小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

伊藤浩明先生の講演を聴いてきました。

2017年06月23日 07時58分32秒 | 食物アレルギー
 昨日6/22夜、前橋にて。
 テーマは「食物アレルギー診療ガイドライン2016」の解説と、先日発表されて話題になっている「卵アレルギー予防に関する日本小児アレルギー学会からの提言」の説明でした。

 ひと昔前までは、食物アレルギーの治療方針は「除去」と「症状出現寺の対症療法」という消極的なものしかありませんでしたが、経口免疫療法の登場でガラッと変わりました。
 「食べない」方針から「食べて治す」方針へ180°転換したのです。

 しかし、アレルゲンを食べれば症状が出るのは当たり前、重症者にとっては命取りになる事がありますので、あくまでも専門医師の管理下に行うことが原則です。
 ただし、軽症者(食べても一部の皮膚症状だけ)は外来での負荷試験、さらに軽症者は自宅での食事指導でもOK。
 伊藤先生は、この食事指導法を詳しく解説してくれて、「小児科開業医でどこまでできるか」を模索している私にとってタイムリーな内容でした。

 一番印象に残った言葉;
「軽症で少し(アレルゲン2g相当)食べても無症状の患者さんには、自宅で同じ量を5〜10回食べていただき、大丈夫なら、負荷量を10〜20%増量してもらう、これを粘り強く反復して食べられる量をゆっくり増やしていく」

 それから、アレルゲン量の推定は、牛乳と小麦は含まれるタンパク量で単純に計算できるけど、卵は加熱方法・調理法で変化するので混乱していると指摘されました。
 確かにその通りで、アレルゲン性が低下するのは喜ばしいのですが、食事指導が複雑になってしまいます。
 そして調理法によりアレルゲン量が変化すると最初に指摘したのは伊藤節子先生です。
 
 この点に関して、伊藤(浩明)先生は鋭いことを指摘しました。
 伊藤節子先生が使用したのは微量検出用の検査方法であり、濃度の高いものを測定する際には誤差が大きくなり適さない、また、少なくなったアレルゲン量は加熱により不溶化して沈殿しているだけであり、水溶液のみを検体とする測定系には反映されないので、伊藤節子先生のデータには疑問が残る。
 なるほど。

 次に卵アレルギー予防の提言に関して。

 これはあくまでも医師向けの提言であり、マスコミが一般向けとして扱っている現状に違和感がある。
 予防対象も「アトピー性皮膚炎乳児」のみであり、健康乳児は対象に入っていない。

 とのこと。

 以上とは別に、ふだんから疑問に思っていることを、群馬大学小児科教授の荒川浩一先生に聞いてきました。

Q.1)食物アレルギー患者がアレルゲンを食べたときに、皮膚症状の他に「喉の違和感」を訴えることがあるが、この症状の取り扱いは「皮膚粘膜症状」「消化器症状」「呼吸器症状」のどれが適切か?

A.1)基本的にケースバイケースであるが、私は「皮膚粘膜症状」に含めることが多い。

Q.2)アレルゲン除去の解除過程で、食べても無症状だが触ると症状が出る「接触じんま疹」を時々観察するが、これは除去解除の障害となるか?

A.2)障害と考えない。

コメント
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