小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

カナダの性教育

2024年07月01日 08時37分05秒 | いのち
「日本の性教育は遅れている」と指摘されて久しいですが、
海外の一例として、カナダの性教育を取りあげた記事が目に留まりましたので紹介します。

この記事の中で「男の性欲」「女の性欲」という言葉が何度も出てきます。
性欲…性交渉による快感を得たいという欲望、と思われますが、
実は動物には「性交渉による快感」は存在しないことになっているのです。
知ってました?

チンパンジーは繁殖期になると、
メスのおしり(外性器)が赤く目立つようになります。
「性交、OKですよ〜」
というサインですね。
それを見たオス(ボスざる?)が近づいてきます。
行為に及ぶかと思いきや、なんとメスの外性器に指を入れるのです。
そこの状態(温度?湿度?)を確認し、
「まさに今この時」
と判断して初めて性交に及ぶとのこと。
「まだ準備不足」
と判断すれば性交に至りません。

つまり、動物にとっては純粋に「性交=繁殖行為」であり、
そこに快楽や快感は存在しません。

ライオンがハーレムをつくり、
一頭のオスが複数のメスに種付けするというシチュエーションがあります。
男性にとっては憧れの風景…と思いきや、
なんとオスは3日間に200回も性交を行うらしいんです。
…人のオスにできる?〜死んでしまう。

ではなぜ、人の性交渉には快感が与えられたのでしょう。
これがために、悩んだり、犯罪が起きたりしています。

先日NHKのドキュメンタリーで「性」を科学的に扱っていました。

・ヒトは2足歩行をはじめたことで骨盤が小さくなり、子どもを未熟な状態で産まざるを得なくなった。
・そのため子育てに手がかかり、女性だけでは無理なので、“絆”を発明し、“快感”が与えられ、男性とカップルで子育てするようになった。
・この“絆”こそが“愛”の原型である。

というような内容でした。
前置きが長くなりましたが、「カナダの性教育」の記事に話を戻します。

<ポイント>
・カナダの女子中学校の性教育では2年生でまず「自分が初めてセックスをするとしたらどんなシチュエーションか」を考える授業をする。3年生ではコンドームの使い方を実際に模型に着用する授業や、マスターベーションについての説明もある。
・セックスはあくまでも、恋愛などの相手との関係性の流れの中にあり、コミュニケーションの一貫である、ということを先に教わる。
・日本の性教育では性感染症や妊娠の危険や避妊については教えてくれるけど、じゃあそもそもその原因となるセックスというものが一体どういう場面で始まってしまうのか、それってどんな状況かについて教えないし、考える機会もない。

記事はこちら;

■ 中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる
…日本と全然違うカナダの性教育最初に「相手とのコミュニケーションの一環である」ことを学ぶ
田房 永子:漫画家
2022/11/11:PRESIDENT Online)より一部抜粋;

 海外の学校ではどのような性教育が行われているのでしょうか。漫画家の田房永子さんは「ある女性がカナダの中学校の性教育で、『初めてのセックスはどんなシチュエーションかを考えてくる』という宿題を出されたという話に衝撃を受けた」といいます――。

▶ 「男性の性欲は女性のそれとは比べものにならない」のか
 日本の小中高では、第二次性徴として女性には「生理」があり男性には「射精」がある、と性教育でならうのが一般的だと思います。
 生理は生殖にまつわることで、射精は生殖にまつわりながら性欲と切り離せない機能。それを男女の“対”として教わることで、暗に「女性には性欲がない、もしくは男性に比べてわざわざ教えるほどでもないくらい弱い」かのような印象が刷り込まれているように思います。
 それにより男女がお互いの無理解は深まり、溝を複雑化させているんじゃないか。私はそう思ってきました。
 男性のように射精とセットになっていないだけで、生理と別のところにちゃんと性欲は存在しているし、「男性のほうが女性より性欲強い」とかそんな簡単じゃなくないか?
 状況とか体調とかによってぜんぜん変わるし、個人差も相当ありますよね?
 どうも教科書で習ってきたことと、実際の出来事のつじつまが合わなすぎるんですよね。どう思います?
・・・
 私にとってはその「男の性欲は女のそれとは比べ物になりませんよ」というコメントで会話が終了してしまうことこそが「生理と射精セットにして教えることによって女性の性欲ないことになってる問題」そのものなわけです。

▶ カナダの性教育に受けた衝撃
 そういうようなことを先日、トークイベント(B&Bで行われた『どうして男はそうなんだろうか会議』(筑摩書房)刊行記念)で話しました。
 その会場にお客さんとして来ていた、ちゃんまりさんという女性が話してくれたカナダの性教育に衝撃を受けました。
 日本の性教育ではまず、男女の体の違いや第二次性徴、精子と卵子と精子の受精についてを習います。だけど、ちゃんまりさんが通っていたカナダの女子中学校の性教育では2年生でまず「自分が初めてセックスをするとしたらどんなシチュエーションか」を考える授業をするんだそうです。
 セックスはあくまでも、恋愛などの相手との関係性の流れの中にあり、コミュニケーションの一貫である、ということを先に教わるんだって。

▶ 中2の宿題「初めてのセックスのシチュエーションを考える」
 一番最初に出た課題が「自分の初めてのセックスはどんなシチュエーションか考えてくる」というもので、それが宿題で出され、ちゃんまりさんは寮の食堂で考えていたそうです。小学校までは日本にいたちゃんまりさん、「セックスというものは男性が誘ってくるもの」という前提で課題を記入していたら、寮母さんがそれを見てこう言ってきたんだそうです。
「女性側から誘うこともあるよ」
 ちゃんまりさんは「ええー! そうなんだ! 女性にも性欲があっていいんだ」とビックリした、というお話でした。
 私は聞いていてブワーッと鳥肌が立ちました。それ、それだよ、それやねん、それですねん!

▶ 性欲にもいろいろな感情や欲求がある
 日本の性教育では性感染症や妊娠の危険や避妊については教えてくれるけど、じゃあそもそもその原因となるセックスというものが一体どういう場面で始まってしまうのか、それってどんな状況かについて教えないし、考える機会もない。そういうことを教えてくれる教員にあたらないかぎり。
 ちゃんまりさんは「日本では性欲=エロティックなものってことになっているけど、本当は性欲の中には『さみしい』であったりいろいろな感情や欲求が入ってるはず」と話してくれました。
 本当にそうだと思う!
 エッチなものを見たり触れたりした時に体から湧いてくる欲求を「性欲」と呼ぶとしたら、誰かと性的接触を交わらせたいという欲求は「性行為欲」って感じで、またちょっと違くない? と私も思ってた!
 「性行為欲」の中には、相手に対して「性欲」をしっかり感じて行う、というだけではなくて、さみしい、つらい、みたいな感情がもとになって行動に移す時もあるだろう。「友達がもう経験済みだから自分もやらなきゃ」という焦りだったり、「相手の欲求に応えてあげたい」とか「応えないといけない空気」とか。時には自暴自棄な状況なこともあるだろうし、相手にマウントをとりたくて性行為を誘うとか。
 それは男性でも女性でも、相手の性別も関係なく、セックスというものをする時の動機とか衝動って、「性欲=エロい気持ち」という一つだけでは本来片付かないくらいいろいろあるんじゃないだろうか。
 ちゃんまりさんが通っていたカナダの女子校では、そのコミュニケーションとしてセックスを考える授業を2年生で行い、3年生ではコンドームの使い方を実際に模型に着用する授業や、マスターベーションについての説明もあったそうです。
 ちゃんまりさんはWEBラジオでその話をしているので、詳しく知りたい方はぜひ聴いてみてください。(ちゃんまりとめいのMellowing Coke!)

▶ 相手の性別、性的同意の基準…考えるきっかけに
 「自分が初めてセックスをする状況って一体どんな感じか?」を中学生で考えるってすごい。そこで「セックスすることがぜんぜん想像できないな」と思う人もいるだろうし、相手の性別とかも自分で認識することができるし、自分の性的同意の基準みたいなものを、漠然とでも想定することができる。実際にセックスすることになった時「これは違う」とか分かりやすいんじゃないかと思う。
 実際に日本の学校でそういう授業をするなんて、先生たちの負担が大きいし今すぐは難しすぎると思うけど、自分1人でも「自分が初めてセックスをする時ってどんなシチュエーションだろう」と想定してみることは、男子にとっても女子にとっても必要だから、大人がその機会を設けてあげるのはいいことだと思いました。

▶ 女性にも「我慢できない」があるのではないか
 性のお悩み相談で「彼がコンドームをしてくれない」という質問をよく見ます。回答は「避妊してくれない相手とはすんな」の一択なわけですが、こういう時、男性が避妊してくれないのと同じくらい、女性側が「我慢できない」状況になってしまうケースも危険性がある。男性のほうが「ゴムないからやばいよ」って言ってるのに、女性が「いいから」みたいなこと。
しかし「女性側の性欲が高まってしまった時に、性感染症と妊娠の危険性をどう回避すればいいのか」っていう質問はあまり見たことがありません。
それも、生理と射精がワンセット性教育からの、暗に漂う「女性の性欲はない」認識からの、つまり「女性側が性感染症と妊娠の危険から自分の身を守れなくなるほど性欲が高ぶることはない」というような前提があるおかげで、女性側はそういうケースを表立って言いづらい空気っていうのはあると思う。
・・・
 日本の性教育やセックスにまつわる話って、男性だけに性欲があって、女性はいつでも受け身で常に自分の身を守ることを第一にしているものだ、という現実とは違う設定が土台になりすぎてる。それによって話さなければいけないことが言えなかったり、現実に起こることを「ない」ことにしなきゃいけなかったりする。
 男性は「性欲があります」ってことを自ら言わなくても、「ある」という前提で世の中が回っている。それによって困っている男性もいると思うけど、その存在は無視されている。 一方、女性は「ない、弱い、薄い」という前提で世の中が回っている。そのくらい隠されているほうが助かる女性も多い。でも私は窮屈さを感じてきた。
・・・
 性教育やなんかでは、女性は男性の猛り狂う性欲から自分の身を守らなければならない、みたいなところばかり教わっているから、いつも自分の性欲を否定されているような気持ちになる男性もいるのかな、と思います。ぜんぜん違うかもですが。
 性欲が高ぶっちゃう時があるとかないとかは男女ともに個人差であり、状況にもより、でも男女の身体のつくりや機能はまったく違う部分があって、妊娠に至っては女性が心身に受ける深刻さはそれこそ男性のそれとは比べものになりません。だからそこは当然ちゃんと教わらなきゃいけない。だけどセックスって楽しいものでもある。自分の性欲と相手の性欲が合致した時ってめちゃくちゃうれしいし、愛があふれることもある。
 反面、性暴力になってしまうこともある。その被害がどういうものなのか、どういうことをしたら加害になってしまうのか。それを理解するためにも、その「どういうセックスを自分は望んでいるか」という自分の欲求について思いをはせることって大切じゃないだろうかって思います。

余談ですが、女性が性行為の際にエクスタシーに達し、体がピクつくことを経験された方がいらっしゃると思います。
あのピクつきは男性の射精と同じ生理現象なんだそうです。
つまり、外性器は違うけれど、感受性は変わらないということ。

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「性教育は幼児期から」(包括的性教育の試み)

2024年06月30日 13時36分16秒 | いのち
第30回日本保育保健学会(2024年)で「性教育は幼児期から」(北山ひとみ氏)という講演をWEB視聴しました。

世界と比較して日本の性教育が遅れていることは知っていましたが、
その現状を知ることができました。

ふだんの診療に役立ちそうなことがいくつも出てきました。

「ヨーロッパ性教育スタンダード」の「2〜3歳」の解説で、
自分自身の身体と性器を詳細に研究し、他の子どもと大人に見せる
自分の性器で気持ちよくなるので、わざと自分の性器に触れ始める
ということが“正常発達”として紹介されていることに驚きました。

日本では「困り事」として相談されることがあるエピソードですが、
これからは「そこまで発達したのですね、喜んでください」
とコメントすることにします。

その後、4〜6歳になると、
公共の場で性器などを見せたり触ったり、あるいは他の人の性器を触ると大人が避難することを学ぶ
ので大丈夫です、と。

それから、幼児期には下品な言葉を発して喜んでいる子どもをよく見かけますが、
これも“正常発達”と捉えています:
“汚い言葉の段階”:何か言葉でいうと周りの人々に反応が起こることに気づく。これはエキサイティングで楽しいので、同じ言葉を繰り返す
クレヨンシンチャン系のつぶやきがあっても心配ない?

それからそれから、オランダの性教育資材を発信・提供しているルトガーズ研究所が、
「お医者さんごっこ」のルール4つを解説しているという話がありました。

お医者さんごっこのルール
1.自分がイヤなときは参加しない。
2.相手がイヤがるときは無理に誘わない。
3.痛いことはしてはいけない。
4.からだのあらゆる穴には何も入れてはいけない。

…4が妙にウケました。
日本では“なかったことにする”とか“見て見ぬふりをする”、
性に関する子どもの行動・エピソードに真摯に向き合い、
それに対応する方法を提案しているのが素晴らしいと思いました。

やはり子どもが興味を持ったタイミングで正しい知識を授けるのがよいですね。
また、ジェンダー観は「両親のジェンダー観の影響を受ける」とされ、
当然とは思いながらもきびしい言葉だな、と思いました。

しかし「からだの権利」の解説では、
現実とのギャップに“机上の理想論”と聞こえざるを得ませんでした。

園児に対しての教育の実際も紹介され、
子どもたちの変化のみならず、
職員や家族の変化も生じたことを興味深く聴きました。


<備忘録>

■ 日本の性教育
・日本は「性教育後進国」「性産業先進国」
・最近の動き;
(2017年)刑法性犯罪の改正(110年振り!)
(2020年)「性犯罪・性暴力対策の強化の方針の決定について」
 → その一環として文科省が「生命(いのち)の安全教育」
 2023年から全国の公立小中高校で実施、幼児教育でも
(2023年)「強制性交罪」から「不同意性交罪」へ変更

■ 世界の性教育
(2009年)「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(対象:5歳以上)
(2010年)「ヨーロッパにおける性教育スタンダード」(対象:0歳から)
(2018年)「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」改訂版
(2020年)「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の改訂版ガイダンス出版

★ 「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の日本語版は2017年発行、日本語改訂版発行は2020年

■ 日本の性教育・ジェンダー理解のレベル
(2019年)国連子どもの権利委員会からの勧告;
「思春期の女子および男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保すること」
 → 文科省:学習指導要領における性に関する学習内容はほとんど変わらず “歯止め規定
・2023年のジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム):125位/146か国

★ 参考図書0歳からはじまるオランダの性教育(リヒテルズ直子著、2018年発行)
・ボーダーラインの尊重…自分の望まないことに「ノー」と言うよう幼児期から教えられている。
・性教育の目的:自他の尊重、社会的責任、非差別・インクルージョン。
・性をタブー視せず、性についてオープンに話せる状況を早い時期に形成する。
・保育者・教員は指導者(教える)から支援者(支える)的存在へ慣れるよう研修。

■ 文科省「生命(いのち)の安全教育」の問題点
・性暴力に関する学びの際、「プライベートゾーン」を「水着でかくれるところ」と表現しているが不十分ではないか?
・「からだの権利」を認識できる内容にアップデートできないか、資材を作成中
※ からだの権利:自分のからだの事を決めることができるのは自分だけという意識。同意と境界、尊重ができる。

■ 包括的性教育とは?
・性(セクシュアリティ)を、からだとこころ、人間関係、社会とのつながりなど、
 いろいろな角度から幅広く学ぶ教育
・「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」8つのキーコンセプト;
 1.人間関係
 2.価値観、人権、文化、セクシュアリティ
 3.ジェンダーの理解
 4.暴力と安全確保
 5.健康と幸福のためのスキル
 6.人間のからだと発達
 7.セクシュアリティと性的行動
 8.性と生殖に関する健康
…日本の性教育のイメージは8だけ?

■ 幼児期の性的発達の特徴(by 「ヨーロッパ性教育スタンダード」)
(幼児前期)1〜3歳
・自らが母親とは別の存在であることを自覚する
・対象の分化(親以外の存在に関心を示す表現)
・3歳になれば、仲間関係や自分とは違った性との分化ができる
(幼児後期)3〜6歳
・自己意識の表明の時期…「ぼくがやる」「私のもの」
・自分の意志や考えを主張する“反抗”
・世界を感じる感受性が好奇心や自発性を生み出す土壌となる
 → 自己意識を形成し、一定の価値観を獲得していく時期

■ 「ヨーロッパにおける性教育スタンダード」(池谷氏)
・子どもの性心理的発達を0歳から始まる5つの発達段階として捉える
1.発見と探求の段階:0〜1歳と2〜3歳
2.規則の学習、遊びと友達関係の段階:4〜6歳
3.恥ずかしさと初恋の段階:7〜9歳
4.前思春期と思春期の段階:10〜11歳と12〜15歳
5.大人期への変わり目の段階:16〜18歳

■ 発見の段階:0〜1歳
・子どもの性的発達は誕生から始まる。
・乳児はすっかり自分の感覚に集中する。感覚を通して気持ちのいい、安全な感覚を経験できる。
・乳児を抱きしめ撫でることで、健康な社会的・情緒的な発達の基礎を据える。
・乳児は自分の周りの世界を発見するのにかかりきりになる。
・乳児はまた自分自身の身体を発見しつつある。

■ 好奇心/自分の体の探求:2〜3歳
・自分自身と自分の体に気づきつつある。
・自分や他の子どもと大人じゃ違うようだということを学ぶ(自分のアイデンティティを発達させる)。
・自分が男子か女子かを学ぶ(自分のジェンダーアイデンティティを発達させる)。
自分自身の身体と性器を詳細に研究し、他の子どもと大人に見せる
自分の性器で気持ちよくなるので、わざと自分の性器に触れ始める
・まだ身体的接触に対して大きなニーズがある。誰かの膝に乗るのが好きで撫でられることを楽しむ。
・“すべきこととしてはいけないこと”(社会的規範)について学びはじめる。

■ 規則の学習:4〜6歳
・集団生生活の中で人々の大きなグループと、より接触するようになり、ますますどう行動すべきか(社会のルール)を学ぶ。
公共の場で性器などを見せたり触ったり、あるいは他の人の性器を触ると大人が避難することを学ぶ
 → 公共の場で裸で歩き回ったり性器を触ったりしないようになる。
・自分自身と他の人々の体を探求することは、より遊びの文脈で表現される。
(性のゲーム)「お医者さんごっこ」などを、はじめはオープンに、後にはこっそりとする。
“汚い言葉の段階”:何か言葉でいうと周りの人々に反応が起こることに気づく。これはエキサイティングで楽しいので、同じ言葉を繰り返す
・生殖に非常に興味を持ち「赤ちゃんはどこから来るの?」といった質問を際限なくする。
・たいていの子どもは自分の体に関して恥ずかしさを経験し始めて、境界線を引き始める。
・自分が男子か女子であることを知り、いつもそうであろうとする。
・「男子がすること」「女子がすること」についてはっきりした考えを創り上げる(ジェンダーの段階)。
・他の子どもと、時には自分の性のメンバーである男子や女子と友だちになる。
・友達関係と誰かが好きなことを「愛してる」と結びつけて考える。これはたいていセクシャルの欲求と環状とは関係がない。単純に誰かが好きだという言い方である。
・2歳半〜3歳で、ほとんどの子どもが自分の性別を認識する。
 → (大人を見ながら)性別役割分業意識と行動をつくっていく。
 男女の性別に自らを自己分類することで、
 性別に応じた世界を創り上げていく。
  ↓
 相対する性への嫌悪と排除へ向かう可能性
 自らの性の言語化=ジェンダー用語(男ことば、女ことば)の意識化
 → 特に女性嫌悪の意識と排除の態度・行動へ

■ 子どもたちに伝えたいこと

1.からだを肯定的に受け止める
・自分の体は自分のもの
・外性器は日常的な存在(正確な名称を学ぶ)
 名前があるということはそのものの存在を認識すること
 とくに女性の性器はきちんと認識されてこなかった
  → 女性のものではなかった
・性器観:名称、入浴、トイレ
 “性器タッチ” “性器さわり” (“いじり”とは言わず)
・自分のいのちの成り立ち、どこからどうやって生まれてきたのか?
 その前に、性器の名前を学習する

2.女性と男性が対等であること
・保育者のジェンダー感覚が、子どもたちにも影響する。
・家庭の中ではどうでしょう?
 子どもたちにとって保護者はロールモデル
 お互いを尊敬し合い慈しみ合う関係を育てること
・本当の意味での対等・平等な関係が、人との豊かな関係をつくる

■ からだを肯定的に受け止めるために大切にしたいこと

1.プライベートパーツと“からだ観”
・自分だけが持つからだ、自分だけがわかる感覚、自分だけが触っていいところ
・断りなく見られたり触られたりしないこと=プライベート
・身体全体がプライベートパーツであるという“からだ観”

2.「境界」(バウンダリー)と「同意」「尊重」
・からだの周りにある境界 そこに同意なく侵入してくることはいけないこと
・「なんかへん」「あれ?」と感じるタッチはダメなタッチ。
・必要がないのに近づいてきてのタッチ。
・グルーミング(やさしく近づいてきて手名づける)の手口。

3.相手を尊敬・尊重する力を
・人間関係の形成、相手のパーソナルスペースやバウンダリー(境界)を尊重するために
 → 子ども自身が尊敬・尊重されること

4.「からだの権利」を学ぶ(↓)

■ からだの権利(浅井春夫「人間と性の絵本」より)
1.からだのそれぞれの器官・パーツの名称や機能について十分に学ぶ。
2.だれもが自分のからだのどこを、どのように触れるかを決めることができる。
3.親、大人による虐待や搾取、性的虐待や性的搾取から守られる。
4.からだが清潔に保たれて、ケガや病気になったときには治療を受けることができる。
5.こころとからだに不安や心配があるときには、相談できるところがあり、サポートを受けることができる。
6.ここまでの事ができていないときには、「やっってください!」と主張することができる。

■ 性暴力・性被害を防ぐ
・どんな人が性暴力を行うのか? …知っている人の場合もある
・いいタッチとダメなタッチ、さらに「何かヘン」 → 注意!
・イヤなタッチをされたとき  → 注意!
・安心できる大人:
 イヤなこと、イヤなタッチをされたとき話を聞いてくれる
 信頼できる大人 3〜5人
 そのうちひとりは家族以外の人を
・子どもが被害を伝えてきたら…
・“性的虐待順応症候群”にならないために
 訴えを聞いた大人の心得

■ 幼児への性教育を行うときの基本的な考え方
・分ける必要のないところで男女分別しない。
・からだっていいな、からだて不思議だな、という感覚を持つことができるような内容に。
・具体的な生活場面に即した話題から、見る・聞く・触るなど具体的にやってみるなど子どもたちが楽しく取り組める内容に。
・1人ひとりの捉え方を大切に。
・保護者とともに進める。

■ 幼児への性教育のテーマ4つ
1.からだをケアする
・肯定的な視点で自らのからだ観の基礎を築く。
・健康と命の大切さに迫る課題。
・排泄器、性器の違いによる洗い方、拭き方
2.性器の呼び方
・特に女子の排泄器、性器の呼び方  → (例)ヴァギナ、女の子の性器
3.性被害の防止
・プライベートパーツを理解する。
・「うれしいタッチ」と「イヤなタッチ」の違いがわかる。
4.女子と男子
・違いを強調するのではなく、両性のほとんどが同じであること。


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世界的に女子の思春期の始まりが早くなってきている

2024年06月30日 12時12分17秒 | いのち
私は小児科医ですが、
「日本思春期学会認定性教育講師」という資格もあり、
その周辺の情報も常にアンテナを張って集めています。
先日、下記の記事が目に留まりましたので紹介します。

内容は「世界的に女子の思春期発来時期が早まってきている」という報告です。
その理由・原因はいろいろ推測されているものの、明確にはわからず、
「社会の変化」というアバウトな表現になっていました。

思春期が早く来れば、当然本人も家族も戸惑い、
対応が必要になります。
外見が大人に見えても、中身は年齢相当の子どもですから、
周囲の環境作り・配慮が必要です。

<ポイント>
・早い時期からの生殖機能の発達は、女性の体と心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある。世界的に女の子の間で、思春期が始まる平均年齢が、1977~2013年の間に10年ごとに3カ月ずつ早まっている。
・米国では、乳房の成長と月経のいずれも始まる時期が早まっている。初潮を迎える年齢が早まり、生理周期が規則正しくなるまでにより長い時間がかかるようになっている。早い時期(11歳未満)に初潮を迎える人の割合はほぼ倍増し、16%に達した。
・このような現象が起きている理由については、現時点ではわかっていることよりも疑問の方が多い。多くの異なる要因が重なった結果であり、全体に関わる要素としては、過去200年における世界の変化が挙げられる。
・肥満の女子は、通常体重の女子よりもエストラジオール(エストロゲンの一種)の濃度が高い。特に果物や野菜が少なく、動物性タンパク質や高度に加工された食品が多い食事は「エストロゲンなどの性ホルモンの濃度が高くなる。スナック菓子、デザート、揚げ物、ソフトドリンクを多く含む「不健康な食事」の摂取は、女子の思春期早発症と関連がある。
社会的または経済的な困難に関わる幼少期のつらい経験や、虐待などのストレスも、思春期早発症の要因となり得る。思春期が始まるタイミングは、ストレスの影響を受けやすい。思春期の開始に影響を与える「視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)」がストレス反応の制御にも関わっているためである。
・日常的に使われる製品に含まれるフタル酸エステル類ビスフェノールといった内分泌かく乱物質が、こうした変化に関わっている可能性を示唆する研究も増えている。環境中に広く存在する多くの内分泌かく乱物質は、エストロゲンと似た作用を持っている。
・早く思春期を迎える女子は、速いスピードで成長し、その後、早めに成長が止まる。そうした子どもは、思春期が通常の時期に訪れた場合と比べて、最終的な身長が低くなる。
・思春期が早めに訪れることにより、乳がんのリスクのほか、成人後の肥満のリスクも高まる。高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、コレステロール異常、心血管疾患になる可能性も高まる。
・思春期早発症の女の子はうつ病、ストレス、不安のレベルが高く、適切なボディイメージを持つことが出来ず、感情の調整に多くの課題を抱える。
・思春期の始まりが非常に早い、あるいは進むスピードが速い場合には、それが単なるタイミングの問題であって、脳腫瘍などの病的な原因がないことを確認する必要がある。単なるタイミングの問題であれば「薬によって一時停止ボタンを押す」ことも可能である。そうしたケースでは「GnRHアゴニスト」という種類の薬を使用して思春期のスピードを緩め、身長の伸び悩みなどの有害な影響を防ぐ場合もある。


■ 早まり続ける女の子の思春期、なぜ? 早すぎる子の困難と対処法は
世界的に10年ごとに3カ月ずつ若年化、「思春期早発症」には治療薬も
2024.06.26:National Geographic)より抜粋(下線は私が引きました);

★ 思春期早発症とは第二次性徴が平均より2~3年早く現れることを指す。日本では女の子の場合、乳房の発達が7歳未満あるいは7歳6カ月未満で始まるなどの定義がある。

 思春期が始まる平均的な年齢は、20世紀以降、下がり続けており、中には6〜7歳から胸の発達が始まる女の子もいる。こうした早い時期からの生殖機能の発達は、女性の体と心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があると専門家は言う。
 世界的に女の子の間で、思春期が始まる平均年齢が、1977~2013年の間に10年ごとに3カ月ずつ早まっていることが、2020年に医学誌「JAMA Pediatrics」に掲載されたレビュー論文で示されている。つまり、この傾向が今も続いていれば、思春期が合計で1年以上も早まっていることになる。女の子の場合、思春期の最初の兆候は乳房の成長であり、月経の始まり(初潮)はそのあとに起こる。
 2024年5月29日付けで医学誌「JAMA Network Open」に掲載された新たな研究によると、米国では、乳房の成長と月経のいずれも始まる時期が早まっているという。1950~2005年の間に米国で生まれた女性7万1341人のデータからは、初潮を迎える年齢が早まり、生理周期が規則正しくなるまでにより長い時間がかかるようになっていることがわかった。同研究で対象となった55年間で、早い時期(11歳未満)に初潮を迎える人の割合はほぼ倍増し、16%に達した
これは十分な証拠に裏付けられた世界的な現象です」と、米ブラウン大学ウォーレン・アルパート・メディカルスクールの小児科准教授リサ・スウォーツ・トポー氏は言う。このような現象が起きている理由については、現時点では「わかっていることよりも疑問の方が多い」状態だと、氏は述べている。「多くの異なる要因が重なった結果であり、全体に関わる要素としては、過去200年における世界の変化が挙げられるでしょう」
 年齢にかかわらず、思春期が始まるきっかけとなるのは、脳の視床下部による「性腺刺激ホルモン放出ホルモンGnRH)」の分泌だ。GnRHは脳下垂体を刺激して黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンを分泌させ、思春期の開始を促す。女の子の場合、これら2種類のホルモンが卵巣にシグナルを送ることで、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が始まり、それが乳房の発達、陰毛の発生、月経の開始、体型の変化につながる。
・・・
▶ 思春期が早まる原因
 これはさまざまな要因が関係する問題だと、専門家は言う。まずひとつには、1970年代以降、肥満の児童の割合が増えていることが挙げられる。一部の研究では、女子の「思春期早発症」(通常の範囲より早く始まる思春期)と肥満との関わりが指摘されている。
「肥満はインスリン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、レプチンといったさまざまなホルモンの血流への放出と関連しています」・・・これらのホルモンは食欲や満腹感、体脂肪の蓄積などに影響を与えるほか、 思春期のタイミングを変化させる可能性がある。
 また、肥満の女子は、通常体重の女子よりもエストラジオール(エストロゲンの一種)の濃度が高いことが研究でわかっており、これが乳房の発育や思春期の早期化に関わっていると推測される。
 子どもたちの食事の質もまた、何らかの影響を及ぼしていると考えられる。特に果物や野菜が少なく、動物性タンパク質や高度に加工された食品が多い食事は、「エストロゲンなどの性ホルモンの濃度が高くなることと関連があります」と、米シンシナティ小児病院医療センターの小児科教授フランク・ビロ氏は指摘している。(参考記事:「「超加工食品」でたばこ並みの依存性が判明、渇望や禁断症状も」)
 事実、中国の研究者らが3種類の食事(伝統的な食事、不健康な食事、高タンパクの食事)を比較した研究では、スナック菓子、デザート、揚げ物、ソフトドリンクを多く含む「不健康な食事」の摂取は、女子の思春期早発症と関連があることが示された。
 このほか、社会的または経済的な困難に関わる幼少期のつらい経験や、虐待などのストレスも、思春期早発症の要因となり得る。2023年に医学誌「Psychoneuroendocrinology」に発表された研究によると、幼少期のストレスレベルが高いと、思春期早発症のリスクが高くなるという。
思春期が始まるタイミングは、ストレスの影響を受けやすいのです」と語るのは、米コーネル大学心理学部准教授ジェーン・メンドル氏だ。「思春期前の時期にストレスや逆境を経験した子どもは、思春期が早く始まる可能性が高くなります」
 その原因を説明する仮説のひとつは、思春期の開始に影響を与える「視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)」がストレス反応の制御にも関わっているため、というものだ。
 また、コロナ禍において、画面を見ている時間の増加、社会的孤立、運動不足、健康的な食品を食べる機会の減少といったストレス要因が、米ニューヨーク市の女子で近年、思春期早発症が増えていることと関連している可能性を示唆する研究もある。

▶ 内分泌かく乱物質などの影響
 一方、日常的に使われる製品に含まれるフタル酸エステル類ビスフェノールといった内分泌かく乱物質が、こうした変化に関わっている可能性を示唆する研究も増えている。
環境中に広く存在する多くの内分泌かく乱物質は、エストロゲンと似た作用を持っています」とソファー氏は言う。その結果、そうした化学物質に多くさらされることで、生殖機能の発達に変化が現れる。
 たとえば、2023年に医学誌「BMC Medicine」に発表された論文では、女子の思春期早発症の原因のひとつとして、防汚剤や塗料、ワックス、つや出し剤、電子機器、食品包装材など多くの日用品に含まれる有機フッ素化合物PFCsPFASと総称される)にさらされることが挙げられている。(参考記事:「台所や食事に潜む「永遠の化学物質」PFAS、自分で避けるには?」)
 2023年に医学誌「Environmental Health Perspectives」に掲載された研究では、胎児から小児の時期に、居住環境で大気汚染の粒子状物質PM)にさらされた量が多かった女子は、少なかった女子よりも生理が早く始まる傾向にあると結論づけている。
 これらの要因が組み合わされることで、一部の女の子に思春期早発症が現れているのではないかとビロ氏は述べている。

▶ 心や体への影響
 こうした生殖機能の発達の変化は、将来的に体や感情へ影響を及ぼす可能性がある。短期的には、「早く思春期を迎える女子は、速いスピードで成長し、その後、早めに成長が止まります」とビロ氏は言う。そうした子どもは、思春期が通常の時期に訪れた場合と比べて、最終的な身長が低くなることがある。
 長期的に見ると、思春期が早めに訪れることにより、乳がんのリスクのほか、成人後の肥満のリスクも高まると、ビロ氏は指摘する。そのほか、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、コレステロール異常、心血管疾患になる可能性も高まるという。
・・・
 研究からは、思春期早発症の女の子はうつ病、ストレス、不安のレベルが高く、適切なボディイメージを持つことが出来ず、感情の調整に多くの課題を抱えることがわかっている。
・・・思春期早発症の女の子は、同級生からのいじめにあう可能性が高く、また心の準備ができていないうちから性的関心を向けられることもある。
「人は外見をもとに彼女たちの年齢を高く見積もります」とビロ氏は言う。「12歳の子が15歳のように見えることもありますが、彼女たちの感情と行動は12歳のそれなのです」
 こうした外見の変化によって、教師や両親を含む大人たちが、彼女たちに実年齢よりも成熟した行動を期待してしまう場合もある。自分よりも年上の仲間と付き合い始めると、思春期を早めに迎えた女の子は、飲酒や性交渉などの危険な行動に及ぶ可能性があるとメンドル氏は言う。

▶ 変化に対応する
 成熟が早すぎると思われる女の子には、医師の診察を受けさせるべきだとビロ氏は言う。大半のケースでは、単に発達の状態を確認し、予想される体や感情の変化についての助言を受けるだけに終わるだろう。
「思春期の始まりが非常に早い、あるいは進むスピードが速い場合には、それが単なるタイミングの問題であって、脳腫瘍などの病的な原因がないことを確認する必要があります」とトポー氏は言う。脳内の異常により、思春期が早く訪れることもあるからだ。トポー氏によると、単なるタイミングの問題であれば、「薬によって一時停止ボタンを押す」ことも可能だという。
 そうしたケースでは、医師が「GnRHアゴニスト」という種類の薬を処方して思春期のスピードを緩め、身長の伸び悩みなどの有害な影響を防ぐ場合もある。研究では、そうした薬は、思春期早発症を経験した女子の最終的な身長(18歳時)を伸ばす効果が示されている。
 思春期がいつ始まるかにかかわらず、親は子どもにできる限り標準的な経験をさせることが重要だ。外見の年齢が12〜13歳でも実際には8歳なのであれば、食事や睡眠習慣に関して8歳の子と同じようにする必要がある。
「たとえ外見が年上に見えたとしても、子どもを年相応に扱うことは非常に重要です」とトポー氏は言う。そうすれば、女の子は自分の体に快適さを覚え、自尊心を保ち、肉体的にも感情的にも自分を大切にできるようになる。
・・・
「思春期、特に月経については、社会的に恥ずかしいこととして捉えられている面が多々あります」とメンドル氏は指摘する。「思春期への移行に対する偏見を減らすことが重要です」(参考記事:「古代エジプトではパピルスを利用、月経にまつわる沈黙と羞恥の歴史」)
 そのためには、親が思春期についてオープンに話をし、自分の経験を分かち合うことが助けになる。
 メンドル氏は言う。「そうした経験から子どもが何かを学べれば、思春期によりうまく対処できるようになるでしょう。それが、過去、現在、未来の自分は連続しているという感覚を持つことにつながるのです」


そうそう、みなかみ市の学校健診で学校医が下半身を診たのは、
「思春期早発症」
のチェックという理由でした。
それに関連して、というワケではありません。

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「SARSと闘った男」(2004年、NHK-BS)

2018年10月21日 14時07分00秒 | いのち
 我々は未知のウイルスにどう立ち向かえばよいのか?
 〜人類永遠の課題です。
 ウイルスは人間に感染して自分のコピーを作られ、増殖して広がっていきます。
 しかし、人間がすぐ死んでしまうほど病原性が強すぎると、自分をコピーしてくれる場所がなくなるので、ウイルス自身が困ります。
 なので、生きながらえるウイルスは毒性を弱めて、人間との共存という選択をします。
 インフルエンザ・ウイルスがよい例ですね。

 新しいウイルス感染症が登場した場合、えてして強毒性であり重症化しやすい傾向があります。
 SARSもその一つ。

 録画していた番組に「SARSと闘った男」をみつけたので見てみました。
 WHOからベトナムに派遣されていたイタリア人医師が、新しい感染症に出会い、悪戦苦闘し、世界を救うことと引き替えに自らの命を落としてしまう物語。


 時は2003年3月、場所はベトナム。
 イタリア人のカルロ・ウルバニ医師はWHOから派遣され、ハノイでマラリアなどの感染症の診療に当たっていた。
 彼は国境なき医師団の経験もある、国際派の感染症専門医である。

 ある日、ハノイのフレンチ病院から相談されて診た成人男性の肺炎患者(中国系アメリカ人のビジネスマン)。
 肺野が真っ白で人工呼吸器を装着していた。
 ウルバニ医師は不思議に感じた。
 健康な中年男性がこんな重い肺炎を起こす病原体が思い浮かばない。
 ウルバニ医師の制止を振り払い、家族の希望で香港の病院へ転院し患者は8日後に死亡した。

 その頃、ハノイの病院ではその肺炎患者の診療に当たったスタッフが次々に発熱していた。
 25人中10人が発症し6人が入院。

 3月6日、肺炎患者の同僚が発熱して医療機関を受診した。
 
 同じくWHOスタッフの、中国にいた押谷仁医師はハノイに向かった。
 CDCのティム・ウエキ医師も同行した。
 しかしベトナム政府からの要請がないため、入国できなかった。
 ウルバニ医師は危機感を覚え、公表して国際社会に訴えようとベトナム保険証に相談したが、却下された。

 3月8日、17人の病院スタッフに肺炎症状が現れた。
 肺全体が真っ白になっていった。
 生還した看護師は「呼吸ができず、海の底にいるようだった、肺に水がたまっていると感じた」と話す。

 感染を恐れて職場放棄する病院スタッフも出てきた。
 ウルバニはこの感染症が世界に広がって収拾が付かなくなることを恐れ、WHOハノイ事務所のパスカル・ブルードン代表にベトナム政府と緊急に会議を開くよう相談した。

 3月9日(日)、ベトナム保健省との交渉会議。
 ウルバニはハノイで起きていることを公表するよう「忠告」し、3時間にわたって粘り強く説得した。
 その結果、公表することに同意した。
 患者発生から8日目のことだった。
 押谷医師とウエキ医師も入国した。

 その頃、香港の病院で医療スタッフが肺炎で倒れていることが判明した。
 世界に広がることを考えて、診断基準を作る必要があった。
 しかしWHOの進藤奈邦子医師の所に集まる病状についての情報は、ウルバニ医師からのメールしかなかった。

・潜伏期は3〜5日とインフルエンザより長く、感染力も強い。
・高熱と筋肉痛で始まる。
・3-4日で肺炎が起きるが、初期にはX-ray に変化は現れない。

 3月10日、ハノイ・フレンチ病院が感染対策としての隔離目的で閉鎖される。
 押谷医師はウルバニ医師にやっと面会できた。
 しかしその時、ウルバニ医師は微熱があった。
 フレンチ病院が閉鎖された今、ベトナムには新型肺炎を診療できる医療施設が存在しない。
 その夜、ウルバニ医師はバンコクへ飛行機で飛び、WHO職員により病院に入院させた。
 入院5日後に肺炎を発症、徐々に意識が遠のいていった。
 妻が病院に駆けつけ、ウルバニのメール情報がWHOを動かし、「グローバル・アラート」が発せられ、世界中の人のために役立っていると話すと、ウルバニは微笑んだ。

 3月29日、ウルバニ医師死亡。
 
 ウルバニの情報から、新型肺炎の正体が判明していった。
 彼の死から1ヵ月後、ベトナムで新型肺炎の最後の患者が退院し、流行は終息した。

 ウルバニの遺体はイタリアの故郷に運ばれ、埋葬された。




■ 「SARSと闘った男〜医師ウルバニ 27日間の記録〜(2004年2月15日放送、NHK-BS)
 去年3月、世界がまだ新型肺炎SARSの存在に気がついていなかった時、一人の医師が未知のウィルスと格闘していた。ベトナムのWHO事務所の職員、カルロ・ウルバニだ。ウルバニは院内感染の広がるハノイ市内の民間病院に留まり、ウィルスの脅威を世界に発信し続けた。世界はウルバニからの情報で、対策に動き出すが、ウルバニ自身は感染し亡くなっていった。ウルバニがSARSと闘った27日間を証言とメールで辿る。


DVD書籍も発売されています。

■ NHKアーカイブス「未知のウイルスとの闘い」
2014年11月16日放送:NHK総合

(オープニング)
 今週は、エボラ出血熱について紹介すると伝えた。1976年発症が確認されてから、今年大きく被害が出ていて、10月の国連安全保障理事会では、国連エボラ緊急対応ミーティングも設けられバンベリー代表も、いまエボラ出血熱を抑え込めなければ対処法すらわからない前例にない事態に陥ると発表した。これまで人類は未知のウイルスの対応に追われ、1918年にはスペインかぜでは死者4000万人以上を出している。
 2003年の新型肺炎SARSが、中国から東南アジア、カナダまで影響を及ぼした。今日は、SARSに対し取り組んだ医師、押谷仁さんを取材。更に2004年に放送した「SARSと闘った男 医師ウルバニ27費間の記録」をあわせ放送すると伝えた。

◇NHKスペシャル SARSと闘った男~医師ウルバニ 27日間の記録~
 2004年に放送されたNHKスペシャル「SARSと闘った男」の映像が紹介。2003年、ベトナム・ハノイに未知のウイルス「SARS」が発症し、感染は香港、シンガポール、カナダまで広がり700人を超える死者が出た。その新型肺炎と闘った医師や看護師も7人が亡くなっている。そこで1人の医師、カルロ・ウルバニ医師も自ら感染し命を落とした人物である。ウルバニ医師は、自ら闘う中で世界にメールを発信した事で、感染拡大の防止に向け動き始めたと伝えられた。

◇謎の肺炎患者との遭遇
 イタリアで生まれたカルロ・ウルバニ医師はWHOに所属する感染専門の医師だった。2000年7月、43歳の時にベトナム・ハノイに入りマラリアや感染症などを研究するようになったが2003年3月3日、ハノイ・フレンチ病院からの謎の肺炎患者発生で事態は一変した。ウルバニ医師は集中治療室に案内されると、48歳男性患者は昏睡状態に陥っていて人工呼吸器をつけていた。当時について、ウルバニ医師を知るオリビエ・カタン医師は患者を診て驚き、こんなに早く悪くなるのは考えられない、更に肺が真っ白になっていた事から、ウルバニ医師は普通のインフルエンザではない、原因を突き止めなければと語っていたと伝えられた。そこで患者が中国からベトナム・ハノイに来て直ぐにかかった事から当時、中国で原因不明の肺炎が流行っていた事から患者と肺炎が繋がっているのではないかと考えていた事が伝えられた。早速、ウルバニ医師は男性患者の中国での情報を細かく知りたいとWHOにメールをしていた。
 ベトナム・ハノイで確認された男性患者の行動から、中国・広東省で謎の肺炎の情報を得ようとしていたのが、押谷仁さんである。WHOのアジア地域の感染症対策の責任者だった押谷仁医師は、当時について症状から国境を超えて発症したとすれば国際的に広がる可能性があると語った。しかし当時、中国政府は別のウイルスをあげ調査団を入れる事も拒否した事が伝えられた。その後、押谷医師は中国側はクラミジアが原因と発表しているが症状から別のものと判断、監視が必要だとウルバニ医師にメールを送っていた。その後、ベトナム・ハノイで発症した患者が香港など医療設備が整った病院に行きたいと申し出たが、ウルバニ医師は反対したが現実、出国を止める権限もなかった事で患者は香港に出国、8日後に死亡したと伝えられた。

◇感染拡大の危機
 ベトナム・ハノイにあるハノイ・フレンチ病院から男性患者が出国してから新たな事態が発生。看護師達が高熱を出し、次々と倒れた事が、カルロ・ウルバニ医師のメールで発表された。その1人、グエン・ティ・シン看護師は「今まで経験した事がない疲れを感じ、歩く事も出来なかった」と述べた。またグエン・ティ・メン看護師も「鳥肌がたち痙攣のような奮えが襲った」と語った。発病した看護師は一般患者と同じ病棟に入院した事で、ウルバニ医師は、感染防止対策を強くするよう指示した事がメールで語ったと伝えられた。その後もウルバニ医師は看護師から聞き取りをし、患者の身体に触れただけで感染した事も明らかになった。
 当時、WHO本部も中国とベトナム・ハノイで起きている症状について注目し当時、進藤奈邦子医師は中国の肺炎について研究者達と連絡をとっていたが確かな情報は確認がとれず、カルロ・ウルバニ医師からのメールだけが謎の肺炎の実態を伝えていた。ウルバニ医師のメールで男性患者が25人、その内10人が異常を訴え入院している。患者らは別の患者との接触があり会話の中で咳やつばも何もマスクなど防御なく時間を過ごした事も明らかになった。進藤医師は、どういう症状、治療が有効で無効な治療は何か、とにかく情報が欲しかった中、ウルバニ医師だけが確認出来る術だったと述べていた。
 カルロ・ウルバニ医師の活動が紹介。昔からアジアやアフリカをまわり貧しい人達のための医療活動を続けてきた人物である。国境なき医師団にも加わり、カンボジアでは感染症に苦しむ子供たちの診療にもあたっていた。その経験を活かしたいと自らベトナムにいくと選択した事が伝えられた。当時、ウルバニ医師は、どんな人にも区別なく満足な医療を提供したい、どんな生涯にも屈しない事、いつも患者らの傍らにいることが大事だと語る映像が流れた。
 当時、中国にいた押谷医師のもとにはベトナム・ハノイからのカルロ・ウルバニ医師からのメールが毎日、届いていた。患者の様子からも押谷医師は、ウルバニ医師が入り込み過ぎてないか不安に感じていたと述べていた。ここで、ウルバニ医師は忙しくても子ども達との時間を大切にしていた事が紹介。当時、妻のジュリアーナさんは感染を恐れ病院に行かないでと頼んだが、病院には子どもを持つ母親達もいる、それを放っておけないと言っていた事があきらかになった。そして3月6日、香港に運ばれた男性患者の同僚が高熱を出した事で、外にも感染が広がっていると不安になった事が伝えられた。

◇国家の壁
 3月7日、カルロ・ウルバニ医師は自分1人では感染を防止するのは不可能と感じ、ベトナム保険省に対し、WHOに援助を要請するよう専門家の派遣を受けるべきと提案するも受け入れられなかった事が伝えられた。ウルバニ医師は未知のウイルスをベトナム・ハノイで食い止めたいのにと「集団感染の発生」でメールしていた。そのメールを確認した押谷医師はベトナム行きを決意した事が語られた。その後、押谷医師はアメリカ・アトランタにある感染症対策の専門期間「CDC」アメリカ疾病対策センターに応援を求め、当時一緒に行動したのがティム・ウエキ医師だった。当時について、ウエキ医師は感染力が強く危険なものである事が理解した。世界中に優秀な学者は多いが未知のウイルスについて説明出来たのはウルバニ医師だけだったと思うと語った。
 その後、WHOは押谷医師もティム・ウエキ医師も政府からの要請なく入国は出来なかった事が伝えられた。事態を打開する為、ウルバニ医師は世界に公表しようと決意した。ベトナム保健省と交渉するも、公表を待って欲しいと言われた、全ての決定を来週に持ち越した事が明らかになった。ベトナム保健省のチン・クァン・ヒュアン局長は、何が起こっているか分からないのに公表は出来ない、判断後にしようと考えたと語った。

◇襲いかかるウイルス
 保健省との交渉に失敗したあと、医師や看護師たちに肺炎の症状が現れた。未知のウィルスによる肺炎だった。ウルバニ医師がもっとも恐れていたことだった。肺炎患者の病棟を別にし、警備員が玄関に配置された。感染を恐れて病院から逃げるスタッフも現れた。ウルバニ医師は患者のもとにいつづけ、症状を記録していた。
ウルバニは、WHOのハノイ事務所の責任者に保健省との会議を緊急に開くよう訴えた。ウルバニは押谷医師にメールをし支援できるよう頼んだ。ウルバニは、ハノイで起きていることを公表するよう、医師の良心をかけて訴えた。保健省の代表は、大変な病気だと思っていなく、公表することを躊躇していた。ウルバニの粘り強い説得によって、世界に伝えることに理解を示した。ウルバニが未知のウィルスと遭遇して7日目のことだった。

◇世界への警告
 WHO本部に、香港で新たに重症の肺炎が広がっているという情報が届いた。WHOは緊急に警告を出すことにした。そのためには、診断基準が必要となる。ウルバニ医師は、進藤医師に、どんな症状と経過をたどるかメールで送っていた。そのおかげで、グローバル・アラートを出す段階で診断基準ができていたという。

 ウルバニ医師が未知のウィルスを見つけて9日目、フレンチ病院は肺炎患者を残して閉鎖された。押谷医師もハノイに到着した。その日の夜、ウルバニ医師はバンコクに向かい、バンコクの病院に入院させた。ウルバニ医師は、肺炎に感染した。ウルバニ医師はバンコクに来て、他の人に感染させるかもしれないことを悩んでいたという。
病院にくることを止められていた、ウルバニ医師の妻がかけつけた。ウルバニ医師が世界に警告を伝えていたことをWHOの職員が伝えた。ウルバニはウィルスを見つけて27日目に亡くなった。新型肺炎SARSの脅威を示したグローバル・アラートを紹介、その後、ウィルスの正体が明らかになった。ベトナムは新型肺炎を制圧した最初の国になった。ウルバニ医師は故郷の人たちの拍手で迎えられた。墓には、国境なき医師、と刻まれている。
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アトピー性皮膚炎治療のエビデンス〜スキンケア〜

2018年10月21日 14時05分33秒 | いのち
 前項と同じく、第52回小児アレルギー学会(2015年11月開催)の講演メモ(実際はWEB配信)です。
 入浴方法や石けんの使い方について、世界各国のガイドラインを比較して相違点を浮かび上がらせています。
 ただ、薬物療法ではないので、エビデンスは乏しい傾向がありますね。

■ 「アトピー性皮膚炎に効果的なスキンケアは? 〜入浴、体の洗い方、石けんの使用、保湿剤について考える」(海老島優子Dr.)

<各国のアトピー性皮膚炎ガイドライン(以降GL)>
① 欧州皮膚科学会(Europian Academy of Dermatology and Venereology)2012年
② 米国アレルギー学会(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology)2013年
③ 米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)2014年
④ 日本皮膚科学会:2009年
⑤ 日本アレルギー学会:2015年

<国別GLによる入浴の評価>
※ 記載順(GL番号:推奨度:エビデンスレベル)
① C:3b
② D:ー
③ C:III
④ ○:ー
⑤ ○:ー

 入浴方法は欧米と日本では異なるようです。
 日本は湯船につかるのがふつうですが、欧米ではシャワーが中心と聞きます。
 どう比較評価してよいのか今ひとつピンときません。


<国別GLによる石けん使用の評価>
※ 記載順(GL番号:推奨度:エビデンスレベル)
① ー:ー
②(不使用)B:ー
③ C:III
④ ー:ー
⑤ ○:ー

 石けんの使い方も欧米と日本では異なるようです。
 石けん=soapと訳されますが、イギリスで soap というと香料入り高級石けんを指すそうです。では牛乳石けんなどシンプルなものはなんと呼ぶか・・・“クレンザー”と呼ぶと聞いたことがあります。米国皮膚学会(③)ではNon-soap(中性か弱酸性、低アレルゲン、無香料)と表現されています。
 なのでこちらも比較評価が難しい。

 米国アレルギー学会(②)のみ、「石けん不使用」を推奨していますね。理由は「itch-scratch cycleのトリガーとなるので避けるべき」「マイルドな石けん(無香料の“Dove”など)も同様」との説明があります。


<国別GLにおける保湿剤の評価>
※ 記載順(GL番号:推奨度:エビデンスレベル:保湿剤の効果:使用方法)
① B:2a:軽症中等症に対するステロイド減量効果、維持療法として有効:1日2回以上塗布、消費量として成人500g/週(幼児は150-200g/週)
② D:ー:保湿剤はファーストラインの治療として推奨、ステロイド外用薬減量効果あり:皮膚水分保持のために入浴後に塗布
③ A:I:疾患重症度・抗炎症薬の減少に強いエビデンスを持つ:使用量や使用回数に関する系統的研究はないが、十分量・頻回塗布が必要であると一般的には考えられる
④ A:2:1日2回のヘパリン類似物質の外用は再燃を有意に抑制する:1日2回が原則、再燃を生じないことが確認されれば漸減・間欠投与に移行
⑤ ○:ドライスキン・障害された皮膚に対するスキンケアとして推奨:1日2回の外用が1回よりも保湿効果が高い、一般的には入浴直後に使用すると説明


各国のGLに微妙な違いはありますが、総じて保湿剤の使用を推奨しています。①の欧州では使用量の記載もあり、すごく多い気がします・・・。
回数は1日2回が基本。
日本の大矢先生のグループによる研究でも、1日1回塗布では卵アレルギー感作が防げなかったけれど、1日2回塗布して完璧にドライスキンをコントロールしたら減ったと報告しています。

<石けんの使用のメリットとデメリット>
医師対象の某ワークショップWebアンケートによると、

・石けんの使用を勧める理由ベスト3;
① 皮膚表面の汚れ(汗、垢など)を取り除く
② 皮膚表面の黄色ブドウ球菌の繁殖を抑える
③ 皮膚に残った外用薬を取り除き、経皮吸収をよくする

・石けんの使用を勧めない理由ベスト3:
① 皮脂を落として搔痒感が強くなる
② 入浴又はシャワーで汚れは十分落とせる
③ 石けんの刺激感が皮膚症状を悪化させる


石けんを勧めない理由①は、入浴後に保湿剤でスキンケアすれば解決しそうです。
なお、私自身(ドライスキン傾向あり)が「石けんなし」を数ヶ月試したことがありましたが、気がついたら肌が痒くなり掻き壊してガサガサ・ザラザラになってしまいました。
なので、患者さんにはケース・バイ・ケースで指導しています。基本的には「泡立たせて石けん使用、それで皮膚が荒れるようなら一旦中止して様子観察」です。

<石けんを泡立てることの利点>
① 少量の石けんで広い面積を洗うことができ、石けんの過度の使用を防ぐ
② 皮膚への摩擦を減らす
③ 泡立てた細かい泡は、汚れを包み込み効率的に汚れを落とす
④ 石けんが流れやすくなり、皮膚への石けんの残留を減らす


石けんを泡立てる理由は「泡が油汚れを浮かせて落とす」と説明されてきました。きめ細かい泡の方がよいようで、当院では百均で売っている「ほいっぷるん」をお勧めしています。女子の洗顔用グッズとしてベストセラー商品だそうです。

<保湿剤に求められる作用>
① 角質柔軟化作用
② バリア機能
③ 保湿機能




よく見かける表ですが、ポイントを;

(ワセリン)油なので、加湿作用はありません。乾燥している皮膚に塗っても潤うことはなく、保護する(1枚膜を張る)だけです。なので「入浴後」の塗布が望ましいわけです。朝、塗る前にすでにカサカサがひどかったら「霧吹きで潤わせてから塗ってください」と指導することもあります。
幼児期以降ではワセリンはべとついてテカテカするので、(とくに女子は)嫌がるため、クリームタイプや液体タイプの保湿剤に切り替えることが多いです。
軽い保温作用もあるので、夏期に熱心に塗っていると汗疹の原因になり得ます。
また、油ですので水・お湯では落ちにくく、石けんの使用が必要です。

※ 「鉱物油とは(パラフィン・ワセリン・ミネラルオイル)」(リップクリーム店ビーズグロスHP)
 ・・・このHPを読むと、3つの物質はすべて石油から作られており、
・パラフィンは固形でロウソクの原料
・ワセリンは半固形
・ミネラルオイル(=流動パラフィン)は液状
なんだそうです。「ミネラルオイル」って言葉の響きがいいですが、この場合の「ミネラル」は電解質(ナトリウムやカリウム)ではなく鉱物という意味で、直訳すると「ミネラルオイル=鉱物油」となります。

(ヘパリン類似物質)使用感がよいのですが高価なのが玉に瑕。100gが3000円、ジェネリックでもその2/3程度。近年、「医療費を圧迫している」「健康女性がファンデーション代わりに使用しているのはイカン」などとよく話題になります。

(尿素)ウレパール®やパスタロン®という名前です。角質柔軟化作用に優れ、肘やかかとのガサガサがよくなります。ただ、傷があるとしみて痛い。子どもはこれを一度経験すると、逃げ回って塗らせてくれなくなります。しみて痛いところは湿疹前状態なので、保湿剤だけではよくならない証拠と捉えることもできます。
 私自身、尿素軟膏を塗っていた時期がありました。入浴後に尿素軟膏を塗ると、翌朝すごくカサカサする(悪化する?)のでやめました。

(セラミド)唯一、三つの作用をクリアしている保湿剤ですが、不思議なことに処方薬には存在しません。市販品は高価ですね。

(ビタミンE配合)処方薬であるユベラ®軟膏です。基剤はパラフィン/流動パラフィンですから、ワセリンとそう変わりません。ビタミンAも入っています。

当院では、主に3つの保湿剤を処方しています。季節や皮膚の状態で使い分けています。
これらを選んだわけは「安い」から、そして実際に自分たちで試して決めました

プロペト:別名「眼科用ワセリン」:唯一、「目に入っても大丈夫」と書いてある貴重な保湿剤です。ワセリンより少し柔らかい印象で、冬季中心にカサカサ感がひどい患者さんに。顔面は外にさらされて乾燥しやすいので、季節にかかわらずプロペトが基本です(本人が嫌がらない限り)。

親水クリーム:ワセリンを25%含んでいるクリームで水溶性です。つまり水やお湯で落ちます。このクリームは患者さんにより好みが分かれ、リピーターになるヒト、「広げにくいからイヤ」と好まないヒトに分かれます。

私自身は、親水クリーム愛用者です。
なぜか私、ワセリンを塗るとその場所が温かくなって痒くなるのですが、親水クリームはまったく刺激がありません。

グリセリンカリ液:別名「ベルツ水」:グリセリンは天然保湿因子でもあります。プロペト、親水クリームより角質軟化作用に優れている印象があり、四肢のカサカサ感がなかなか消えない乳幼児(とくに触ると硬い感じの時)に頻用しています。
 グリセリンカリ液の添付文書には「皮膚軟化剤」「効能・効果:手足の亀裂性・落屑性皮膚炎」とあり、アルカリ性が強いとの情報もありますので、顔面には使用していません(参考:「グリセリンとグリセリンカリ液」「グリセリンカリ液の使い方、グリセリンと違う?」)。

なお、「ベルツ水」という名前の由来は、明治時代に来日した医師のベルツ博士(草津温泉を世界に紹介した人物)が、温泉旅館(箱根富士屋ホテル)で働く仲居さん達の手荒れを見て、何とかしてあげたいと調合したのが始まりだそうです。


<まとめ>
Q1:アトピー性皮膚炎に効果的な入浴頻度は?
A1:1日1回以上、汗をかいたり汚れたときは適宜追加する

Q2:入浴時あるいはシャワー浴に体を洗うのに石けん(固体と液体)を使用するように勧める?
A2:汚れなどを落とすのに石けんの使用は必要。石けんはよく泡立てて使用し、しっかりと洗い流す。

Q3:保湿剤は、いつ・何回・何を塗るのが効果的?
A3:朝と入浴後、1日2回、患者さんの皮膚に合う者、好むものを使用する。

Q4:保湿剤とステロイド外用薬、どちらを先に塗るのが効果的?
A4:どちらが先でも臨床的効果は変わらないようなので、続けやすい方法を選択する。

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写生と会館

2018年05月16日 07時23分34秒 | いのち
 ヒトのオスは射精に快感が伴います。
 これは種の保存のために神が仕組んだ本能。
 使用上の注意が必要で、社会性や相手の承諾がないとルール違反になるので、その本能を理性でコントロールする必要があります。
 しかしその不適切な使用により、性被害やセクハラが発生が後を絶ちません。

 さて、私が今まで読んだ本には「性行為に伴う快感はヒトしか有していない、チンパンジーでも存在しない」と書いてありました。
 なので、この記事を読んで驚きました。
 ハエも射精で快感・興奮を味わうらしいのです。
 しかも交尾を拒否されたオスのハエは、アルコール摂取量が増える?
 ・・・な、なんてこと。

■ ハエも射精で快感を味わう?
HealthDay News:2018/05/16:ケアネット
 オスは種にかかわらず、ハエの仲間であるショウジョウバエであっても射精で快感を味わうらしいことが、4月19日の「Current Biology」オンライン版に掲載された論文により報告された。ハエが射精で興奮を得ることを報告した研究は今回が初。また、この研究では、ショウジョウバエのオスはメスから交尾を拒否されると、代わりにアルコールの摂取量が増えることも分かった。この研究には科学的な目的が設定されており、研究者らは、今回の結果は薬物やアルコール依存の原因解明に役立つ可能性があるとしている。
 研究を行ったバル=イラン大学(イスラエル)のGalit Shohat-Ophir氏によると、今回の研究の目的は非常にシンプルなもので、ショウジョウバエのオスが求愛行動をするときやメスが性フェロモンに誘因されて近づいてくるとき、あるいは交尾をして精子や精液を放出するときなど、交尾のどの過程が脳内報酬系につながるのかの解明を試みたという。
 Galit Shohat-Ophir氏らは、オスのショウジョウバエを用いて、神経ペプチドのコラゾニンを発現する神経を活性化させて射精を促し、脳内報酬系を評価する実験を行った。その結果、コラゾニンを発現する神経の活性化は報酬系に関与しており、射精をすると喜びを感じているらしいことが分かった。Shohat-Ophir氏はCurrent Biology誌のプレスリリースで「オスのショウジョウバエにとって交尾は自然の報酬であり、交尾をすると“神経ペプチドF”と呼ばれる脳の報酬処理に関係する神経伝達物質の濃度が上昇した」と説明している。
 性的欲求が満たされたオスのショウジョウバエでは、代替の報酬とされたアルコールの摂取量が減少することも示された。ただし、メスとの性的な関係が交尾にまで至らなかったオスではアルコールの摂取量は減らないことも分かった。つまり、ヒトと同様にハエの世界でも振られた恋人は酒に溺れることがあることが示されたという。
 Shohat-Ophir氏は「喜びや快感を感じさせる脳内システムは、ヒトだけでなく全ての生き物に共通してみられ、まさに生存するための基本的かつ日常的な仕組みといえる。また、今回の研究では、交尾に成功する、あるいは拒絶されるといった性行動は薬物やアルコールの使用という報酬への欲求に関与する可能性が示唆された」と述べている。
 さらに、Shohat-Ophir氏らは、性行動などの自然な報酬と薬物の乱用は同じ脳の報酬系を介して処理されており、利用しやすいハエは、モデル生物として薬物依存に関するさまざまな側面の研究に用いることができると指摘している。同氏らは今後、射精や交尾が成功した情報が脳に達する過程について調べを進め、ヒトの薬物やアルコール依存リスクとの関連についても研究を続けていく予定だ。


<原著論文>
Zer-Krispil S, et al. Curr Biol. 2018 Apr 17.

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NHKスペシャル「生命大躍進」

2018年04月22日 19時15分11秒 | いのち
NHKスペシャル「生命大躍進」(2015年放送)
第1集 「そして"目"が生まれた
第2集 「こうして"母の愛"が生まれた
第3集 「ついに"知性"が生まれた



 3年前に録画してあった番組を見てみました。

第1集「そして“目”が生まれた」
 地球上の生物の歴史は40億年と途方もない年月ですが、光を感じる“目”を持ったのは5億年前のことだそうです。
 もともと光を感じる遺伝子(ロドプシン遺伝子)は、植物性プランクトンが有していました。

 ロドプシン遺伝子をなぜ動物が持つようになったのか?

 番組では、動物が食べた植物性プランクトンがたまたま生殖細胞に侵入し、遺伝子DNAの中に光を感じる遺伝子が組み込まれた、と説明していました。
 昆虫(節足動物)の目は“複眼”で、輪郭がぼんやりとしか見えません。
 一方、動物(脊椎動物)の目は“カメラ眼”と呼ばれ、くっきりハッキリ見えます。

 カメラ眼はどうしてできたのか?

 ここも、遺伝子の突然変異で説明されていました。
 ふつう、生殖細胞の遺伝子数は、体細胞の半分で、精子と卵子が結合してもとの数に戻ります。
 しかし、たまたま体細胞と同じ遺伝子数をもつ精子と卵子が発生し、それが結合して奇跡的に生を受け成長すると・・・ここまででもあり得ない確率ですが・・・細胞数が2倍のスーパー個体が発生します。さらに長い歴史の中で、同じ奇跡がもう一度起こり、4倍体の遺伝子数を持つウルトラスーパー個体が発生した。
 4倍数の遺伝子をもつと、複雑に進化することが可能となり、その一つがカメラ眼であると説明されました。

 奇跡に次ぐ奇跡、ホントかなあ?

 ただ、環境に適応して変化すると長らく考えられてきた“進化”のとらえ方が変わっていることに気づきました。
 遺伝子変異は常に発生しており、ほとんどが淘汰されてしまいますが、ごくまれに環境に有利かつ生体に有利なモノが発生するとそれが選択的に残される、というカラクリです。

 これは、抗菌薬に対する耐性菌の発生と似ています。
 抗菌薬の使いすぎで耐性菌が発生すると考えがちですが、そう単純ではありません。
 細菌でも遺伝子変異は常に発生しており、その中のあるモノが抗菌薬投与中にたまたま生き残ると「耐性菌」と呼ばれるモノになるだけです(やはり単純か)。

第2集 こうして"母の愛"が生まれた
 今から2億5000年前、初期の哺乳類は卵を産んでいたそうです。
 卵を細菌感染から守るため、母親はリゾチームという殺菌物質を含む汗のような体液を皮膚から分泌してそれを卵に塗って保護していました。
 あるとき、偶然の遺伝子変異で「αラクトアルブミン」というタンパク質が作れるようになりました。これは少し甘い栄養分。実はリゾチームと立体構造が酷似しています。
 すると生まれた子ども達は、リゾチームとαラクトアルブミンを含んだ母の汗を舐めるようになりました。
 これが母乳の始まりです。
 私が驚いたのは、「リゾチーム」と「αラクトアルブミン」。
 これは現在の人間の母乳にも含まれる物質であり、とくにアレルギーの原因になるコンポーネントとしても有名です。こんなに長い歴史があったとは・・・。

 それから、卵として産み落としていたシステムを、体内に取り込み胎盤を介して育てるシステムへ変換しました。
 これは、敵に襲われたときに一緒に逃げやすい利点があります。

 どのようにしてほ乳類は胎盤を手に入れたのか?

 意外なことに、これはウイルスから入手しました。
 別の働きをするレトロウイルス由来の遺伝子が、哺乳類の祖先に感染した際、生殖細胞に進入して代々受け継がれ、それが発効したときに胎盤を造ることになった、という夢のような話。

 ウイルス感染が遺伝子を修飾して人類を進化させてきたことは有名です。
 ミトコンドリアもウイルス由来と言われているし、人間の遺伝子の9割はウイルス遺伝子の残骸と呼んだこともあります。

 進化は奇跡の積み重ねから造られてきたのですね。

第3集 ついに"知性"が生まれた
 ここでもやはり、遺伝子の突然変異やトラブルが偶然(というか奇跡的に)人類の進化に貢献したらしい、とのこと。
 ネアンデルタール人は、人類の祖先(ホモ・サピエンス)ではなく、絶滅した特殊な霊長類と説明されていました。
 彼らはホモ・サピエンスより脳の重量が1割多かったことが骨の分析から判明しています。
 つまり、ホモ・サピエンスよりも知能が発達していた可能性があるということ。
 それから、体格ががっしりしていて、腕力はホモ・サピエンスの2倍!
 しかし彼らは進化の歴史から消え去りました。

 なぜネアンデルタール人は絶滅したのか?

 いろんな分析を統合すると、彼らは言語を持たなかった可能性が推測されています。
 そのため、進化から取り残されてしまった。
 ネアンデルタール人と人類の祖先であるホモサピエンスは、言語に関する40万の遺伝子情報のうち1つだけ異なるそうです。
 それが言葉の発達に影響を与え、片や絶滅し、片や進化の頂点に君臨することになった、というファンタジー。
 この分野ではまだまだ未解明の事がたくさんあり、研究は現在進行中。

<内容紹介>

第1集 そして"目"が生まれた
 40億年前の地球最初の生命から私たち人間まで、一度も途切れることなく繋がっている命の記録、DNA。その中には私たちの祖先に当たる古代生物たちの“痕跡”が残されている。信じがたい幸運や、想像を絶する大絶滅といった波乱万丈のドラマの末、進化の大躍進を成し遂げてきた“私たちの物語”とは?「生命大躍進」では、遙かな時を超えた壮大な進化のドラマを3回シリーズで描く。
第1集は「目の誕生」の物語。今からおよそ5億年前、それまで目を持たなかった祖先が、突如として精巧な目を持つようになった。いったいなぜ、急に目を持つように進化できたのか?私たちの「目の誕生」に秘められた驚きのドラマに迫る。

(放送を終えて)
 「遺伝子は時に、異なる種の間を移動し、それをもらった生き物は突然、“パワーアップ”できる。動物の目はそうして生まれた器官の一つ」3年前、国内のあるDNA研究者からこの話を伺い、ビックリ仰天したことこそ、「生命大躍進」シリーズの誕生の瞬間でした。なぜなら普通、「進化は親から子へ世代交代する過程で起こる」と考えられているからです。
 DNA研究が示す「種を越えた遺伝子の移動」という進化メカニズムは、従来の進化論を根底から覆すような話でした。「ひょっとして自分もカニを食べたら、カニの遺伝子が移ってカラができるかも。葉っぱを食べたらその遺伝子で光合成ができるかも・・・(人ではさすがに起きません)」などと妄想しながら、その日、興奮して帰路についたことを鮮明に思い出します。
 この取材のおかげで「DNA研究を取材すれば、過去の化石研究を軸とした生命シリーズと違う、全く新しい生命進化の番組ができる!」と確信することができました。
 第1集では、その話をしてくれたDNA研究者を徹底的に取材し、研究者の脳内だけにあった「目誕生の物語」のビジュアル化に挑みました。実はDNA研究では肝心の「遺伝子をもらって大躍進をした祖先の姿形が分からない」という難題がありましたが、そこは化石研究者の助言を受け、当時の祖先の姿を科学的に推定することで乗り越えました。
 こうして、DNA研究者が思い描く、眼誕生の瞬間を描きました。また、難解なDNAの話をどうかみ砕いて伝えるか、という点にも苦労しました。議論の末、新垣結衣さんに「進化に詳しい姉」と「あまり興味のない“ふつうの”妹」の二役に扮して頂き、二人の軽やかな会話の中でDNAの本質を伝えていく、という演出にたどり着きました。
 この番組では、時にCGで再現した古代の生物たちが、新垣さんや研究者たちがいる現代の世界へと飛び出します。遊び心にあふれたこのシリーズを通じ、人がいまここにいるようになった理由である「太古からの命の物語」に、子供から大人まで、家族みんなで思いをはせて頂ければ、担当者として幸いです。

第2集 こうして"母の愛"が生まれた
 第2集は、我が子を思う「母の愛」の誕生に迫る。今からおよそ2億年前、卵を産んだらそれで終わりだった祖先たちが、突如として献身的な子育てを始めた。それが、人間ならではの深い母子愛にまでつながった裏側には、祖先のDNAに起きた大異変があった!
 俳優の新垣結衣さんが、一人二役で姉妹を演じ、番組をナビゲート。

(放送を終えて)
 「ヒトのDNAの一部はウイルスに由来している」――そんな信じがたい話を研究者から聞かされたのが1年前のこと。しかも、そのウイルス由来のDNAが、ほ乳類の進化にも大いに関係しているというのだから、ますます信じられません。
 しかし、取材を進めていくと、過去のウイルス感染によって生物が進化していった証拠が、次々と見つかっていることがわかり、生物の教科書で学んだ進化論とは全く違う、SFのような新たな進化のイメージにとてもワクワクしたことを思い出します。
 番組では、こうした新しい進化論の中から、お腹で赤ちゃんを育てるための臓器「胎盤」の誕生にウイルスが関わっているという最新トピックと、それが人間ならではの「愛情あふれる子育て」へと繋がった物語をご紹介しました。
 想像に難くないことですが、ウイルス遺伝子が動物のDNAに入り込む時には、深刻な病気を引き起こすことがわかっています。多くの研究者に協力していただき、胎盤誕生の際に起きたであろう、ウイルス大流行の様子をリアルなCGで再現することに挑戦しました。私たちの祖先が絶滅寸前の危機を乗り越え、さらには侵入したウイルスの能力まで取り込んで進化してきた、その「たくましさ」を表現できるように、なんどもCGを練り直しています。
 私自身は、そうした祖先たちの苦闘の積み重ねの上に、自分の命があると想像すると、なんだか前向きに生きる力が湧いてきます。
 この3回のシリーズで紹介する、いくつもの奇跡的な進化の物語から、何かポジティブなメッセージを受け取っていただければと願っています。

第3集 ついに"知性"が生まれた
 最終回の第3回は、私たちの“知性”の誕生の謎に迫る。悠久の生命史の中にあって、文明を持ちうるほど高い“知性”を持った生き物は、私たち人間・ホモサピエンスだけだ。
 どのような進化の物語の末に、私たちはこの“知性”を獲得できたのだろうか?
 最新のDNA研究は、その謎をとく『鍵』ともいえる太古の事件を見いだした。実は、祖先達はおもいもよらぬことで脳を巨大化し、知性を高度化させたのだった・・・その驚きのドラマとは。
 最新研究成果に基づく超リアルCGで、その太古の事件の現場にタイムトラベル!ナビゲーターの新垣結衣さんと一緒に、私たち人間に至る最後の、そして最大の大躍進を目撃する。

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