小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

小児肥満の基礎知識

2022年12月29日 10時43分37秒 | 予防接種
2023年度から学校医を引き受けることになり、
子どもの健康と病気の間のグレーゾーンについて調べています。

今回は小児肥満の基本を整理してみたいと思います。

確かに外来を受診するお子さんでも、
ときどき“ポッチャリ系”を見かけます。
ただ、肥満を主訴に受診することはまれで、
学校健診で指摘されたから受診、というパターンが多いですね。

こちらからも肥満の治療を勧めることは滅多にありません。
たいてい家族全員が“ポッチャリ系”なので、
病識(肥満が病的状態であること)がありません。
そのような子ども・家族に食事指導しても、
経験上、手応えがないことが多いからです。

相談を受けた場合の基本的な対応は・・・
血液検査で単純性肥満(ただ太っているだけ)なのか、
病気が隠れている症候性肥満、あるいは肥満症なのかを判定し、
生活指導をすることになります。

生活指導のメインは食事栄養指導になりますが、
詳しいことは管理栄養士さんでないと指導できないため、
在籍している総合病院の小児科に依頼することになります。

また、現在の食事指導にわたしは常々疑問を持ってきました。
日本の栄養管理は「バランス食」と「カロリー制限」ですが、
近年、欧米では「肥満の原因は炭水化物の過剰摂取」が常識化し、
タンパク質や脂質は制限しない方向に進んでおり、
日本はガラパゴス化しつつあります。
糖尿病の食事指導も同様ですね。

どの分野でもプロが採用・導入していることはホンモノです。
ダイエット〜減量のプロといえばボクサー。
ボクサーは試合前になると炭水化物を絶って厳しい減量に挑みますが、
タンパク質は摂り続けます。
巷で有名になったライザップも炭水化物制限ですね。


<参考>
① 「子どもの肥満」(日本小児内分泌学会)
④ 「学校医Q&A」(群馬県医師会)
⑤ 「親子で取り組む!子供の肥満診療」(南山堂、2021年発行)



(A) 体格指数
カウプ指数(=BMI, Body Mass Index)=体重kg/(身長m)2
 → 日本人成人では25以上を肥満としているが、小児では年齢とともに変動するため、パーセンタイル基準値と比較し、90および95パーセンタイルを超えていれば肥満と診断する。
ローレル指数=体重kg/(身長m)3 ×10
 ≧ 160:肥満
 ≧ 180:中等度肥満
 ≧ 200:高度肥満
※ 低学年の場合は身長により補正する必要がある(参考⑤)。
 身長110-129cm:≧ 180で肥満
 身長130-149cm:≧ 170で肥満
肥満度=(実測体重ー標準体重※)/標準体重 ×100(%)
※ 標準体重は性別、年齢別、身長別に設定されている。

(B)体型指数
腹囲(臍高囲)(※)
※ 日本のメタボリックシンドローム診断基準(6-15歳)によれば、
 小学生 ≧75cm
 中学生 ≧80cm
 であれば内臓脂肪量増加と診断する。
② 腹囲/身長 ≧ 0.5で内臓脂肪量増加

(C) 体脂肪率
① 皮下脂肪厚より算出する方法
  皮脂厚計による方法
  超音波による測定
② インピーダンス法
③ Dual Energy X-ray Absorptiometry(DEXA)法

(D) 成長曲線

子どもの肥満の定義
・(BMIではなく)肥満度で評価する。
・成人領域では、体脂肪量と相関性を示すBMI、および内臓脂肪量と相関性を示す腹囲が世界標準で使用されている。小児期の肥満診断の世界標準はBMIであるが、日本では学校保健安全法により自動性との身体計測が義務づけられているため、性別年齢別身長別標準体重の詳細なデータが入手可能であることから肥満度が用いられている。
・年齢により評価基準が異なる。
(乳児)肥満度法は用いない。症候性肥満以外は様子観察。
(幼児)≧ 15%:太りぎみ
    ≧ 20%:やや太りすぎ
    ≧ 30%:太りすぎ
学童)< ー15%:やせ(※)
     ー15〜20%:ふつう
    ≧ 20%:軽度肥満
    ≧ 30%:中等度肥満
    ≧ 50%:高度肥満
※ ー20%〜+20%を正常とする記載もある。
・簡易的に肥満度を確認する方法
 → 肥満度判定曲線(幼児男子幼児女子学童男子学童女子
・いつから肥満が起こってきているのかも大切な情報
 → 成長曲線(男子用女子用

どのような肥満が治療対象になるか?
まず肥満は以下の4つに分けられる;
① 単純性肥満
② 症候性肥満
③ 肥満症
④ メタボリックシンドローム
このうち治療対象となるのは②③④である。
しかし、単純性肥満も、肥満症やメタボリックシンドローム発症の予備軍として早期から対応することが大切になる。

単純性肥満と症候性肥満

単純性肥満
・ほとんどがこちらで、原発性肥満とも呼ぶ。
・摂取エネルギー>消費エネルギー状態が続くと発生する。
・食事・おやつ・ジュースなどの過剰摂取、栄養バランスの悪さ、運動不足などによる。
・1970年代以降、食生活やライフ・スタイルの変化により子どもの肥満が急増し、現在1割を超える子どもが肥満になっている。

症候性肥満
・他の病気が隠れてていて肥満になるタイプで二次性肥満と呼ぶこともある。
・身長の伸びが悪くなるのが特徴(単純性肥満では身長もよく伸びる)。肥満があるのに身長の伸びが悪い(−1SD未満)の場合は、検査による症候性肥満の鑑別が必要になる。
・性成熟遅延も特徴(単純性肥満では性成熟促進傾向)であり、女児で13臍になっても乳房発育が始まらない例、男児で15歳になっても外性器成熟が始まらない場合は注意すべきである。
・症候性肥満の例;
(Prader-Willi症候群)低身長、筋緊張低下、精神発達遅滞、アーモンド様眼裂
(Turner症候群)低身長、卵巣機能不全、翼状頚、外反肘
(Cushing症候群)低身長、満月様顔貌、Buffalo hump
(偽性副甲状腺機能低下症)低身長、第4中手骨指趾短縮、皮下石灰化
(成長ホルモン分泌不全症)低身長、視床下部障害
(甲状腺機能低下症)低身長、知能低下、便秘

 小児肥満の原因
1)食習慣
・朝食の欠食
・脂質の過剰摂取
・外食(特にファストフード):高脂肪+高ショ糖摂取
・清涼飲料水:高ショ糖摂取
・食卓の環境:孤食、個食、偏食、過食
2)生活習慣の変化
・近代社会の生活習慣の変化(運動量の減少、高脂肪食)の影響が大きく関与している。
3)運動不足
・日常生活の中の身体活動の減少
・座りがちな生活習慣
4)睡眠時間
・睡眠時間の短縮は肥満の危険因子(※)
(<8時間)オッズ比:2.87
(8-9時間)オッズ比:1.89
(9-10時間)オッズ比:1.00
※ 富山県における調査(Sekine et al. Chikd Care Health&Disease, 2002)

睡眠時間短縮が肥満につながるメカニズム
睡眠不足
 → 疲労 → 運動量減少
 → 食欲・代謝調節系の変化 → レプチン⇩/グレリン⇧ → 過食、エネルギー消費低下、食物嗜好の変化
 → 覚醒時間の増加 → 摂食機会の増加 → エネルギー過剰摂取

小児肥満の原因に基づく処方箋
・早寝・早起き・朝ごはん
・規則正しい生活
・1日60分以上の身体活動

肥満と肥満症
肥満とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態(小児では肥満度≧20%)
肥満だけでは病気ではない
肥満症とは、肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併する場合で、医学的介入を必要とする病態。

<肥満症の定義>
 高度肥満(3点)
 高血圧(6点)
 睡眠時無呼吸など肺換気障害(6点)
 2型糖尿病または耐糖能障害(6点)
 腹囲増加または臍部CTで内臓脂肪蓄積(6点)
 肝機能障害(4点)
 高インスリン血症(4点)
 高コレステロール血症(3点)
 高中性脂肪血症(3点)
 低HDLコレステロール血症(3点)
 黒色表皮症(3点)
 高尿酸血症(2点)
 皮膚線条(2点)など。
 → 合計スコアが6点以上 → 小児肥満症

肥満は生活習慣病のリスク
・単純性肥満でもいろいろな病気・合併症のリスクがあり、検査が必要。
・生活習慣病(2型糖尿病、脂質異常症、高血圧)の原因となり、これらは動脈硬化を促進し、将来的に心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを高める。子どもでも生活習慣病が見られ、動脈硬化が進行する(血管内皮機能の障害、内膜中膜肥厚が小児期にすでに出現)。
・脂肪肝や睡眠時無呼吸を起こすこともある。
・膝や腰に悪い影響を与える。

子どもの肥満は大人の肥満につながる?
・成人肥満になるリスクは、
(幼児期肥満)25%
(学童前期肥満)40%
(思春期肥満)70-80%
・乳児肥満の多くは自然に解消される。
・学童肥満 → 思春期肥満 → 成人肥満と移行する例は、3-5歳時にすでに肥満である例が多い。
・肥満の一次予防という観点からは、幼児期からの対応・介入が必要である。

<学童期肥満>
・肥満発生頻度は、就学時4%台 → 学童後期で10%台へ増加。
・学童肥満児発生頻度は、この40年間で3-4倍に増加。
・学童肥満の4割は成人肥満に移行する。

<思春期肥満>
・思春期肥満の70%は成人肥満に移行する。
・思春期肥満は、代謝異常(高脂血症、脂肪肝、2型糖尿病など)の出現率が上昇する(思春期におけるインスリン感受性の変化)。

<発達障害を伴う肥満>
・発達障害の多くは環境への適応障害があり、その結果として不安の増加、自己評価の低下、運動の減少につながる。
・食べることに満足を見いだすようになると、肥満傾向になる。

小児肥満の問題点
1)メタボリックシンドローム
・動脈硬化、糖尿病合併症、脂肪肝のリスク。
・心筋梗塞、脳卒中につながる。
2)心理的問題
・体型へのコンプレックスから自分に自信が持てなくなる。
・自尊感情の低下、消極的な性格、気分が落ち込みやすいなどが見られることがある。
3)学校で起こる問題
・いじめの対象 → 劣等感を持つ → 無気力 → 不登校 → 心理的ストレス → 過食
4)運動嫌い
・肥満のため体が思うように動かず運動嫌いになりがち。
・室内遊びの増加、日常動作の減少につながる。
5)早熟傾向、最終身長の低下
6)妊娠・分娩の異常
・低出生体重児、子宮内発育不全のリスク。
・出生後に栄養過多になると、成人して生活習慣病になりやすい。

小児(6-15歳)のメタボリックシンドローム診断基準(2007)
①があり、②-④のうち2項目を有する場合にメタボリック症候群と診断する。

① 腹囲 ≧ 80cm(※1)(※2)
② 血清脂質
  中性脂肪 ≧ 120mg/dl and/or
  HDLコレステロール < 40mg/dl
③ 血圧
  収縮期圧 ≧ 125 mmHg  
  拡張期圧 ≧ 70mmHg
④ 空腹時血糖 ≧ 100mg/dl

※ 1)腹囲/身長が ≧ 0.5であれば項目①に該当するとする。
   小学生では腹囲 ≧ 75cmで項目①に該当するとする。
※ 2)内臓脂肪蓄積の評価(臍レベルのCTスキャン)
・内臓脂肪面積 ≧ 60cm2(成人では100cm2以上)

医療機関受診の目安
・肥満度判定曲線や成長曲線を利用し、身長に比べて明らかに体重が多い、もしくは体重増加傾向が続いているときは一度医療機関を受診すべし。
・介入が早いほうが改善しやすい。

小児肥満の治療
・食事療法
・運動療法
・行動認知療法
※ 肥満度≧50%の高度肥満児においては、すでに肥満に起因ないし関連する健康被害を合併した肥満症を来していることもあり、その場合は高次医療機関へ紹介する。

Family-based cognitive behavioral therapy(家族に基盤をおいた認知行動療法)
1)セルフモニター
・ライフ・スタイルなどを自分でモニターする。
2)刺激のコントロール
・食べ過ぎや運動不足の原因となる刺激を除くように環境を整備する。
3)自己評価
・自分で食事や運動に関する手近な目標を決めて自分で評価する。
4)最終目標として、肥満に関連した事柄のすべてについて意識改革をする。

<家族の方へ>
① 子どもと親が一緒に取り組んでください。子どもに減量を強いるのではなく、親(祖父母)もできることをして協力しましょう。
② 肥満や日常生活への考え方を積極的に変えていきましょう。
③ 記録をつけ、生活を振り返ることで、問題となっている考え方・行動パターンの解決方法を探りましょう。

高度肥満児対策

1)目標設定
① 肥満度をそれ以上増加させない
② 肥満度を中等度(<50%)にする

・通院は初期は1ヶ月に1回、効果が現れたら数ヶ月に1回。
・効果判定は成長曲線で確認する。
・急激な減量は好ましくない。
・肥満の背景を考慮した生活指導をする。日常生活の中で児が実行可能な目標を1-2個設定させるとよい。目標達成できない場合も、叱るのではなく達成できない原因をともに考え、児が自分の問題として改善に取り組めるよう支援する。

2)食事療法
・成長期においては摂取エネルギーを極端に制限せず、バランスを整えることを優先する。
・成長期は身長が伸びるため、今の体重を維持するだけで肥満度が改善する。
・フードモデルによる指導はハードルが高く実践できないことが多い。
・まず食事調査を行い、そこから改善できる点を具体的に指導すると継続しやすい。

<具体的な食事指導>
・腹八分目を心がける。
・タンパク質と食物線維はたくさん食べてもよい。
・糖質はへらす。ご飯(炭水化物 → 糖質)もおかわりは控える。
・脂肪・脂質を減らす。
・食事は1日3回(朝食もしっかり食べる)。
・よく噛んで食べる(一口20回)。
・もう少し食べたいときは野菜を食べよう。
・おやつは1回100kcalを目安にする。
(100kcalの例)
 小おにぎり1個、ロールパン1個、ふかしいも1個、トウモロコシ1/2個、
 ヨーグルト1個、枝豆一皿、果物1個、チーズ1個
・おやつの袋菓子は器に入れて分けて食べる(一袋食べない)。
・夕食を食べたらすぐに歯磨きしてその後は食べない。

 1日の摂取エネルギーの目安(kcal)
        (男子)  (女子)
小学校1-2年生   1650    1450
小学校3-4年生  1950    1800
小学校5-6年生  2300    2150
中学生       2600    2300

3)運動療法
・有酸素運動がお勧め。運動をすると、最初に炭水化物が使われ、運動時間が20分以上になると脂肪が使われるようになる。
・食事摂取カロリーの80-90%は日常生活で消費している。のこりの10-20%を運動で消費するイメージ。
・運動効果の持続は2日間が限度なので、1日おきに運動すべし。

<具体的な運動指導>
・肥満児はもともと運動習慣のない児が多いため、まずは楽しく体を動かすことから始める。
・家事の手伝いのような日常の作業で、気軽に体を動かす習慣をつけることも大切。
・エレベーターを使わずに階段を使う、早足で歩く、バス・電車の一駅分歩いてみる、など生活習慣の改善にもトライすべし。
・お勧めの運動は、なわとび、ジョギング、ランニング、自転車、水泳、テニス、野球、サッカー、ダンスなど。屋内でできる腹筋やストレッチ、ラジオ体操も役立つ。
・ほんのり汗をかく程度の運動が適当(心拍数120-140/分)。
・1日10-15分程度から漸増し、最終的には1日60分程度の運動を目標にする。
・あるいは、30分以上(10分×3でもOK)&週3回以上が目標。
・関節痛や腰痛が現れた場合は運動を中止し整形外科などを受診させる。

100kcal を消費するための運動量(厚生省公衆衛生局)
        (男子)  (女子)
 散歩      28分    35分
 ジョギング   12分    15分
 山歩き     24分    31分
 サイクリング  21分    27分
 なわとび    18分    23分
 バドミントン  11分    14分
 テニス     14分    18分
 水泳      12分    15分
 ラジオ体操   21分    26分

4)行動療法
・「肥満は体質」 → 「肥満は習慣」へ意識改革を試みる。

肥満の診療の実際
・中等度肥満(肥満度≧30%)は合併症のリスクが高いため血液検査を行う。
【血液検査項目】
 総コレステロール、中性脂肪、HDL-chol、LDL-chol、
(空腹時)血糖、HbA1c、尿酸、ALT
・生活記録グラフを記録し、2週間〜1ヶ月毎に通院。
・小児肥満症の診断基準、成長曲線、肥満度曲線を作成して示し、今自分がどのあたりにいるかハッキリ認識させる。
・要治療の肥満症であれば、将来起こりうる動脈硬化(血管が傷つくこと)による病気について説明する(たとえば70-80臍で起こりうる脳卒中が40-50臍でも起こるかもしれない、など)。
・今の時期に健全な生活を取り戻せば、十分に間に合うことを説明する。

<参考>
・生活記録グラフと記入方法(「今日からできる小児科外来肥満テキスト」のP36-37)



<参考>
■ 小児肥満症の診断基準(朝山光太郎:肥満研究2002:8:504-211より)



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ブレークスルー感染を経験して

2022年12月14日 08時12分27秒 | 新型コロナ
2022年8月末に、私は新型コロナに感染しました。
流行状況からして「BA.5」株と思われます。

医療従事者と基礎疾患枠で、
2022年6月末に4回目のワクチン接種を済ませていたにもかかわらず。

まあ、毎日新型コロナの小児患者を対面診察しており、
2歳未満の子どもはマスクを装着しないので、
咳き込むとダイレクトに飛沫を浴び、
マイクロ飛沫(エアロゾル)が飛び散り、
しばらく周囲に浮遊していますから、
換気+サージカルマスク+フェイスシールドでも防げなかった、
というのが現実です。

では「4回接種」の意義は何?
と素朴な疑問が発生します。

それに答えてくれる論文が目に留まりました。
接種後30日の時点では、感染リスクは
3回接種(20%)と比較して4回接種は1/3に減る(7%)という結果です。
まあ、ゼロにはなりませんね。

紹介記事を紹介します;

医療者のブレークスルー感染率、3回vs.4回接種
ケアネット:2022/08/12)より抜粋;
 オミクロン株流行下において、感染予防の観点から医療従事者に対する4回目接種を行うメリットは実際あったのか? 
 イスラエルでのオミクロン株感染ピーク時に、3回目接種済と4回目接種済の医療従事者におけるブレークスルー感染率が比較された。
・・・
 本研究は、イスラエルにおけるオミクロン株感染者が急増し、医療従事者に対する4回目接種が開始された2022年1月に実施された。対象はイスラエルの11病院で働く医療従事者のうち、2021年9月30日までにファイザー社ワクチン3回目を接種し、2022年1月2日時点で新型コロナウイルス感染歴のない者。4回目接種後7日以上が経過した者(4回目接種群)と、4回目未接種者(3回目接種群)を比較し、新型コロナウイルス感染症の感染予防効果を分析した。感染の有無はPCR検査結果で判定され、検査は発症者または曝露者に対して実施された。
・・・
・計2万9,611例のイスラエル人医療従事者(女性:65%、平均[SD]年齢:44[12]歳)が2021年9月30日までに3回目接種を受けていた。
・このうち2022年1月に4回目接種を受け、接種後1週間までに感染のなかった5,331例(18%)が4回目接種群、それ以外の2万4,280例が3回目接種群とされた(4回目接種後1週間以内に感染した188例も3回目接種群に組み入れられた)。
・接種後30日間における全体のブレークスルー感染率は、4回目接種群では7%(368例)、3回目接種群では20%(4,802例)だった(粗リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.32~0.39)。
・3回目のワクチン接種日によるマッチング解析の結果(リスク比:0.61、95%CI:0.54~0.71)および時間依存のCox比例ハザード回帰モデルの結果(調整ハザード比:0.56、95%CI:0.50~0.63)において、4回目接種群で同様の減少がみられた。
・両群とも、重篤な疾患や死亡は発生していない。

 著者らは、4回目のワクチン接種は医療従事者のブレークスルー感染予防に有効であり、パンデミック時の医療システムの機能維持に貢献したことが示唆されたとまとめている。

<原著論文>


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診療所・開業医での新型コロナ感染対策

2022年12月13日 07時47分07秒 | 予防接種
小児科開業医の当院では、
新型コロナ感染対策として、
以下のようなことを行っています。

・オンライン予約
・WEB問診
・駐車場待機(待合室閉鎖)

診察室は接触歴の有無で3パターンに分けています。

①濃厚接触者(家族内発生)
→ 時間&空間隔離:発熱外来専用プレハブで火・水・木・金の11:30〜

②濃厚ではない接触者(学校・園・施設などで発生)
→ 空間隔離:一般診療時間に隔離室で診療

③接触歴なし
→ 一般診察室で診療

診察終了後は毎回、
すべての診察室で環境消毒も行っています。

また、スタッフの個人用防護具として、

・マスク(※1)
・手袋(※2)
・フェイスシールド
・ガウン

※ 1)発熱外来ではN95マスク、それ以外ではサージカルマスク
※ 2)医師は1手技毎に手指消毒

を装着しています。

また、新型コロナ検査の検体は、
・発熱外来では換気扇の下で
・それ以外は駐車場にスタッフが出向いて
鼻前庭ぬぐい液を採取しています。

この度、日本プライマリ・ケア連合学会から「診療所における効果的な感染対策の好事例の紹介」が報告されました。
その内容と当院の感染対策をこちらを参考に比較検討してみます。

**********************************

診療所における効果的な感染対策の工夫例

【工夫1】待合室における感染対策
・自家用車で来院している患者は車中で待機してもらう。
・基本的な感染対策を徹底する。具体的には窓開け、サーキュレーターの活用、二酸化炭素モニターを設置する。

(当院)
・二酸化炭素モニター設置済み
・サーキュレーターではなく強力な換気扇を追加設置済み

【工夫2】診察・検体採取時の感染対策
(1)院内のゾーニング・動線分離を行う
・発熱・感冒様症状患者の駐車場と院内への動線を一般患者と分離する(例:矢印などで導線をわかりやすく表示する)。
・発熱・感冒様症状患者用の診察スペースなどを確保する(例:パーティションによる簡易な分離/空き部屋などを診察室として活用など)。
・空間的分離を行わない場合において、発熱・感冒様症状のある患者とそうでない患者を、時間的に分離して診察する。
(2)個人防護具(PPE:Personal Protective Equipment)の着脱を工夫する
・患者対応時にはサージカルマスクを常時装着し、飛沫曝露のリスクがある場合はアイシールド・フェイスシールドを装置する。
・患者に手や体幹が直接接触する可能性がある場合は、手袋・ガウンも装着する。
・1対応ごとに手指消毒を徹底する。手袋を使用する場合は、1対応毎に手袋を交換し手指消毒も徹底する。サージカルマスク、アイシールド・フェイスシールド、ガウンの交換は、大量の飛沫を浴びたり、それらが患者に直接接触した場合に限定してもよい。
(3)検体採取の場所を工夫する
・検体採取を屋外や駐車場(や車中)で行う(ただしプライバシーへの配慮は必要)。
・唾液によるPCR検査・抗原定量検査や、鼻かみ液によるインフルエンザ迅速抗原検査を活用することで飛沫やエアロゾルの発生を抑える。
(4)その他の感染対策上の工夫
・難聴の患者と大声で会話することを避けるために、スマートフォンを用いた翻訳機器の音声認識・自動文字化機能を活用する。
・患者にタブレット端末を渡して、オンラインで診療、説明などを行う。
・上記のような感染対策が構造的に困難な場合は、時間的分離で対応する。

(当院)
・小児は多種のウイルス感染症患者がいるので「発熱患者=コロナ疑い」とせず、接触歴の有無・程度で時間的・空間的隔離をしている。
・すべての診療で、換気・環境消毒・個人防護具装着をしており、違いはマスクの種類のみ(濃厚接触者の場合のみN95を装着)。
・検体採取は発熱外来では専用プレハブで2つ並べて設置した換気扇の下で行ない、それ以外は駐車場の車内で行っている。

【工夫3】処方・調剤における工夫
・特例承認の経口抗ウイルス薬の処方に必要な同意書を電子化し、タブレット上でサインを得る。
・発熱患者への処方・調剤の流れについて近隣調剤と共に確認し、感染対策の助言を行い、発熱患者が薬剤を受け取れる体制を構築する。
・調剤薬局が近接している場合は、患者は自院駐車場の自家用車内で待機し、薬局から手渡しに向かう。
・調剤薬局において電話やオンラインでの服薬指導や配送体制を構築する。


発熱外来を設置・運用する上での課題と工夫例
【課題1】通常診療よりも大きな作業負担を軽減する
 初診患者が多くなるため、病歴・背景情報把握にかかる負担の軽減が必要
・事前にWEB問診(インターネットによる問診)システムで情報収集する(例:企業が提供するWEB問診システムを活用し、対面診察の時間を短縮など)。
・発熱・感冒様症状用の問診票を用意し、緊急性のある症状の有無、電話診療やオンライン診療の可否、新型コロナ感染症治療薬の適応などを事前に確認する。

(当院)
・オンライン予約とWEB問診を導入し、院内滞在時間を極力短くしている。

【課題2】院内感染が生じた場合の休業リスクに備える
・日本医師会などが提供する休業補償保険に加入する。
・医療機関の休業が生じても個別の訪問診療を維持するために、平時から地域の医療機関間での連携体制を整える(例:地域の在宅患者情報を共有するネットワークへの加入など)。
・休業した場合でも可能な限り電話・オンライン診療を継続する。

(当院)
・院内で感染者が発生した際、対面診療ができない期間は可能な限り電話診療を行った。

【課題3】かかりつけ患者に重症化リスクの高い患者が多い
・院内各所での感染対策に工夫が必要。
・電話・オンライン診療の適切な活用。

(当院)
・重症化リスクの高い患者は多くない。
・希望により電話診療を選択できる。陽性患者は基本的に電話診療。

【課題4】施設構造などの問題で理想的な感染対策が難しい
・施設構造などの制約を踏まえた現実的かつ効果的な感染対策を工夫する。
・時間的分離(診療時間の分割)による対応。
・電話・オンライン診療の適切な活用。

(当院)
・一般診察室、隔離室、発熱外来専用プレハブを接触歴の有無・程度により使い分けている。
・陽性者は電話診療で対応している。

【課題5】発熱・感冒様症状患者への処方・調剤の流れを工夫する
・上記【工夫3】を参照。

【課題6】必要に応じて一部の患者にオンライン診療を適切に活用する
・予約時の情報でオンライン対応できると判断した患者にはオンライン診療を提案する。
・事前にWEB問診で情報を収集する。
・企業が提供するオンライン診療システムの導入。
・行政が設置するオンライン診療センターで診療を行う。

(当院)
・WEB問診導入済み。オンライン診療は将来導入検討中。

【課題7】入居しているテナントの管理者の理解を得るよう努める
・時間的分離を検討する(例:発熱・感冒様症状患者専用の診療時間帯、曜日を設けるなど)。
・電話・オンライン診療の適切な活用。


・・・以上、当院で行っている感染対策は検証しても問題ないと思われました。
現在は電話診療のみですが、
今後、オンライン診療を導入すれば、すべてクリアできます。


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