徐々に市民権を得つつある糖質(炭水化物)制限。
ふとしたきっかけから、私は昨年秋に“糖質制限”をはじめました。
糖質制限とは、砂糖などの糖類のみならず、分解すると糖になる炭水化物全体を制限する食事を指します。
つまり、コメ、コムギ、イモ類なども除去するので「主食ナシ」の食生活になります。
当初は何となく物足りない感がありましたが、最近慣れてきました。
まず栄養学のまめ知識から。
骨や肉を作るのはタンパク質と脂肪であり、炭水化物はエネルギーを作りますが、体を作ることはできません。
そして、糖尿病で問題になる血糖値を上げるのは糖質/炭水化物だけなんです。
それが長期にわたるとインスリンが枯渇して糖尿病のリスクになります。
これが日本人に2型糖尿病が多い理由です。
また、過剰の炭水化物は脂肪として蓄積され、肥満のリスクになります。
このことを知ったとき、衝撃を受けました。
だって、
肥満の原因になる脂肪は、脂質ではなく炭水化物が原因、ということですよ!
実際に、肥満もニキビも糖質/炭水化物を制限すると改善します。
「主食ナシなんて、そんな不健康な・・・」という声が聞こえてきそうですが、要は弥生時代以前の食生活に戻っただけ。
ご存じのように稲作以前は狩猟採集時代でした。
獣の肉と、木の実などを主食とする時代が700万年といわれる人類の歴史のほとんどを占めています。
農耕が根づいて炭水化物を主食とするようになったのは、直近の1万年だけなんです。
私は眼の色を変えて完璧を目指して炭水化物を除去しているわけではなく、単に主食としてご飯/パンを食べない食生活にしているレベル。
昨秋にせっかく高校時代の同級生が作ったコメをいただいたのですが、数回しか食べずに終わってます(^^;)。
結論からいうと・・・“いい感じ”、です。
体重はあまり変わらないものの、体力・スタミナの向上を実感。
歩いていて息が切れるまでの時間が長くなりました。
まあ、最低限の筋トレも併用していますが。
それから、空腹感が乏しくなることを経験しています。
以前は夕方になるとお腹が空いてつまみ食いをしながらしのいだのですが、糖質制限をはじめてから夜7時過ぎまで空腹を感じないまま仕事を続けられるので驚きました。
これは、血糖値の上下が小さくなるためと説明されています。
炭水化物は血糖の振れ幅が大きいので、食後に眠くなり(高血糖状態)、食前に空腹感が募り(低血糖状態)ます。
もう一つ気づいたこと。
日本のおかずの味付けはとにかく“しょっぱい”。
これはご飯を食べるために味を濃くする必要があるからでしょう。
つまり
日本人は、コメという炭水化物を主食にしたために糖尿病を増やしただけではなく、塩分摂取も増やして高血圧も増やしたという構図が浮かんできます。
我が家のおかずは、以前と比べて随分薄味になりました(^^;)。
学会レベルではまだ賛否両論ですが、日本発の信頼できる報告が出ましたので紹介します;
■ 糖質制限食と糖尿病リスク:日本初の前向き研究
(ケアネット:2015/02/27)
低炭水化物食(糖質制限食)のスコアと2型糖尿病リスクとの関連のエビデンスは少なく、一貫していない。また、炭水化物を多量に摂取するアジア人において検討した前向き研究はない。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、低炭水化物スコアと2型糖尿病発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、日本人女性における低炭水化物食と2型糖尿病リスク低下との関連が認められ、著者らはこの関連が白米の多量摂取に一部起因する可能性を指摘した。PLoS One誌2015年2月19日号に掲載。
登録されたのは、JPHC研究の2次調査参加者のうち、糖尿病の既往がない45~75歳の男性2万7,799人と女性3万6,875人。食物摂取量は食物摂取頻度調査票 (FFQ)を用いて確認し、すべての炭水化物、タンパク質、脂質の摂取量から低炭水化物スコアを計算した(スコアが高いほどタンパク質と脂質の摂取量が多く、炭水化物の摂取量が少ないことを示す)。また、高動物性タンパク質/脂質、および高植物性タンパク質/脂質における低炭水化物スコアもそれぞれ計算した。5年間に申告し医師に診断された2型糖尿病のオッズ比を、ロジスティック回帰を用いて推定した。
主な結果は以下のとおり。
・5年間で1,191人が新たに2型糖尿病を申告した。
・低炭水化物・高総タンパク質/脂質スコアは、女性において2型糖尿病リスクの低下と有意に関連していた(傾向のp<0.001)。
・スコアが最も高い五分位における2型糖尿病の多変量調整オッズ比は、最も低い五分位と比較して0.63(95%CI:0.46~0.84)であった。食事での血糖負荷による追加調整で、関連性は減衰した(オッズ比:0.75、95%CI:0.45~1.25)。
・女性では、低炭水化物・高動物性タンパク質/脂質スコアが高いほど、2型糖尿病リスクは低かった。一方、低炭水化物・高植物性タンパク質/脂質スコアは男女とも関連が認められなかった。
<原著論文>
・Nanri A, et al. PLoS One. 2015 Feb 19;10:e0118377.
うんうん、これで食生活の悩みはほぼ解決、と思いきや、ではタンパク質を取らないベジタリアンの食事はどうなの? という疑問が沸いてきます。
糖質制限を主張している先生方の意見を聞いてみたいところです。
ベジタリ藩は虚血性心疾患と癌の発症リスクを減らす(でも死亡リスクはあまり変わらない?)という報告を紹介します;
■ ベジタリアン/ヴィーガンダイエットって実際どうなの?
(ケアネット:2016/03/21)
ベジタリアン1)ダイエットは虚血性心疾患とすべてのがんの発症および死亡リスクを、また、ヴィーガン(完全菜食主義)2)ダイエットはすべてのがんの発症リスクを有意に低下させることが、イタリア・フィレンツェ大学のMonica Dinu氏らによるメタ解析で明らかになった。Critical reviews in food science and nutrition誌オンライン版 2016年2月6日号の報告。
ベジタリアンおよびヴィーガンダイエットの有益な効果は、すでに報告されている。
本研究では、ベジタリアン/ヴィーガンダイエットと、慢性疾患のリスク因子、すべての原因による死亡、心血管疾患の発症および死亡、すべてのがん・特定のがんの発症および死亡リスク(大腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん)との関連を明確にする目的でメタ解析を行った。
文献データベースは、MEDLINE、EMBASE、Scopus、The Cochrane Library、Google Scholarを用い、包括的な検索を行った。
主な結果は以下のとおり。
・横断的研究86件と前向きコホート研究10件を解析対象とした。
<横断的研究の解析結果>
・ベジタリアン/ヴィーガン群は雑食群よりも、BMI・総コレステロール・LDLコレステロール・血糖値が有意に低下した。
<前向きコホート研究の解析結果>
・ベジタリアン群の虚血性心疾患の発症および/または死亡リスク(RR 0.75、95%CI:0.68~0.82)とすべてのがん発症リスク(RR 0.92、95%CI:0.87~0.98)は、雑食群よりも有意に低下したが、心血管疾患・脳血管疾患の発症および死亡リスク、すべての原因による死亡リスク、がんによる死亡リスクに有意な低下はみられなかった。また、特定のがんの発症および死亡リスクとの間には有意な関連は認められなかった。
・ヴィーガンのみを対象とした解析では、研究数が限られているものの、すべてのがんの発症リスクが雑食群よりも有意に低下した(RR 0.85、95%CI:0.75~0.95)。
・以上の結果より、ベジタリアンダイエットは、虚血性心疾患の発症および/または死亡リスクを25%低下、すべてのがん発症リスクを8%低下させ、ヴィーガンダイエットは、すべてのがんの発症リスクを15%低下させることが示された。
1)ベジタリアン:菜食主義者。野菜中心の食生活をする。
2)ヴィーガン:完全菜食主義者。肉、魚、卵、乳製品、ハチミツを一切摂取しない。
<原著論文>
・Dinu M, et al. Crit Rev Food Sci Nutr. 2016 Feb 6:0.