小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新型コロナと心筋炎:自然感染 vs. ワクチン副反応

2021年08月30日 06時40分42秒 | 予防接種
新型コロナウイルスワクチンの副反応として「心筋炎」が注目されています。
心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の機能(収縮力)が低下して心不全状態になったり、拍動の乱れ(不整脈)が発生する病態です。
この情報が、
「ワクチンは安全?」
という不安・疑問の拍車をかけています。

しかし、実際に新型コロナに自然感染しても「心筋炎」が起こることが報告されています。
これらのリスクをどう捉えるべきか考える際、口コミやSNS上の噂ではなく“正しい情報”が必要です。

実は、風邪にまれに合併する心筋炎は、小児科医にとっては以前から常識でした。
とくに夏風邪(手足口病やヘルパンギーナ)を起こす「コクサッキーウイルス」が有名です。

極めてまれに重症化し、私の小児科医人生30年の中で、数例経験してます。
あくまでも新型コロナ以外での話です。

ですから「心筋炎」と聞くと、その重症度が気になります。
自然感染の合併症としての心筋炎の重症度、
ワクチン接種後の副反応としての重症度はどうなのでしょう。

私(小児科専門医)が信頼できると判断した記事・資料から引用してみます。
堀向先生は、最新の論文を紹介し、以下のようにまとめています;

新型コロナのワクチンは、心筋炎や心膜炎の発症リスクをあげるようです。
(大まかに言うと)100万人中5~20人程度の発症です。
一方で、新型コロナの感染そのもので、心筋炎や心膜炎の発症リスクが上がります。
(大まかに言うと)100万人中6000人から23000人程度が発症する可能性があります。
つまり、1000倍といった大きなリスクの差がある(自然感染>ワクチン)といえるでしょう。
そしてワクチンの副反応による心筋炎の多くは軽症です。

少し詳しく引用してみます;

 堀向健太:日本アレルギー学会専門医・指導医、日本小児科学会指導医
2021/8/10:Yahoo! ニュース)より抜粋;
・・・・・
 新型コロナに感染した米国のプロスポーツ選手789人に対し、心臓に炎症を起こす病気の頻度が調べられました。
すると、30名(3.8%)にスクリーニング検査で異常が認められ、最終的に、心筋炎や心膜炎が5人(0.6%)に見つかり、その後のプレーが制限されたと報告されています[5]。
 別の研究でも、新型コロナ感染後に検査を受けた米国の競技スポーツ選手1597人中、2.3%の選手が心筋炎と診断されています[6]。
 つまり、大雑把な数字になりますが、(ワクチンではなく)新型コロナの感染そのもので100万人中6000人から23000人が心筋炎や心膜炎を発症する可能性があるということになります。
[5]Martinez MW, et al. JAMA Cardiol 2021; 6:745-52.
[6]Prevalence of Clinical and Subclinical Myocarditis in Competitive Athletes With Recent SARS-CoV-2 Infection: Results From the Big Ten COVID-19 Cardiac Registry. JAMA Cardiol 2021
・・・・・
 最近、米国からの研究で、新型コロナワクチンを1回以上接種した200万人以上の検討が行われました。
すると、ワクチンに関連した心筋炎は100万人あたり10人程度、心膜炎は100万人あたり18人程度発症するのではないかと推測されました[7]。
 もちろん、心筋炎・心膜炎は他の原因で自然に起こった可能性もありますが、この検討では、ワクチンの接種期間前の心筋炎や心膜炎の数と比較し、ワクチンが心筋炎・心膜炎を発症させるリスクになる可能性を指摘しています。
 しかし、これらの多くは軽症でした。
心筋炎を発症した患者のうち19人が入院したものの中央値2日で全員が退院し、心膜炎を発症した患者も入院期間の中央値は1日だったそうです。
 そしてCDC(米国疾病管理予防センター)は最近、新型コロナワクチンと心筋炎との関連に関し、主に2回目の接種後数日以内に若い男性に発症し、その発生率は100万人あたり約4.8例としています[8]。
[7] Diaz GA, et al. Myocarditis and Pericarditis After Vaccination for COVID-19. JAMA 2021.PMID: 34347001
[8]Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination

発生頻度は自然感染>ワクチン接種後であり、自然感染の方が1000倍も高い、
そしてワクチン接種後の心筋炎は軽症、と安心できるデータを示してくれています。
また、厚労省HP「新型コロナワクチンQ&A」から心筋炎に言及している箇所を紹介し、

厚労省の『新型コロナワクチンQ&A』では、『ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか』という項目があります。
そして、『mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン接種後、頻度としてはごく稀ですが、心筋炎あるいは心膜炎になったという報告がなされています。軽症の場合が多く、心筋炎や心膜炎のリスクがあるとしても、ワクチン接種のメリットの方がはるかに大きいと考えられています』という回答があります。

と国レベルで安全を担保していることを保証しています。
さらにアメリカのCDCの声明を紹介し、世界レベルでワクチン接種のメリットが自然感染のデメリットをしのぐと判断されていることを示しています;



次に、内科の循環器専門医である駒村先生の記事を紹介します。
日本循環器学会、日本小児循環器学会、厚生労働省の該当サイトを紹介しているほか、
各国からの報告データ、ワクチンの添付文書にも言及しています。

結論として、やはり自然感染の方が心筋炎のリスクが高いこと、
軽症ながらもワクチン接種後にもまれに発生するので、
・症状(胸の痛み、息切れ)が出たら受診する
ことはもちろん、
・症状が出なくても激しい運動は1週間程度控えるべし、
と意見しています。
(途中から血栓症の話が混じってきてわかりにくい!)

新型コロナワクチンによる心筋炎をどう考える
駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)
・・・・・
 その後、ファイザーのコミナティ筋注、武田薬品工業のCOVID-19ワクチンモデルナ筋注の添付文書には、以下のような心筋炎・心膜炎に関する注意が記載された(新型コロナワクチンに「心筋炎、心膜炎」の注意追加、2021/08/01)。
「本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。」
・・・・・
 日本小児循環器学会も8月11日に、「新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎について」という声明を公表した[2]。これまでの接種後心筋炎の特徴を、以下のように紹介している。

・ワクチン接種1回目よりも2回目に起こりやすい
・mRNAワクチン接種後に多い
・高齢者よりも思春期や若年成人に、女性よりも男性に多い
・ワクチン接種後に発症する急性心筋炎の大半は軽症
・おもな症状は、ワクチン接種後数日後におこる動悸・息切れ・胸痛など
・心疾患のある人にワクチン接種後の心筋炎が多いというデータはない
・心疾患のある人はワクチン接種後の心筋炎が重症化しやすいというデータはない

 以上に基づき、同学会として「心疾患を基礎疾患にもつ患者さんにおいても新型コロナウイルスワクチン接種を基本的に推奨します。(中略)そして、新型コロナウイルスワクチン接種後に、動悸・息切れ・胸痛等の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。なお、接種後1週間激しい運動を控えるように指導している国もあります」との推奨を行った。
・・・・・
 筆者がこれまでに担当した新型コロナウイルスワクチンの接種は高齢者が中心だったためか、飲酒に関する質問を複数受けたものの、運動については皆無だった。今後若い世代への接種が進むに従って、運動やトレーニング、競技についての質問が増えるだろう。
 注意すべきは、心筋炎の症状は胸部症状だけにとどまらず、発熱、全身倦怠感、呼吸困難、失神、ショックといった、全身症状もまれではないことだ。よって、接種した若者には当日はもちろんだが、いきなり激しい運動は行わずに様子を見ながらボチボチ始めること、そして胸部症状だけにかかわらず、何らか体調不良を感じたら病院を受診するように勧奨することが必要ではないかと考える。
・・・・・
 最近の第66回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料によれば、
・ワクチン接種後の心筋炎関連事象は、ファイザーのコミナティ筋注、武田薬品工業のCOVID-19ワクチンモデルナ筋注ともに100万人当たり1.1件、すなわち0.00011%。2種類のmRNAワクチンを合計すると、0.00022%の発生率になる。
海外からの報告では、
・新型コロナmRNAワクチン接種後の心筋炎・心膜炎の頻度は0.0004%、0.001%との報告がある。新型コロナウイルス感染に続発する心筋炎・心膜炎の頻度は、運動選手についての米国での調査では各報告で0.6%、2.3%、0.5~3.0%との数字で、1000倍から1万倍の差がある。

データを読む際に、「自然感染後」なのか「ワクチン接種後」なのか、注意しましょう。
mRNAワクチン接種後の心筋炎の頻度は、日本のデータでは0.00022%、海外からの報告では0.0004%と、とても低い数字です。

これらの記事を読んだ私の感想は、
「心筋炎合併という視点から、新型コロナワクチンは自然感染より安全」
ということになります。

ウイルスがまるごと全部体に入る自然感染と、
ウイルスの一部が体に入るワクチン、
どちらが安全か、勝負はあらかじめわかっているのですが・・・。


<参考>
■ ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか。
新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎に 関する日本循環器学会の声明
新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎について
2021年8月11日:日本小児循環器学会)より抜粋(一部上記記事と重複します);
・・・・・
 新型コロナウイルスワクチン接種後心筋炎の特徴は、これまでの海外のおもな報告をまとめると下記のとおりです。ただし、世界的に小児のワクチン接種の数が成人と比較して少ないため、今後、新たな情報が出る可能性があります。
  • ワクチン接種1回目よりも2回目に起こりやすい
  • mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン接種後に多い
  • 高齢者よりも思春期や若年成人に、女性よりも男性に多い
  • ワクチン接種後に発症する急性心筋炎の大半は軽症
  • おもな症状は、ワクチン接種後数日後におこる動悸・息切れ・胸痛など
  • 心疾患のある人にワクチン接種後の心筋炎が多いというデータはない
  • 心疾患のある人はワクチン接種後の心筋炎が重症化しやすいというデータはない
《重要》現時点での当学会の基本的な考え方は、新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎は、新型コロナウイルス感染後の急性心筋炎よりも発症率が極めて低く、新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎は大半が軽症であることから、心疾患を基礎疾患にもつ患者さんにおいても新型コロナウイルスワクチン接種を基本的に推奨します。ただし、小児循環器疾患は個別性が高いため、不安があれば必ず主治医に相談してください。そして、新型コロナウイルスワクチン接種後に、動悸・息切れ・胸痛等の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。なお、接種後1週間激しい運動を控えるように指導している国もあります。学会としては、今後も情報収集に努め、最新情報は随時HPで迅速に情報提供を行なっていく予定です。

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新型コロナの取り扱い、2類→ 5類の議論について

2021年08月29日 15時37分11秒 | 予防接種
現在、新型コロナ感染症は、感染症法の中で「2類」相当の扱いになっています。
それを「5類」にすべきであるという意見があちこちで上がるようになりました。

どういうことなんだろう?
いくつか記事を読み比べてみました。

開業内科医によるこちらの記事では、開業医レベルでの影響は、

・2類は保健所が取り扱い、5類では保健所が介入しない
→ 中等症以上の入院先は医師が探さなくてはならない
→ 入院ベッドが足りない現状では司令塔役(=保健所)が必要

・2類では発熱外来の開設でき公費負担、5類では一般外来に発熱患者が来院し3割負担
→ PCR検査は3割負担でも5000円程度かかる

とあり、著者は「2類→ 5類への変更に反対」という立場でした。
流行を制圧する目的というより、
保健所がパンクしているのでその負担軽減という目的が見え隠れ・・・。

呼吸器専門医のこちらの記事では、まず感染症法の解説から始まります。

「感染症法」では、症状の重症度や病原微生物の感染力などから、感染症を「1類~5類感染症」の5段階と「新型インフルエンザ等感染症」「新感染症」「指定感染症」の3種類の合計8区分に分類しています(表)。


新型コロナは、症状がない陽性者を含めた入院勧告や就業制限、濃厚接触者や感染者の追跡などの対応が必要な、指定感染症の1~2類相当として扱われてきました。2021年2月から「新型インフルエンザ等感染症(※)」という枠組みに変更され、これは感染症法における「特例枠」です。

そして2類→ 5類へダウングレードすると医療現場で何が起こるか、については、

・入院勧告や感染者の追跡が不溶になり、保健所の負担が軽減する
・自宅待機要請と入院要請ができなくなる→ 感染者数増加?
・感染者数増加→ 重症患者増加→ 医療逼迫&崩壊
・医療費自己負担が発生する:検査費用、治療費(例:レムデシベルは5日間で38万円)などの3割負担

であり、現時点ですぐ変更するには無理があり段階を踏むべきであるという意見でした。
ここでもメリットは「保健所の負担軽減」のみですね。

看護師によるこちらの記事では、まず同じく感染症法の説明(わかりやすい!)があり、

感染症は、感染力の強さや症状の重さなどに応じて「1~5類」「新型インフルエンザ等感染症」「指定感染症」に分類されています(感染症法)。
新型コロナは「新型インフルエンザ等感染症」と位置づけられています。流行当初は「2類相当の指定感染症」でしたが、より長期的に柔軟な対策が取れるように2021年2月に見直されました。



そして5類に変更になると、

・外出の自粛要請
・感染者への入院勧告・入院措置
・就業制限
ができなくなり、
・指定医療機関以外の病院でも入院が可能になる
・全額公費負担だった医療費に自己負担が発生する
ことになります。

つまり「ふつうの感染症」扱いになるという印象です。
実際に5類に変更されたら新型コロナ流行がどう展開するかは、

・法律に基づいた行動の制限ができない→ 感染拡大が懸念される
・指定医療機関以外にも患者が分散する
→ 病床不足は解消(?)、しかしコロナ対応で混乱(クラスター発生増加?)
・通常診療への影響が大きくなる→ 通常診療制限が加速?

などを指摘しています。
「病床確保」という視点からは5類の方が有利かもしれませんが、
まだ感染を制御できていない今の状況では混乱必至であり、

「(重症者・発症者の減少が見込める)ワクチン接種が進んでいない中では、5類への見直しはまだ早い」

という慎重論で締めくくっています。
ここまで読んでくると、
「なるほど、まだ2類のままの方がいいのかな」
と感じますね。

一方の「5類への変更賛成派」の意見も聞いてみましょう。
開業内科医によるこちらの記事では視点が異なり、保健所の負担軽減ではありません。
本来は入院治療が必要なPCR陽性患者が入院できない現状を「これは医療じゃない。治療ネグレクトだ」と非難しています。

「それって言葉をかえると『重症化を待っている』ということなんです」
長尾和宏医師(兵庫県尼崎市の長尾クリニック院長)が言う。長尾クリニックではコロナ発生当初に発熱外来を立ち上げた。そこでコロナと診断した人はこれまでおよそ600人、入院できず在宅療養を24時間態勢でフォローしてきた患者は300人を超える。
「現状の体制ではコロナの感染判明から入院先が見つかるまで合計1週間もかかってしまう。その間にハイリスク者は死ぬし、重症化の可能性も高くなる。大切なのは治療までの時間。コロナは“時間との闘い”なんです。けれど今は診断された患者の多くが、入院先が見つかるまで“治療を受けられない”(=治療ネグレクト、放置)です」

2類の設定では良くも悪くも「保健所の管轄」になります。
前出では「入院を手配する司令塔」としてのメリットが強調されていましたが、
この記事では「患者が直接医療機関とつながることができない」弊害を指摘しています。

「保健所を介さず、地域の開業医がコロナ患者を請け負える5類にすれば、放置される患者がいなくなるのです。今は“コロナだけが通常医療を提供できない”状態です」

確かにこのような視点もありだとは思います。

しかし、現況では季節性インフルエンザのタミフルのように、
開業医が使える特効薬が新型コロナでは存在しません。
一部の開業医ではステロイド(デキサメタゾン)を処方しているようですが、
私の担当する小児では、保険適用のある量の設定があやふやで確立した治療法とは言えません。

つまり“対症療法”に終始し、重症化すれば病院にお願いすることになります。
ベッドが空いていない場合は、見つかるまでずっとベッド探しの電話をし続けることになりかねません。
現在、救急車の救急隊員がしていることが医師の仕事になり、一般診療がストップしてしまいます。

感染拡大の流れは、開業医も診療に参加せざるを得ない方向に向かっていることを実感しています。
しかし、上記のようにベッド探しに時間を費やすことは本末転倒、
ワクチン接種が進み、かつ私のような開業医が駆使できる治療薬が登場するまで、5類への完全移行は待つべきなのかもしれません。
もちろん、保健所の負担を軽減する方策は随時進めるべきだと思います。


<参考>
新型コロナ、僕が「5類格下げ」に反対する理由 
 谷口 恭(太融寺町谷口医院)
新型コロナを5類感染症にすると医療現場はどうなるか?
【新型コロナウイルス】「指定感染症」で医療の体制は?ポイントまとめ
新型コロナ「5類感染症」に変更するとかしないとか…どういうこと?
「在宅放置でコロナ死する人をもう増やしたくない」長尾医師が"5類引き下げ"を訴える本当の理由重症化する前に町医者に治療させよ
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新型コロナに抗体医薬「ロナプリーブ」が登場

2021年08月09日 06時42分55秒 | 予防接種
昨今、「新型コロナ対策はワクチン接種!」一色ですが、
ウイルスに対抗する手段には薬もあることを忘れがち。

そこに新薬が登場しました。
今までの新型コロナウイルス治療薬は、他の病気に使われてきた既存薬を転用する形で認可されてきました。

今回は、新型コロナをターゲットに開発された新しい薬です。
その名は「ロナプリーブ」。
新型コロナのスパイク蛋白に対する中和抗体を化学的に合成し、
1種類ではなく2種類を混合させた合剤仕様。
これは、一つの抗体の効きが今ひとつでも、
もう一つが効けばOK、という保険的考え方です。

“抗体”と聞くとワクチンを思い出しますよね。
そこに感染症対策の基本が隠れています。

新型コロナウイルスに対抗する手段として、
・ワクチンはスパイク蛋白の設計図(mRNA)を注射して、人の細胞にスパイク蛋白を作らせ、それに対する中和抗体産生を促す
・抗体医薬(ロナプリーブ)はあらかじめ作成した中和抗体を注射する
と、ワクチンの行程を端折った治療法です。
それと、ワクチンにより作られた中和抗体は長期間産生されますが、
薬として点滴投与した場合は速やかに体外へ排出されてなくなる、という違いもあります。

ロナプリーブの投与対象は「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」で、つまり「(軽症〜)中等症」。
これは従来認可された薬が「重症」用であったため、待望されていた薬でもあります。
しかし、現在の治療ガイドラインでは「重症化リスク因子を有する者は入院」となっているため、結果的に「入院患者用」であり「外来でちょっと点滴して帰宅」という薬ではありません。

臨床データによると、
・重症化(入院・死亡)阻止率:約70%
・副作用発現率:0.2%(注射から24時間以内に起こる発熱、悪寒、吐き気、めまい)
・家族内感染発生率:81%減少
とのことで大いに期待できる数字です。

もう一つ問題があります。
医療従事者の間では、いわゆる“抗体医薬”は高価で有名です。
1回分が数万円〜10万円が相場。
現在、新型コロナ関連ではワクチンも治療も自己負担はありません。
日本国民全員を対象と仮定して経費を試算すると・・・
「ワクチンならば年間4400億円、ロナプリープならば年間53兆円の財源が必要」
となるそうです。
53兆円と言われてもピンときませんが、日本の国家予算の半分だとか。
なので、この薬に頼ると日本は経済的に破綻してしまいます。

昼の番組で、
「ロナプリーブをすべての医療機関で手軽に使用できるようにすべきだ」
と豪語しているコメンテーター、
日本が沈没してしまいますので、安易に意見するのはやめていただきたい。

やはり軽症者が使える内服薬が欲しい・・・
イベルメクチンに期待したいところ。

ようやく登場した新型コロナ治療薬、
ワクチン一辺倒の対策に変化をもたらすでしょうか。


 中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている中で、これまで思ったように進展してこなかったのが治療薬の開発である。そうした中で厚生労働省は7月19日、中外製薬の新型コロナに対する抗体カクテル療法「ロナプリーブ」を特例承認した。
この薬はすでにアメリカで2020年11月21日に緊急使用許可を取得し、同様の許可はドイツやフランスでも取得しているが、これらはいずれも正式承認前の緊急避難的措置。いわば「仮免許承認」とも言える。正式承認されたのは日本が世界初。新型コロナに対する治療として日本国内で適応を持つ薬剤は、これでようやく4種類目だが、既存の3種類がいずれも中等症以上の重症度で使用されるのに対し、ロナプリーブは条件次第で軽症に使える初の薬でもある。
また、既存の3種類の治療薬である抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブはいずれも他の病気の治療を目的に開発されたものの中から、新型コロナに対しても有効という臨床試験データが得られたために効能が追加された通称「ドラッグ・リポジショニング」で生み出されたもの。つまり最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認でもあり、「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える。

◆ロナプリーブってどんな薬?
今回承認されたロナプリーブは単一成分の薬ではない。医薬品として使用するため人工的に製造した抗体は別名「抗体医薬品」と呼ばれるが、ロナプリーブはカシリビマブイムデビマブと呼ばれる2種類の抗体医薬品が含まれる注射薬である。複数の抗体医薬品で行う治療であることから、酒やジュースなど複数の飲料を混ぜて作られるカクテルになぞらえて、この薬を使う治療法は「抗体カクテル療法」と呼ばれる。
そもそもこの抗体はアメリカの製薬企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ社が最初に作り出したもので、現在売上高で世界第1位の製薬企業であるスイス・ロシュ社が同社と提携して獲得。ロシュ社の子会社である中外製薬が日本国内での開発・販売ライセンスを取得していた。ちなみに中外製薬は1925年創業の日本の製薬企業だったが、2002年にロシュ社が過半数の株式を取得し、同社のグループ会社になっている。
・・・
どのような患者に使えるか?
さて実際、今回の特例承認でどのような患者に使えるかだが、添付文書では新型コロナウイルス感染症で「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」と定めている。
まず「酸素投与を要しない」とは、ロナプリーブの臨床試験の患者選択基準に基づくと酸素飽和度(SpO2)が93%以上ということになる。
・・・
厚生労働省が発刊している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、新型コロナの重症度を軽症、中等症Ⅰ、中等症Ⅱ、重症の4段階に定め、酸素飽和度93%以上は軽症から中等症Ⅰに当たる。ちなみに軽症とは肺炎は認められず、呼吸器症状も全くないあるいは咳だけ、中等症Ⅰは肺炎・呼吸困難はあるものの呼吸不全(呼吸がうまくできずに他の臓器の機能にも影響が及ぶ状態)には至っていない状態を指す。
もう1つの投与基準である「重症化リスク因子」だが、これも臨床試験での患者選択基準に従うと以下のような因子が指摘されている。
・50歳以上
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・心血管疾患(高血圧を含む)
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・1型または2型糖尿病
・慢性腎障害(透析患者を含む)
・慢性肝疾患
・免疫抑制状態(例:悪性腫瘍治療、骨髄または臓器移植、免疫不全、コントロール不良のHIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与)

ちなみに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」で記載のある重症化リスク因子には上記の臨床試験での基準に加え、「妊娠後期」の表記がある。通常、臨床試験で妊婦が対象者になることはなく、添付文書でも生殖への影響を調べる「生殖発生毒性試験」は行っていないと明記され、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されている。
いずれにせよロナプリーブではこれら2つの基準を満さねばならず、新型コロナに感染したから誰でも投与を受けられるわけではない
また、この薬は通常の薬と違い、医療機関が医薬品卸に直接発注して購入することはできない。当面は世界的にも供給量が限られることもあり、国内では中外製薬との契約に基づき全量を政府が買い上げ、必要とする医療機関の求めに応じて国が中外製薬を通じて配分する。
さらに前述の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、重症化リスクのある患者は入院治療を要すると定めている。このため厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が発出したロナプリーブに関する事務連絡通知では、供給する医療機関は、こうした患者の入院を受け入れている医療機関に限定している。感染者急増でベッドの空きがないため、重症化リスクがありながら入院ができないなどの特殊なケースなどを除けば、当面はホテルあるいは自宅での療養者は投与対象にはならない。
・・・

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データ非公表の“中国製”新型コロナワクチン

2021年08月08日 15時16分16秒 | 予防接種
 新型コロナワクチンの中で中国製・ロシア製は信用できない、と西側諸国は考えています。
 なぜって、臨床データが公表されていないから。
 もし、データを提出しても報道の自由がない国の情報を信じろという方が無理です。

 しかし、WHOは中国製ワクチンを認可し、中国は“ワクチン外交”を展開してきました。
 が、しばらく前から破綻が見え始めています。

 私がそう感じ始めたのは南米のチリ。
 ワクチン接種が進んでいるのに新型コロナ流行拡大が止まらない、
 という情報を耳にして不思議に思っていたところ、
 使用しているワクチンは中国製、と聞いて合点がいきました。

 そんな中国製ワクチンを扱った記事を紹介します;

 悪評だらけの中国製ワクチン “水ワクチン”と揶揄され「免疫の長城」構築にも失敗
デイリー新潮:2021/8/2)より抜粋;

インドネシア
シノバック製ワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染した医療関係者数は350人以上に上ったことなどから、「シノバック製ワクチンは『水ワクチン』だ」とする論調が高まり、医療従事者に対して米モデルナ製ワクチンの追加接種を行うようになっている。

タイ
シノバック製ワクチン接種を完了した医療従事者600人以上が新型コロナウイルスに感染したことから、政府は米ファイザー製ワクチンの追加接種を決定した。

シンガポール
7月上旬「シノバック製ワクチンを接種回数から除外した」と発表した。シンガポールではワクチン接種者は集会に参加する際の検査を免除されているが、シノバック製ワクチン接種者に対しては検査を再度義務づける決定を行っている。

以上、東南アジア諸国は軒並み中国依存のワクチン政策を見直す動きを示し出しています。
この記事ではワクチンの有効性についても言及しています;

 世界保健機関(WHO)は「一般的な冷蔵庫で保管できる」メリットに着目してシノバック製ワクチンの緊急使用の許可を出したが、シノバック製ワクチンの感染防止の有効性は50%程度とWHOが定めた最低水準にとどまっている(米ファイザー製などのワクチンの有効性は90%以上)。 
 その有効性の低さはシノバック製ワクチンが「不活化ワクチン」であることに起因する。熱やアンモニアなどで不活化した(殺した)ウイルスを体内に投与して抗体をつくるというものであり、インフルエンザワクチンなどで使われている伝統的な手法である。しかしインフルエンザウイルスに比べて増殖の速度が遅いコロナウイルス用のワクチンをこのやり方でつくろうとすると体内で抗体ができにくいことがSARS用のワクチン開発の経験からわかっていた。 
 香港大学が7月に発表した調査結果によれば、米ファイザー製ワクチンを接種した人の抗体レベルはシノバック製に比べて著しく高いことはわかったという。米ファイザー製ワクチンを2回接種した際の中和抗体値の平均が269であるのに対し、シノバック製ワクチンの中和抗体値は27である。1回接種した際の中和抗体値を比較すると、ファイザー製が49であるのに対し、シノバック製は7である。シノバック製の2回接種後の中和抗体値(27)がファイザー製1回分(49)よりも少ない事実には驚きを禁じ得ない。  ファイザー製ワクチンの有効性は数年間続くことがわかっているが、タイの学術機関の研究によれば、シノバックワクチン接種後、40日毎に中和抗体値が50%ずつ低下することがわかったという。  
 「中和抗体のレベルが極端に低い上に持続期間が極端に短い」というのが事実であれば、「水ワクチン」と言われても仕方がないのかもしれない。

「シノバックス社製ワクチン2回接種より、ファイザー社ワクチン1回接種の方が中和抗体値が高い」(!?)というデータがすべてを物語っています。
ただ、「不活化ワクチンは効果が低い」との記述が気になります。現在日本で開発中のワクチンの一つはこの「不活化ワクチン」なので。


中国シノバック製コロナワクチン、有効性への懸念さらに高まる

前記事以外で中国製ワクチンを採用、接種している国々の現状;

コスタリカ
2021年6月16日、有効性に不安があるとして、検討していたシノバック製ワクチンの購入を見送ることを明らかにした。

ウルグアイ
シノバック製ワクチンの有効性について6月8日、臨床試験ではなく実臨床から得られる「リアルワールドデータ」を初めて公表。「ICUへの入院と死亡を防ぐ効果は90%を超え、発症予防効果は61%だった」と発表している。
ウルグアイは、少なくとも1回の接種を受けた人の割合が米国(53%)よりも高い61.4%で、これは世界的にも高い水準だ。だが、感染による人口10万人あたりの死者数は、世界で最も多い国のひとつとなっている。

中国自身のスタンスは・・・

シノファームのワクチンについて査読付きジャーナル「JAMAネットワーク」に発表された論文によると、「持病がある人、女性、高齢者に対する有効性は確認できなかった」という。
また、シノバックのワクチンについては、デルタ株に対する有効性を確認するための十分なデータが公開されていない。
中国疾病対策予防センター(CCDC)のガオ・フー(Gao Fu、高福)主任は今年4月に出席した会議で、自国製ワクチンの「有効率が高くない」ことを認め、「問題解決の方法を模索している」ことを明らかにした。
だが、中国政府はその直後、この発言の内容を否定。SNS上から関連のコメントを削除するとともに、同主任を公に非難。高は共産党系の「環球時報」紙で、自身の発言に関する報道を「完全な誤解」だと語った

チラリと本音を漏らした主任は、もう日の目を見ることはないでしょうね。かわいそうに。
武漢のウイルス研究所職員でも同じようなことがありましたが、中国はなんとか火消しに成功しました(まだくすぶっていますけど)。

中国製ワクチンに疑義…チリ、3回目接種はアストラ製で 
2021/08/07 読売新聞)より抜粋;

チリ
 政府は5日、中国製薬大手「科興控股生物技術」(シノバック・バイオテック)製の新型コロナワクチンを接種した55歳以上の市民に対し、11日から英アストラゼネカ製を使って3回目の接種を行うと発表した。
 チリでは人口約1900万人の約65%が接種を完了したが、そのうち約75%がシノバック製だった。
 シノバック製は有効性に疑義があると指摘されており、感染力が強いインド由来の変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大を防ぐには、別の種類の追加接種が必要と判断した模様だ。

ウルグアイ
 シノバック製で2回の接種を終えた国民に対し、米ファイザー製を追加接種する方針を示している。

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ワクチン陰謀論で金を稼ぐ人たち

2021年08月08日 14時09分35秒 | 予防接種
以前、「ワクチン副反応被害者はメディアにとって美味しいネタ」という文章を書きました。
新型コロナワクチンでも例に漏れず、市民の不安を煽って接種率を低下させる動きが散見されます。

相手にするだけ時間の無駄とは思いつつ、
何も言わないとそれを暗黙に認めていると取られかねないので、
「正しい知識を持って正しく判断しましょう」
というスタンスで書いてみます。

ワクチン陰謀論を煽って金に換えたい人々の思惑〜冷静さを欠いたアンチワクチン活動が根深い訳

上先生は、メディアにもよく顔を出す有名人ですが、歯に衣着せぬ発言でちょっとハラハラすることもあります。
ここでは、日本人がワクチンに不信感を抱きやすい理由として、政府への信頼がないことを挙げています;

“なぜ、日本でワクチンの信頼度が低いのか。それは、国家の信頼度が低いからだ。詳細は省くが、われわれは、国家の信頼度とワクチンの信頼度が相関することを、『ランセット』2020年1月5日号に発表した。国家の信頼度が低い国の多くが第2次世界大戦で、国土が戦場あるいは占領されていたことは示唆に富む。北欧諸国の国家への信頼度は高いが、バルト三国の信頼度は低いことなど、このような視点から考えれば納得がいく。”

戦争に負けた国はおしなべて政府への信頼が薄いのですね。
“お国のため”に死んでいった多くの若者・・・そのトラウマが残っているのでしょう。

“『ランセット・デジタルヘルス』の論考で興味深いのは、アンチワクチン運動の関係者を、ワクチンへの不信感を高めようとする活動家、起業家(ビジネスマン)、陰謀論者、SNSのコミュニティーに分類していることだ。ナチュラリストなど、信念をもってワクチンに反対する人はごく一部で、活動家・ビジネスマン・陰謀論者などが「道具」として活用し、それがSNSなどを通じて拡大していく。
この構造は日本も同じだ。「ワクチン」「コロナ」「危険」「政治家」でグーグル検索すれば、1180万件がヒットする(2021年07月25日時点)。その中には「ワクチンは殺人兵器」と主張する福井県議をはじめ、さまざまな主張が紹介されている。
・・・
アンチワクチン活動が、知名度をあげ、カネになるのは政治家だけでない。医師の中にも、ワクチンに反対する人がいる。その人たちにはさまざまな営利企業が接触する。
ボストン在住の内科医で、現在、日本に帰国して集団接種に従事している大西睦子医師は、「知人の編集者から、ワクチンの危険性を紹介する本を書きませんか。いま出せば、必ず売れる」とオファーされたそうだ。大西医師は多数の著書があり、世間から信頼が厚い医師だ。彼女がコロナワクチンの危険性を訴えれば、影響力は大きい。大西医師は、この提案を断ったが、著名な医師の中には、ワクチンの危険性を強調する人もいる。”

ワクチン反対本を医師や有名人に書かせて一儲けしようとしている「出版社」が黒幕の1人ですね。
これに影響されてワクチンを受けずに命を落とした人たちから訴訟が起こるかもしれません。

その解決法を探った論文も紹介しています。

“では、どうすればいいのか。世界では、こんなことにまで実証研究が進んでいる。5月24日、『米国医師会雑誌(JAMA)』は「信頼とワクチン接種、アメリカにおける10月14日から3月29日の経験」という論文を掲載した。興味深いのは、この論文の著者が、アイルランドとイギリスの医師たちであることだ。世界中がアメリカのアンチワクチン運動に注目していることがわかる。
・・・
しかしながら、論文の結論は、至極真っ当なものだった。論文では、当局がワクチンを適切な手続きを経て承認し、接種を粛々と進めることで、ワクチンへの信頼が醸成されたと結論づけている。”

割と地味な結論です。

しばらく前に「HPVワクチンを批判する記事を書きまくった新聞記者」の話を聞きましたが、医師や学会が声明を出してもメディアは取りあげにくい、もっとインパクトのある方法、たとえば「記者会見」を開くなどをして堂々と正論を展開すべきではないか、とコメントしているのが印象的でした。
でも「ワクチンは有効です、安全です、皆さん接種しましょう」という会見、インパクトないなあ。
尾身会長の「自粛しましょう」一点張りの会見のようになってしまいそう。

ホントはワクチン反対派とのガチンコ勝負が一番いいんだけど、科学データを信じない人たちとは建設的な議論にならないんですよね。

もう一つ記事を紹介します。

新型コロナ「反ワクチン本」は「言論の自由」なのか

イワケン先生は、ダイヤモンドプリンセス号に乗り込んで、その実情をネットで公開し、一躍“時の人”になりましたので皆さんご存知かと思われます。
一部“お騒がせな人物”という評価もありますが、発言していることは至極まっとうだと感じています。
気になった箇所を抜粋します;

“世の中にはかなり確信犯的に「ワクチンは怖い」「ワクチンは危ない」「ワクチンは効かない」とワクチンの有害性を主張し、接種しないほうがよいとアピールする人たちがいます。ありもしない情報をでっち上げたり、過度に危険をあおったりします。これがいわゆる「反ワクチン」派の人たちです。海外ではアンチバクサー(anti-vaxer、あるいはanti-vaxxer)と呼んでいます。
 アンチバクサーの歴史は長く、最古のワクチンである天然痘ワクチンの頃までさかのぼります。そして、現在も世界中にアンチバクサーがいて、たくさんの反ワクチン活動に従事しています。アンチバクサーは時間的にも空間的にも普遍的なのです。こうしたアンチバクサーたちは陰謀論を広めて、寄付を募り、多くの資金を得ています。”

う〜ん、やはりここでも「金儲けになるからワクチン反対活動をしている」と指摘していますね。

“主要なソーシャルメディアも反ワクチン活動には対策をとっています。ツイッター社はCOVID-19のワクチンに対する間違った情報や露骨な陰謀論を述べたツイート、COVID-19は存在しないといったフェイクな内容のツイートなどは削除すると公表しています。
 フェイスブックも反ワクチンについては投稿を削除するというルールを作っています。”

なるほど、そういえばトランプ元大統領もTwitterのアドレスを停止されました。

“こうした反ワクチン運動は、一部の確信犯的なデマゴーグが組織的に行っています。河野太郎行政改革担当相が自身のウェブサイトで述べたところによると、「TwitterとFacebookにあるワクチン関連のそういった誤った情報の65%はわずか12の個人と団体が引き起こしている」のです。”

やはり暗躍している組織があるようです。
しかし、日本では“半ワクチン”書籍は自由に販売されています。

“そんななか、書籍については、反ワクチンに対する規制がなく、放ったらかしになっているように見えます。科学的なデタラメを「フィクションである」と表明せずに平気で出版しますし、間違いを指摘しても知らん顔の出版社は少なくありません。
 そうした出版社の多くは確信犯的に「売れれば内容はどうだっていい」という態度を取り続けています。出版社が書籍の内容について厳しい自主規制を行うのは、いわゆる差別的表現やわいせつな表現に対する表現規制です。が、科学的事実に反するコンテンツに対する規制については、ほとんどの出版社は知らん顔、なのです。
 ツイッターやフェイスブックが課せられているような「事実に対する社会的責任」を、巨大企業GAFAの一員、アマゾン社は持つべきだとぼくは思います。”

出版社にとって「儲けること=社会的正義」というのが現実のようです。
私は以前(もう10年くらい前)、レクチャーの準備として「反ワクチン本」をいくつか読みましたが、そのあまりの偏見(自分が経験したことしか信じない、マイナス感のあるデータをひたすら誇張)ぶりに呆れて数冊で読むのを止めました。
当時から、内海聡氏と船瀬俊介氏は有名で筋金入りで、とにかく世の中の医療に関して“まず反対ありき”です。
ま、そういう人たちは“言論の自由”を盾に黙ることはありませんけどね。

イワケン先生は、解決策として「有害図書指定」を提案しています。

“そこで、提案したいのが、「一方的な禁止」処分に変わる、「有害図書」のような指定です。
・・・
 反ワクチンなコンテンツは、明らかに人の健康や生命を脅かします。どうせ指定するなら、こっちを先にするのが妥当な判断というものでしょう。
 だから、国や自治体はこういう反ワクチンな本を指定して、一般の人達が読む時に注意するよう、働きかけたらよいとぼくは思います。”

う〜ん、実現は難しいかなあ。




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子どもの片頭痛 アップデート2021

2021年08月01日 06時53分16秒 | 予防接種
子どもの片頭痛に関して、以前から興味を持ち、参考書が発売されると読んでみて、このブログに記録してきました;

①(2014.3.14)「子どもの頭痛~頭が痛いって本当だよ~」(藤田光江著)
②(2014.3.23)「小児の頭痛ー診かた・考え方の実践ー」(小児科診療 Vol.76 No.8, 2013)
③(2017.9.18)「片頭痛のポイント」
④(2018.5.3)「子どもの片頭痛にトリプタン製剤は使えるのか?」

大人に使用できる片頭痛の薬は日進月歩で痛みをコントロールできつつありますが、子供の片頭痛の治療薬は旧態依然で、私が医者になった頃(30年前)から変わらず、アセトアミノフェンかイブプロフェンしか選択肢がないのです。

最後の④の結論として、
小児片頭痛患者に対してはアセトアミノフェンあるいはイブプロフェンを第一選択薬とし、無効の場合は「マクサルト®RPD錠(リザトリプタン)を、体重40kg以上かつ12歳以上であれば1錠使用可能(25kg以上40kg未満では1/2錠)
現時点では小児の片頭痛に対してトリプタンは第一選択薬とはならず、アセトアミノフェンやイブプロフェンが無効な、日常生活への支障度が高い頭痛に対し、小学校高学年以上の体格であれば使用を検討してもよい。 」 
と記載しました。
あれから3年、某学会のWEB配信で小児の頭痛に関するレクチャー「子どもの片頭痛(安藤直樹Dr.)」を視聴しました。果たしてアップデートできる内容があったでしょうか?

残念ながらトリプタン製剤に関してはこの4年間も進歩がなく、2021年7月現在でも小児に保険適応のある薬剤は日本に存在しません。

それでも専門家は、アセトアミノフェン/イブプロフェン無効の患者さんには、保険適用外であることを説明してトリプタン製剤を処方している現状があります。

もし保険適用のない薬を処方して副作用が発生して訴訟になったとき、
裁判所の判断基準はガイドラインではなく添付文書である、と聞いたことがあります。
つまり、学会がガイドラインで推奨している薬でも、厚労省の認可がなければ、トラブル発生時に処方医個人の責任にされてしまうのです。

専門家ではない一般小児科医の私は、どうしたらいいのでしょう?
近隣の総合病院にも小児頭痛の専門家はいません。
専門家は「一般小児科医も子どもの片頭痛を診療していただきたい」とおっしゃいますが、保険適用のない薬ばかりを並べられても手が出せません。

講演では「アセトアミノフェンよりイブプロフェンの方が有効」との説明があり、私にとっては新しい知識であり、今まで読んできた書籍には見当たりませんでした。
ただ、イブプロフェンはいわゆるNSAIDs(エヌセイド)の仲間であり、長期服用により胃腸障害が出やすい薬剤です。

また、現在改定中のガイドラインでは、予防治療の推奨薬が以前とは大幅に入れ替えられることも知りました。
もっとも、以前の推奨薬にシプロヘプタジン(商品名:ペリアクチン)という風邪薬の鼻水止めが入っていることからして「?」の私でしたが。

以上、「成人の片頭痛治療薬は日進月歩で抗体薬も登場、一方の小児適用のある治療薬は乏しいままで30年間進歩なし」と云わざるを得ない現状をあらためて認識した次第です。

ワクチンの「暗黒の20年間」と同じようなもどかしさを感じます。


<メモ>

小児片頭痛
・頻度:
 小学生3.5%(男4.0、女2.9)
 中学生4.8~5.0%(男3.1~3.3、女6.5~7.0)
・小児片頭痛の診断はICHD‐3(国際頭痛分類第三版)を用いる

□ 小児片頭痛診断基準
前兆のない片頭痛
A. B~Dを満たす発作が5回以上ある
B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間
C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
 1.片側性
 2.拍動性
 3.中等度~重度の頭痛
 4.日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、
  あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
 1.悪心または嘔吐(あるいは両方)
 2.光過敏および音過敏
E. ほかに最適なICHD-3の診断がない

慢性片頭痛:片頭痛患者がそれ以外の頭痛を伴って非常に回数が増えている状態
A. 片頭痛様の頭痛または緊張型頭痛様(あるいはその両方)が月に15日以上の頻度で3か月を超えて起こり、BとCを満たす。
B. 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たすか、「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が併せて5回以上あった患者に起こる
C. 3か月を超えて月に8日以上で以下のいずれかを満たす
 1.「前兆のない片頭痛」の診断基準CとDを満たす
 2.「前兆のある片頭痛」の診断基準BとCを満たす
 3.発作時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンあるいは麦角誘導体で改善する
D. ほかに最適なICHD-3の診断がない

小児片頭痛疑い症例の特徴:診断基準を一項目満たさない例が多い
・随伴症状が基準を満たさない例が約60%いる。
・持続時間が2時間未満と短い例が約30%。
・発作回数が少ない。
→ 経過観察し、基準を満たすようになるかどうか判断すべし

周期性嘔吐症候群
A. 強い悪心と嘔吐を示す発作が5回以上あり、BおよびCを満たす。
B. 個々の患者では症状が定性化しており、予測可能な周期で繰り返す
C. 以下のすべてを満たす
 1.悪心、嘔吐が1時間に4回以上起こる
 2.発作は1時間~10日間続く
 3.各々の発作は1週間以上の間隔をあけて起こる
D. 発作完結期には全く無症状
E. その他の疾患によらない(特に、病歴及び身体所見は胃腸疾患の徴候を示さない)

腹部片頭痛
A. 腹痛発作が5回以上あり、B~Dを満たす
B. 痛みは以下の3つの特徴の少なくとも2項目を満たす
 1.正中部、臍周囲もしくは局在性に乏しい
 2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛(just sore)
 3.中等度から重度の痛み
C. 発作中、以下の少なくとも2項目を満たす
 1.食欲不振、2.悪心、3.嘔吐、4.顔面蒼白
D. 発作は、未治療もしくは治療が無効の場合、2~72時間持続する
E. 発作間欠期には全く無症状
F. その他の疾患によらない(特に、病歴及び身体所見が胃腸疾患または腎疾患の徴候を示さない、またはそれらの疾患を適切な検査により否定できる。)

小児・思春期の片頭痛治療薬

急性期】強い推奨/エビデンスの確実性B~C
 いずれの薬剤も頭痛発症からできる限り早期に十分量を使用することが推奨される。
 第一選択はイブプロフェン。アセトアミノフェンはイブプロフェンほどではないが有効である。
 NSAIDs やほかの鎮痛薬にて効果が得られない際にはトリプタンを考慮する。
 トリプタンは12歳以下で推奨される薬剤(しかし保険適用はない!)は以下の通り;
・スマトリプタン(イミグラン®)
・リザトリプタン(マクサルト®):効き目は早いが効果が切れるのも早い
・エレトリプタン(レルパックス®):じわっと長く効いて副作用が少ない
・ナラトリプタン(アマージ®)
 スマトリプタンとナプロキセンの併用も有効。

予防治療】弱い推奨/エビデンスの確実性B~C
 確立したものはないが、以下の薬剤が候補に挙がる:
・アミトリプチリン(トリプタノール®)
・トピラマート(トピナ®)保険適用外
・プロプラノロール(インデラル®)
・塩酸ロメリジン(ミグシス®)
などを副作用に注意しながら少量より開始する。


薬剤使用過多による頭痛
A. 以前から頭痛疾患をもつ患者において、頭痛は1か月に15日以上存在する
B. 1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3か月を超えて定期的に乱用している
C. ほかに最適なICHD-3の診断がない

 エルゴタミン 10日/月以上
 トリプタン  10日/月以上
 アセトアミノフェン 15日/月以上
 NSAIDs   15日/月以上
 複合鎮痛薬  10日/月以上

小児の片頭痛予防治療薬の変遷

(2013年)慢性頭痛の診療ガイドライン
・シプロヘプタジン(ペリアクチン®)
・バルプロ酸ナトリウム(デパケン®、セレニカ®)保険適用、てんかん患者より少ない量で有効
・トピラマート(トピナ®)

(2021年)頭痛診療ガイドライン2021年(案)
・アミトリプチリン(トリプタノール®)保険適用
・トピラマート(トピナ®)保険適用外(治験がうまくいかなかった)、副作用が多いため小児では使用しにくい
 ★ 2012年「プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン」(暫定版)
・プロプラノロール(インデラル®)喘息で禁忌、リザトリプタンとの併用禁忌
・塩酸ロメリジン(ミグシス®)副作用が少なく使いやすい

予防治療が必要な患者・目安
 片頭痛が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3回以上の場合に要検討。
 急性期治療のみでは管理できない頭痛も適応。

・発作が1~2日/月なら不要
・発作が3~4日/月なら考慮
・発作が5日/月以上なら開始
・学校を終1回以上のペースで休むようなら予防治療を開始した方がよい、投与期間はまず3か月を目安。

CGRP関連抗体薬
反復性および慢性片頭痛に対する予防薬として期待される薬剤
・Eptinezumab
・Fremanezumab
Galcanezumab:日本で唯一使用可能(成人のみ)
・Erenumab

<参考>
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