HPVワクチン情報。
世界の状況を知ってください(下線は私が引きました)。
■ 子宮頸がん一次予防に初の国際ガイドライン〜米国臨床腫瘍学会
(2017.04.17:Medical Tribune)
米国臨床腫瘍学会(ASCO)は3月17日、子宮頸がんの一次予防(主にワクチン接種による発症予防)に関する初の国際ガイドライン(GL)をJ Glob Oncol(2017年3月17日オンライン版)に発表した。同GLでは「ターゲットとなる集団において、子宮頸がんの原因となる特定の型のヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防するには、HPVワクチンの接種が最適な戦略であり、それに代わる予防戦略はない」として、地域で利用できる医療資源のレベルに応じたHPVワクチン接種の対象者や回数、間隔などの推奨項目が提示されている。なお、同GLの作成作業には米国の他、世界各国の専門家19人が参加。日本からは、自治医科大学さいたま医療センター産婦人科教授の今野良氏がASCOパネルメンバーとして参画した。医療資源レベルは高いが、HPVワクチン接種の積極的な勧奨が中止された状況にあるわが国で、同GLをどう捉えるべきか―。同氏の解説記事はこちら。
◇ 医療資源レベルを4段階に分類
今回のGLは、ASCOが昨年(2016年)発表した浸潤性子宮頸がんGL(関連記事)と、検診などによって早期に発見、治療するための推奨を示した子宮頸がん二次予防GLに続く、子宮頸がんの一次予防や診療に関する国際GLの1つとして策定された。
これらのGLに共通するのは、国や地域の医療資源のレベルを
① basic(最小限)
② limited(やや不足)
③ enhanced (充実)
④ maximal(最も充実)
の4段階に分類し、資源レベルに応じた推奨が示されている点だ。これは、利用できる医療資源の質や量によって子宮頸がんの発症率や死亡率が大幅に異なることに対応するため。子宮頸がん患者の85%、子宮頸がんによる死亡者の87%をアフリカや南米などの発展途上国が占めるとの報告もあり、ASCOは子宮頸がんを優先してGLを作成すべき疾患と位置付けていた。
GLの対象は、世界各地の保健当局やがん対策の関係者、政策立案者、産婦人科医、小児科医および他のプライマリケア医など。GLの作成には米国の他、アジアやオセアニア、欧州、アフリカ、中南米など世界各国の医師および研究者が参加した。
◇ 医療資源レベルにかかわらず9~14歳女児への2回接種を推奨
HPVワクチン接種による子宮頸がんの一次予防を主眼に置いた今回のGLでは、
①どのような集団に対して定期接種が勧められるか
②推奨される接種回数および間隔
③接種を優先すべき年齢層以外にもHPV感染を予防するためのキャッチアップ接種を行うべきか
④HPV感染の拡大阻止を目的とした男児へのワクチン接種は必要か
⑤特定の集団に対して勧められるワクチン接種戦略は
―の5つのクリニカルクエスチョン(CQ)を設定。1966~2015年に発表された論文(システマチックレビューも含む)や既存の関連GLのレビューに基づき、これらのCQについて推奨項目が示されている。その概要は以下の通り。
・利用できる医療資源の質や量にかかわらず、あらゆる環境において、9~14歳の女児に対してHPVワクチンを2回接種する。1回目から2回目までの間隔は6カ月以上開けるべきだが、12~15カ月の間隔を置いてもよい
・HIV陽性の女児には3回接種すべき
・医療資源レベルが「最も充実」または「充実」に分類される国や地域では、15歳を迎える前に1回目のみを接種した15歳以上の女児の場合は、26歳になるまでに2回目を接種してもよい。また、15歳を迎える前に1回も接種していない女児に対しては、26歳になるまでに3回接種すべき
・医療資源レベルが「やや不足)」または「最小限」に分類される国や地域では、優先すべき年齢層(9~14歳)の女児にワクチン接種を行っても医療資源に余裕がある場合は、1回しか接種していない15歳以上の女児に対して26歳までに追加接種を行ってもよい
・子宮頸がん予防を目的とした男児へのHPVワクチン接種について:
①医療資源レベルが「最も充実」または「充実」に分類される国や地域では、接種を優先すべき集団(9~14歳の女児)におけるワクチン接種率が50%に満たない場合、男児へのワクチン接種を考慮してもよい。一方、優先すべき集団での接種率が50%以上の場合には、男児にも接種をすべきか否かを支持するデータは不十分である
②医療資源レベルが「やや不足」または「最小限」の国や地域では、優先すべき集団における接種率が50%未満の場合、男児への接種を考慮しても良いが、優先すべき集団での接種率が50%以上の場合には男児への接種は推奨されない
今回のGLは子宮頸がん予防に関するものであるため、HPVに起因した他のがんや疾患については文献レビューが行われていないが、同GLでは「男児にHPVワクチンを接種することで、男性のHPV関連がんなどの予防という直接的なベネフィットが得られる可能性はある」と説明。ただ、接種率の程度によっては女性の子宮頸がん予防の効率を悪化させる可能性もあり、費用効果の面では女児への接種率を向上させた方が男児への接種を導入するよりも優れていることが明らかになっていることを付記している。なお、ASCOパネルメンバーの今野氏によると、男児へのHPVワクチン接種に関しては「子宮頸がん以外のHPV関連がんやコンジローマなどの良性疾患を含めた費用効果ならびにジェンダーニュートラルの教育効果を考慮すると、医療資源がある国では推奨される」との見解で一致したという。
この他、同GLではHPVワクチンの接種率を向上させる上で、プライマリケア医や小児科医が重要な役割を果たしうることを強調。「小児患者やその親と長年にわたって関係を持つプライマリケア医や小児科医に対し、HPVワクチンの有効性や安全性について教育することによって、子宮頸がん予防対策で最大のリターンが得られる」と記されている。
今回のGLを作成した専門家委員会の委員長であるSilvina Arrossi氏は、プレスリリースで「HPVワクチンが登場してから10年以上が経つが、医療資源レベルが高い米国をはじめワクチン接種率が不十分な地域は依然として多い」と指摘。「ASCOは引き続きHPVワクチン接種プログラムの導入を推進し、子宮頸がんによって命を落とす女性を減らす取り組みに注力していく」としている。
世界の状況を知ってください(下線は私が引きました)。
■ 子宮頸がん一次予防に初の国際ガイドライン〜米国臨床腫瘍学会
(2017.04.17:Medical Tribune)
米国臨床腫瘍学会(ASCO)は3月17日、子宮頸がんの一次予防(主にワクチン接種による発症予防)に関する初の国際ガイドライン(GL)をJ Glob Oncol(2017年3月17日オンライン版)に発表した。同GLでは「ターゲットとなる集団において、子宮頸がんの原因となる特定の型のヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防するには、HPVワクチンの接種が最適な戦略であり、それに代わる予防戦略はない」として、地域で利用できる医療資源のレベルに応じたHPVワクチン接種の対象者や回数、間隔などの推奨項目が提示されている。なお、同GLの作成作業には米国の他、世界各国の専門家19人が参加。日本からは、自治医科大学さいたま医療センター産婦人科教授の今野良氏がASCOパネルメンバーとして参画した。医療資源レベルは高いが、HPVワクチン接種の積極的な勧奨が中止された状況にあるわが国で、同GLをどう捉えるべきか―。同氏の解説記事はこちら。
◇ 医療資源レベルを4段階に分類
今回のGLは、ASCOが昨年(2016年)発表した浸潤性子宮頸がんGL(関連記事)と、検診などによって早期に発見、治療するための推奨を示した子宮頸がん二次予防GLに続く、子宮頸がんの一次予防や診療に関する国際GLの1つとして策定された。
これらのGLに共通するのは、国や地域の医療資源のレベルを
① basic(最小限)
② limited(やや不足)
③ enhanced (充実)
④ maximal(最も充実)
の4段階に分類し、資源レベルに応じた推奨が示されている点だ。これは、利用できる医療資源の質や量によって子宮頸がんの発症率や死亡率が大幅に異なることに対応するため。子宮頸がん患者の85%、子宮頸がんによる死亡者の87%をアフリカや南米などの発展途上国が占めるとの報告もあり、ASCOは子宮頸がんを優先してGLを作成すべき疾患と位置付けていた。
GLの対象は、世界各地の保健当局やがん対策の関係者、政策立案者、産婦人科医、小児科医および他のプライマリケア医など。GLの作成には米国の他、アジアやオセアニア、欧州、アフリカ、中南米など世界各国の医師および研究者が参加した。
◇ 医療資源レベルにかかわらず9~14歳女児への2回接種を推奨
HPVワクチン接種による子宮頸がんの一次予防を主眼に置いた今回のGLでは、
①どのような集団に対して定期接種が勧められるか
②推奨される接種回数および間隔
③接種を優先すべき年齢層以外にもHPV感染を予防するためのキャッチアップ接種を行うべきか
④HPV感染の拡大阻止を目的とした男児へのワクチン接種は必要か
⑤特定の集団に対して勧められるワクチン接種戦略は
―の5つのクリニカルクエスチョン(CQ)を設定。1966~2015年に発表された論文(システマチックレビューも含む)や既存の関連GLのレビューに基づき、これらのCQについて推奨項目が示されている。その概要は以下の通り。
・利用できる医療資源の質や量にかかわらず、あらゆる環境において、9~14歳の女児に対してHPVワクチンを2回接種する。1回目から2回目までの間隔は6カ月以上開けるべきだが、12~15カ月の間隔を置いてもよい
・HIV陽性の女児には3回接種すべき
・医療資源レベルが「最も充実」または「充実」に分類される国や地域では、15歳を迎える前に1回目のみを接種した15歳以上の女児の場合は、26歳になるまでに2回目を接種してもよい。また、15歳を迎える前に1回も接種していない女児に対しては、26歳になるまでに3回接種すべき
・医療資源レベルが「やや不足)」または「最小限」に分類される国や地域では、優先すべき年齢層(9~14歳)の女児にワクチン接種を行っても医療資源に余裕がある場合は、1回しか接種していない15歳以上の女児に対して26歳までに追加接種を行ってもよい
・子宮頸がん予防を目的とした男児へのHPVワクチン接種について:
①医療資源レベルが「最も充実」または「充実」に分類される国や地域では、接種を優先すべき集団(9~14歳の女児)におけるワクチン接種率が50%に満たない場合、男児へのワクチン接種を考慮してもよい。一方、優先すべき集団での接種率が50%以上の場合には、男児にも接種をすべきか否かを支持するデータは不十分である
②医療資源レベルが「やや不足」または「最小限」の国や地域では、優先すべき集団における接種率が50%未満の場合、男児への接種を考慮しても良いが、優先すべき集団での接種率が50%以上の場合には男児への接種は推奨されない
今回のGLは子宮頸がん予防に関するものであるため、HPVに起因した他のがんや疾患については文献レビューが行われていないが、同GLでは「男児にHPVワクチンを接種することで、男性のHPV関連がんなどの予防という直接的なベネフィットが得られる可能性はある」と説明。ただ、接種率の程度によっては女性の子宮頸がん予防の効率を悪化させる可能性もあり、費用効果の面では女児への接種率を向上させた方が男児への接種を導入するよりも優れていることが明らかになっていることを付記している。なお、ASCOパネルメンバーの今野氏によると、男児へのHPVワクチン接種に関しては「子宮頸がん以外のHPV関連がんやコンジローマなどの良性疾患を含めた費用効果ならびにジェンダーニュートラルの教育効果を考慮すると、医療資源がある国では推奨される」との見解で一致したという。
この他、同GLではHPVワクチンの接種率を向上させる上で、プライマリケア医や小児科医が重要な役割を果たしうることを強調。「小児患者やその親と長年にわたって関係を持つプライマリケア医や小児科医に対し、HPVワクチンの有効性や安全性について教育することによって、子宮頸がん予防対策で最大のリターンが得られる」と記されている。
今回のGLを作成した専門家委員会の委員長であるSilvina Arrossi氏は、プレスリリースで「HPVワクチンが登場してから10年以上が経つが、医療資源レベルが高い米国をはじめワクチン接種率が不十分な地域は依然として多い」と指摘。「ASCOは引き続きHPVワクチン接種プログラムの導入を推進し、子宮頸がんによって命を落とす女性を減らす取り組みに注力していく」としている。