小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「正しく知ろう 子どものアトピー性皮膚炎 」by 赤澤晃

2011年01月21日 07時28分07秒 | アトピー性皮膚炎
 著者は国立成育医療センター(旧国立小児病院)の先生で、アレルギー学会でも有名人での小児科の御意見番です。
 彼は研究中心の大学の先生ではありません。また、私のように研究から離れて患者さんの数をこなす開業医でもありません。
 研究・教育・医療現場の全てに立ち、手探りしながらよりよい医療を求めている姿勢に敬意を表します。

 何回も彼の講演を聞いたことがありますが、理知的かつわかりやすい説明にはいつも感心させられます。その先生が患者さん向けの啓蒙書を出版したのですから、これは読まずにはいられません。待合室用にも複数購入しました。

 内容は、アトピー性皮膚炎について、基本的な知識と患者さん目線に立った実際の生活指導が丁寧に記されています。
 日々私も診療で患者さんに説明していますが「こんな風にするとわかりやすい」というお手本を見せてもらっているようで、見習うところ多し。
 イラストも秀逸です。言葉では今ひとつ伝えにくいところをうまくサポートしてますね。

 総じて、スキンケアとステロイド軟膏療法を徹底的に行えばアトピー性皮膚炎は克服できる、という考え方です。ガイドラインに沿った王道の治療法。
 たしかに、ここまで徹底的にできれば、可能かもしれないな、と感じ入りましたが・・・なかなかできないんですよねえ。それが私に漢方薬を導入させた理由です。多少スキンケアに手抜きしても大丈夫、という状態を作ってくれるのです。

 
以下、気になったところをメモ書きしておきます;

■ 保湿クリームの塗るタイミングは「お風呂から出て乾く前!」
 昔のテキストには「10分以内」と書かれていましたが、最近「5分以内」となり、なんとこの本では「3分以内」に短縮されています。
 体を押し拭きしたら、脱衣所に用意してある保湿剤をすぐに塗るしかありません。

■ ステロイド軟膏の使用法では、「やめ時がポイント」。
 その通り!いつやめるべきか指導が必要ですが、結構抜け落ちてしまいがちです。
 私は「痒みから解放されるまで」と説明しています。

■ 「入浴は1日2回が原則、夏はできれば3回」とあります。
 朝の入浴・・・重症者以外はなかなか無理かなあ。患者層の違いでしょうか。

■ 夏の悪化因子は「汗と紫外線」。
 私は「紫外線」をノーマークでした。反省。

■ いい医者の選び方は「親切なだけではダメ、適切な治療をしているかを見抜く必要あり」
 昔だったらよく話を聞いて丁寧に指導してくれるのがよい医師でした。しかし、アトピービジネスや怪しい治療法をしている医師もゼロではない時代です。患者さん自身が賢くなる必要があります。
 あなたが受けている治療は、ガイドラインに沿っていますか?
http://www.jaanet.org/pdf/allergy_skin02.pdf

■ 血液検査だけでは食物アレルギーは診断できません。
 現在1歳前後の子どもを調べると、3-4割に卵白のラスト(特異的IgE)が陽性です。しかし、みんなが発症するわけではなく、発症するのはほんの数%のみ。

■ スキンケア・チェックリスト。
 湿疹のコントロールがうまくいかないときは、スキンケアがうまくできているかチェック・リストを用いて評価・・・いいですねえ。私の診療にも取り入れてみようと思います。
コメント (2)
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