、世間はどう見ているのか?松本ハウスが街頭で直撃インタビュー!すると、スキャンダル前は100人中53人が好きと答えたのに対して、スキャンダル後は一変。好きと答えた人はわずか28人に激減するという、散々な結果に。
 しかし、同じ質問を障害者にしてみると、何とも驚くべき結果が出た。そもそもスキャンダル前の乙武さんを好きだと答えた人は半数以下。しかしスキャンダル後には好きだと答える人が増えるという、健常者と、真逆の結果になったのだ。健常者は乙武さんを「障害者代表」として、「感動ポルノ(障害者が、健常者に勇気や感動を与えるための道具になっていること)」として見ていたこと。そして障害者は、そう見られている乙武さんに対して反発を抱いており、スキャンダルによってその構図が壊れた事をむしろ喜んでいるという事実が明らかになった。

乙武さんが話を聞きたかったふたり
 著書「五体不満足」を出して以降、常に“感動ポルノ”の目にさらされてきたと言う乙武さん。これまでどんな事を言っても、清廉潔白・聖人君子として見られ、スキャンダルでそのイメージを壊せたものの、今度は批判の嵐。今後世の中を変えるために、自分はどうやって世間に訴えていくべきか?迷走中という。そんな乙武さんが、ぜひ意見を聞いてみたいという2人の人物、それは、寝たきり芸人あそどっぐと、バリバラのご意見番、玉木幸則だった。

あそどっぐに1日密着
 自身の障害を「自虐」として笑いに変えて伝えるあそどっぐに、同志としてシンパシーを感じていた乙武さん。しかし、あそどっぐからは、笑いの質が根本的に違うという意見が。あそどっぐのモットーは、「自虐とは、日常にバリアがある事を気付かせるものであるべし!」。乙武さんの「自虐」にはそれがない、というのだ!自身の1日を番組に密着させ、日常にあるバリアを紹介。最寄り駅にはエレベーター等がなく電車に乗れない、便意を催してもバリアフリーなトイレが見つからず間に合わないこともある、といった日常のバリアを川柳で面白おかしく伝えた。
 乙武さんからの、「自虐ネタを不謹慎と捉えられることもある?」という質問には、「不謹慎と言う人も、関心があるからこそそういう意見を言う。その関心からその人の何かが変わって欲しい。無視されるのが一番つらい。」と回答。その思いがあるからこそ、自身の笑いにこだわり続けるあそどっぐだ。

乙武さんインタビュー「玉木さんへの思い」
 そしてもう1人のキーパーソン、玉木幸則。乙武さんは、玉木さんの事を、ずっと「自分より“障害者の代弁者”としてふさわしい人」と思って見てきたという。自分は代弁者としてふさわしくないとずっと思ってきた。それにも関わらず、世間からは20年間“障害者代表”として見られてきた。そんな自分を果たして玉木さんはどう見てきたのか、率直な意見を聞いてみたいというのだ。
 スタジオで1時間近くにわたって展開された、乙武さんと玉木さんの「愛のガチ対談」。今回は特別に、未公開パートもあわせて一気に掲載します。



★乙武洋匡 × 玉木幸則「愛のガチ対談」はこちらから
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肺炎球菌ワクチン導入で小児の急性中耳炎が減少

2017年08月27日 06時32分26秒 | 予防接種
 肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)は本来、乳幼児の細菌性髄膜炎をターゲットにしたワクチンですが、その効果だけではなく中耳炎も減らすという派生効果も報告されています。
 そういえば、肺炎球菌ワクチンが定期接種化してから、以前のように中耳炎を繰り返して耳鼻科通院が長く続く子供が減ったような印象がありますね。

 以下に紹介する論文では、

・結合型肺炎球菌ワクチン導入後、小児の急性中耳炎は大幅に減少した(3歳までに1回罹患:80→60%、3回以上罹患:40→24%)。
・中耳炎の原因菌として肺炎球菌は減少したが、それに置き換わるようにインフルエンザ菌やモラキセラ菌が増えた。
・現在中耳炎に推奨されている抗菌薬はアモキシシリンであるが、インフルエンザ菌とモラキセラ菌には効かないので、同薬の代わりにアモキシシリンとクラブラン酸の配合剤を使用するか、同薬へのアレルギーの既往がある場合にはセフジニルを使用すべきである。

 と報告しています;

■ 肺炎球菌ワクチン導入で小児の急性中耳炎が減少
HealthDay News 2017年8月7日
 米国では2000年に結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)が導入されたが、それ以降、小児の急性中耳炎が大幅に減少したことが米ロチェスター総合病院研究所のMichaele Pichichero氏らの研究で明らかになった。
 しかし、同研究では肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)以外の起因菌による急性中耳炎の割合が増えていることも示されたという。
Pichichero氏らは今回、米国におけるPCV導入前後の小児の急性中耳炎の頻度や特徴などについて調べるため、615人の小児を2006年から2016年までの10年間にわたって追跡した。
 急性中耳炎は、全ての診断例で鼓室穿刺を行い、中耳の貯留液を採取して微生物学的検査を実施して確定診断を行った。
その結果、1歳までに急性中耳炎に1回以上罹患した小児の割合は23%、3回以上罹患した小児の割合は3.6%であることが分かった。また、3歳までに1回以上罹患した小児の割合は60%、3回以上罹患した小児の割合は24%だった。なお、Pichichero氏らによると、1989年には3歳までに急性中耳炎に1回以上罹患した小児の割合は80%を超え、3回以上罹患した小児の割合も40%を上回っていたことが報告されているという。
 このことから、同氏らは「これ以降、小児の急性中耳炎の頻度は大幅に低下したと考えられる」との見方を示している。しかし、追跡期間中に肺炎球菌による急性中耳炎の頻度は低下した一方で、肺炎球菌の代わりにインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)やモラキセラ菌(Moraxella catarrhalis)による急性中耳炎の割合が高まっていることも今回の研究で明らかになった。
 Pichichero氏は「これほど劇的な急性中耳炎の減少は予測していなかった。ただ、主な起因菌の種類が変化したことへの対策を講じなければ、急性中耳炎は再び増加に転じてしまう可能性がある」と指摘。インフルエンザ菌やモラキセラ菌による急性中耳炎は、現在米国で第一選択薬として位置づけられている抗菌薬のアモキシシリンによる効果が期待できないとして、注意を呼び掛けている。
 なお、同氏らは最近、同薬の代わりにアモキシシリンとクラブラン酸の配合剤を使用するか、同薬へのアレルギーの既往がある場合にはセフジニルを使用するようになったと話している。
 さらに同氏らは、小児の急性中耳炎が減少した要因として、PCV導入だけでなく米国での急性中耳炎の診断基準が厳格化されたことによる影響も考えられると指摘している。
 一方、今回の研究では小児の急性中耳炎のリスク因子についても検討したが、以前の研究結果と同様、「保育施設の利用」「中耳炎の家族歴」「男児」「白人」「生後6カ月までの中耳炎罹患」がリスクの上昇に関連することが示されたという。
 米クリスチアーナ・ケア・ヘルスシステムの小児科医であるStephen Eppes氏は、PCV導入によって急性中耳炎が減少したことは「現代の公衆衛生における最大の成功例の1つ」と評価。「減少の要因は複数あるが、最大の要因はワクチンの導入だと考えられる。
ワクチンの効果は髄膜炎や敗血症、その他の肺炎球菌による感染症の減少にまで及んでいる」と話している。
この研究結果は「Pediatrics」8月7日オンライン版に掲載された。
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米、インフルエンザ弱毒生ワクチン非推奨の理由2016

2017年08月27日 06時02分57秒 | 予防接種
 一般的にワクチンは生の方が不活化よりも有効率が高いとされています。
 しかしアメリカにおいて、2016-17年シーズンのインフルエンザワクチンでは「生ワクチンは無効なので推奨しない」と関係者を驚かせる事態になりました。
 以前、ブログで取り上げたことがあります;

2016年インフルワクチン事情:経鼻生ワクチンに期待していたのに・・・

 今回、この経緯を説明する論文が発表されました。
 何が起きたのでしょうか?

■ 米、インフルエンザ弱毒生ワクチン非推奨の理由/NEJM
ケアネット:2017/08/21
 2016-17年の米国インフルエンザシーズンでは、予防接種に弱毒生インフルエンザワクチンを使用しないよう米国予防接種諮問委員会(ACIP)が中間勧告を出したが、そこに至る経緯を報告したGroup Health Research Institute(現カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所)のMichael L. Jackson氏らによる論文が、NEJM誌2017年8月10日号で発表された。これは、Jackson氏らInfluenza Vaccine Effectiveness Network(Flu VE Network)が、2013-14年流行期に、4価弱毒化ワクチンが小児におけるA(H1N1)pdm09ウイルスに対して効果不十分であったと明らかにしたことに端を発する。

2015-16年のワクチン効果をタイプ別に推定
 Flu VE Networkは、インフルエンザワクチンの有効性と予防接種により回避できるインフルエンザ症例数を推定・提供する組織。その2013-14年の報告所見に基づき、2015-16年の弱毒化ワクチンで使用するA(H1N1)pdm09株は変更された。この変更の効果に関する評価も含めて、Flu VE Networkは2015-16年シーズンにおけるインフルエンザワクチンの効果を推定した。
 評価は、ミシガン、ペンシルベニア、テキサス、ワシントン、ウィスコンシンの各州にある外来診療所において、急性呼吸器疾患で受診した生後6ヵ月以上の患者を登録して行われた。test-negativeデザイン法を用いて、ワクチン効果を「(1-OR)×100」で推定した。ORは、ワクチン接種者と非接種者を比較したインフルエンザウイルス検査陽性者のオッズ比である。また、不活化ワクチン、弱毒生ワクチンそれぞれの効果についても推定した。

ウイルス株を変更したにもかかわらず弱毒生ワクチン接種群の効果不十分を確認
 2015年11月2日~2016年4月15日に、適格患者6,879例が登録された。このうちインフルエンザウイルス陽性と判定されたのは1,309例(19%)で、大半のウイルスがA(H1N1)pdm09(11%)とB型(7%)であった。
 全体で、あらゆるインフルエンザ疾患に対するインフルエンザワクチンの効果は、48%(95%信頼区間[CI]:41~55、p<0.001)であった。年齢群別にみると26%(50~64歳群)から59%(9~17歳)にわたっていたが、すべての年齢群で有意な効果が認められた(p≦0.04)。
 しかし、ワクチンのタイプ別でみると、有意な効果は不活化ワクチン接種群では認められたが(p<0.001)、弱毒生ワクチン接種群ではみられなかった(p=0.86)。
 2~17歳の小児群において、不活化ワクチンの効果は60%であったが(95%CI:47~70、p<0.001)、弱毒生ワクチンの効果は確認できなかった(効果:5%、95%CI:-47~39、p=0.80)。また、小児群におけるA(H1N1)pdm09に対するワクチン効果は、不活化ワクチン接種群では63%(95%CI:45~75、p<0.001)であったが、弱毒生ワクチン接種群では-19%(95%CI:-113~33、p=0.55)であった。
 このように2015-16年のインフルエンザ疾患のリスクは、インフルエンザワクチンによって軽減されたが、不活化ワクチンに大きな効果が認められた年に、小児において弱毒生ワクチンは効果不十分であることが見いだされた。2016-17年の弱毒生ワクチンに用いられたA(H1N1)pdm09株は2015-16年と同様であったため、ACIPは2016-17年シーズンに弱毒生ワクチンを使用しないよう勧告を発表したのである。


<原著論文>
・Jackson ML, et al. N Engl J Med. 2017;377:534-543.

 うーん、理由を説明してはいないなあ。
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「糖尿病患者に糖質制限」の是非

2017年08月10日 07時24分24秒 | 医療問題
 現在、ダイエットの方法として有名になった「糖質制限」あるいは「炭水化物制限」。

 まず誤解がないように書いておきますが、炭水化物(でんぷん類)は米・小麦などの穀物に主に含まれる栄養素です。これが分解されたものが糖質・糖類です。
 ですから、ご飯・パン・うどんを食べると血となり肉となるのではなく、ほとんどが血糖になります。例えば、うどんひと玉は角砂糖16個分の糖になるという怖い計算結果もあります。
 なので、「血糖値を上げない&お腹周りの脂肪を増やさない」ためには、甘いものや果物(果糖も糖です)を控えるだけでは効果なく、炭水化物全体を控える必要が出てくるのです。

 この根拠は、「脂肪の元は脂質摂取ではなく炭水化物/糖質摂取の余剰分である」というコペルニクス的展開にあります。びっくりしました?
 実際にプロボクサーの試合前の減量法とライザップの手法は炭水化物/糖質制限ですから実証済み。

 さて、では血糖値が病的に高くなる糖尿病に炭水化物/糖質制限どうか?
 「血糖の元はすべて炭水化物/糖質である」ので、炭水化物/糖質制限をすれば血糖値の上昇は抑えられ、使用している薬剤を減らせる可能性があります。
 血糖値の急上昇や変動の幅も抑えられますので、糖尿病のコントロールも改善し、糖毒性から逃れられます。

 以上、いいことずくめなので「糖尿病患者に炭水化物/糖質制限食」が普及するかと云えば、現状はそうなっていません。
 私の知り合いで糖尿病の方がいらっしゃいますが、相変わらず管理栄養士さんからは「総カロリー制限」と「バランスのよい食事」の指導に終始しているようです。
 しかし素人判断で「糖尿病に良さそうだから私も始めてみよう」と患者さんが実行に移すのは危険です。
 それは血糖値を下げる薬をすでに使っているからです。
 個々の患者さんが、ふだんの食事で上がる血糖を想定して治療薬を微調整して処方されているところに炭水化物/糖質制限をすると、低血糖になってしまいます。
 ですから、糖尿病で治療中の患者さんが炭水化物/糖質制限食をはじめたいと思ったときは、主治医によく相談する必要があります。
 
 目に付いた記事を、日経メディカルから紹介します。

■ ロカボ食は糖尿病患者によくないの?2017/4/17

■ 話題の糖質制限、糖尿病患者に使う?使わない?
2017/8/9 日経メディカル
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生ワクチンと不活化ワクチン、接種する順番で異なる免疫効果?

2017年08月09日 15時21分09秒 | 予防接種
 「ワクチン(生ワクチン vs. 不活化ワクチン)が接種される順番により、入院率が減少する可能性がある」らしい。
 最後に接種したのが不活化ワクチンの子どもより、生ワクチンだった子どもの方が非標的感染症による入院が少なかったというデータが示されています。

 ホントかなあ・・・。

■ 生ワクチンと不活化ワクチンで異なる免疫効果:研究で支持する結果
2017-05-29:Reuters Health:ケアネット
By Anne Harding
 米国の疾病対策管理センター(CDC)の新しい研究によると、幼児が直近に受けた予防接種に生ワクチンが含まれる場合、感染症で入院する可能性は低い。
 CDCの予防接種安全性局のBarbara Bardenheier先生らは、「最近報告された他の研究と我々の研究結果から、ワクチンを接種する順番によって標的感染症に対する防御効果以上のベネフィットが得られるという可能性が高くなった」と記述している。「しかし潜在的交絡バイアスと選択バイアスの程度が不明であり、結果の解釈は待つべきだ。」
 結果は5月6日発表のClinical Infectious Diseasesオンライン版に掲載された。
 「これまでの研究から、ある種のワクチンは標的感染症に対する防御効果以上のベネフィットを有することが示唆されていた。これらの研究は主に西アフリカで実施された」と、Bardenheier先生はReuters Healthにeメールで伝えた。「その後、デンマークで行われた研究により、ワクチン(生ワクチン vs. 不活化ワクチン)が接種される順番により、入院率が減少する可能性があることがわかった。今回我、我々が初めて米国で研究を実施したところ、デンマークの研究に類似した結果が認められた。」
 Bardenheier先生とそのチームは、MarketScan米国民間保健請求データベースを用いて、2005年~2014年までの生後16か月〜24か月の子供311,000人のデータを調べた。
 最後に接種されたのが生ワクチンだった子供では、不活化ワクチンのみだった子供に対し、非標的感染症による入院のハザード比(HR)が0.50(95%信頼区間[CI]:0.43〜0.57)だった。また、最後に接種されたのが生ワクチンのみだった子供では、生ワクチンと不活化ワクチンの両方を接種された子供に対し、HRが0.78(95%CI:0.67〜0.91)だった。
 Bardenheier先生は、生ワクチンによって標的感染症以外の感染症に対する防御効果も得られる機序については、わかっていないと述べている。
 「可能性のひとつとして、『訓練免疫』コンセプトの関与も考えられる」と、研究者たちは説明した。「ヒトはそれぞれ固有の感染歴と予防接種歴を有しているが、これらの曝露がそれぞれ免疫系に重要な足跡を残し、将来の病原体に対する免疫反応に影響をおよぼすというもので、関連のない感染症に対する防御効果が得られる可能性も含まれる。」
 同氏は、生ワクチンが不活化ワクチンによる免疫系への効果とは異なる効果も有していると付け加えた。
 「よく知られているのは、結核予防のために用いられる弱毒生ワクチン、BCG(Bacille Calmette-Guerin)だ」と、Bardenheier先生は述べた。「何十年もの間、BCGは筋層非浸潤性膀胱がん治療における主要な免疫療法として用いられてきた。投与された患者の大部分で腫瘍の再発抑制効果が示されたためだ。」
 Bardenheier先生によると、この関連性をさらに調べるために無作為化比較試験を実施するのは費用がかかるだろうし、倫理的に問題があるかもしれない。
 「臨床試験が実施できないのであれば、異なるデータベースを用いて米国の他の集団を対象とした観察研究を行うことで、この結果の信頼性について、さらなるエビデンスが得られるかもしれない」と、同氏は述べた。「これらの所見が今後の研究で支持されれば、ワクチン接種のベネフィットが標的疾患の予防にとどまらないというエビデンスが追加されることになるだろう。」
 この研究では、ワクチン未接種児における結果は含まれなかった。結果として、他の研究で示唆されている不活化ワクチン接種がワクチン未接種よりも入院の増加に関連するのかという点については、糸口を引き出せなかった。


<原著論文>
Clin Infect Dis 2017.
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百日咳ワクチン関連の話題(2017年8月)

2017年08月08日 15時53分49秒 | 予防接種
 目にとまった百日咳ワクチン関連の話題をアステラスのHP、「REUTERS Medical News」から。

 成人用百日咳含有ワクチン(Tdap:日本では未承認)は免疫がついても数年でなくなってしまう困ったワクチンです。
 そして百日咳が一番重症化しやすい年齢はゼロ歳、それも生まれたばかりの新生児。
 赤ちゃんをどうやって百日咳から守るか・・・たどり着いた答えは「妊婦への接種」です。
 母親に免疫を付けることにより母親からの感染を防ぎ、さらに胎盤を介して抗体を赤ちゃんへ移行させることにより赤ちゃんを守るという戦略。
 現在、米国、英国、オーストラリアを含む多くの国では、第3三半期以前の妊婦に対して、3か月未満の幼児を守るため、百日咳を含むワクチン接種を勧めています。
 日本の状況は・・・Tdapは未導入だし、当然妊婦への接種も話題にもなりません(T_T)。

 各報告ともに結構文章の量があるので、ポイントを要約しておきます;

1.「百日咳ワクチンを妊娠中に接種すると母親と乳児の抗体価が上昇する(2017-07-05)
 ワクチン接種の時期が現行の妊娠後半期ではなく妊娠前でも有効ではないかという内容です。しかし、そのように免疫をもらった赤ちゃんは、自分の接種スケジュールをこなした後に速やかに抗体がなくなってしまうという不思議な現象が観察されました。どういうこと?

2.「妊娠中の百日咳ワクチン接種で新生児を守れる(2017-04-03)
 妊婦がTdapを接種すると、その赤ちゃんが百日咳から守られる確率は91%(ただし生後2ヶ月まで)の高率という内容です。妊婦への接種は赤ちゃんへの「初回接種」と捉えられるほど効果がある、と。ただし、Tdapの効果持続期間は短いため、妊娠するたびに接種が必要になります。

3.「妊娠中のTdapワクチン接種の安全性が新たな論文レビューで確認される(2017-02-09)
 その「妊娠第2三半期または第3三半期に行うTdap混合ワクチン産前接種は、胎児および新生児にとって臨床的に意義のある害を及ばすことはない」と安全性を示した内容です。

4.「百日咳ワクチンを接種する妊婦が増加(2017-06-15)
 以上を踏まえた社会状況として「Tdapブースターワクチンを接種した米国人妊婦は、2014年にはわずか27%であったのに対し、昨年は約49%にまで増加した。でもまだ半分であり、乳児の2人に1人は百日咳に対する防御力を持たずに生まれている。」という内容です。

5.「百日咳感染の重症度は予防接種によって低下(2017-07-27)
 「予防接種をしても常に百日咳が予防できるわけではないが、ワクチンを接種すると、接種していない場合に比べて呼吸器症状は軽減され、重篤な合併症の確率は低くなる」という内容です。まあ、そうでなきゃやる意味がありません。
 具体的には「重篤な感染症の顕著な特徴である重度の嘔吐の確率が30%低下」したとのこと。



1.百日咳ワクチンを妊娠中に接種すると母親と乳児の抗体価が上昇する
 母親が妊娠中に百日咳ワクチン接種を受けると、接種後の妊娠で生まれた乳児と母親において百日咳抗体の濃度が上昇する、と研究者らが報告した。
 「現在、百日咳を含むワクチンの接種は、第2/第3トリメスターに受けることが推奨されている」と、University of Antwerp(Belgium、Wilrijk)のElke Leuridan先生はReuters Healthにeメールで伝えた。「この戦略をとることで、高い抗体価が胎盤を通して胎児に受け渡される。しかし、妊娠前のワクチン接種も、その後に生まれた乳児においてかなり高い抗体価を誘導し、もしかすると予防効果を示す可能性があることがはじめて明らかになった。」
 Leuridan先生のチームは、最初の妊娠後、母親86人に破傷風・ジフテリア・無細胞百日咳(Tdap)ワクチンを追加接種し、もう1度妊娠した母親58人および2回の妊娠で出産された乳児と兄弟において百日咳抗体を評価した。
 Tdap追加接種とその後の出産のあいだの間隔は中央値で16.8か月であった(範囲:6.2か月~56.49か月)。
 ワクチン接種の1か月後、女性の97.7%が線維状赤血球凝集素(FHA)およびペルタクチン(Prn)に免疫応答を示し、90.7%が百日咳毒素に免疫応答を示した。平均抗体レベルは、次の出産時点で大幅に低下していたが、すべての抗体に対しベースラインの濃度より高い水準を維持した。
 乳児予防接種プログラム開始前の生後1か月時点まで、2回目の妊娠で生まれた児では、きょうだいに比べ抗体レベルが大幅に高かった。
 初回接種シリーズとして3回の接種を受けた後では、2回目の妊娠で生まれた子では、最初の妊娠で生まれた兄弟に比べすべての抗体濃度が一貫して低かった(The Journal of Infectious Diseasesオンライン版6月15日の報告)。
 数学モデルによると、抗百日咳毒素抗体レベルが5 ELISA単位(EU)/mL未満に低下するまでの時間(中央値)は、最初の妊娠で生まれた子では1.21か月、2回目の妊娠で生まれた子では2.21か月であった。
 「我々のデータは、妊娠可能年齢の女性に対する追加接種の最小間隔を計算するための基礎となるものだ」と、Leuridan先生は述べた。「この研究は規模が小さいため、必要な間隔を正しく計算するにはより多くのデータが必要だ。しかし今回の研究により初めて、妊娠前の追加接種による母親の抗体価上昇が新生児にプラスの効果をもたらすことが確認できた。」
 「方針を変更するのは時期尚早だが、妊娠する少し前の追加接種に効果がないわけではないことがわかった」と、先生は述べた。
 「もっとも驚くべき結果は、母親へのワクチン接種後に生まれた乳児において免疫応答が低下したことだ」と、先生は述べた。「この結果が予防効果の観点で重要かどうかはわからない。というのは百日咳の予防効果との相関はみられていないからだ。同様に、妊娠中にワクチンを接種した後についても免疫応答の低下が報告されているが、乳児への初回+追加接種スケジュールを実施した後には消失する。」
 「低月齢の乳児を百日咳から守る手段として、母親が妊娠中に百日咳ワクチン接種を受けることの重要性を強調したい」と、先生は結論づけた。「母親のワクチン接種に関しより多くのデータと科学的根拠を提供する努力を続けていく中で、追加接種の推奨および成人のTdap追加接種の推奨に関する費用便益の計算について意味のあるデータを追加できたと思いたい。」


2.妊娠中の百日咳ワクチン接種で新生児を守れる
 百日咳は死に至る可能性のある呼吸器感染症であるが、それに対抗するワクチンを母親が接種すると、子供が百日咳に罹る確率が大幅に低下することが、米国の大規模研究で明らかになった。
 研究者らは、2010年~2015年にカリフォルニアで生まれた約149,000人の乳児に関するデータを検討した。破傷風トキソイド・弱毒化ジフテリアトキソイド・無細胞性百日咳(Tdap)ワクチンをブースター接種した母親の子供は、米国人乳児が一般に百日咳ワクチンの初回投与を受ける時点の前の、極めて重要な生後2か月間に百日咳に罹患する確率が91%低いことが、この研究で明らかになった。
 「妊婦が予防接種を受けることは、非常に大切である」と、研究筆頭著者でカリフォルニア州オークランドにあるKaiser Permanente Vaccine CenterのNicola Klein先生は述べた。
 「これは、乳児自身がワクチン接種できるようになる前に乳児を守ることのできる、極めて効果的なワクチンである」と、Klein先生は電話インタビューで述べた。
 多くの国の保健当局が、生後6週~3か月までのいずれかの時点から開始して3回投与するという乳児に関する勧告を出すだけでなく、妊婦にもワクチン接種するよう推奨している。また、ワクチンの有効性は時と共に弱まるため、妊娠のたびにワクチン接種するよう女性に推奨している国もある
 この研究に組み入れられた赤ちゃん全員が生まれた場所であるカイザーパーマネンテは、カリフォルニアで百日咳が流行した後、2010年に妊婦のTdapワクチン接種を奨励し始めた。米疾病対策センターは2013年初め、Tdapを過去に接種したことがあるかないかにかかわらず、全ての妊婦にTdapワクチンを接種するよう勧告した。
 これらの勧告が出される前の2006年~2008年においては、カイザーの病院で生まれた赤ちゃんのうち、妊娠中にワクチン接種した母親を持つ赤ちゃんは1%未満であったことが判明した。
 2010年にこの研究が開始された時点では、ワクチン接種した母親を持つ赤ちゃんは約12%であった。2015年までには、ワクチン接種した母親を持つ赤ちゃんは87%となった。
 乳児らが生後2か月から接種し始めた百日咳ワクチンの効果を調整した後でもなお、妊娠中にワクチン接種した母親を持つ赤ちゃんの生後1年以内の百日咳リスクは69%低かったと、研究者らは4月3日付けのPediatricsで報告している。
 これは対照を置いた試験ではなく、妊婦のワクチン接種が赤ちゃんを百日咳から守ることを証明できるようデザインされてはいないと、執筆者らは述べている。妊娠中にワクチン接種したほとんどの女性において接種時期が同じ頃であったため、この研究は、母親へワクチン投与するのに最適な妊娠期間中の時点を判定する一助ともならない。
 それでもなお、これは妊婦のワクチン接種が乳児を守ること、とりわけ乳児自身がワクチン接種することはない極めて重要な生後2か月間において乳児を守ることを示す、非常に有力なエビデンスを提供した初めての研究であると、この研究に関与していないカリフォルニアにあるスタンフォード大学医科大学院の小児感染症研究者、Yvonne Maldonado先生は述べた。
 さらに、2か月、4か月、6か月時点で乳児が接種するワクチンの効果が妊婦のワクチン接種によって低減する可能性があるとの懸念も、この所見によって軽減するに違いないと、Maldonado先生はeメールで述べた。
 「この研究はこれが事実無根であること、そして実際には、母親のTdap接種によるベネフィットが乳児のワクチン接種後でもなお存在するように見受けられることを証明している」と、Maldonado先生は述べた。
 全ての女性が妊娠中にこのワクチンを接種しているわけではなく、医師からワクチンを勧められない場合は尋ねるべきであると、この研究に関与していないオーストラリアにあるシドニー大学の公衆衛生学研究者Julie Leask氏は述べた。
 「このデータは、妊婦のワクチン接種は乳児のワクチン接種における『初回投与』であるとして、その論拠をさらに強めている」と、Leask氏はeメールで述べた。


3.妊娠中のTdapワクチン接種の安全性が新たな論文レビューで確認される
 妊婦における破傷風、ジフテリア、無細胞百日咳(Tdap)ワクチン接種の安全性に関して安心できるデータが文献レビューをした結果得られた、と研究者らは述べている。
 「妊娠第2三半期または第3三半期に行うTdap混合ワクチン産前接種は、胎児および新生児にとって臨床的に意義のある害を及ばすことはない、ということがエビデンスから示唆される」と、オーストラリア、アデレード大学Mark McMillan氏らが2月6日付Obstetrics and Gynecologyオンライン版で報告した。
 小児期でのワクチン接種率は高いが、百日咳の「復活」が多くの国で生じている、と研究者らは指摘している。2か月未満の幼児は能動免疫に十分耐えることができず、非常に影響を受けやすい。
 よって、米国、英国、オーストラリアを含む多くの国では、現在第3三半期以前の妊婦に対して、3か月未満の幼児を守るため、百日咳を含むワクチン接種を勧めている。しかし、産前ワクチン接種の母親、胎児、新生児に対する安全性に関する情報は限られている。
 これを調べるため、McMillan氏らは、百日咳抗原、ジフテリア毒素、破傷風毒素を含む混合ワクチン、あるいは不活性化ポリオ抗原ワクチンの産前接種後の妊婦、胎児、幼児における有害事象を報告した21試験の体系的レビューを行った。
 早産、SGA性低身長症、死産、出生時低体重、先天異常等の出生時有害事象を評価したところ、「妊娠後期第2三半期または第3三半期でのTdapまたはTdap-IPVの産前接種後にリスクが上昇することは示唆されなかった」と報告されている。転帰に対する95%信頼区間はすべて1.0まで及ぶと推定される。しかし、こうした観察結果は主に低レベルの回顧的データに基づく。
 高血圧性障害や早期陣痛の統計学的または臨床的に有意なリスクはない。研究者らによると、ある大規模レトロスペクティブ試験において絨毛膜羊膜炎リスクに関して小さいながらも統計学に有意な上昇が認められたが、早産、絨毛膜羊膜炎の目立った続発症リスクの上昇はなかった、統計的検出力を適切化した上でTdapワクチンの産前接種と絨毛膜羊膜炎の関連を検討した研究が求められる。
 「破傷風毒素ワクチン産前接種後の全異常に対する推定値は1.20から1.60であり、95%信頼区間はゼロと交差した」と、研究者らは報告している。「第1三半期ワクチン接種後の個々の先天異常転帰について報告した同種の研究も有益であろう。」
 また、レビューした試験には、ワクチン接種後の重度の反応を報告したものはほとんどなかった。最もよく認められた有害事象は局部反応であった。「発熱の客観的な発現率はわずか3%以下であり、全身事象としてもっと頻度が高かったのは頭痛、不快感、筋肉痛だった」と、報告には記述されている。
 研究者らは、多くの国で妊娠中のTdapワクチン接種の推奨変更があったことから、近い将来Tdapワクチン産前接種の安全性を検討した研究が増えるだろうと指摘している。
 「現在進行中の研究結果が今回のエビデンスにまもなく加わる予定である。Tdapワクチン産前接種実施国の市販後調査データから価値あるエビデンスが得られるだろう」と、研究者らは述べている。


4.百日咳ワクチンを接種する妊婦が増加
 百日咳ワクチンを接種する妊婦が増加していることが、米国の研究で明らかとなった。
 破傷風・ジフテリア・百日咳を予防するTdapブースターワクチンを接種した米国人妊婦は、2014年にはわずか27%であったのに対し、昨年は約49%にまで増加したことが米疾病対策センター(CDC)の研究で明らかとなった。CDCが全妊婦に対して初めてこのワクチンを推奨したのは、2013年のことである。
 「Tdapワクチン投与が出生前管理のルーチンの一部となりつつあることが分かり励まされるものの、乳児の2人に1人は百日咳に対する防御力を持たずに生まれている」と、この研究に従事した、CDC、Immunization Services Divisionの研究者、Carla Black氏は述べた。
 「赤ちゃんを百日咳から守る最善の方法は、各妊娠の第三期にTdapワクチンを接種することである。妊娠中にTdapワクチンを接種すれば、生まれてから、赤ちゃんが自分で百日咳ワクチンを接種し始めることができるようになる生後2か月までの一番危ない時期に、赤ちゃんを守る一助となる」と、Black氏はeメールで述べた。
 妊婦がTdapワクチンを接種する確率が最も高まるのは、医師もしくは看護師がそれを推奨して注射を打つことを申し出た場合であることが、この研究で分かった。そういった状況では約70%の妊婦がワクチンを接種したのに対し、医療提供者からワクチンを推奨されなかった場合はわずか1.4%であった。
 医療提供者から患者へのワクチン接種勧告は行われたものの、注射は提供されなかった場合、ワクチンを接種する妊婦の割合が約31%となったことも判明した。
 ワクチンを接種しなかった女性のうち約13%は、ワクチンが赤ちゃんに危険をもたらすことを懸念していると答え、別の5%の女性はワクチンが自分にとって危険となる可能性があると不安に感じていた。
 「安全性に関して良いデータがある。そのデータからは、報告された副作用の大多数はワクチン接種後の腕の痛みであり、ワクチンが母親と赤ちゃんの両方にとって安全であることが分かる」と、この研究に関与していない、オーストラリアにあるシドニー大学の公衆衛生学研究者であるKerrie Wiley先生は述べた。
 医師が患者にワクチンを接種するよう告げ、尚且つすぐに投与できるよう注射が用意してある場合、患者が推奨されるワクチンを接種する確率ははるかに高くなることが、この研究で裏付けられている、とWiley氏はeメールで伝えた。
 「妊婦には覚えなくてはならないことが非常に多くあり、妊娠するととても忙しくなる。我々の研究に参加した多くの女性達は、予定、避けなければならない食品、そして妊娠が分かったと同時にやって来るその他全ての推奨事項を覚えなければならない、という情報過多について述べた。我々は、推奨されるワクチンを妊婦が覚えておけるよう手助けをする、ということだ」とWiley氏は述べた。
 Tdapワクチンでは赤ちゃんにとって十分な予防効果が得られないのではないかという懸念が最近まであった、とカリフォルニアにあるスタンフォード大学医科大学院、小児感染症科チーフYvonne Maldonado先生は述べた。
 「近年の研究から、母親のTdap接種によって、生後間もない乳児において良好な百日咳予防効果が得られることが示されている」と、CDCの研究に関与していないMaldonado氏はeメールで述べた。
 「妊婦と医療提供者の教育を向上させれば、母親のTdapワクチン接種率を増加させる上で非常に役立つだろう」と、Maldonado氏は付け加えた。
 ワクチン接種率を算定するため、研究者らは2015年8月1日以降のいずれかの時点で妊娠していた18歳~49歳の女性を対象として、2016年3月および4月にオンライン調査を実施した。この調査には、約2,100人の女性が参加した。そして、2014年と2015年のワクチン接種率に関するデータを収集する際にも、同様の方法で調査が行われた。


5.百日咳感染の重症度は予防接種によって低下
 予防接種をしても常に百日咳が予防できるわけではないが、ワクチンを接種すると、接種していない場合に比べて呼吸器症状は軽減され、重篤な合併症の確率は低くなると、米国の研究から示唆されている。
 百日咳を発症した患者の4人中3人が最新の予防接種を受けていたことが、複数の州の疾病サーベイランスデータの解析から明らかにされた。
 乳幼児では重症百日咳の確率は60%低下したが、それは推奨される小児期百日咳予防接種を全て受けていた場合であった。さらに、最新の予防接種を受けていた場合、百日咳に感染したほとんどの小児及び成人で、重篤な感染症の顕著な特徴である重度の嘔吐の確率が30%低下した。
 「これらの結果は重要である。というのは、予防接種を受けても百日咳が完全に予防されるわけではないが、予防接種を受けた人に発生するブレークスルー症例が重症化する可能性が低いことを示しているからだ」と、米国疾病予防管理センター(CDC)(Atlanta)にある国立予防接種・呼吸器疾患センターの筆頭著者Lucy McNamara氏は述べた。
 「これはつまり、患者の入院や重篤な合併症が減少することを意味する」と、McNamara氏はeメールで伝えている。
 小児は生後2、4、6か月、15か月~18か月、4歳~6歳の5回にわたってDTaPワクチン(ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、無菌性百日咳)の接種を受けることが、CDCにより推奨されている。11歳又は12歳には、青年期のTdap(破傷風トキソイド、減量ジフテリアトキソイド、減量無菌性百日咳)追加接種が推奨される。
 7月8日付けのオンライン版Clinical Infectious Diseasesに掲載された今回の研究では、生後3か月以上の米国人患者において2010年~2012年に発生した百日咳症例9,801件のデータを検討した。症例は、コネチカット州、ミネソタ州、ニューメキシコ州の全州感染症登録簿及びコロラド州、ニューヨーク州、オレゴン州の選択された郡から収集された。
 5例中ほぼ4例の感染症が年齢20歳未満の患者に発生しており、半数以上の感染症が12歳以下の小児に起こっていた。
 この研究の限界として、推奨される予防接種を全てスケジュール通りに受けた人は、それ以外の健康行動も百日咳に感染したり重度の症状を呈したりする可能性が低くなるものであると考えられると、著者らは注意を促している。
 そうだとしても、この結果は、現行のワクチンが機能していることを示す新たなエビデンスを提供していると、Baylor College of Medicine(Houston)にあるNational School of Tropical Medicineの学部長であるPeter Hotez先生は述べた。
 「CDCは1990年代のワクチンを全細胞DTPから現行版(DTaP)に変更した。DTaPは発熱などの副作用が少ない」と、Hotez先生はeメールで伝えている。
 百日咳症例の総数はDTaPにより漸増してはいるが、上記の結果から、乳児を重症百日咳から守るにはDTaPが優れていることが示唆されると、この研究に関与していないHotez先生は付け加えた。
 「米国の百日咳ワクチンプログラムがDTaPにより機能し続けていることを示すさらなるエビデンスが提供されているため、これはよいニュースである」と、Hotez先生は述べている。
 既発表研究の多くは小児期の予防接種に重点を置いているが、今回の研究では成人が百日咳に罹患しても百日咳ワクチンが有益な可能性があることを示していると、この研究に関与していないUniversity of Toronto公衆衛生研究者であるKevin Schwartz先生は語った。
 「百日咳にかかった成人にとって最大の脅威は、百日咳に関連する合併症や死亡リスクが最も高い、まだ予防接種スケジュールを終えていないか全く接種を受けていない幼児に感染を広める可能性があることである」と、Schwartz先生はeメールで伝えている。
 「ワクチンによる感染防御は段々と低下していくものではあるが、重症百日咳から乳児を守る最もよい方法は、全ての人が推奨される最新の百日咳予防接種を受けておくことである」と、Schwartz先生は付け加えた。
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「アイスクリーム頭痛」の対処法

2017年08月07日 07時50分00秒 | 小児医療
 冷たいアイスを急いで食べると「キーン」と頭が痛くなることを「アイスクリーム頭痛」と読んでいます。英語では brain freeze(脳のフリーズ)。
 正式な医学名は「翼口蓋神経節神経痛」だそうです。
 その対処法を解説した記事を紹介します。
 簡単に言うと「ゆっくり食べる」こと。

 まあこれも当たり前といえば当たり前ですね(^^;)。

 メカニズム的には偏頭痛と近似しているとの記載あり。

■ 「アイスクリーム頭痛」が起きる仕組みと予防法
HealthDay News:2017/08/07:ケアネット
 キンキンに冷えたスムージーやアイスクリームがおいしい季節だが、あまり急いで食べると一瞬だがひどくキーンとする頭痛が起きることがある。この頭痛は「アイスクリーム頭痛(brain freeze)」と呼ばれるもので危険性はないが、少しの心がけで防げる可能性があると、頭痛専門医である米テキサスA&M大学医学部のStephanie Vertrees氏はアドバイスしている。
 同氏によると、アイスクリーム頭痛は医学的には「翼口蓋神経節神経痛」と呼ばれる。「翼口蓋神経節は口蓋の奥にある神経の束で、冷たい食べ物に敏感。そのため、冷たい食べ物が喉を通っていくときにこの部分に触れると神経が刺激され、その情報が頭痛を起こす脳の領域に伝わる」と、同氏は説明する。
 この神経節は片頭痛や群発頭痛の原因となることでも知られており、その予防法を探すための研究が続けられている。片頭痛の患者では、アイスクリーム頭痛が治療に役立つ可能性もあるという。「誰にでも必ず有効だとはいえないが、アイスクリーム頭痛を起こせば片頭痛を緩和できる可能性がある」と同氏は話している。
 ただ、多くの人にとっては、アイスクリーム頭痛に伴う一時的な不快感は和らげるか、できれば完全に避けたいと考えるものだろう。同氏が紹介するアイスクリーム頭痛を避ける方法は以下の通り。

・冷たい食べ物は、急がずにできるだけゆっくり食べること。そうすれば自分の口の中で食べ物を温めることができる。
・冷たい食べ物は、口内の前の方に含むようにすること。口内の奥の方を刺激するとアイスクリーム頭痛を引き起こす可能性があるため。
・アイスクリーム頭痛が起きそうだと思ったら、舌を口蓋に押しつけると痛みが和らぐ可能性がある。舌の温かさで副鼻腔と翼口蓋神経節を構成する神経が温まるため。

 Vertrees氏は、「アイスクリーム頭痛は危険なものではなく、放っておいてもすぐに軽快する。つい急いで食べたり飲んだりしてしまうという人は、アイスクリーム頭痛について理解し、ゆっくりと食べたり飲んだりすることを心がけるとよいだろう」とアドバイスしている。
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高用量(4倍)インフルエンザワクチンで介護施設入居者の入院リスク低下

2017年08月07日 06時34分30秒 | 予防接種
 インフルエンザワクチン関連の話題です。
 ワクチンの量を4倍に増やしたら効果があったとの報告。
 入院リスクは減少、でも死亡率には影響なし、とのことです。

 まあ、当たり前と云えば当たり前のような・・・。

 気になる「副反応が増えたかどうか」の記述は見当たりませんでした。

■ 高用量インフルワクチンで介護施設入居者の入院リスク低下
HealthDay News:2017/08/07:ケアネット
 介護施設に入居する高齢者では、従来ワクチンの4倍量の抗原を含む高用量インフルエンザワクチン(商品名:Fluzone)を接種すると、インフルエンザで入院するリスクを大幅に低減できることが新たな研究で示された。研究を率いた米ブラウン大学のStefan Gravenstein氏は、「本研究では対象者の4分の1が90歳以上であり、高用量ワクチンが超高齢者にも有効であることが示された」と話している。
 本研究はワクチンの製造元であるSanofi-Pasteur社の支援により実施され、結果は「Lancet Respiratory Medicine」7月20日オンライン版に掲載された。
 研究では、米国38州823カ所の介護施設に入居する65歳以上の高齢者3万8,256人を対象として、2013~2014年のインフルエンザシーズンのメディケア請求データを分析した。これらの施設は、入居者に高用量インフルエンザワクチンを接種する施設と、標準用量のワクチンを接種する施設にランダムに割り付けられていた。
 その結果、同シーズンの半年間の呼吸器疾患による入院の発生率は、標準用量群の3.9%に対して高用量群では3.4%で、約13%の入院リスクの低下が認められた(調整後の相対リスク0.873、95%信頼区間0.776~0.982)。さらに、呼吸器疾患以外の原因による入院を含めた全体的な入院率も、高用量群で大幅に低下することが分かった。
 「今回認められた入院リスクの低下のうち、呼吸器疾患を主な原因とする入院による影響は3分の1にとどまった。高用量インフルエンザワクチンは呼吸器疾患以外の原因による入院の回避にも有用だと考えられる」と、Gravenstein氏は述べている。
 なお、今回の結果を踏まえると、入居者に接種するワクチンを標準用量のものから高用量のものに変更した場合、69件変更するごとに1件、シーズン中の入院を回避できることになるという。一方で、全体の死亡率にはワクチンの種類による影響は認められなかった。
 Gravenstein氏によると、過去にも高齢者に対する高用量ワクチンの有効性を示した1件の研究があるが、比較的健康な人を対象としたものだった。そのため、介護施設に入居するフレイル(虚弱)の高齢者にも効果が認められるのか、確認する必要があったという。
 重篤患者のケアの専門家である米スタテン・アイランド大学病院のTheodore Strange氏は「慢性疾患を抱える患者では、入院せずに住み慣れた環境で過ごすことで生活の質(QOL)が向上する」と話し、「今回の研究は適切にデザインされたものであり、医療費およびQOLの両面で重要なものだ」と結論づけている。さらに同氏は「高用量ワクチンへの変更には費用がかかるが、患者の入院を回避することによる利益の方が上回る」との見解を示している。
 米ノースウェル・ヘルス、プレインビュー・シオセット病院のAlan Mensch氏は「この研究で死亡率への影響がみられなかったのは、研究を実施したシーズンは比較的弱いウイルス株が主に流行していたためだろう」と指摘。また、「全ての人に一律の用量が適するわけではなく、医学的な状態や性、年齢に合わせた個別化医療を目指す必要がある」として、その観点からも今回の知見は役立つだろうと述べている。


<原著論文>
・Gravenstein S, et al. Lancet Respir Med. 2017 Jul 20.
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赤ちゃんのからだは「ほいっぷるん」で泡をつくって洗いましょう。

2017年08月04日 18時10分19秒 | アトピー性皮膚炎
 ダイソーの人気商品「ほいっぷるん」。



 洗顔用の泡立て器です。
 百均なので100円。
 でもamazonでメーカーの物を買うと1000円近くします。

 当院ではアトピー性皮膚炎の赤ちゃんのからだを洗うとき、泡で撫でるようにしてくださいと指導しています。
 しかしこの泡をつくることがちょっと面倒。
 泡立てネットではちょっと時間が掛かります。
 ポンプを押すと泡が出るタイプの液体石けんもありますが、泡の量が少ないので数回押すことになり、すると結果的に液体石けんを使いすぎて、かえって肌荒れの原因になる可能性もあります。

 先日、滋賀県で開催された「第34回小児難治喘息・アレルギー疾患学会」へ参加してきました。
 全国のPAE(小児アレルギーエデュケーター)が各ブロックに分かれて子どもの体を洗う「あわあわ体操」を自主制作して動画で発表する報告会に参加したところ、北海道ブロックが強調したのは「泡の作り方」。

 確かに泡作りは、アトピー性皮膚炎のスキンケアの一つのハードルになりがち。
 その動画の中で、一番簡単に泡を作る方法は「泡立て器」の使用ではないかと感じました。

 帰ってきて早速ネットで検索すると、前述のようにamazonでは1000円・・・ちょっと患者さんに勧めにくいなあ。
 スタッフから「百均で売ってますよ」と聞き、ダイソーに出かけて「ほいっぷるん」をゲット。

 そして自分で使ってみました。
 うん、簡単に泡ができる。
 液体石けんも一押しで十分。
 泡で撫でるだけでも油がしっかり落ちます。
 赤ちゃんのからだなら1回つくればOKかな。

 これなら患者さんにお勧めできます!
 なお「ほいっぷるん」は人気商品なので、売り切れの店舗もあるそうです(^^)。
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米国小児科学会から食物アレルギー診療医へのコメント

2017年08月04日 18時00分34秒 | 食物アレルギー
 米国小児科学会(AAP)が食物アレルギーに関して小児科医が果たすべき役割を発表したという記事を紹介します。

 ざっと目を通してみると、あまり目新しい内容はありませんでした。
 「血液検査や皮膚テストだけでは食物アレルゲンを確定できない」「食物経口負荷試験(OFC)がゴールデンスタンダード」であることを強調しています。

■ 食物アレルギー患者の安全を確保するには 〜AAPが小児科医が果たすべき役割を発表
2017年08月03日:メディカル・トリビューン
 米・Icahn School of Medicine at Mount Sinai教授で米国小児科学会(AAP)のScott H. Sicherer氏らは米国科学工学医学アカデミー(NASEM)が2016年に発表した食物アレルギーに関するコンセンサスレポート"Finding a Path to Safety in Food Allergy: Assessment of the Global Burden, Causes, Prevention, Management, and Public Policy"(以下、NASEMレポート)の中から小児科医およびAAPが果たすべき役割を要約してPediatrics(2017; 140: e20170194)で発表した。「医療提供者は食物アレルギーの高リスク群や重度患者(喘息併発症例など)に対するカウンセリングを積極的に行い、アナフィラキシーへの救急時対応ではエピネフリンの筋肉内注射を第一選択とすべき」と強調した。

<関連記事>
・「エピペン自主回収の対象を追加
・「花粉−食物アレルギー症候群の診療ポイント
・「ピーナツアレルギー予防に指針、NIH

◇ 単一の検査結果では診断が確定できず
 米国では食物アレルギーの有病率が正確に把握されておらず、報告ごとに数字は大きく異なっている。その要因の1つとして、食物アレルギーはしばしば自己報告(または親による報告)に基づいて評価され、有病率が過大評価されていることが挙げられる。加えて、食物アレルギーに対する基本的な理解が一般に十分に浸透しておらず、乳糖不耐症をはじめ代謝要因や薬理学的要因、毒性反応などがアレルギーと混同されているのが現状である。そのため、食物アレルギーは免疫反応であり、その大半がアナフィラキシーの原因ともなる免疫グロブリン(Ig)E介在型の反応であることを周知させる必要がある。全国健康栄養調査( NHANES)などに食物経口負荷試験(OFC)の結果を加えて、より正確な有病率を把握することを推奨している。
 また食物アレルギーの診断は、単一の検査法では診断が確定できないことを十分に理解しておく必要がある。特異的IgE検査あるいは皮膚プリックテスト(SPT)で陽性所見が得られても、それだけでは特異的IgE抗体の存在を示しているにすぎず、食物アレルギーであることの証明とはならない。小児44例を対象に特異的IgE検査で陽性所見が得られた食品を用いてOFCを行ったところ、93%は食物アレルギーではなかったとの報告もある。
 プライマリケア医407人を対象とした調査では、38%が確定診断は特異的IgE検査またはSPTで十分と回答しており、このような誤解を解消することも急務である。
 一方で、十分な検査が行われずに、真のアレルゲンを見逃してしまう恐れもある。そのため、既往症(アトピー性皮膚炎など)やIgE非介在型の食物アレルギーなどにも配慮しつつ、適正かつ必要な検査を正しく施行することが重要である。

◇ エピネフリン筋注が第一選択
 NASEMレポートでは、食物アレルギーの予防に関する多くの研究を紹介している。例えば、ピーナッツアレルギーのリスクが高い生後4カ月以降の乳児にピーナッツ蛋白を投与することで、同アレルギーを予防できるとする研究などを紹介し、他の食品についても研究の余地があるとしている。
 食物アレルギーの管理については、まず、アナフィラキシーを生じた場合の救急時対応としてエピネフリンの筋肉内注射を速やかに実施するよう呼びかけている。同レポートによると、エピネフリンは安全性が高いにもかかわらず使用されないケースも多く、特にティーンエージャーや喘息併発症例などの高リスク群に対して、エピネフリン自己注射器の使用法を周知させる必要があるとしている。
 加えて、現在、米国では乳幼児に最適化された用量のエピネフリン自己注射器が上市されていないことから、その対応を急ぐ必要があると言及している。
 日々の管理では、家庭・学校・旅行先などさまざまな場面でアレルゲンをどのように回避すべきかを小児科医が家族に教育することが求められる。例えば、家庭では調理の際にアレルゲンとそれ以外の食品を一緒に扱わない、食品購入時には食品包装のアレルギー表示をきちんとチェックするなどの遵守が必要。加えて、アレルゲンを回避するだけでなく、食物アレルギーが学校でのいじめの原因となる恐れがあることから、心理社会的観点からの管理も求められるとしている。
 アレルギーを原因とするいじめをなくすには、食物アレルギーに関する教育や公衆衛生当局による啓発キャンペーンの実施などが必要であり、安全な食品の提供という観点からは食品メーカーや米食品医薬品局(FDA)による現状改善の努力も欠かせない。食物アレルギー患者の安全を確保するには、利害関係者を中心に社会全体が真剣に取り組む必要があるとしている。

(Finding a Path to Safety in Food Allergy: Assessment of the Global Burden, Causes, Prevention, Management, and Public Policy)
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