成長曲線シリーズ第三弾。
関連本は医療関係者向けが多いのですが、珍しく一般向けの啓蒙書が新書版で発行されていました。
医学書では正常より異常に焦点を当てて解説されることが多く、学校健診で境界例に遭遇すると「この子は異常なのか?正常なのか?」と迷い、フリーズしてしまうことがあります。
本書の著者は医師ではないので、少し視点が異なります。
病気に関する記載は十分とはいえませんが、正常のバリエーションや正常と異常の間の「グレーゾーン」について詳しく書かれており、理解が深まりました。
一番大きな気づきは、
「思春期早発症はスペクトラムである」
ということ。
思春期を迎えると身長の伸びがスパートしますが、それが早く来る子ども(早熟型)ほど低身長に終わる傾向があり、遅く来る子(晩熟型)はゆっくり長く成長するので最終身長が高くなる傾向がある、という事実。
ですから思春期早発症は超早熟型という位置づけとなり、昔は様子を見るしかありませんでしたが、現在は治療介入ができるようになったのです。
さて、私がフムフム…と頷いたポイントをまとめてみました。
<ポイント>
・思春期の身長スパート開始の平均は、女子は9歳半頃、男子は11歳前後。ただし、
① 小柄な子ではやや遅め(女子では10歳半頃)
② 大柄の子(97パーセンタイル付近)は早め(女子では9歳頃)
・思春期の身長スパートと初潮の関係:
✓身長スパートが始まってぐんぐん身長が伸びているときには初潮はまだ見られず、その伸びが少し緩やかになったかな、そして体重も少し増えてきたかな、という時に初潮が発来する。
✓スパートの時期により初潮までの期間が変わる。身長スパートが標準だと、その2年半〜3年後に初潮を迎え、身長スパートが遅いと3年以上後になる(中には4〜5年後も)。近年の平均初潮年齢は12歳2-3ヶ月。
① 身長スパート開始が標準(9歳半前後) → 初潮まで2〜3年
② 身長スパート開始が標準より早い → 初潮まで2年以内
③ 身長スパート開始が標準より遅い(10歳以降) → 初潮まで3年以上
・身長スパートの開始が早い(早熟型)と大きな伸びが見られるが、最終身長は以前のパーセンタイルよ基準線より低いレベルとなる傾向が認められる。反対に、身長スパート開始が遅い(晩熟型)と最終的に身長が高くなる傾向がある。ただし、最初から大柄の子は早熟であっても背が高くなる。
・思春期女子のからだの変化:身長が急に伸び始める身長スパートの頃にはすでに胸がほんの少し膨らんでいるが、この頃に女子としての成熟が始まり、身体に脂肪の占める割合が増えて、徐々に女性らしい体つきに変わっていく。平均的には9歳を過ぎると男子より脂肪の占める割合が多くなる。
しかし身長の伸びる速度が最大になるまでは、その変化はあまり急速ではない。身長が最大に伸びる頃(最大発育期)、体重もスパートを開始し、やがて身長の伸びが少し穏やかになったかな?と思う頃、初潮がみられる。
初潮を迎えると女性ホルモンの分泌が高まり、その働きで脂肪の占める割合がさらに増加する。一般的に、女性の体脂肪率は男性より10%ほど高い。
・思春期男子のからだの変化:男子は体重30kgを超えた頃から少しずつ男性ホルモンが出始め、体重がスパートする頃は脂肪に対して除脂肪(骨、筋肉、血液など)が顕著に増えていく → 男性ホルモンの働きで次第に男らしい姿へ。
・本格的な筋トレは身長増加が済んでから:身長が伸びる時期は骨が非常に弱くなっており、「骨端線」に過度な負荷がかかると、大事な骨の成長部分が損なわれてしまう危険がある。そのため骨が盛んに伸びている時期は、ウエイトトレーニングなどで関節を傷めることのないよう、運動の仕方に注意することが必要である。骨がウエイトトレーニング負荷に耐えられるようになるまで待つ必要がある。
・思春期早発症は正常発育とはっきり区別できる病態ではなく、連続性がある(スペクトラム)。早熟型は低身長で終わることが多く、晩熟型は早熟型を追い抜く傾向があるが、思春期早発症は“超早熟型”といえるかもしれない。
・思春期早発症は小学生のうち(男子11歳前、女子9歳前)に発見すべし。中学生では遅い。それまで特に大柄でなかった子が急に身長が伸びるので本人も家族も喜びがちであるが、中学生になる前に伸びが止まり、最終的には低身長になってしまう。気がついたらできるだけ早く小児科医を受診して専門医につないでもらい、治療が間に合ってうまくいけば平均的な身長に達することが期待できる。
・幼児期からの肥満は小児肥満にリンクし、夏休みの体重増加も肥満にリンクする。夏休みに不規則な生活を送ると太るが、反対に規則的な生活を心がければやせるチャンスでもある。
・身長を伸ばすポイントは「ぐっすり眠って成長ホルモンをしっかり分泌させること」。
第二次世界大戦までの日本人の畳に座る生活様式は、足の発育にはマイナスだった。戦後、テーブルと椅子の生活になり、栄養事情もよくなったことから、日本の子どもの成長はめざましい伸びを示し、その大部分は足の伸びが寄与していた。ところが、平均身長は1998年〜2000年を境に低下傾向へ転じた。
これは発育段階で最後に伸びるはずの足が十分に伸びきらず、身長スパートが終了してしまったためで、その原因の一つとして考えられるのが、インターネットの普及によるパソコンや携帯電話やスマートフォン、ゲーム機といった電子機器の登場である。
スマホの長時間使用は、睡眠に悪影響を及ぼす(睡眠時間減少、ブルーライトにより脳が覚醒し睡眠の質が悪化)。深い睡眠が得られない → 成長ホルモンは分泌されない → 身長が伸びない。つまり、身長が伸びる時期にスマートフォンやゲーム機を夜遅くまでいじる生活をしていると、身長の伸びが妨げられる。
・オスグッド病は骨が弱い成長期に大腿四頭筋を使いすぎると発症する。腰椎分離症も骨の弱い成長期に下肢の筋肉を使いすぎると起こる疲労骨折のなれの果てであり、それを放置すると椎間板に負担がかかって傷ついてしまう腰椎すべり症に進展する。
備忘録代わりのメモを記しておきます。
<メモ>
(P17 )2016年(平成28年)に児童生徒の健康診断において、従来の身長・体重・座高の測定項目から座高が削除され、その代わりに身長・体重の測定値をグラフに表すこと、すなわち「身長・体重成長曲線」の作成が文部科学省から学校に対して推奨されるようになった。
(P25)…パーセンタイル基準線は母子健康手帳で使われています。…帯のようになっていて、帯の中には「各月・年齢の94%の子どもの値が入ります」と書いてあります。上の境界線が97%パーセンタイル、下の境界線が3パーセンタイルにあたります。
…数値だけ眺めていてもわからないことが、グラフ化することで一目瞭然となり、またそれを見た人の共通理解が得られるのです。
(P29 )身長が一番下の3パーセンタイルを大きく下回ったり、次第に離れていく場合は、成長ホルモン分泌不全などが疑われますが、二次的なものが原因であることもあります。
(例)扁桃腺肥大やアデノイド肥大 → 睡眠時無呼吸症候群となり深い睡眠が得られない → 成長ホルモン分泌抑制
…身長が低学年から急に伸びるときは、いわゆる「思春期早発症」が疑われます。身長がドンドン伸びていくので、子どもも保護者も喜びがちですが、早期に身長が止まり、最終的には極端な低身長になる可能性があります。
…グラフの異常は、からだだけでなく心の不調を表すこともあります。
(P32)3歳付近から肥満が発症すると、小学校に入ってさらに肥満度が上がってしまうという調査結果があります。
(P33)身長の伸びが低年齢(女子9歳前、男子11歳前)から急に始まり、女子なら初潮が始まり、男子は髭が生えたり声変わりが起こると、思春期早発症の疑いがあります。
…本来のからだのリズムは、夏は体重が増えないはずなのに、生活習慣の乱れから大幅に増えてしまう子がいます。そうすると体のリズムが乱れたまま、肥満になっていく可能性があります。
(P34)思春期の身長スパート…小柄な子ではやや遅め(女子では10歳半くらい、男子はさらに1年程度遅い)ですが、大柄の97パーセンタイル付近の子は9歳辺りから基準線が上がってきます。…身長スパートは時代が進むにつれて開始時期が早まってきましたが、現在はほぼ落ちついて、女子は9歳半頃から、男子は11歳前後からが平均的な身長スパート開始となっています。
(P36)女子の場合、身長スパートの時期から初潮が発来する時期がだいたいわかります…身長スパートが始まってぐんぐん身長が伸びているときには、初潮はまだ見られません。その伸びが少し緩やかになったかな、そして体重も少し増えてきたかな、という時に初潮が発来します。現在の初潮発来平均年齢は12歳2-3ヶ月です。身長スパートが標準だと、初潮が2年半〜3年後、身長スパートが遅いと3年異常、中には4〜5年後という子もいます。
(P38)身長スパートの開始が早いと大きな伸びが見られますが、やがて止まり、それ以後は伸びが少なくなるために、最終身長は以前のパーセンタイルよ基準線より低いレベルとなります。反対に、身長スパートが遅いと最終的に身長が高くなる傾向があります。ただし、1〜2割程度の例外があります。
(P42)人生の中で身長がとりわけ伸びる時期が2度あります。最初の大きな伸びは、生まれてからの1年間です。
・身長約50cmで生まれた新生児は、生後1年間で約1.5倍の75cmになります。
・4歳になる頃には、生まれたときの約2倍の1mに達します。
・4歳からの身長の伸びは年間約5〜6cmです。
・思春期スパートは、身長も伸び、体重も増える人生最後の発育急伸期です。それまで男女差がほとんどなかった体格に、9歳〜9歳半になると変化が現れます。
・女子は4年生あたりから身長がスルスル伸びて男子を追い抜いていきます。この頃には胸が少し膨らんできますが、これが第二次性徴の始まりです。
・男子は女子より1年半から2年遅れて身長スパートが始まります。遅れてスパートしても、その発育速度の幅は女子より大きいので、やがて女子を追い抜くことになります。
・日本の高校3年生の平均身長は、
(男子)170.8cm
(女子)158.0cm
…しかし現在(2021年)の平均値は過去の最も高い値に比べて、男女ともに数mm下がっています。
(P47)(男子の場合)97パーセンタイルに近い子どもは慎重が10歳付近でスパートし、3パーセンタイル付近の子どもは12歳付近でスパートします。つまり、身長の高い子どもは早熟、小柄な子どもは晩熟傾向と言えます。
(P48)昔は出生体重は3kg、身長50cmが平均でしたが、現在は体重・身長ともに下がってきています。その理由として、
・多胎児が多くなった
・計画出産の影響
・妊娠中の母親のダイエット
などが考えられます。
(P50)小学生となり体重が30kgくらいになると、男女でからだの「中身」に違いが現れ始めます。脂肪と除脂肪(骨や筋肉、血液など)の比率が男女で異なってくるのです。
女子は平均的には9歳を過ぎると、同じ体重増加でも、男子より脂肪の占める割合が多くなります。身長が急に伸び始める身長スパートの頃には、すでに胸がほんの少し膨らんでいますが、この頃に女子としての成熟が始まり、身体に脂肪の占める割合が増えて、徐々に女性らしい体つきに変わっていきます。
しかし身長の伸びる速度が最大になるまでは、その変化はあまり急速ではありません。身長が最大に伸びる頃(最大発育期)、体重もスパートを開始します。やがて身長の伸びが少し穏やかになったかな?と思う頃、初潮が見られます。
初潮を迎えると女性ホルモンの分泌が高まり、その働きで脂肪の占める割合がさらに増加します。一般的に、女性の体脂肪率は男性より10%ほど高くなっています。
(P52)男子は体重30kgを超えた頃から少しずつ男性ホルモンが出始めます。そして体重がスパートする頃は。脂肪に対して除脂肪(骨、筋肉、血液など)が顕著に増えていきます。男性ホルモンの働きで、次第に男らしい姿に変わっていくのです。
ここで忘れてはならないことは、身長が伸びる時期は骨が非常に弱くなっていることです。骨はぐんぐんと長軸方向へ伸びますが、骨密度が増しているわけではありません。また、骨には「骨端線」と呼ばれる細胞分裂する部分があり、そこに過度な負荷がかかると、大事な骨の成長部分が損なわれてしまう危険があります。そのため骨が盛んに伸びている時期は、ウエイトトレーニングなどで関節を傷めることのないよう、運動の仕方に注意することが必要です。激しい筋トレは身長が十分に伸びてからでも遅くありません。
(P54)女子と男子では、スパートの時期は異なりますが、9割ほどが身長 → 体重の順でスパート開始となります。
女子の場合、体重スパートは一般的に身長スパートより2年ほど後になります。これは身長の最大発育期とほぼ同時くらいです。
男子の場合も身長から先に始まりますが、体重はその後1年くらいが一般的で、中には身長のすぐ後から体重がスパートすることもあります。
しかし1割弱ですが、体重が身長よりも先にスパートする例も見られます。女子の場合、体重が先にスパートすると初潮が早く発来する傾向があり、そうなると身長はあまり伸びないことになります。
(P56)身長は朝高く、夜低くなります…こうした身長に見られる一日の変化を日内変動といいますが、それは座高の変化に起因しています。
(P57)思春期の身長スパートにおいて、からだの上体と下体では伸びる時期が異なります…結論として、身長スパートは、まず足が伸び、次いで座高が伸び、最後にまた足が伸びて、やがて止まるといえるでしょう。もちろん例外はありますが、最後の足の伸びる期間が非常に大切です。
ところが近年、最後の足の伸びるはずの時期に「足が伸びない」現象が顕著になっています。男女とも30年前の親世代より「身長に占める足の長さの割合」が減少しており、実際の数値としては、男子17歳で約1cm縮んでいます。
(P59)身長が1年間に1cm未満しか伸びなくなったときに「止まった」と定義されています。一般的には、身長は思春期スパートで大きく伸びた後は次第に伸びが鈍り、18歳くらいで止まる(女子はもう少し早い)といういうことになります(例外あり)。
(P60)身長が止まる時期の目安:男子なら声変わりをした後、女子であれば初潮が発来した後に、徐々に伸びる量は減っていき、やがて止まる時期が訪れます。
一般的には、身長スパートが始まり、1〜2年して最大発育期を迎えて大きく伸び、その後伸びが少し穏やかになった頃が、思春期(第二次性徴)が後半に入ってきた印です。
ただし、最大発育期の後の生活の仕方も重要で、睡眠不足や食事内容、運動の仕方も影響を与えます。
(P64)身長の日内変動:身長は夜より朝の方が高く、起床時が最大ですが、30分後には1cm程度縮み、起床後4〜5時間後に完全に縮み終わります。
伸び縮みするのは「座高」であり、主な部分は「脊椎」です。脊椎は椎骨と呼ばれる骨が連結したもので、成人では合計で31〜32個あり、この椎骨の間には脊椎にかかる負担をやわらげるクッションの役割をする椎間板があり、この柔らかい椎間板の部分が伸び縮みするのです。
(P68)身長・体重の発育は同時に促進されるのではなく、それぞれ増加する季節が異なります。北半球の温帯地域においては、身長は春から夏にかけて伸びが促進され、体重は秋から冬に増加し、夏はほとんど増えません。
日本列島は南北に長く、身長の季節依存は北から南に行くに従って減少し、逆に体重の季節依存性が増すと報告されています。
夏の体重増加は異常な季節変動です。ほとんどの動物にとって、蒸し暑い気候の中では食欲も落ち、動くことも苦痛になります。しかし1970年代にルームエアコンが家庭に普及してきたおかげで、夏でも涼しく快適な環境で過ごせるようになりました。子どもたちは夏休みにルームエアコンのある屋内にいれば食欲も落ちず、学校のある期間と比べて生活習慣も乱れ、からだに脂肪が蓄積しやすくなり、そうした夏休みを繰り返すと肥満になる傾向があります。
(P80)発育段階の初期に急激に発育する思春期早発症は、男女関係なく、程度の差はあるもののそれほど珍しくない病気です。たまたま身長スパートが早く訪れただけということもありますが、こういう場合は、女子であれば3年生の終わりから4年生の初め頃に初潮が来て、そのうち成長が止まり、150cmに満たなかったというケースも多いのです。
(P85)愛情遮断性小人症:子どもが親からの愛情を感じることができず、精神的ストレスが大きくなると、それが原因で成長ホルモンが分泌されにくくなり、睡眠が阻害されたり、食欲がなくなったりして発育遅延を起こすことがあります。
(P98)小学生で肥満度が50%を超える高度肥満の子は、3歳時点で既に肥満であり、さらに3歳以前から発症していることがわかっています。…つまり肥満は、乳児期から始まり、それが改善されずに小学生に持ち越して、やがて高度肥満になる確率が高いということです。
(P102)1日5分だけでも縄跳びをしよう、一緒に30分歩こう、ラジオ体操をしよう、と少しずつでよいので、子どもに声をかけてからだを動かすように促しましょう。
(P104)第二次世界大戦までの日本人の畳に座る生活様式は、足の発育にはマイナスでした。戦後、テーブルと椅子の生活になり、栄養事情もよくなったことから、日本の子どもの成長はめざましい伸びを示し、その大部分は足の伸びが寄与していました。
ところが、平均身長は1998年〜2000年を境にだんだんと低下しています。…これは発育段階で最後に伸びるはずの足が十分に伸びきらず、身長スパートが終了してしまったためと考えられます。
その原因の一つとして考えられるのが、インターネットの普及によるパソコンや携帯電話やスマートフォン、ゲーム機といった電子機器の登場です。
(P106)2017年の調査では、スマホ所持率は、
(小学生)1割以下
(中学生)95%
(高校生)98%
(P108)スマホの長時間使用は、睡眠時間減少だけではなく、電子機器が発する強い光で脳が覚醒し、睡眠の質が悪くなります。深い睡眠が得られなければ、成長ホルモンは分泌されませんから、当然身長が伸びません。つまり、身長が伸びる時期にスマートフォンやゲーム機を夜遅くまでいじる生活をしていると、身長の伸びが妨げられるのです。
よく眠れなければ朝起きるのがつらくなり、そうすると朝食を摂らない、学校に行っても集中できない、頭痛やめまいなどの不定愁訴を打ったエレなど、身長だけではない、様々な問題を引き起こします。
スマホを与えるときは、一定のルールを決めることが大切です。
✓夜は使わない
✓1日30分〜1時間以内
使い方を間違えると、いろいろよくないことにつながり、身長も伸びなくなることも、子どもにぜひ伝えて欲しいと思います。
身長を伸ばすには、ぐっすり眠って成長ホルモンをしっかり分泌されることが絶対条件です。日中はよく光を浴び、夜はできるだけ強い光を避けるようにしましょう。
(P109)成長ホルモンは眠ってから1時間後、それも夜中の12時〜1時頃に最も分泌されるので、中学生や高校生でも、遅くても12時前には寝るようにしたい者です。
小学生は9〜10時間の睡眠を取らなければ、身体の機能は十分に発達しませんので、9時頃には寝かせるのが理想です。
(P110)身長スパートを遅らせて身長が伸びる期間を長くする方法;
✓子どもを早く寝かせる。夜、TVやスマホ、ゲーム機の光を長時間浴び続けていると、その刺激で第二次性徴がどんどん進んでしまうという報告があります。
✓適度な運動やバランスの取れた食事。…バランス感覚や持久力、筋力をつける最適な時期があります。そして“やり過ぎ”は禁物、骨に負担がかかり、伸びる身長も伸びなくなってしまいます。
(P111)小学生で高度肥満児は、乳児期から肥満であり、親も肥満であることが多く、これは家庭の生活習慣が「太る生活習慣」になっている可能性があります。太っている子はとにかく食事回数が多いものです。…子どもがいつでも
何でも好きなものを食べていいという生活習慣が身についてしまうと、治すのは困難になり、高い確率で肥満になります。
(P113)コロナ禍の期間は、子どもの肥満が明らかに増えました。
(P114)子どもの肥満改善のポイントは「早寝・早起き・朝ご飯」です。それが乱れるのは、たいていは寝る時間が原因です。遅寝になると、早く起きられず、朝ご飯もゆっくり食べられない、一日中ボーッと活力のない生活になってしまう、学習能力が落ちてしまい勉強する意欲も湧かないなど、すべてが悪循環になってしまいます。
(P114)運動が嫌いな子は親が誘って一緒に歩いたり、1日5分だけでもよいので外に出てエネルギーを発散させることが大切です。(P116)また、ラジオ体操などを利用して、親も一緒に身体を動かす習慣をつけましょう。最初は休日だけでもかまいません。…寝る前にストレッチや柔軟体操をするのも,身体を動かす習慣をつけるという意味では大切です。
(P116)夜食は寝る時間の2時間前まで。ご飯を食べると消化するのに1時間半〜2時間かかります。
(P122)骨がつくられる大事な時期は18歳までで、それまでにつくられた骨が弱いと、そこから改善することは難しいことがわかっています。
(P124)1人で食事している子は「切れやすい」ことがアンケート調査でわかりました。…“孤食”は決まったものしか食べないため、栄養の偏りが生じるだけでなく、自分は誰からもかまってもらえない、みてもらえないという不満感や不安感を生むのでしょう。“孤食”児は、頭痛や吐き気など不定愁訴を訴える子の割合が高いこともわかっています。…(P125)孤食を続けていると愛情不足となり身体的にも精神的にも悪い影響が現れます。
(P129)現代の子どもたちは、運動やスポーツが得意な子どもと、ほとんど屋内で過ごし、運動は学校の体育の授業だけ、という運動に無関心な子どもとの二極化が進行しています。
(P139)身長スパート中にウエイトトレーニングを続けると、骨に過度の負担をかけ続けることになり、その結果、骨端線が閉じてしまい、身長の伸びが停止する可能性があります。…アメリカ大リーグで活躍している大谷翔平選手は、高校時代に監督から「まだ骨が成長段階にあるから、1年生の夏までは野手として起用して、ゆっくり成長の階段を上らせる」という方針を告げられ、変化球などの練習はしなかったそうです。
(P143)スキャモンの発育曲線…からだの臓器や器官は一様に発達するわけではなく、それぞれ発達する時期が異なることを示しています。
1.神経型:脳・脊髄・視覚器・頭囲が含まれます。生まれてから最も早く発達し、6歳時で20歳時の約90%、12歳で100%に達します。…12歳までは、様々な基本的動作、運動を日常的に行い、からだを器用に動かす能力や、リズム感やバランス感覚を高めることが重要です。
2.リンパ型:リンパ腺、胸腺、 扁桃腺などが含まれます。学童期に急速に発達し、12歳頃がピークで成人の1.8倍くらいになり、その後次第に落ちて成人の状態になるという、特徴的な曲線を描きます。
3.一般型:身長・体重、呼吸器、消化器、腎臓などの臓器、筋肉や骨、血液量などの発育発達が含まれます。…この時期は体力や持久力をつけることに適しています。
4.生殖型:子宮、卵巣、睾丸、前立腺などの生殖期間の発達で…小学校前半
まではほとんど発達せず、第二次性徴期(思春期)には急激に発達し、男女のからだの変化も顕著になってきます。
(P146)発達には「至適時」があり、機能の発達する時期に、それに関連した働きかけをすることが、最も効果的です。そのため、スキャモンの発育曲線で見たように、非常に早い神経系の発達に合わせて、
(幼児期)運動能力の基本となる、歩く・走る・跳ぶ・投げる・泳ぐ・滑る、などの動作をまず習得し、
(小学生)多様な動作(運動)をできるようにする…
子どもの運動能力が伸びやすい5〜12歳頃までの時期を「ゴールデンエイジ」とも読んでいます。
(P147)からだへの働きかけの基本的順序
1.小学校低学年までに
・動作の習得(いろいろな動作ができるようになる)
・運動の基本的動作を身につけることが大切:走る、蹴る、跳ぶ、スキップする、投げる、受ける、打つ、滑る、泳ぐ、など
・専門的に行うのではなく、いろいろな種目を幅広く
2.小学校高学年から中学時代
・粘り強さの獲得(持久力をつける)
・身体も大きくなり、免疫力も上がる時期
3.身長が最大発育期を過ぎた後で力強さを獲得藤功
・骨がウエイトトレーニングなどの負荷に耐えられる。
(P148)…力強さを獲得するピークは、身長が最も伸びる時期の後に来ます。そして、力強さはピーク後も発達量が大きく落ちることはありません。筋力をつけるためのウエイトトレーニングや過度な運動は骨の細胞分裂に損傷を与え、骨端線が閉じてしまったり、怪我をしたりする恐れもあることから、身長が大きく伸びている時期には控えるべきです。
(P151)オスグッド病の背景:大きな骨では成長軟骨層が中枢側と末梢側の両方に存在し、それぞれで骨の長さを伸ばしていきます。成長軟骨層は筋肉の収縮力により引っ張られて徐々に痛みや変形を起こすことがあり、その最も典型的なのは膝のオスグッド病と呼ばれる骨端症です。大腿四頭筋の力が膝蓋腱を介して成長軟骨層を引っ張り、引っ張られた結果、骨が持ち上がり、見た目でも突出がわかるほどになります。
(P152)腰椎分離症の背景:ふくらはぎの柔軟性低下は大腿部の柔軟性低下より先行して小学校高学年頃に目立ち、大腿部の柔軟性低下は中学生になる頃に強くなります。足の筋肉の柔軟性が下がった時期に走る、跳ぶ、投げるなどの全身運動の場合に腰への負担が大きくなります。…中学生時には、腰の骨は大人のような強さ(骨密度)になっていないため疲労骨折が起こりやすく、疲労骨折が治らないと骨に亀裂ができてしまい、腰椎分離症と呼ばれる状態に進んでしまいます。サッカーや野球のトップ選手では腰椎分離症を持つ割合が40%以上と報告があります。…さらに近くの椎間板に負担がかかって傷ついてしまい、上下の腰の骨を支えきれなくなり腰椎すべり症という状態が起こりうること、亀裂部が衝突を繰り返すことで盛り上がり神経の通り道(脊柱管)を狭くしてしまうこともあります。
<参考>
・「発育グラフソフト」(ダウンロード)…本書で紹介されている、簡単に成長曲線が描けるソフト(Microsoft Excelで使用)