小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

子どもの側弯症

2023年11月23日 10時45分44秒 | 予防接種
WEBセミナーで側弯症のおなはしを聞きました。

私は中学校の学校医を担当していますが、
思春期に問題となる「特発性側弯症」に関して、勉強になりました。

・痩せている女子に多いこと(バレエや新体操はハイリスク)、
・装具治療は進行を抑えるだけで改善は期待できないこと、
・1日のうちで装具装着時間が長いほど効果が期待できること、
…等々。

ポイントと感じたことをメモしておきます。

 側弯症の年齢による分類
1.8歳以前:early onset scoliosis
2.学童期:late onset scoliosis
 ① 特発性側弯症
 ② 先天性側弯症
3.大人:成人脊柱変形

◆ 特発性側弯症の疫学
・有病率:約2%
・側弯症の8割
・女性が8~9割
・原因不明
・遺伝因子
 ✓側弯症を持つ母親の娘が側弯症である確率は27%
 ✓双子の場合、一卵性で73%、二卵性で36%
・ほかに異常がない
・身長の伸びる時期が最も悪化する
・Cobb角40/50°以上は成人後も進行する
・成人後の発症や進行もある

◆ 特発性側弯症の“かつての”治療方針
・50°以上の側弯症は手術適応
・成長終了時の50°に満たない患者は治療終了

◆ 特発性側彎症のスクリーニング「前屈テスト」
・もっとも簡便
・特異性:78%

◆ 側弯症のリスクのあるスポーツ
・バレエや新体操
 ✓痩せている(低BMI)
 ✓生理が来ないか不順
 ✓体が柔らかい
・クラシックバレエ:調整オッズ比 1.38

◆ 側弯症で起きうる症状・所見
・変形 → 心理的ストレス
・肺活量の低下・・・90°以上にならないと起こらない
・痛み → 成人後(50歳以降?)に悪化

◆ 側弯症の治療
・保存治療:装具
 ✓進行を抑える効果(ブレーキ)
 ✓改善させることはできない
→ 本当に効果があるのか?という議論が長年続いてきたが、
2013年に1日の装着時間と治療成功率が相関することが報告された(Weinstein 2013 N Engl J Med)
 ・・・6時間未満で40%、6‐12時間で70%、13時間以上で90%
・手術治療

特発性側弯症は思春期女子に多く、成長のスパートが起きている間に急速に進行する病気です。
昨年大丈夫だったから今年も大丈夫とは限りません。
それを発見すべく、学校医は神経を使っているのですが、
近年「脱衣診察はダメ!」という感情論が席巻し、
十分な診察ができず、進行してから学校健診以外で発見されて治療にたどり着く例を耳にします。
ここ数年、私の周りでも3名の中学生女子が学校健診以外で側弯症と診断されました。

もはや学校健診は形骸化しており、参加している私自身も疲弊するだけで意義を感じられません。
運動器検診・側弯症検診は学校健診と切り離して整形外科専門医が担当すべきだと思います。

コメント
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