小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

ダウン症の人が働くコーヒーショップ in ブラジル

2017年10月30日 09時45分45秒 | 医療問題
 ブラジルではダウン症が35万人いるそうです。
 出生前診断で排除しているアメリカでは何人いるのでしょう。

 ブラジルでのダウン症者への就職サポート、日本でも可能でしょうか。



■ ダウン症の人が働くコーヒーショップ、ブラジルに初登場
2017.10.29:TBS
 南米ブラジルで初めてとなる、ダウン症の人たちによるコーヒーショップがオープンしました。
 こちらでは、ダウン症の人に働く場所を提供したいと数か月前にできたお店です。
 今年7月にブラジル・サンパウロにオープンしたこちらのコーヒーショップで働くのは、ダウン症の人たち。この日、勤務していたホドリゴさんは3か月間の職業トレーニングを積んできたといいます。
 「お客さんにコーヒーを提供するのが大好きです。多くの人に私たちのコーヒーを飲んでもらいたいです」(ホドリゴ・マルケイスさん)
 ブラジルのダウン症の人の人口は約35万人。仕事をしなくても政府からの助成金が得られるため、なかなか社会進出が進まないといいます。そこで、ダウン症を支援するNGOが仕事のきっかけを提供したいと、このコーヒーショップをオープンさせました。
 「ダウン症の人は、ものを見極めしっかり物事に対応できる人材です。そして、会社にも、ともに働く従業員にも、徳を与えることができる人材でもあるのです」(コーヒーショップオーナーのマルシオ・ベルチさん)
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小児急性虫垂炎(盲腸)の診療ガイドライン2017発表。

2017年10月30日 07時20分15秒 | 小児医療
 私が研修医の頃は、虫垂炎の診断は腹部触診がメインでした。

・胃腸炎の腹痛は腹壁が柔らかく、臍周囲痛が中心。
・虫垂炎の腹痛は腹壁が痛みで緊張して硬く触れ(筋性防御)、痛みが右下腹部に固定。

 で判断していました。
 その後、超音波検査(エコー)が発達し診断・手術適応決定に欠かせない存在になってきました。
 そして今、虫垂炎診療のガイドラインが公表されるに至りました。

 それから、軽症の虫垂炎では昔から「薬で散らす」(抗菌薬投与で経過観察する)習慣がありました。
 現在でも薬の使い方は定まっていないようですね。

■ 国内初の小児急性虫垂炎診療のガイドラインが登場〜「虫垂炎スコア」が小児急性腹症の診断を支援
2017/10/26 日経メディカル

 あれ、『エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017』をネット検索しても見当たりませんが・・・?

 気を取り直してもう一つ関連記事を紹介します。
 まだ上記ガイドライン発表前のないようですが、問答形式でわかりやすい。
 虫垂炎には抗菌薬(=抗生物質)が効くのだから原因となる細菌があるはず、するとその起炎菌は何だろう・・・と素朴な疑問がわいてきます。近年、ようやくこの正体がわかりつつあるようで、起炎菌として「虫垂炎との関連が最近指摘されている嫌気性菌のBilophila wadsworthia」と記載がありますね。

■ 急性虫垂炎にはまず抗菌薬投与が主流に
2017/9/8:日経メディカル
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おたふくかぜワクチンの意義

2017年10月29日 12時58分55秒 | 予防接種

 おたふくかぜワクチンに関するわかりやすい解説(谷口恭 / 太融寺町谷口医院院長)を見つけたので抜粋・引用させていただきます。

■ おたふくかぜのワクチン、本当に不要?
(2016年4月24日:毎日新聞)
理解してから接種する−−「ワクチン」の本当の意味と効果
 「おたふくかぜの抗体検査をしてください……」
 先日、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患で通院されている30代の女性の患者さん(Mさんとします)から、突然そのようなことを言われて驚きました。若い女性の場合、風疹ワクチンは妊娠前に接種しておくべきことがかなり周知されてきており、また抗体が陰性であれば行政の助成があることから、風疹の抗体検査の依頼は毎日のようにあります。しかし、おたふくかぜは珍しい……。
「ワクチンをうとう」30代女性のMさんが決めた理由は?
 Mさんは、抗体検査を受ける前から「抗体陰性であればワクチンをうとう」と決めていました。「だって大人がおたふくかぜに感染すれば卵巣炎を起こして不妊になるんでしょ」とMさんは言います。たしかに成人がムンプスウイルスに感染した場合、男性であれば精巣炎、女性であれば卵巣炎を起こすことがあります。ただし、精巣も卵巣も左右に一つずつあり、両側に感染する可能性はそう高くありませんから、ムンプス卵巣炎=不妊、というわけではありません。
 しかし30代半ばのMさんが不妊のリスクを少しでも減らしたい、と考えるのは当然でしょう。また妊娠中にムンプスに感染すると流産のリスクが上がります。ワクチンシリーズの4回目で、妊娠中に麻疹にかかると重症化し、胎児の生存が危うくなるため、風疹だけでなく麻疹のワクチンも妊娠前に接種すべきだ、と述べました。そして、同じことがムンプスにも言えます。さらに次回述べるように、妊娠中に水痘(水ぼうそう)に感染すると、妊婦さん自身が「その後の人生を変えてしまうかもしれない後遺症」に苦しめられることもあります。妊娠前は風疹ワクチンと同時に麻疹、ムンプス、水痘ワクチンも考慮すべきです。この点でMさんの考えは合理的です。
MMRワクチンがMRワクチンになってしまった理由
 日本では、ワクチンシリーズ3回目でも少し触れたように、1988年から93年までは「MMRワクチン」という麻疹、ムンプス、風疹の三つが一緒になったワクチンが定期接種されていました(MMRとは麻疹=measles、ムンプス=mumps、風疹=rubellaの頭文字です)。しかし、副作用の発生率が高いことが分かり、中止となりました。この「副作用」というのがムンプスワクチンによって起きる「無菌性髄膜炎」です。これは、風邪シリーズの5回目で触れた髄膜炎菌による細菌性髄膜炎とは異なり、ほとんどが軽症です。しかし、当時の厚生省は中止の判断を下し、94年からはMMRのM(ムンプス)を一つ取り除いたMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)は定期接種のままとし、ムンプスワクチンは任意接種に“格下げ”しました。
 この判断に対して反対意見は少なくありません。ムンプスワクチンを製造している北里第一三共ワクチンのウェブサイトによると、ムンプスワクチンを接種したことが原因で起こる無菌性髄膜炎は2000〜3000人に1例の割合です。一方、ワクチンを接種せず、ムンプスに自然感染し、合併症として無菌性髄膜炎が起きる確率は1〜10%に達します。そもそも世界ではMMRワクチンが一般的であり、海外からは日本の対応は“過剰”と思われています。
ワクチンをうつ/うたない そのリスクの差を知って判断を
 もう一つ、ムンプスを考えるときに忘れてはならないのが「難聴」です。ムンプスの合併症として起きる難聴は極めて難治性で、治ることはまずありません。そして頻度も小さくなく、前述のサイトによれば4%に生じます。片側の耳だけに生じるならまだいいかもしれませんが(それでも小児期に難聴を抱えて暮らすのはかなりつらいものです)、両方の耳に起こることもあります。教科書では、ムンプス感染による両側性の難聴は「まれ」とされていますが、国立感染症研究所のレポートには、「全ムンプス難聴症例の14.5%とする報告例もある」との記載があります。これは「まれ」と呼べるレベルではありません。ワクチンを接種することにより、この難聴のリスクが大きく軽減できるのです。
 2000〜3000人に1人の割合(0.03〜0.05%)で生じうる無菌性髄膜炎のリスクを抱えてワクチンを接種するという選択1〜10%の確率で無菌性髄膜炎になり、加えて4%の確率で難聴(両側性難聴も決してまれではない)になるリスクを承知してワクチンを接種しないという選択どちらを選ぶかはあなた次第ということになります。ワクチンは理解してから接種する、が原則です。

■ おたふく風邪のワクチンは何回うてばいいのか
(2017年10月15日 :毎日新聞)
理解してから接種する--「ワクチン」の本当の意味と効果
 1年半ほど前にこの連載で「おたふくかぜのワクチン、本当に不要?」を公開した直後、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の患者さんから、ウイルスの抗体検査やワクチンについての質問が増えました。当時はおたふく風邪(「流行性耳下腺炎」とも言います)が4年半ぶりに流行していると報じられていました。その後は次第に減っていたのですが、最近再び増えてきています。
 おそらくその理由は、2017年9月5日に行われた日本耳鼻咽喉科学会の発表でしょう。同会によれば、おたふく風邪を発症し難聴になった人は15年と16年の2年間で少なくとも336人に上ります。ワクチンを接種しておけばこのような「悲劇」は防げた可能性が高いわけですから、同会がメディア向けに発表し、一般の人に注意喚起したのも当然でしょう。
おたふく風邪の後遺症とワクチンの副作用
 さて、今回は私自身が悩んでいるおたふく風邪ワクチンの問題について述べたいと思います。私の「悩み」とは、ワクチンは何回うてばいいのか、ということです。ですが、これを述べる前に、非常に重要なおたふく風邪が引き起こす「難聴」とワクチンの「副反応(副作用)」について復習しておきましょう。
 先述したコラムで述べたように、おたふく風邪に罹患(りかん)して難聴が生じる確率は4%にも及ぶと言われています。多くは片側性ですが、両側が難聴になる例も少ないとは言い切れず、全おたふく風邪難聴の14.5%が両側性という報告もあります。
 いったん定期接種になったおたふく風邪のワクチンが任意接種に「格下げ」されたのは、副反応が“多かった”からです。その副反応とは無菌性髄膜炎。ワクチン接種により2000~3000人に1人(0.03~0.05%)の割合で生じます。一方、ワクチン接種をせず、自然におたふく風邪に罹患して無菌性髄膜炎を発症する確率は1~10%にもなります。ただし、いずれの場合も無菌性髄膜炎はほとんどが軽症です。
 ワクチンの基本は「理解してから接種する」であることはこの連載で繰り返し述べています。こういった難聴や副反応の事実を説明した上で改めて考えてもらうと「接種を希望する」と答える人がほとんどですが、一方で「理解した上で接種しない」という選択肢もあるべきだ、ということも繰り返し述べてきました。
感染したくなければ2回接種?
 さて、今回の主題の「ワクチンは何回うてばいいのか」についてです。従来、生ワクチンは1回接種で十分と言われてきました。麻疹や風疹もかつては1回でOKと言われていました。しかし、ワクチン接種後の年数経過とともに免疫が減衰して発症することがあったため、06年に2回接種が定期化されました。では、おたふく風邪はどうか。やはり2回接種が勧められています。
 日本環境感染学会の「医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版」によれば、2回接種もしくは「抗体検査で抗体価陽性」の確認が必要とされています。
 このガイドラインは「医療関係者」のためのものです。しかし、ガイドラインには「医療関係者とは、事務職、医療職、学生を含めて、受診患者と接触する可能性のある常勤、非常勤、派遣、アルバイト、実習生、指導教官等のすべてを含むものとする」と記載されています。要するに、「医療関係者」とは医療機関に出入りする患者さん以外のすべての人と考えるべきです。おたふく風邪はそれだけ感染力が強いということです。医療関係者がワクチンを義務付けられるのは、患者さんから感染し他の患者さんに感染させることを防ぐためです。
 人がたくさん集まることを「マスギャザリング」と呼びます。過去のコラム(「麻疹抗体が消える理由と『マスギャザリング』の恐怖」)で述べたように、マスギャザリングに相当するのは、病院以外にも、空港、学校、コンサート会場、教会、地下鉄などの公共交通機関、ショッピングモールなど多数あります。これらの場所は、アウトブレーク(限定された範囲内での感染の大流行)の中心点になる可能性があり、誰もが感染のリスクにさらされているのです。他人(特に小さい子供)に感染させたいと思う人はいないでしょうし、誰もが精巣炎や卵巣炎を起こすのは防ぎたいでしょう。妊婦さんにとっては流産のリスクとなりますから、より一層、感染は避けたいでしょう。
 ですから「医療関係者だけでなく、感染したくない人は2回接種をしようね」ということになります。これですべて解決、であればいいのですが、私の「悩み」はここから始まります。それは、「2回で十分なのか?」ということです。
2回接種で抗体が陽転化しないケースも
 実は、私はワクチン2回接種で抗体が形成されなかった例を数例経験しています。抗体検査は保険が利かないこともあり、安くはありませんから、ワクチン接種をした人に対して勧めることはあまりないのですが、検査が義務付けられている人がいます。それは医大生や看護学生など医療系の学生です。学校にもよりますが、彼・彼女らはワクチン接種のみならず抗体が陽性になっている(陽転化)ことを証明しなければ実習に出られないことがあるのです。そこで、2回接種の後、抗体検査を実施することになります。そして陽転化していないことがあるのです。前出のフローチャートには「(ワクチン2回接種後は)抗体検査は必須ではない」と記載されていますから矛盾していることになります。
 さらに私を悩ませる論文が最近、著名な医学誌に発表されました。「New England Journal of Medicine」17年9月7日号(オンライン版:注)によれば、3回接種を受けていれば2回接種よりもおたふく風邪を発症するリスクが下がることがわかったというのです。
 調査の対象は米国の大学生約2万500人です。3回接種を受けた学生では1000人当たり6.7例が発症したのに対し、2回接種の学生は同14.5例にも上っていたのです。また、2回目の接種を流行前の2年以内に受けていた学生と比べると、13年以上前の接種者ではリスクが9倍以上にもなっていたことも分かりました。
 この結果を見ると、2回接種でもおたふく風邪のリスクを完全に排除できないことが分かります。論文の著者は3回接種が必要ではないかと主張していますが、私の懸念はその3回接種でさえ1000人中6.7人も発症しているということです。また、ワクチン接種後長期間あいていればリスクが上昇することも示されていますから、確実に感染を防ぐには「3回接種+定期的な抗体検査」が必要と考えるべきかもしれません。ですが、この方法だと費用がかなりかかることになり、現実離れしていると言わざるを得ません。
 前述のように、おたふく風邪は難聴という重大な後遺症があり得ます。その悲劇を少しでも減らすための第一歩として、おたふく風邪ワクチンを定期接種に「復活」するよう厚生労働省にお願いしたいところです。しかし、ワクチンにはとても“慎重な”この国では、期待しない方がいいかもしれません。ではどうするか。「自分の身は自分で守る」という考えにのっとり、ワクチンの原則「理解してから接種する」を実践するのがいいでしょう。
 さて、冒頭に書いた私の「悩み」はどうすればいいのでしょうか。結論としては当面の間、「2回接種を検討してもらい、抗体検査や3回目接種は患者さんごとに勘案する」という方針でいこうと考えています。
   ×   ×   ×
注:この論文のタイトルは「Effectiveness of a Third Dose of MMR Vaccine for Mumps Outbreak Control
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おたふくかぜにおける「自然感染 vs. ワクチン」

2017年10月29日 11時23分16秒 | 予防接種
 おたふくかぜワクチンはまだ定期接種化していません。
 小児科学会では以前から政府に要望していますが、なしのつぶて。
 そんな中、先日耳鼻科学会から「自然感染すると難聴の合併症が1000人に1人発生する」という衝撃的な調査結果が報告されました。
 そしてその難聴に治療法はありません。
 2年間で300人以上の難聴者が発生し、そのうち8割は生活に支障が出るレベル、16人は両側難聴、つまり音のない世界で一生過ごすことになります。

■ 学童期に多発「ムンプス難聴」 8割に高度の後遺症
2017年10月27日:教育新聞

発症年齢と人数(平成27-28年発症)

 おたふくかぜワクチンはその昔、日本で定期接種になったことがあります。
 現在のMRワクチン(麻疹・風疹)は、開始当初はMMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹)だったのです。
 しかし副反応として無菌性髄膜炎が想定外に多く発生し、数年で姿を消しました。
 その原因は、製薬会社がワクチン製造方法を勝手にアレンジしたためと判明しています。
 近年も化血研他、世間を騒がせていますが、昔からの体質のようです。

 とういわけで、現行ワクチンは単独接種になります。
 MMRで問題になった無菌性髄膜炎発生率は低い株が採用されています。

 自然感染では難聴の合併症が今まで思っていたより多い、しかしワクチンの副反応も消えたわけではなく心配。
 ワクチンを接種すべきか否か・・・悩ましい。

 ここでクイズを出します。
 下の表は、現行の二種類のワクチンを比較したものです。
 効果の高い、でも副反応の多いAワクチン。
 効果が今ひとつ、でも副反応の少ないBワクチン。
 あなたはどちらを選択しますか?



 勘のするどい方は、提示した表のAワクチンとBワクチンのカラクリがわかってしまったかな。
 そうです、「Aワクチン=自然感染」「Bワクチン=現行ワクチン」なのです。
 自然感染は100%免疫がつきますが、合併症も多く重篤であり、「最強&最悪のワクチン」と評価することもできます。
 それを避けるために開発されたワクチン、合併症(≒副反応)は自然感染より軽く少なくなりますがゼロではありません。効果も1回で80%、2回接種しても90%と自然感染にはかないません。

 でも、これが現実なのです。
 この事実を知った上で、ワクチンを接種すべきかどうか、各自考えていただきたいと思います。
 医者任せでは「こんなはずじゃなかった・・・」と後悔します。
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肝がんが増えている。

2017年10月29日 09時41分50秒 | 医療問題
 肝がんの原因で多いのは、子宮頸がん同様「ウイルス」です。
 肝炎を起こすウイルスはA、B、C、D、E型があり、そのうち肝がんが問題になるのはBとC型です。

 ご存じのようにB型肝炎ウイルスに対してはワクチンがあります。
 日本ではようやく2016年10月にB型肝炎ワクチンが定期接種になりました。
 実はこのワクチン、「元祖抗がんワクチン」なんです。
 HPVワクチンのように副反応で話題になることもなく、一度免疫がつくと20年以上維持されることもわかっている優秀なワクチンです。

 というわけで、このワクチンの普及に伴いHBVによる肝がんは減少しいずれ消えていくものと思われますが、残るはC型肝炎ですね。
 残念ながらC型肝炎初するに対するワクチンはまだ開発されていません。

■ 世界の肝がん罹患数が25年で75%増加〜世界疾病負担研究(GBD)2015サブ解析
2017年10月12日:メディカル・トリビューン
 米・University of Washington, Institute of Health Metrics and Evaluation(IHME)のChristina Fitzmaurice氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2015のデータを用いて1990~2015年における世界195カ国・地域の肝がんによる罹患率、死亡率、障害調整生存年(DALY)の推移を性・原因別に検証した。「肝がんの罹患数は25年で75%増加しており、肝がんによる負担は危険因子への曝露の違いから、男女間、地域間で大きく異なることなどが示された」とJAMA Oncol (2017年10月5日オンライン)で報告した。

2015年には81万人が肝がんで死亡
 肝がんによる負担の持続的低減を達成するため、国連開発計画(UNDP)が2016〜30年の国際目標として掲げる持続可能な開発目標(SDGs)および、その実現のために世界保健機関(WHO)が提示する諸施策にのっとり、肝がんの危険因子を特定し排除することが求められている。その主な目標はウイルス性肝炎の2030年までの撲滅、過度な飲酒の低減と禁煙、糖尿病および肥満の管理とされている。
 こうした中、Fitzmaurice氏らはGBD 2015のデータを基に1990〜2015年の世界195カ国・地域における原発性肝がんの罹患、死亡、DALYを性、原因別に検討した。
 その結果、2015年における世界の肝がんの罹患数は85万4,000例、死亡は81万例、DALYは2,057万8,000だった。肝がんは全世界で6番目に罹患率が高く、がんによる死亡としては肺がん、大腸がん、胃がんに次いで4番目に多いことが示された。

HBV関連は減少とHCV関連は上昇
 肝がんに伴う負担(罹患・死亡・DALY)が最も大きい地域は東アジアで、アジア太平洋地域の高所得国が罹患数では2位(死亡数3位、DALY 4位)、罹患数の3位は西欧(死亡数4位、DALY 5位)、4位は東南アジア(死亡数およびDALY 2位)の順であった。年齢調整罹患率は高い順からアジア太平洋地域の高所得国、東アジア、サハラ以南アフリカ西部であった。
 1990~2015年の経時的推移を見ると、世界の肝がん罹患数は75%増加。要因別では年齢構造の変化に伴い47%増加、人口の増加に伴い35%増加し、年齢別罹患率の変化に伴い8%減少したと解析された。
 年齢別罹患率の変化を原因別〔B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール、その他(肝吸虫症、肥満、カビ毒の1種であるアフラトキシンなど)の4カテゴリーに分類〕に見ると、HBV関連肝がんとその他の原因による肝がんは大きく減少していたものの、その効果は人口の増加と高齢化により相殺されていたHCV関連肝がんとアルコール関連肝がんについては同期間中の年齢別罹患率は上昇していた

肝がんによる負担は男性で大きい
 性、原因別に見ると、性差は顕著で、肝がん罹患数は男性が59万1,000例、女性が26万4,000例、肝がんによる死亡は同57万7,000人、23万4,000人、DALYは同1,541万3,000、516万5,000であった。年齢標準化罹患率、年齢標準化死亡率、年齢標準化DALY率も男性は女性より高かった(それぞれ2.5倍、2.8倍、3.1倍)。こうした性差は東アジア地域で最も大きく、原因別ではHBVおよびアルコールによる肝がんで顕著であった。

HCV死亡率の最高は日本で69%
 原因別に肝がんによる負担を見ると、罹患数、死亡数、DALYともにHBVが最も多く、次いでアルコールの順であったが、1990〜2015年は、罹患数の増加率が最も高かったのはHCVを原因とする肝がんで、次がアルコールによるものであった。
 HBVによる肝がんの年齢標準化罹患率は、有意ではないものの18.9%低下していたのに対し、HCVによる年齢標準化罹患率は15.7%上昇しており統計学的に有意な上昇であった。
 次に、肝がんによる死亡を病因別に見ると、全世界では2015年の肝がんによる死亡のうちHBVによるものは33%、アルコールが30%、HCVが21%、他の原因が16%であったが、国・地域による違いが極めて大きいことも明らかになった。地域別の解析では、肝がんの死因に占めるHBVの割合が最も低かったのはラテンアメリカ南部の6%、最も高かったのはサハラ以南アフリカ西部およびラテンアメリカ(アンデス地域)の45%HCVの割合は最低が東アジアの9%、最高がアジア太平洋高所得地域の55%アルコールの比率は最低が北アフリカおよび中東の13%で、最高が東欧の53%。その他の原因の比率は最低がアジア太平洋高所得地域の6%、最高がオセアニアの27%であった。
 国別の検討では、HBVによる死亡率は最低がメキシコの4%、最高がガンビア共和国の60%HCVでは最低がセネガルの7%、最高が日本の69%アルコールでは最低がイランの6%で、最高がベラルーシの63%、その他の原因では最低が韓国の5%で最高がインドネシアの39%であった。
 以上の結果から、Fitzmaurice氏らは「肝がんの原因は地域により大きく異なるものの、その大半はワクチン接種や抗ウイルス療法、輸血や注射の安全性確保、過度な飲酒の低減のための介入などにより予防可能であることが示唆された」と主張し、今回の解析を契機とした肝がん予防策に対する投資の促進を呼びかけている。


 次は、薬とワクチンを駆使したB型肝炎ウイルスの撲滅計画について。

■ B型肝炎の完全制御
 帝京大学内科学講座 教授 田中 篤
2017年10月11日:メディカル・トリビューン

【未解決の背景】抗ウイルス治療進歩の陰で残された課題
 近年、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)に対する抗ウイルス治療は大きく進歩した。HBVの増殖に不可欠なDNAからRNAへの逆転写を阻害する核酸アナログ製剤の登場により、HBVに起因する慢性肝不全は臨床現場からほぼ姿を消し、B型肝炎患者の予後が大きく改善されたことは明白である。
 しかしその一方で、いまだに解決されていない課題が残されているのも事実である。まず、発がんの問題がある。

 図に示すように、C型肝炎を成因とする肝細胞がんがこの20年で減少している半面、HBVによる肝細胞がんは減少していない。これには幾つかの要因が考えられるが、DNAウイルスであるHBVを体内から排除することが核酸アナログ製剤では困難であること、B型肝炎に対する治療適応が十分に浸透しておらず、本来治療すべき発がんリスクが高い患者が未治療のまま放置されていることなどが指摘されている。

 さらに、HBV既感染者が全人口の20%強を占める日本では、HBV再活性化も重大な問題である。日本肝臓学会の「B型肝炎再活性化予防ガイドライン」はかなり周知されているが、抗がん薬や免疫抑制薬の進歩に伴う再活性化の事例は依然として少数ながらも出現しており、定期的なHBV-DNA量のモニタリングなど再活性化予防に必要な経済的コストも無視できない。

【解決することの意義】肝細胞がんの撲滅とHBV再活性化の防止

 核酸アナログ製剤は有効性・安全性がともにほぼ満足すべきレベルにあり、最近の製剤では当初問題となった耐性変異ウイルスの出現も克服されている。核酸アナログ製剤による肝細胞がん抑制効果は、少なくとも肝硬変患者においては明らかにされており、HBVに起因する肝細胞がんを減少させるためには、発がんリスクの高い患者を漏れなく拾い上げ、核酸アナログ製剤を投与する必要がある。
 しかし実地医家にとって、日常臨床において遭遇するB型肝炎キャリアのうち、どの患者が高発がんリスクなのかを見極めることは必ずしも容易でなく、ともすると肝機能検査値(AST、ALTなど)が正常というだけで発がんリスクが低いと見なされてしまう。B型肝炎の発がんリスク(=治療の必要性)は肝機能検査だけでは判断できない。AST・ALTが正常の肝硬変は珍しくないのである。超音波検査などの画像検査、ウイルス学的指標(HBV-DNA量、HBs抗原量)を組み合わせて治療適応を判断しなければならない。
 HBV再活性化については、いったん発症してしまうと核酸アナログ製剤でも治療は困難であり、ガイドラインを遵守し再活性化を予防することが欠かせない。究極的には日本におけるHBV既感染者を減らすことが最も重要な再活性化防止策である。

【私の解決法】治療ガイドラインとユニバーサルワクチンの普及

 以上の観点から、日本におけるB型肝炎の完全制御に向けた解決法は以下のようになる。

 まず、B型肝炎患者に対する治療方針を広く周知することが必要である。日本肝臓学会では2013年に「B型肝炎治療ガイドライン」を策定し、改訂を重ねている。これには治療目標や治療適応、薬剤の推奨などが記載されており、このガイドラインを実地医家レベルまで普及させ、治療すべきB型肝炎患者を見逃さないことが、B型肝炎による肝細胞がんを撲滅するための第一歩である。それと並んで、核酸アナログ製剤とは異なる作用機序を有し、細胞内のHBVを完全に排除しうる新規薬剤の開発も急務である。
 B型肝炎の完全制御に向けた究極の対策は、特定の個人ではなく集団全体を対象とするB型肝炎ワクチン接種、すなわちユニバーサルワクチンの導入である。2016年には、日本でも0歳児に対するユニバーサルワクチンが定期接種化された。既に1986年に施行された母子感染防止事業とともに、このユニバーサルワクチンによって、日本におけるHBV感染者は徐々に減少していくと思われ、遠くない将来に撲滅することも期待できよう。


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肩こりと枕

2017年10月29日 06時09分03秒 | アレルギー性鼻炎
 「枕の上手な選び方」解説。
 読売 vs 朝日、どちらがわかりやすいですか?
 まずは読売新聞の記事;

■ 頭痛、肩こり…枕が原因?
(鈴木敦秋/取材協力=山田朱織・16号整形外科院長、岡田晃・枕工房「待夢」代表)
2017年10月18日;読売新聞

体に合ったものに替える
  Q  眠りが浅くて、夜中に目がさめる。朝から体がだるいし、集中力もないよ。
  ヨミドック  原因は、枕かもしれませんね。
  Q  えっ、枕?
  ヨ  そう、「枕不眠」という言葉もあります。枕の高さなどがあわず、寝ている間の姿勢が悪いため、ストレスが十分にとれないということがあるのです。もちろん、不調の裏には重い病気が隠れていることがあり、「枕さえ直せば」と考えることは禁物ですが、枕が合っているかどうか確認してみてください。
  Q  この枕、長く使ってきたんだけど。
  ヨ  使い慣れているからといって、あなたの寝ている姿勢が適切とは限りませんよ。
  Q  枕の調整で改善するかもしれない症状って?
  ヨ  例えば、頭痛は、睡眠によって、肩甲骨の周りや首の後ろ側の筋肉の緊張がとれれば楽になるはずなんです。しかし枕が合わないとうまく緩みません。緊張が続き、頭痛を慢性化させる人もいます。
  Q  まだ、ある?
  ヨ  肩こりや首痛。手足のしびれや痛みなども、首の骨とそこから出る神経を睡眠時に圧迫していることが原因となっている場合があります。これらの多くは、枕を替えた途端に症状が軽減します。睡眠時無呼吸症候群なども、寝ているときの姿勢との関係が指摘されています。



  Q  よい枕は、何を基準にすればよいの?
  ヨ  大事なポイントを挙げましょう。あおむけ寝で、最も首が休まる角度は15度前後とされます。首の付け根から耳までの角度が15度前後になる枕がよい枕です。
  Q  横向きで寝るときは?
  ヨ  頭、鼻、あご、胸の中心ラインが一直線でつながることが理想です。
  Q  自分が寝ている姿勢なんてわからないよ。
  ヨ  朝起きたとき、枕を見れば合っているかどうかわかります。合わない枕で寝たときの枕の特徴を表にしておきました。例えば枕がへこんでいたら、頭が沈み込んで首が不自然に反り返っている証拠です。「たかが枕」と侮るなかれ。生活習慣の改善の一つとして、ご自分の枕を見直してみてはいかがでしょうか。


 次に朝日新聞の記事;

■ 肩こりや首の痛みを予防 枕選びのポイントは?
2016年9月3日;南宏美、朝日新聞
 人生の3分の1の時間を費やすとも言われる睡眠。快眠には自分の体に合った寝具が重要です。枕の選び方を聞きました。
 枕外来を開設する16号整形外科(相模原市)には、肩こりや首の痛み、手のしびれ、頭痛、不眠の症状に悩む患者が多くやって来るという。
 山田朱織(しゅおり)院長らが2008~13年に同院を受診した410人(14~93歳)を対象に、自分に合った枕を使用する前と後で症状がどのように変わるかを調べたところ、7割強の人で肩こりや首の痛み、不眠の症状が改善した。15年の日本脊椎(せきつい)脊髄(せきずい)病学会でも発表された。



 山田さんは良い枕の条件として、自分の体に合った高さ、適度な硬さ、平らであることの三つを挙げる。「枕が高すぎたり低すぎたりすると神経が圧迫される。仰向けに寝た時、首の骨はまっすぐに伸び、床に対して15度前後になっていることが重要」と話す。
 また、人間はひと晩で20~30回も寝返りをしているという。血液やリンパ液の循環、体温調節などの役割があるため、「無意識にスムーズに寝返りができることも正しい枕の条件です」と山田さん。診療や研究をもとに開発したオーダーメイド枕を販売する一方、玄関マットやタオルケット、バスタオルを使った簡易枕の作り方も「山田朱織枕研究所」のホームページで紹介している。

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アセトアミノフェン不足問題2017

2017年10月29日 06時01分27秒 | 小児医療
 製薬会社の不正(原末の中国輸入)で出荷が中止され、一気に不足問題につながったアセトアミノフェン。
 当院でも現実のものとなりつつあります。
 解熱剤のない冬を乗り切れるだろうか?
 まあ、漢方薬を上手に使えば可能なのですが、説明するのが大変・・・。

 ん、出荷が一部再開されるというニュースを見つけました;

■ カロナール細粒の出荷が一部再開
2017/10/25 日経ドラッグインフォメーション

[関連情報]
・あゆみ製薬:供給についてのお知らせ【カロナール関連製品】(医療関係者向け)
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「カンピロバクター腸炎」概論

2017年10月27日 08時24分56秒 | 感染症
 下痢便に血が混じったという相談が時々あります。
 発熱もなく全身状態は悪くない・・・こんな患者さんに便培養検査をすると「カンピロバクター(Campylobacter)」が検出されることが多いです。

 インタビュー記事でわかりやすいものを見つけましたので、引用・抜粋させていただきます。

<ポイント>
・鶏肉・豚肉は生で食べない。
・イヌ・ネコなどペットから感染する可能性もある。
・体調・腸内環境を整えると感染しにくい&重症化しにくい。
・重症度はバリエーションがあるが、重症感があるときは積極的に抗菌薬(ニューキノロン系)を使用する。

■ カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?
公開日 2017 年 10 月 16 日:メディカル・ノート
仲瀬 裕志 先生 札幌医科大学医学部消化器内科学講座 教授

カンピロバクター腸炎とは〜下痢・腹痛・嘔吐などを引き起こす感染性腸炎
 カンピロバクター腸炎とは、カンピロバクター属菌の細菌に感染することによって引き起こされる感染性腸炎です。
 主な症状には、下痢、腹痛、発熱、悪心(おしん:吐き気を催す、胸のむかつき)、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などがあります。なかでも下痢や腹痛を訴える方が多いでしょう。発熱するケースでは38度を超える高熱がでるといわれており、筋肉や関節の痛みを訴える方もいます。

カンピロバクター腸炎の原因と感染経路〜カンピロバクター属菌は動物の腸管内に住みつく細菌
 カンピロバクター腸炎を引き起こす原因は、カンピロバクター属の細菌です。このカンピロバクター属菌は、主に牛や羊、豚、犬、猫、野鳥や鶏などの家禽(かきん)類の腸管内に常在菌として保菌されています。しかし、これらの動物や家禽類に腸炎が起こることはなく、細菌に感染し腸炎などの症状が現れるのは人間のみであるといわれています。

カンピロバクター属菌の感染の大半は、鶏肉などの食品から
 カンピロバクター属菌は、食事による感染が最も多いでしょう。鶏肉や豚肉などの食用肉を加工する際に菌が付着することで、感染源になりうるといわれています。
 菌の発育温度域は34〜43度であるため、十分に加熱すれば菌を死滅させることができます。さらに、大気中や乾燥した状態では菌が死滅しやすいといわれています。このため、生肉や半生の肉は、最も感染の危険がある状態といえるでしょう。
 また、食事による感染よりも少ないケースですが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした後には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の感染者数と発症率〜報告よりも多い発生が推測できる
 日本におけるカンピロバクター腸炎の正確な頻度はわかっていません。それは、細菌に感染し腸炎の症状が現れたとしても、必ずしもみんなが病院を受診するとは限らないからです。特に軽症の下痢や腹痛であれば、病院を受診しない方も多いでしょう。
 さらに、食中毒として届け出がされているものは非常に限られた症例であると予想できます。このため、カンピロバクター腸炎は、実際に報告されている症例数よりも多く発生していると考えてもよいでしょう。

カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間
 一般的に、細菌に感染したとしても、すぐに腹痛や下痢など腸炎の症状が現れるわけではありません。カンピロバクター属菌も例外ではなく、感染後、一定の潜伏期間(病原体に感染してから体に症状が出るまでの期間)を経て腸炎を発症します。
 カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間と、ほかの感染型細菌性食中毒と比較するとやや長い点が特徴です。

カンピロバクター属菌に感染すると必ず発症するの?
 カンピロバクター属菌に感染したからといって、必ずしもカンピロバクター腸炎を発症するとは限りません。さらに、発症しても軽症ですむこともありますし、必ずしも重篤化する方ばかりではないでしょう。しかし、特に体調が優れないときには発症しやすく、重篤化しやすいといわれているため注意が必要でしょう。

発症・重症化には腸内環境が関係している
 ではなぜ、体調不良が腸炎の発症や重症化につながってしまうのでしょうか。それは、体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなるからです。
 発症や重症化には、腸内細菌の状態が深く関わっていると考えられています。腸内細菌の状態は人によって異なりますが、腸内細菌の多様性が保たれているほうが、よりバランスがとれ良好な状態ということができます。腸内の防御のバランスがとれており、より腸管が守られている状態ということができるのです。
特 に、乳酸菌の一つであるエンテロコッカス・フェカリスと呼ばれる細菌がいなくなると、カンピロバクター属菌が増えやすくなることがわかっています。
 このため、腸内細菌の多様性が保たれ、エンテロコッカス・フェカリス菌が十分にある状態であれば、感染しても発症しない可能性も高くなると考えられています。

カンピロバクター腸炎の検査方法〜便培養(べんばいよう)検査が有効
 カンピロバクターの確定診断には、便培養(べんばいよう)検査が最も有効でしょう。便培養検査とは、患者さんの便を検体として採取・培養し、細菌の有無や菌の種類・量を調べる検査です。
 この検査を実施する際には、カンピロバクター腸炎の疑いがあることを、医師が検査の担当者に伝えることが重要です。カンピロバクター腸炎の疑いがあることがわかれば、重点的に該当する細菌がいないかどうかを調べることができるからです。

問診で食事内容をきちんと把握する
 そのため、便培養検査の前には患者さんへの問診が非常に重要になります。患者さんの食事の内容をきちんと把握することで、カンピロバクター腸炎の可能性があるか否かを判断することができるからです。
 実際、自身を潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜に連続的に炎症が起こることで、血便・下痢・軟便・腹痛などの症状が現れる疾患)だと思い受診された患者さんがいらっしゃいました。この方は、下痢や下血があったために潰瘍性大腸炎を疑ったのです。
 しかし、腸管にカメラを入れ検査をしたところ、カンピロバクター腸炎の特異的な広がりが認められたため、食事について尋ねました。数日以内に鶏肉を食べたことを話してくださり、そこからカンピロバクター腸炎が判明しました。
 下痢や嘔吐があっても、患者さんが必ずしも食中毒を疑うわけではありません。「まさか自分は食中毒ではないだろう」と思っているケースも少なくないのです。
 そのようなケースであっても、きちんと食事の内容について話を聞くことで適切な診断につながるでしょう。患者さんも、医師に食事内容を聞かれた際には、できる限り正確に伝えるようにしていただきたいと思っています。


■ カンピロバクター腸炎の治療と予防
公開日 2017 年 10 月 17 日:メディカルノート

カンピロバクター腸炎の予防1:食事やペットへの注意〜鶏肉や豚肉などはよく加熱する
 カンピロバクター腸炎は、食事から感染することが最も多いでしょう。たとえば、豚肉や鶏肉などに付着していることが多く、これらの食べ物から感染する可能性があります。
 特に、生肉や半生の状態の肉は感染の可能性が高く危険です。カンピロバクター属菌は、食用肉の表面に存在することが多いといわれているので、表面をよく加熱することが予防につがるでしょう。

ペットと触れ合ったら手を洗う
 また、食事による感染よりは頻度が少ないと考えられますが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした際には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の予防2:腸内環境の整備〜体調管理・食事の管理をして、腸内環境を整える
 ストレスや疲れが蓄積され体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなります。このように腸内環境が乱れた状態であると菌に感染しやすく、腸炎を発症し重症化しやすいといわれています。
 このため、ストレスや疲れをなるべくためず、体調を整えることが重要になります。さらに、体調が優れないときには生肉は避けるなどの工夫も予防につながるでしょう。
 また、近年の研究では、一週間食事の内容を変えるだけで、その人の腸内細菌を変化させることができるということが明らかになっています。たとえば、一週間、野菜を多く摂取することで、腸内環境は大きく改善されるでしょう。
 私は、腸内環境をよくするために、食物繊維を1日につき18グラム以上摂取するよう指導しています。これは、腸内細菌叢を良好に保つことに加え、狭心症などさまざまな疾患の予防にもつながるでしょう。 食物繊維は、ひじきやブロッコリー、ごぼう、おからなどに豊富に含まれています。食物繊維を気にしつつ、バランスのよい食事を心がけ腸内環境を整えることは、カンピロバクター腸炎の予防にも有効でしょう。

カンピロバクター腸炎の治療方法〜自然治癒が可能
 カンピロバクター腸炎の多くは、自然治癒するといわれています。基本的に、菌が体の外にすべて出てしまえば治癒する疾患なのです。しかし、なかには敗血症(全身症状を伴う感染症)など重篤な疾患を呈する方もいます。その場合には、抗菌剤による治療が必要です。

抗生剤が早期治癒につながる
 カンピロバクター腸炎の治療法は、すでに確立されています。多くのケースは、抗生剤(細菌を死滅させ感染を防ぐ抗生物質からつくられた薬剤)を服用することで改善されるでしょう。なかでも、ニューキノロンと呼ばれる薬剤が適応されることが多くあります。

カンピロバクター腸炎とギラン・バレー症候群との関連
 カンピロバクター腸炎による死亡例はほとんどなく、予後は良好であるといわれています。しかし、近年、カンピロバクター属菌に感染した方のなかには、ギラン・バレー症候群(GBS)を発症するケースが報告されています。
 グラン・バレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経が障害されることで発生する神経疾患の一つです。力が入りにくい、しびれる、などの症状が全身に現れる点が特徴です。
 私たち消化器内科からみると、カンピロバクター腸炎は、胃腸炎でおわるのですが、神経内科では、「カンピロバクター腸炎をみたら、ギラン・バレー症候群を疑え」といわれているのです。

ギラン・バレー症候群を発症するメカニズムとは?
 これは、カンピロバクター属菌の成分に対して生じた抗体が、ギラン・バレー症候群の発症に関連する神経組織のガングリオシドに対して免疫反応を生じるためであるといわれています。体のなかでカンピロバクター属菌に対する抗体反応ができれば、ガングリオシドに対しても、敵とみなし攻撃することになります。
 このように、近年では、カンピロバクター腸炎の発症をきっかけにギラン・バレー症候群を発症するケースがあるのです。
 我々消化器内科医も、カンピロバクター腸炎の診断後には、何週間か後に神経症状が現れる可能性があることを伝える必要があるかもしれません。もちろん100%ではありませんが、もしも神経症状が現れたら病院を受診するよう伝えることが重要になっていくでしょう。

体調が優れないときには十分に予防を
 カンピロバクター腸炎の多くは、治癒が可能であり予後も良好です。しかし、ギラン・バレー症候群など重篤な疾患につながる可能性はゼロではありません。
 体調が優れないときには生肉を避ける、十分に加熱するなど、十分な注意が必要でしょう。
 また、私は、カンピロバクター腸炎の予防には、普段の食事が重要になると考えています。和食は日本人にあった食事であり、世界が認めるヘルシーな料理法です。普段の食事を和食中心にして、食物繊維をとるように心がけるだけで腸内環境の整備につながります。腸内環境が良好な状態になれば、カンピロバクター腸炎の発症のみならず、あらゆる疾患の予防につながるでしょう。

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「卵円孔開存」は病的か?

2017年10月27日 06時44分47秒 | 医療問題
 小児科医の私にとって「卵円孔開存」は病気ではなく放置してよい生理的変化というイメージしかありませんでした。
 ところが一生を考えるとそうでもないらしく、心臓の負荷にはならないものの「潜在性脳梗塞」のリスクになるらしい、という記事を紹介します;

■ 卵円孔開存は問題か?(解説:後藤 信哉 氏)
提供元:臨床研究適正評価教育機構 公開日:2017/10/27:ケアネット
後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏 東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

オリジナルニュース
潜因性脳梗塞、PFO閉鎖術の長期的効果は?/NEJM(2017/10/02掲載)
潜因性脳梗塞への抗血小板療法単独 vs.PFO閉鎖術併用/NEJM(2017/09/29掲載)
PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM(2017/09/28掲載)

 胎児循環では心房中隔の一部としての卵円孔は開存している。出生とともに閉じるのが一般的である。剖検例を詳細に検討すると、20%程度の症例には機能的卵円孔開存を認めるとの報告もある。経食道心エコーでは心房の血流の詳細な検討が可能である。バブルを用いたコントラスト法により機能的卵円孔開存の診断精度も向上した。原因不明の脳梗塞の一部は、静脈血栓が開存した卵円孔を介して左房・左室と移動した血栓が原因と考えられた。とくに、出産時、潜水時などに比較的若いヒトに起こる脳塞栓には卵円孔開存を原因とするものが多いと想定された
 卵円孔が開存しても心負荷は増えない。将来の心不全を防ぐために卵円孔を閉鎖する必要はない。自分の患者が心房中隔欠損症の高齢出産のときには緊張する。1次予防は難しいとはわかっていても、入院時にできた静脈血栓が、腹圧増加時に欠損した心房中隔を介して重篤な脳卒中になるのが心配だからだ。卵円孔開存でも腹圧亢進時などには右・左シャントが起こりうる。1次予防は無理としても、卵円孔開存が明らかで、右・左シャントを介した脳梗塞を発症した後でも、われわれは診療に当たる必要がある。過去に抗血小板薬、抗凝固薬などの有効性が検証されたが明確な結論は得られなかった。卵円孔開存はまれではないが、原因不明の脳卒中を合併するリスクは少ないので、再発予防であってもランダム化比較試験を計画することは困難であった。今回はこの困難な領域において、複数のランダム化比較試験の結果が報告された。
 Masらのフランスのグループは抗凝固療法よりも、抗血小板療法よりも、経カテーテル的卵円孔閉鎖と抗血小板薬の併用の予防効果が高いとした(Mas JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1011-1021.)。しかし、経カテーテル的卵円孔閉鎖時の合併症を考えると今後の標準治療を転換するほどのインパクトはない。難しいランダム化比較試験を完遂した努力は賞賛したい。Sondergaardらも同様のランダム化比較試験を行い、同様の結果をNEJM誌に発表した(Sondergaard L, et al. N Engl J Med. 2017;377:1033-1042.)。Saverらの結果も同様であった(Saver JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1022-1032.)。単独の試験の結果と比較して、複数の試験が同時に発表されれば、結果の信頼性は高い。しかし、SaverらはSt. Jude Medical社、SondergaardらはW.L. Gore & Associates社の助成研究である。自社のデバイスをうまく使える技術のある施設を選定したバイアスは否定できない。Masらの公的グラントによる研究も同様の成果を示しているので、技術の上手な術者であれば2次予防にはデバイスを考えてもよいのかもしれない。
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「プラセンタ」って「胎盤」のことですよ。た、食べるんですか?

2017年10月27日 06時06分34秒 | 医療問題
 「プラセンタ」という言葉は響きが美しいのですが、これは「胎盤」のことです。
 他人の、あるいは動物の胎盤を薬として飲んだり注射したり・・・私としてはちょっと避けたい。
 でも動物の中には出産後に自分の胎盤を食べる種もいると見聞きしたこともあります。

(Wikipedia「胎盤食」より)
「胎盤食(たいばんしょく、英:Placentophagy)とは哺乳類が出産を行った後、娩出された胎盤を食べる行為である。有胎盤哺乳類の殆どは胎盤を食べるが、例外として鰭脚類や鯨類、ラクダなど、そして殆どの場合でのヒトが挙げられる。食虫類、齧歯類、兎類、翼手類、食肉類、偶蹄類、奇蹄類(ラクダは除く)、霊長類で胎盤食が観察されている。有袋類では胎盤は排出されずに吸収されるため胎盤食はないが、流出した羊水をしきりに舐めることがある。胎盤食は滋養強壮、更年期障害防止、エイジングケア、産後の貧血や抜け毛対策、母乳分泌不全の改善、うつ病対策など様々な効果があるともいわれているが、胎盤食を実行した女性の人数や効果に関する科学的な調査研究結果はない[3]。 野生環境の中で捕食者から出産の形跡を消すために胎盤を食べるともいわれている。」

 ほ乳類では一般的なことで、実はヒトが例外らしい。

 ・・・そんなプラセンタを巡る記事を3つ紹介します:

■ 産後に胎盤を食べる「胎盤食」、メリットなく感染リスクも
提供元:HealthDay News、公開日:2017/10/25 ケアネット

 次は医学的検討。
 すでに薬になっているのですね。
 おもに「豚の胎盤」が使われているようです。

■ ブタプラセンタエキスの活性メカニズム解明につながる成分の存在を発見-東京工科大
2017年10月27日;QLifePro

 もうひとつ。
 プラセンタが褥瘡に効く可能性についての記事;

■ プラセンタ注射が高齢者の褥瘡に効く?
2017/10/24 日経メディカル
 
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