小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新しいワクチン、「帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)」

2016年09月23日 08時17分57秒 | 予防接種
 小児対象ではありませんが・・・気になる話題なので紹介します。

 下記論文で扱われているワクチンは、日本で使用されている生ワクチンではなく、不活化ワクチンに分類されるタイプですね。 注射方法も、皮下注射ではなく筋肉注射になっています。

 高齢者の帯状疱疹では、帯状疱疹後神経痛が問題になります。
 対象者の水痘罹患歴とワクチン接種歴が不明ですが、いずれにしても高い有効率であり、将来普及することが期待されます。

■ 帯状疱疹の新規ワクチンの有効性、70歳以上では9割/NEJM
2016/09/23:ケアネット
 組換え水痘帯状疱疹ウイルス糖蛋白EとAS01Bアジュバントを組み合わせた帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)の70歳以上高齢者に対する予防効果について、帯状疱疹の有効性は約91%、帯状疱疹後神経痛に対する有効性は約89%であることが示された。オーストラリア・シドニー大学のA.L.Cunningham氏らが、約1万4,000例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化比較試験「ZOE-70」の結果で、NEJM誌2016年9月15日号で発表した。すでに、50歳以上を対象にHZ/suの有効性について検証した「ZOE-50」試験では、帯状疱疹リスクがプラセボに比べ97.2%減少したことが示されていた。

◇ ワクチンを2ヵ月間隔で2回投与
 研究グループは18ヵ国で集めた70歳以上の成人1万3,900例を無作為に2群に分け、一方にはHZ/suを、もう一方にはプラセボを、2ヵ月間隔で2回、筋肉投与した。
 すでに実施済みのZOE-50試験と、今回の試験を合わせて、70歳以上への帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛へのワクチンの有効性について検証を行った。

◇ ワクチン有効性、帯状疱疹は91.3%、帯状疱疹後神経痛は88.8%
 ZOE-70被験者の平均年齢は75.6歳だった。
 追跡期間中央値3.7年の期間中、帯状疱疹を発症したのは、プラセボ群223例だったのに対し、HZ/su群は23例と大幅に減少した(発症率はそれぞれ、9.2/1,000人年、0.9/1,000人年)。
 帯状疱疹に対するワクチンの有効率は89.8%(95%信頼区間:84.2~93.7、p<0.001)で、70~79歳では90.0%、80歳以上では89.1%で、高年齢でも有効性は同等だった。
 ZOE-50の70歳以上の被験者とZOE-70の被験者の計1万6,596例についてプール解析をしたところ、帯状疱疹に対するワクチン有効率は91.3%(同:86.8~94.5、p<0.001)、帯状疱疹後神経痛への有効率は88.8%(同:68.7~97.1、p<0.001)だった。
 なお、接種後7日以内の自発的ではない注射部位や全身反応の報告は、HZ/su群(79.0%)のほうがプラセボ群(29.5%)よりも高率だった。一方で、重篤有害事象や免疫が介在していると考えられる疾患、死亡については、両群で同等だった。
<原著論文>
・Cunningham AL, et al. N Engl J Med. 2016;375:1019-1032.

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ワクチン情報お役立ちサイト

2016年09月19日 08時29分50秒 | 予防接種
 ワクチン情報を探して辿り着いたワクチン製造メーカーのサイト。
 自社製品の宣伝に偏ることなく、大いに役に立ちます。
 忘れないようにメモメモ;

Vaccine Digest(ジャパンワクチン)
ビケンワクチンユース(阪大微研)
REUTERS Medical News ワクチン(アステラス)
Monthly ワクチン info(ラジオNIKKEI)
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アレルギー疾患の鍵になるたんぱく質発見〜喘息の特効薬への期待が広がる

2016年09月17日 08時20分48秒 | アレルギー性鼻炎
 大発見!?

■ ぜんそく発症の「鍵」特定 千葉大、治療法確立に期待
2016.9.17:産経新聞
 ぜんそくなどのアレルギー疾患が発症する過程で、鍵となる役割を果たすタンパク質を千葉大の中山俊憲教授(免疫学)らの研究グループが特定し、17日付で米学術雑誌「サイエンス・イムノロジー」(電子版)に発表した。
 中山教授によると、このタンパク質の作用を防ぐ抗体をぜんそくのマウスに投与したところ、症状が治まったことを確認。ヒトへの投与が可能な抗体も大手製薬会社と共同で開発に成功した。
 抗体はぜんそくの治療薬として使われるステロイドに比べ、正常な免疫細胞に与える影響が少なく、重症患者にとって有効な治療法になり得るという。
 ぜんそくは「CD69」という分子を発現した病原性免疫細胞が血管外に出て、気管などに達して炎症を引き起こす。
 中山教授は「10年以内に新たなぜんそく治療法の確立を目指す。他のアレルギー治療にも応用できるだろう」と話す。


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アトピーにはステロイドより熱いキス!?

2016年09月14日 07時38分55秒 | アトピー性皮膚炎
 こんな報告もあるのですねえ・・・コメントは控えます(^^;)。

■ アトピーにはステロイドより熱いキス! 日本人医師、イグ・ノーベル賞を受賞
CIRCL
 アトピー治療には、ステロイドよりもキスのほうが効果があるらしい。「そんな馬鹿な」とおっしゃるかしれないが、れっきとした世界的な賞を受けた研究なのだ。その名も「イグ・ノーベル賞」医学賞。世の中を笑わせ、考えさせた研究や業績に贈られる賞で、2015年9月にアメリカで受賞式が行われた。受賞したのは大阪府寝屋川市でアレルギーの専門クリニックを開いている木俣肇院長。アトピー性皮膚炎の患者に、パートナーと30分間の熱いキスをしてもらったところ、アレルギー反応が弱まったという(※1)。

◇ 情熱的なキス30分 アレルギー反応が大幅減
 研究テーマは、「情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験」。タイトルはいかめしいが、実験はいたってシンプル。次の人たちに協力してもらって行った。
•アトピー性皮膚炎患者30人
•アトピー性鼻炎患者30人
•アトピー患者ではない30人
 被験者たちは個室に入り、それぞれの恋人やパートナーと30分間のキスをした。部屋には映画のラブソングが流されたというから、ムード満点の室内で、さぞや熱いキスが繰り広げられたことだろう。キスの前と後にはアレルギー反応の強さを調べるための皮膚テストや血中成分を測定した。

◇ キスの前後でアレルギー反応が大幅減
 その結果、患者の場合はキスの後、キスをする前と比べてダニやスギ花粉に対するアレルギー反応が大幅に抑えられた。2週間後に再び同じカップルが集まり、今度はキスはせずに30分間の抱擁だけをした。すると、抱き合うだけでは効果は確認されなかった。性行為をした場合は、キスと同様の効果があることも確かめられた(※2)。
 木俣院長はキスや性行為によって、アレルギーの強さの目安であるIgEという免疫グロブリン(抗体)が減り、アレルギー反応が抑えられたと結論付け(※3)、成果を専門誌に発表していた。

◇ キスは効果あるのに、ハグでは効果ないのはなぜ?
 キスや性行為がなぜ、効果があるのだろう。キスによって「愛情ホルモン」と言われるオキシトシが分泌されるせいでは、と見る向きが多いようだ。しかし、キスや性行為には効果があるのに、抱き合うだけでは効果がないことの説明はできない。そこで、キスと性行為にはあって抱擁にはないものを考えると、あるものにたどり着く。「粘膜の触れ合い」だ。正しいかどうかはともかく、ひとつのヒントになるかもしれない。

◇ 花粉症は良くなったけど、舌と唇が…
 木俣院長は米国マサチューセッツ工科大学で行われた受賞記念講演で、この研究を知って試してみたという英国の男性のネット投稿を紹介した。「恋人と30分間キスをしたら、花粉症はすっかり良くなった。しかし、舌と唇が少し、しびれた」とのエピソードだ(※4)。
 確かに、30分間の情熱的なキスを続けては舌も唇もしびれるだろう。でも、効果があったのだから大満足のはずだ。恋人との愛の確認も十分にできたはずだから。もっとも、「治療だから」と30分間ものキスを嫌々続けても、効果があるかどうか定かではない。
 この楽しくて夢のある研究のさらなる進展を待ちたい。特に、熱烈なキスをするパートナーがいない人はどうしたらいいのか。さらには“成人向き”のキスができない子どもたちはどうしたらいいの? この問題の解決もぜひお願いしたい。

<参考・引用>
※1:キスの魔法、アレルギーに効果? 大阪の医師ら、イグ・ノーベル賞
※2:Reduction of allergic skin weal responses by sexual intercourse in allergic patients 
※3:Pub Med
※4:「キスで花粉症治っても、舌しびれた」と反響
http://www.yomiuri.co.jp/science/20150921-OYT1T50064.html?from=ycont_top_txt

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ダニの舌下免疫療法は喘息にも有効

2016年09月14日 07時24分35秒 | アレルギー性鼻炎
 スギ花粉の舌下免疫療法に引き続き、2015年にダニ抗原による舌下免疫療法が日本で認可されました。
 しかし、適応は「ダニによるアレルギー性鼻炎」のみ。
 ダニが原因のアレルギーと言えば喘息が頭に浮かびますが、その適応はないのでガッカリした医療関係者は数知れず。

 下記のような報告が増えて、ぜひ喘息にも適応が通る時代が来て欲しい:

■ チリダニ舌下免疫療法の効果をRCTで確認 〜コントロール不良の成人喘息患者対象
2016.05.11:Medical Tribune
 ドイツ・University of RostockのJ. Christian Virchow氏らは,チリダニアレルギーに関連したコントロール不良の成人喘息患者を対象に舌下免疫療法を行う二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果,舌下免疫療法群ではプラセボ群と比べ,吸入ステロイド(ICS)減量期間中の喘息増悪までの期間が延長したとJAMA(2016; 315: 1715-1725)で報告した。

◇ 喘息増悪リスクに対する影響を検討
 チリダニ(house dust mite)は,アレルゲンであるハウスダストを構成する成分の1つで,喘息患者の約半数がチリダニに感作しており,喘息症状の重症化の原因にもなっている。
 アレルギー疾患の根本治療法としてエビデンスが確立されているのは,舌下免疫療法などの減感作療法のみで,減感作が奏効すれば治療を中止しても長期の便益が期待できるチリダニに対する舌下免疫療法により,アレルギー性鼻炎が改善し,治療薬を減らせることは以前に報告されていたが,喘息増悪リスクに対する影響は不明であった
 今回の研究では,チリダニアレルギーに関連した喘息を有し,ICSやICS配合薬で症状がコントロールできず,アレルギー性鼻炎を合併する成人患者834例(平均年齢33歳,女性48%)を欧州の109施設で登録。それまでの喘息治療からICS(ブデソニド)と気管支拡張薬(サルブタモール)に切り替え,プラセボ群,舌下免疫療法6SQ-HDM群,同12SQ-HDM群にランダム化した。SQ-HDMとは,今回使用されたチリダニ舌下錠を製造・販売するALK社が製品の力価を表すために欧州連合域内で用いている単位である。舌下錠の投与は1日1回,治療期間は登録時期により7〜12カ月であった。
 試験期間後半の3カ月間にまずICSを50%減量し,その後の3カ月間は完全に中止した。主要評価項目は,ICS減量期間中に中等度〜重度の喘息増悪が発現するまでの期間とし,副次評価項目は,喘息症状の悪化,抗原特異的免疫グロブリン(Ig)G4の変化,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化,有害事象とした。

◇ 増悪リスクが約30%相対的に減少
 834例中693例が試験を完遂した。実薬群2群ともプラセボ群と比べ中等度〜重度の喘息増悪リスクが有意に低下した〔6SQ-HDM群:ハザード比(HR)0.72,95%CI 0.52〜0.99,P=0.045,12SQ-HDM群:同0.69,0.50〜0.96,P=0.03,図〕。プラセボ群と比べた実薬群2群における初回増悪の絶対リスク差は,6SQ-HDM群が0.09(95%CI 0.01〜0.15),12SQ-HDM群が0.10(同0.02〜0.16)であった。実薬群2群の間で絶対リスクに有意差は認められなかった。(JAMA 2016; 315: 1715-1725)
 喘息症状の悪化を伴う増悪のリスクは,プラセボ群と比べて6SQ-HDM群でHR 0.72(95%CI 0.49〜1.02,P=0.11)と有意差には至らなかったが,12SQ-HDM群ではHR 0.64(同0.42〜0.96,P=0.03)と有意に低下した。抗原特異的IgG4は,実薬群2群ではプラセボ群と比べて有意に上昇した。一方,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化は,いずれもプラセボ群と実薬群2群で有意差は認められなかった。
 全身アレルギー反応の報告はなく,最も多い有害事象は軽度〜中等度の口内掻痒(6SQ-HDM群13%,12SQ-HDM群20%,プラセボ群3%)で,その他に口内浮腫,咽喉の炎症が見られた。

◇ 減感作療法に新たな可能性
 ICSでコントロール不良のチリダニアレルギーに関連した成人喘息患者に対して,舌下免疫療法が喘息増悪リスクの低下に有用であることをRCTで示したのは今回の研究が初めてで,Virchow氏らは「長期の有効性と安全性を評価するためにさらなる研究が必要である」と述べている。
 米・Johns Hopkins UniversityのRobert A. Wood氏は,同誌の付随論評(2016; 315: 1711-1712)で今回の試験について「重要な患者集団に焦点を当て,極めて妥当な評価項目を用いており,この分野における貴重な貢献である」と評価。減感作療法には依然改良の余地が多くあるため,こうした研究を継続し,個々の患者ごとに最適化された減感作療法を確立していく必要があると指摘している。

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アセトアミノフェンはイブプロフェンと同じくらい小児喘息患者に安全?

2016年09月14日 06時35分09秒 | 気管支喘息
 先日「アセトアミノフェンは喘息患者にとって危険なく解熱剤ではない」という報告がメディアに取り上げられました。
 内容を読んでみると、「イブプロフェンとの比較検討で非劣性が証明された」とあります。
 医学論文独特のわかりにくい表現ですが、要は「イブプロフェン同様安全である」ということ。

 え?
 イブプロフェンが安全という前提なの?

 と感じた日本の喘息専門医は多いのではないでしょうか。

 成人喘息患者ではその1割がアスピリン喘息(≒解熱鎮痛剤喘息)で、解熱鎮痛剤服用で重い喘息発作が引き起こされます。
 解熱鎮痛剤の中でも、特に「NSAIDs」(non-steroidal antiinflammatoty drugs, 非ステロイド性抗炎症薬)に分類される薬物が危険です。
 その代表がアスピリンというわけです。
※ 小児ではアスピリン喘息は希です(0ではありません)。

 アセトアミノフェンはNSAIDsに分類されない珍しい解熱剤で、喘息患者にも比較的安全とされてきました。
 ただし、中には発作に繋がる喘息患者さんもいますので要注意ではあります。

 一方、イブプロフェンはNSAIDsに分類されますので、日本の常識では「喘息患者には禁忌(=使っていけない)」とされてきました。
 信頼できる情報として宮川先生の下記HPをリンク;

□ 「アスピリン喘息」(宮川医院HP) 

 すると、下記論文のストーリーに?がついてしまします。
 どうなっているんだろう・・・私が知らないだけ?

■ 「アセトアミノフェンで喘息増悪」を検証 〜小児対象RCTでイブプロフェンとリスク差なし
2016.08.18:Medical Tribune
 アセトアミノフェンの使用が喘息の新規発症リスク、あるいは喘息増悪リスクに関係するとの観察研究などが報告されて以降、同薬と喘息との関係を巡り議論が続いている。特に喘息の小児に対しては、同薬は使用すべきでないと考える医師も多いという。しかし、米・Boston Children's HospitalのWilliam J. Sheehan氏ら米国立衛生研究所(NIH)/米国立心肺血液研究所(NHLBI) AsthmaNetの研究グループが軽症持続型の喘息の小児を対象に実施したランダム化比較試験(RCT)では、イブプロフェンと比べたアセトアミノフェンによる増悪リスクの上昇は示されなかった。詳細はN Engl J Med(2016; 375: 619-630)に掲載されている。

◇ レスキュー薬使用や予定外受診の頻度にも差なし
 研究グループによると、小児や成人を対象とした観察研究でアセトアミノフェンの使用が喘息症状あるいは肺機能の低下と関連することが示されている他、小児の発熱に対するアセトアミノフェンとイブプロフェンを比較したRCTの事後解析では、予定外受診のリスクがイブプロフェンに比べアセトアミノフェンで高かったとの結果が得られているという。これらが報告されて以降、特に喘息の小児に対しては「安全性を支持するデータが得られるまではアセトアミノフェンは使用すべきでない」とする意見が聞かれるようになった。ただ、観察研究や事後解析ではバイアスが生じやすいため、適切にデザインされたRCTの実施が求められていた。

 今回、研究グループが実施したAVICA※試験の対象は、米国内の18施設で登録された12~59カ月の軽症持続型喘息の小児300例。2~8週間のrun-in期間の後、解熱あるいは疼痛の緩和の必要性に応じてアセトアミノフェンを投与する群とイブプロフェンを投与する群にランダムに割り付けた。試験期間は48週間、主要評価項目はステロイド薬の全身投与を必要とする喘息の増悪の頻度とした。
 その結果、同期間にアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを使用した回数は平均5.5回〔四分位範囲(IQR)1.0~15.0〕で、両群間に有意差はなかった。喘息増悪の頻度も両群間に有意差はなく、1人当たりの増悪の頻度(平均)はアセトアミノフェン群で0.81回、イブプロフェン群で0.87回だった〔イブプロフェン群と比べたアセトアミノフェン群における増悪頻度の比(RR)は0.94、95%CI 0.69~1.28、P=0.67〕。
 試験期間中の喘息増悪の頻度が1回以上の小児の割合はアセトアミノフェン群で49%、イブプロフェン群で47%、2回以上の割合はそれぞれ21%、24%だった。また、喘息コントロールの日数やレスキュー薬(サルブタモール吸入薬)の使用頻度、喘息症状による予定外受診の回数、有害事象の発生頻度についても両群間に有意差はなかった。

◇ 「安心感与える成績」
 この試験結果を受け、米・Harvard Medical SchoolのAugusto A. Litonjua氏は、同誌の付随論評(2016; 375: 684-685)で、「(アセトアミノフェンの使用と喘息との関係を巡る問題の)一部については解答が得られた」とした上で、「必要に応じて使用する限り、イブプロフェンと比べたアセトアミノフェンによる喘息増悪リスクの上昇は認めらない」とする今回の成績は、喘息の小児の介護者に安心感を与えるのではないかとの見方を示している。
 ただ、今回は健康な小児に対するアセトアミノフェンの使用で喘息発症リスクが高まるのかどうかについては検討されておらず、「この問題についてはあらためて検討が必要」と指摘している。
※The Acetaminophen versus Ibuprofen in Children with Asthma


 調べてみると、「NSAIDs解熱鎮痛薬不耐症・過敏症(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)」に「従来、安全とされていたアセトアミノフェンは、日本人では一回500mg以上で肺機能が低下しやすく、もし使用するなら、一回300mg以下にしたほうが良い。」という文言を見つけました。

 そうなんだ・・・。
 医学常識は変わるため、アップデートが必要ですね。
 この記事を受けた「編集こぼれ話」(同じく Medical Tribune)を読んで、さらに理解できました。

□ アセトアミノフェンと喘息の関係、疑い晴れる?
編集こぼれ話 | 2016.09.07
 100年以上の歴史を誇り、小児から高齢者まで広く使用されているアセトアミノフェン。他の解熱鎮静薬に比べると特に安全面で評価の高い薬剤ですが、2000年、英国の症例対照研究で同薬の頻回使用が健康な成人の喘息発症リスクや喘息患者の増悪リスクに関係していたと報告されたのをきっかけに、同薬と喘息の関係について疑いが浮上。その後、複数の観察研究で妊娠中に同薬を使用した母親から生まれた児を含む小児や成人で同様の関係が確認され、特に喘息の小児には同薬の使用は控えるべきとする意見も聞かれるようになりました。
 これに対し、喘息の小児は健康な小児に比べて呼吸器感染症が重症化しやすく、解熱鎮痛薬を使用する機会が多いなどのバイアスがあるのではないかといった指摘があり、ランダム化比較試験(RCT)での検証が求められていました。そして先日、記事でご紹介したように、喘息の小児を対象としたRCTのAVICA試験で、ようやくその関係性が明らかになりました。結果はシロ。この報告に安堵された先生も多いのではないでしょうか。
 同試験では倫理的な問題からプラセボではなく、アセトアミノフェンと同様に小児の解熱鎮痛薬として使用されることの多いイブプロフェンを対照としています。そのため、両薬が同程度に喘息増悪リスクを高めた可能性は完全には否定できません。しかし、同試験に関する付随論評では、両群で観察された増悪の頻度は同年齢層での頻度として特に高いわけではないことが示唆されています。
 ただ、この試験でアセトアミノフェンが喘息リスクを高めるかもしれないという疑いが完全に払拭されたとは言えなさそうです。というのは、同試験の対象は12~59カ月の軽症の喘息患児。5歳以上、あるいは重症の患児でも今回と同じ結果が得られるかどうかは分かりません。また、健康な小児への使用で喘息の新規発症リスクを高めるのか、成人に対して使用した場合のリスクなどについても、今後のRCTで検証が進むことに期待します。(岬りり子)


 なるほど、勉強になりました。
 こんなブログ(↓)も見つけました。この小児科Dr.、よく調べて英語論文も読まれていて・・・尊敬します。

□ 「解熱鎮痛薬アセトアミノフェンと気管支喘息との関係
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