小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

LED照明が人体・自然界に及ぼす影響

2017年12月30日 07時36分38秒 | 医療問題
 便利なものは、必ずと言っていいほどマイナス面を持ち合わせています。
 LED照明は「明るくて長持ちして電気代も節約できる」利点を武器に急速に普及しています。
 それに伴い、人体に及ぼす影響、自然界に及ぼす影響が話題になるようになりました。
 下記記事を読むと「人間の体内時計のみならず、自然界の日内リズムも狂わせてしまう」可能性があるのですね。これは想定外の現象を引き起こすかもしれません。

LED照明による新たな「光害」の発生が地球的規模で懸念される
2017年11月24日:Gigazine
 自動車のヘッドライトや街灯、スマートフォンのカメラに備えられたフラッシュなど、LEDを使った照明器具は身近なところに多く使われるようになりました。小型でありながら明るく、しかも消費電力は低く長寿命という照明器具としては非常に優れた性能を備えているLED照明ですが、ここ近年で爆発的に世界に広まったことで環境に与える影響が懸念され始めています。

Science Journals — AAAS - e1701528.full.pdf
Energy-saving LEDs boost light pollution worldwide
The unfortunate side effect of LED lighting - The Verge

 この影響を明らかにしたのは、ドイツ地球科学研究センター(GFZ)の研究院を中心とする研究チームです。同チームは、人工衛星に搭載された観測装置を用いて地球表面の明るさを計測したデータを用いることで、夜間において人工的に照らされるエリアの増減と光量の増減を調査しました。データは、アメリカ海洋大気庁が運用する極軌道上を周回する気象衛星「スオミNPP」によって計測されたものが用いられています。
 その結果判明したのが、人工的な光によって照らされる地球表面の面積は、2012年から2016年にかけて年2.2%の割合で増加を続けているという事実。



 また、その変化は光の波長の違いとしても観測されているとのこと。その一例を示すのが、イタリア・ミラノの夜景を撮影した可視光のカラー写真の変化。2012年のカラー写真ではオレンジ色のような街灯の明かりによって街全体が照らされているのに対し、2015年のカラー写真では街全体が白っぽい色に変化していること、そして色の変化のない郊外との色の違いが一目瞭然となっています。研究チームによると、これはLED電球への移行によってもたらされた変化とのこと。また、図は同地域で2012年から2016年の間で生じた明るさの変化をポイントごとに色分けしたもの。街の中心部では光量が減少していますが、周辺部では光量が増大していることが示されています。



 研究チームを率いたChris Kyba氏はこの変化について「いくつかの例外を除いて、ライトアップされる地域の変化は南アメリカやアフリカ、アジアで顕著に見られます。公園内の自転車道や、郊外へ延びる高速道路のように、かつては照らされていなかった場所が今は明るく照らされるようになっています」と語っています
 そしてこの変化は、さまざまな環境に対して良くない影響を与えることが懸念されています。報告書では、夜でも明るく照らされるエリアが増えることで昼夜のバランスが崩れ、地球の自然がこれまでしたがってきた1日のサイクルが乱されるという影響が生じる可能性が示唆されています。
 これは人間に対する影響はもちろん、小動物を含む動物全般や、植物の生態系に影響を与えると考えられているとのこと。人間の体に太陽光を受けて周期的に変化する「体内時計」が存在するように、地球の多くの動物や植物にも周囲の明かるさの変化をもとにする体内時計が存在していると考えられています。そのサイクルが、地球規模で広まる人工光の増大によって広く乱されることで、生物の生態系全体にまで影響が及ぶのではないかと懸念されているというわけです。論文の共同著者であるFranz Holker氏は「多くの人が、その影響について良く考えないまま夜間に照明を使っています」と語り、人工光の使いすぎによる悪影響に警鐘を鳴らしています。
 今回明らかにされたのは2012年から2016年のデータであり、より詳細な実態の把握には、それ以前にまでさかのぼったデータを用いることで数十年規模での変化を調査することを期待したいところ。さらにいえば、人間が電力を手に入れて人工光を大規模に使用するようになった時代からの変化を見ることで、実際にどのような影響が生態系に及んでいるのかを把握することにつながるはずです。


 同じサイトから、もう一つLEDの記事を。
 LEDは「目に不快なほどまぶしい、明るすぎる」と私も感じていましたが、これはパソコンモニターでも問題視されているブルーライトを多く含んでいるためだそうです。
 ポイントを抜粋すると、

・節電対策としてLED照明は推奨されるが、人体に及ぼす影響を考慮すると工夫が必要でああり、夜間の屋外照明、特に街灯は色温度を高くても3000K程度に抑えるべきである。
・大きな問題2つ;
①白色LEDはブルーライトを多く含んでいる。白色LEDの色温度(※)は4000〜5000Kと高く、ブルーライト(※)を多く含んでいる。
②サーカディアンリズムへの影響:白色LEDはトンネル内の照明としても有名なナトリウムランプよりも、夜間のメラトニン量を5倍も抑えてしまう。メラトニンの抑制はサーカディアンリズムの崩れにつながり、ここから睡眠障害に発展する恐れもある。LED街灯のまぶしすぎる光が野生動物に悪影響を与えてしまう可能性も示唆されている。


色温度:光源が放つ光の色を定量的な数値で表現する単位で、屋内照明の「電球色」が3000K程度、LEDが普及する前に多くの家庭で使用された白熱電球の色温度は約2400K。ライトが発明される前、人間は木々を燃やして明かりを作り出していましたが、木などを燃やしてできる明かりの色温度は約1800K。色温度からどのような色の光を含んでいるのかは予測可能ですが、色温度ではLEDから発せられる光の色を測定することはできないので、その場合は相関色温度(CCT)を用いる。
ブルーライト:可視光線の中でも最も強いエネルギーを持つ青色光。白色LEDから発せられるブルーライトは、波長が長い黄色・赤色光よりも人間の目の中で多く反射し、網膜にダメージを与えるため、目の瞳孔が過度に縮小する縮瞳を引き起こす原因にもなる。


■ 「LEDの街灯は健康・安全面に問題がある」と米国医師会が発表、一体どんな影響があるのか?2016年06月30日:Gigazine
 電球には白熱灯と白色LEDの2種類がありますが、2つを比べるとLEDは、消費電力が圧倒的に低く、おまけに白熱灯よりもかなり明るいという特長を持っています。より明るく、節電にもなるということで多くの場所で採用されている白色LEDですが、米国医師会(AMA)は、「街灯に使用されている白色LEDには健康・安全面で問題がある」と警告しています。

American Medical Association warns of health and safety problems from 'white' LED streetlights

 AMAは公式の年次報告書の中で、道路照明に使用されているLEDを弱めて暗くすることを明らかにしました。年次報告書の中で明かされたこの決定は、2016年6月14日にシカゴで開催された、AMAの年次総会の中で満場一致で決定した事項だそうです。アメリカでは近年、街灯でのLEDの使用が加速しており、シアトルやニューヨークの街灯にもLEDが使用されています。その中で下された決定ですが、AMAは「街灯に使用されているLEDライトが潜在的に持つ、人間の健康や環境に対する悪影響を最小限にするため」と、LED利用に関するガイドラインまで公開しています。
 アメリカの多くの地方自治体は、既存の街灯をLEDに取り替え、エネルギーの節約と街灯のメンテナンス性の向上を図ってきました。しかし、LED街灯には2つの大きな問題がある、とAMAは指摘しています。
 AMAは年次報告書の中で、夜間の屋外照明、特に街灯は色温度を高くても3000K程度に抑えるべき、としています。色温度というのは、光源が放つ光の色を定量的な数値で表現する単位で、屋内照明の「電球色」が3000K程度とされています。色温度は数値が大きくなれば大きくなるほど青色に近くなっていき、白色LEDの色温度は4000~5000Kです。この白色LEDは見た目は真っ白な光に見えますが、可視光線の中でも最も強いエネルギーを持つ青色光、ブルーライトを多く含んでいます
 対して、LEDが普及する前に多くの家庭で使用された白熱電球の色温度は約2400Kです。これは、LEDライトよりもブルーライトが少なく、ブルーライトよりも波長の長い黄色・赤色光を多く含んでいるということになります。ライトが発明される前、人間は木々を燃やして明かりを作り出していましたが、木などを燃やしてできる明かりの色温度は約1800Kで、白熱電球よりもさらに黄色や赤色の光が多く、これにブルーライトが含まれていません。しかし、LEDが広く普及した現在、屋内から屋外にいたるあらゆる場所で、照明として白色LEDが使用されています。
 その白色LEDが抱える問題点というのは、ひとつが「不快なほどにまぶしい光を発する」という点です。LEDライトはブルーライトが凝縮されており、これにより非常にまぶしい光を発します。しかし、白色LEDから発せられるブルーライトは、波長が長い黄色・赤色光よりも人間の目の中で多く反射し、網膜にダメージを与えるため、目の瞳孔が過度に縮小する縮瞳を引き起こす原因にもなるとのこと。白色LEDをしばらく凝視すると、目が痛んで目を閉じざるを得なくなります。「これはLEDの発する光が強すぎることをよく示している」と、海外ニュースサイトのThe Conversation。
 AMAが指摘する、白色LEDの持つ問題点の2つ目は「サーカディアンリズムへの影響」です。
 色温度からどのような色の光を含んでいるのかは予測可能ですが、色温度ではLEDから発せられる光の色を測定することはできないそうです。そこで用いられるのが相関色温度(CCT)と呼ばれる指標。CCTでは、同じ3000Kの光でもどちらが多くブルーライトを含んでいるか、などがわかるそうです。したがって、AMAは色温度が3000K以下になるようにLEDを選ぶだけでは不十分としています。
 AMAの年次報告書が公開されたのは、世界中で夜間の人工光がいかに発せられているかを示す「The World Atlas of the Artificial Night Sky Brightness」が公開されたタイミングと非常に近く、このマップの中の人工光のにはLED街灯も多く含まれているだろう、とThe Conversation。
 また、夜間のLED街灯による人体への影響についてもAMAは記述しており、白色LEDはトンネル内の照明としても有名なナトリウムランプよりも、夜間のメラトニン量を5倍も抑えてしまうことも判明しています。メラトニンの抑制はサーカディアンリズムの崩れにつながり、ここから睡眠障害に発展する恐れもあります。また、LED街灯のまぶしすぎる光が野生動物に悪影響を与えてしまう可能性も示唆されています。
 なお、AMAはエネルギー効率と人体への影響を鑑みて、白色LEDの使用を推奨しながらも、ブルーライトが最小限になるように照明をコントロールするべき、としています。
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「人食いバクテリア」(劇症型溶血性レンサ球菌)患者増

2017年12月26日 06時04分13秒 | 感染症
 おかしな名前で有名になってしまった「劇症型溶血性レンサ球菌」感染症。
 子どもに多い「A群溶血性レンサ球菌性咽頭炎」の菌と同じか違うか、今でもハッキリわかっていないようです。
 「わからない」って、いやですね。

■ 「人食いバクテリア」患者増 発症数十時間で死の危険も
2017年12月25日:朝日新聞
 筋肉の組織を壊死(えし)させることから「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者が増えている。国立感染症研究所によると、今年の患者数は1999年の調査開始以来、初めて500人を超えた。発症すると数時間で重症化して死に至ることもあり、注意が必要だ。
 感染研によると、今年の患者数は10日までで525人。2013年は203人だったが、年々増加している。都道府県別では東京が66人と最も多く、神奈川40人、愛知32人、福岡31人、兵庫28人と続く。
 原因となるのは、主にA群溶血性レンサ球菌。子どもを中心に咽頭(いんとう)炎を起こすことで知られているが、一部が劇症型になる患者の大半は30代以上で、特に高齢者に多い。持病がなくても発症する。傷口に菌が触れて感染すると考えられるが、どこから感染したかわからないことも多い。
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1960年以前の家畜への抗菌薬入り飼料によりペニシリン耐性が始まった。

2017年12月26日 05時55分18秒 | アレルギー性鼻炎
 耐性菌は人に臨床応用する前から存在していた、そしてその理由は家畜への抗菌薬使用だった、と推論した「The Lancet Infectious Diseases」掲載論文を紹介します。
 現在でも家畜飼料に入れる抗菌薬が問題視されており、未解決問題です。
 医師が「抗菌薬適正使用」しても、これを防ぐことはできません。

■ アンピシリン耐性菌は臨床導入前から存在していた?
(HealthDay News:2017/12/26:ケアネット)
 ペニシリン系抗菌薬の一つであるアンピシリンに対する耐性菌は、同薬がヒトの感染症治療に使用されるようになった1960年代よりも前から存在していたことが、パスツール研究所(フランス)のFrancois-Xavier Weill氏らによる研究で明らかになった。詳細は「The Lancet Infectious Diseases」11月29日オンライン版に掲載された。
 アンピシリンは広域スペクトルのペニシリン系抗菌薬で、英国では1961年に感染症の治療薬として発売されて以降、尿路感染症や中耳炎、肺炎、淋病などの治療に使用されてきた。しかし、同国では発売のわずか数年後(1962~1964年)にアンピシリンに耐性を示す細菌(S. Typhimurium)の感染が広がった。
 今回、Weill氏らは1911~1969年に欧州、アジア、アフリカ、アメリカの各地域における31カ国でヒト、動物、食品、家畜の餌から分離された288のS. Typhimurium株のアンピシリンに対する感受性の検査を実施。また、全ゲノムシークエンス解析を行い、アンピシリンに対する耐性獲得のメカニズムを特定した。
 その結果、ヒトから採取された分離株の約4%で多様なアンピシリン耐性遺伝子が同定された。また、ヒトの感染症治療にアンピシリンが使用されるようになる前の1959~1960年にフランスやチュニジアでヒトから採取された分離株において、アンピシリン耐性に関連する遺伝子(blaTEM-1)が認められた
 Weill氏によると、北米や欧州では1950年代から1960年代にかけて、家畜の餌に低用量のペニシリン(主に狭域スペクトルのペニシリン系抗菌薬であるベンジルペニシリン)が添加されていた。同氏は「今回の研究では直接的な因果関係を明らかにすることはできなかった」としながらも、「病気の治療以外の目的で家畜にペニシリン系抗菌薬を投与していたことが、1950年代後半の耐性菌の出現につながった可能性がある」との見方を示している。
 さらに、同氏は同誌のニュースリリースで「この研究結果は農場の土壌や排水、肥料などに残留する抗菌薬が、考えられていた以上に耐性菌の拡大に影響していることを示唆している」と指摘。「細菌には国境はない。世界レベルでヒトだけでなく動物における耐性菌の監視と調査を実施すべきだ」と強調している。
 ヒトに重篤な感染症をもたらす細菌の多くは、アンピシリンなどの抗菌薬に対する耐性を獲得している。耐性菌による世界の死亡者数(年間)は2050年には1000万人を超えると予測されている。こうした問題を背景に、世界保健機関(WHO)は最近、健康な家畜への日常的な抗菌薬の使用を中止するよう呼び掛けている


<原著論文>
・Tran-Dien A, et al. Lancet Infect Dis. 2017 Nov 29.
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インフルエンザ関連呼吸器系死亡の実情は?

2017年12月26日 05時47分47秒 | 感染症
 「インフルエンザは軽症で済む感染症だからワクチンや抗インフルエンザ薬は必ずしも必要ない」という意見も最近目にするようになりました。
 そういえば、小児のインフルエンザ脳症や老健施設の集団感染・死亡が話題になることが以前より減った印象があります。
 しかし、実感として他の風邪よりは合併症が多く、やはり要注意感染症であることは変わらないと思います。
 呼吸器関連死亡のデータをLancetの論文から。

■ インフルエンザ関連呼吸器系死亡の実情は?/Lancet
ケアネット:2017/12/26
 これまでインフルエンザに関連した呼吸器系死亡推計は、世界で年間25~50万人とされてきた。米国疾病予防管理センターのA Danielle Iuliano氏らは、「この推計値はWHOが2004年頃に公表したものだが、算出方法が不明で、1990年代のデータを用いていると推察され、各国の実状を反映していないと思われる」として、1995~2015年の各国インフルエンザ関連の呼吸器系超過死亡の推計値を用いて、最新の状況を推算した。結果、従来値よりも多い約29万~65万人と算出されたという。インフルエンザ関連死の推計値は、国際的なおよび各国のパブリックヘルスの優先事項を決定する際に重視されている。著者は、「従来数値によって、疾病負荷が過小評価されていたかもしれない」と指摘し、「世界のインフルエンザ関連死亡に占める、呼吸系疾患以外の死因について調査する必要がある」と提言している。Lancet誌オンライン版2017年12月13日号掲載の報告。

モデリング法を用いて世界各国のインフルエンザ死亡リスクの実態に迫る
 検討は、モデリング法を用いて行った。まず、死亡レコードとインフルエンザサーベイランスデータがある33ヵ国について、時系列対数線形モデルを用いて各国のインフルエンザ関連呼吸器系超過死亡率(EMR)を推算。次に、データのない国のために外挿法を用いて推計を行うため、WHO Global Health Estimate(GHE)の呼吸器感染症死亡率を用いて、各国の3つの年齢群(65歳未満、65~74歳、75歳以上)について、3つの分析部門(1~3)に分類した。
 EMR推定値のある国とない国のGHE呼吸器感染症死亡率の比較で全世界におけるインフルエンザ死亡リスクの差を明らかにするため、死亡率比(MRR)を算出。また、各年齢別分析部門内で個々の国の死亡推計を算出するために、無作為に選択した平均年間EMRsと各国MRRおよび母集団を乗算して評価した。
 全体の95%確信区間(CrI)の推定値は、1シーズンまたは1年間のインフルエンザ関連死の可能な値域を示す国別全推計の事後分布から取得した。
 そのほかに、呼吸器感染症による死亡率が高い92ヵ国について、同様の手法を用いて5歳未満児のインフルエンザ関連死を推計した。

季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例と推計
 EMR推定値の得られた33ヵ国のデータは、全集団の57%を占めた。
 平均年間インフルエンザ関連呼吸器系EMRは、65歳未満群では、10万人当たり0.1~6.4にわたった。65~74歳未満群では、同2.9~44.0であり、75歳以上群では17.9~223.5にわたった
 季節性インフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年29万1,243~64万5,832例(10万人当たり4.0~8.8)発生していると推計された。死亡率比が最も高いのは、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり2.8~16.5)、東南アジア(同3.5~9.2)であり、年齢群では75歳以上(同51.3~99.4)で最も高いと推定された。
 92ヵ国の5歳未満児のインフルエンザ関連呼吸器系死は、毎年9,243~10万5,690例発生していると推計された。


<原著論文>
・Iuliano AD, et al. Lancet. 2017 Dec 13.
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米国の季節性アレルギー性鼻炎ガイドライン2017

2017年12月25日 06時23分35秒 | アレルギー性鼻炎
 季節性アレルギー性鼻炎とは、花粉症のことです。
 日本のガイドラインは「内服薬ありき」ですが、米国では「ステロイド点鼻薬ありき」とちょっと異なります。
 また、免疫療法は「注射」(皮下免疫療法)とあり、日本で普及しつつある「舌下免疫療法」は認可されていないのでしょうか。

■ 季節性アレルギー性鼻炎の薬物療法に新ガイドライン
(HealthDay News:2017/12/25:ケアネット)
 多くの人を悩ませる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)のベストな治療法に関する新たなガイドラインが発表された。米国の2学会が合同で策定したもので、「Annals of Internal Medicine」11月28日オンライン版に掲載された。新ガイドラインでは12歳以上の季節性アレルギー性鼻炎患者に対し、ステロイド点鼻薬を主軸とした治療が推奨されている。
 このガイドラインはアレルギー性疾患や喘息、免疫疾患を専門とする米国の2学会(AAAAIおよびACAAI)の作業部会が策定した。主な推奨内容は以下の通り。

(1)12歳以上の患者に対する初期療法では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬の併用療法ではなくステロイド点鼻薬の単剤治療から開始する
(2)15歳以上の患者に対する初期療法では、ロイコトリエン受容体拮抗薬よりもステロイド点鼻薬の使用が勧められる
(3)12歳以上で中等症~重症の患者に対する初期療法では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬の点鼻薬の併用療法を患者に勧めてもよい

 AAAAIによると、ステロイド点鼻薬には市販薬もあるため入手しやすく、月当たりの薬代も15~20ドル(約1,700円~2,200円)程度と比較的安価だ。しかし、専門家がこの薬剤を推奨している最大の理由は、季節性アレルギー性鼻炎の初期療法で使用する薬剤として、他のどの種類の薬剤よりも有効性が高いからだという。
 また、米ノースウェル・ヘルスのアレルギー・免疫の専門医であるPunita Ponda氏は、副作用が比較的少ないこともステロイド点鼻薬の利点として挙げている。ただし、同氏は「ステロイド点鼻薬は完璧な薬ではない。鼻の痒みや乾燥、鼻血などの副作用の可能性もある」とした上で、「適切な方法で噴霧すればこれらの副作用は軽減されるため、医師に噴霧方法を教えてもらうとよい」と助言している。
 なお、新ガイドラインは12歳以上の患者を対象とした治療に関するものであるため、12歳未満の小児患者に対する治療指針は示されていないが、Ponda氏は「ステロイド薬による成長への影響を懸念する声があり、また噴霧器の使用が難しい場合もあるため、12歳未満の患者にはステロイド点鼻薬よりも経口抗ヒスタミン薬の方が有用である可能性がある」との見解を示している。
 一方、米ニューヨーク大学(NYU)ウィンスロップ病院のLuz Fonacier氏は「ステロイド点鼻薬が奏効しない患者には、抗ヒスタミン薬の経口薬や点鼻薬のほか、ロイコトリエン受容体拮抗薬が症状の軽減に役立つ場合もある」としている。
 さらにPonda氏は、ステロイド点鼻薬にこうした薬剤を上乗せしてもアレルギー症状をコントロールできない場合には、アレルゲン免疫療法(allergy shot)も選択肢の一つとなると紹介。この治療法は通常、週1回のペースで6カ月間にわたってアレルゲンを注射し、その後は月1回の注射を3~5年続けるというもので、「患者にとっては相当の覚悟が必要ではあるが、根治が望める唯一の治療法だ」と説明している。


<原著論文>
・Wallace DV, et al. Ann Intern Med. 2017 Nov 28.


 なお、「副作用を避ける点鼻ステロイド使用のコツ」とは、少しだけ外側に向けてプッシュすることです。
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厚生労働省の感染症対策に“改善勧告” by 総務省

2017年12月20日 08時17分38秒 | 感染症
 議論の多い検疫、厚労省に改善勧告を出したのは第三機関ではなく、なんと総務省でした。
 こういう自浄作用があったとは、意外な驚きです。

■ 総務省、感染症対策で厚労省に改善勧告 〜入国時検疫や診療体制、搬送で
2017.12.18:リスク対策.com
 総務省は感染症対策について調査し、厚労省に勧告を行った。
 総務省は15日、「感染症対策に関する行政評価・監視」について発表した。同省が厚生労働省、総務省(消防庁)、国土交通省、防衛省、16都道府県、15市区町村、医療機関や関係団体を調査。入国時の検疫や診療体制、搬送の問題点を、総務大臣から所轄する厚生労働大臣へ勧告を行った。調査は2016年8~11月にかけて行われた。
 エボラ出血熱流行国に滞在歴があったり、MERS(中東呼吸器症候群)流行国でラクダと濃厚接触があったりする者は入国時に申告し、健康監視の対象になる。しかしエボラでは申告が必要と知らず入国し、別の空港から入国した同僚からの情報により発覚したケースが1事例2人あった。MERSでも申告せずに入国し、指定医療機関に直接行ったケースが7事例7人あった。また健康監視になっても健康状態の報告が遅延や中断するケースがエボラで56.1%、MERSで66.6%あったという。
 総務省は調査結果を受け、入国審査と連携し、感染所流行国への渡航歴確認の必要性の周知徹底や、検疫官が確実に確認するための方策を早急に検討する、罰則適用も含め、健康監視対象者が報告を守ることの徹底を厚労省に勧告した。
 診療体制については44指定医療機関のうち、22.7%が指定病床数通り受け入れられない、常勤の感染症専門医が配置されているのが半数の55%にとどまることなどを指摘。実態を把握し、改善や必要に応じて制度の枠組みや指定基準を見直すよう勧告した。さらに搬送手段の点検や改善、検疫所での訓練などを呼びかけている。


■ニュースリリースはこちら
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5歳以降の熱性けいれんとその後のてんかんリスク

2017年12月18日 07時09分15秒 | 小児医療
 一般に熱性けいれんは年齢依存性けいれんとされ、脳の髄鞘化が完成する5歳以降は起こらないと説明されてきました。
 しかし、例外的にインフルエンザ罹患時は小学生でも起こる例を経験します。
 今後の検討が待たれますが、現時点では、てんかん発症リスクが一般健常群よりは高いと報告されています。

■ 5歳以降の熱性けいれんとその後のてんかんリスク
ケアネット:2017/12/15
 熱性けいれん(FS:febrile seizure)は、乳幼児期に起こる発熱に伴う発作と定義されているが、ほぼすべての年齢において観察される。FS後の非誘発性のけいれん発作リスクは、明確に定義されている。しかし、5歳以降でのFSの発症または持続に関するデータは、限られている。トルコ・Izmir Katip Celebi UniversityのPinar Gencpinar氏らは、5歳以降でFSを発症した患者の評価を行った。Seizure誌オンライン版2017年11月6日号の報告。
 2010~14年にFS患者すべてをプロスペクティブに登録した。患者背景、臨床的特徴、放射線画像、脳波(EEG)、精神運動発達テストの結果、患者の治療データを収集した。患者は、5歳以降で初めてFSを発症した患者と、5歳以降もFSが持続した患者の2群に分類した。データの分析には、フィッシャーの正確確率検定とピアソンのカイ二乗検定を用いた。
 主な結果は以下のとおり。

・64例が登録され、そのうち12例(18.8%)で無熱性けいれんが認められた。
・9例(14%)は、フォローアップ期間中にてんかんと診断された。
・その後のてんかん発症は、性別、平均年齢、病歴、てんかんの家族歴、非熱性けいれんの有無、発作タイプ、FSタイプ、発作の持続期間、発作症候学、ピークの発熱、脳波、MRI所見とは無関係であった。
・その後の無熱性けいれんまたはてんかん発症に関して、群間に統計学的な差は認められなかった(p>0.5)。

 著者らは「5歳以降のFS患者では、フォローアップが重要である。これらの発作は、一般的に良性であるが、再発しやすく、てんかん発症リスクを高める傾向がある。このような患者におけるリスク因子やてんかん発症率を明らかにするために、より大きなコホートを用いた研究が必要である」としている。


<原著論文>
・Gencpinar P, et al. Seizure. 2017 Nov 6.
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注射の痛みを消す医療用シール「エムラパッチ」発売

2017年12月18日 06時54分01秒 | 予防接種
 以前から表面麻酔薬のリドカインテープをいう製品がありましたが、新顔登場です。
 でもこの「エムラパッチ®」もリドカインを含有しており、この麻酔薬の副作用によるショックのリスクを背負うことになります。
 薬の副作用と注射の痛み予防の重さを天秤にかけて使用することになりますね。

★「エムラパッチ®」の添付文書より「重大な副作用」;
(1)ショック、アナフィラキシー
 ショック、アナフィラキシーをおこすことがあるので、 不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗、 全身潮紅、呼吸困難、血管浮腫(顔面浮腫、喉頭浮腫等)、 血圧低下、顔面蒼白、脈拍の異常、意識障害等の症状が 認められた場合には本剤の投与を直ちに中止し、適切な 処置を行うこと。
(2)意識障害、振戦、痙攣
 意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることが あるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には 本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
(3)メトヘモグロビン血症
 メトヘモグロビン血症があらわれることがあるので、チ アノーゼ等の症状が認められた場合には本剤の投与を直 ちに中止し、メチレンブルーを投与する等、適切な処置 を行うこと。


 エムラパッチ(魔法のパッチ?)の紹介記事です;

■ 魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減
ケアネット:2017/12/15
 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。
 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。

子供のころの痛みは記憶として大きくなる
 はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。
 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。
 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。
 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。
 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。

小児の痛みをマネジメントする時代へ
 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。
 一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。
 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。

痛みの軽減だけではない患児へのメリット
 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。
 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。
 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。

患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要
 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。
 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。


■参考
佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

<原著論文>
1)American Academy of Pediatrics: Neonatal anesthesia. Pediatrics. 1987;80:446.
2)Walker LS, et al. Pain.2010;150:568-572.
3)Taddio A, et al. CMAJ.2010;182:E843-855.
4)Whitlow PG, et al. Pediatr Blood Cancer.2015;62:85-90.
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卵アレルギーの予防法

2017年12月17日 13時48分47秒 | 食物アレルギー
 湿疹・アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんは、離乳食をどう進めていくべきかの指針の全体像が見えてきました。
 ポイントは、
・生後6カ月未満でアトピー性皮膚炎と診断された乳児は、医療機関においてスキンケアやステロイド外用薬を基本とした湿疹の治療を行う。
・湿疹のない状態(寛解)にした上で、医師の管理の下、生後6カ月からPETIT試験の方法を参考に微量の加熱鶏卵の摂取を開始する。
・1日1回の摂取で症状がないことを確認しながら、「授乳・離乳の支援ガイド」に準拠して摂取量を増やしていく
ーというもの。
 湿疹を放置していると、経皮感作が進んで食物アレルギーのリスクが高くなります。

■ 卵アレルギーは「微量のゆで卵」で防ぐ
 学会が提言、アトピー乳児は早期から卵摂取を
 湿疹のコントロールが成功の鍵
2017.12.14:日経メディカル
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「風邪による咳に効く薬はない」by アメリカ胸部医学会

2017年12月14日 07時56分28秒 | 感染症
 「風邪薬は効かない」ことは当ブログでは何度も取りあげてきましたが、
 今回は、米国の学会の見解が発表されたという記事を紹介します。

■ 「風邪による咳に効く薬はない」米学会が見解
2017年11月25日:medy
(HealthDay News 2017年11月8日)
 市販されているさまざまな咳止めの薬から米国で「風邪に効く」とされているチキンスープといった民間療法まで、あらゆる治療法に関して米国胸部医学会(ACCP)の専門家委員会が文献のシステマティックレビューを行ったところ、効果を裏付ける質の高いエビデンスがある治療法は一つもなかったという。
 これに基づき同委員会は指針をまとめ、「風邪による咳を抑えるために市販の咳止めや風邪薬を飲むことは推奨されない」との見解を示した。
 このシステマティックレビューと指針はACCP専門家委員会の報告書として「Chest」11月号に掲載された。
筆頭著者で米クレイトン大学教授のMark Malesker氏によると、数多くの米国人が風邪による咳に対して市販薬を使用しており、2015年の米国における市販の風邪薬や咳止め薬、抗アレルギー薬の販売額は95億ドル(約1兆700億円)を超えていたという。
 今回、同氏らはさまざまな咳に対する治療法の効果を検証したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施した。
 その結果、抗ヒスタミン薬や鎮痛薬、鼻粘膜の充血を緩和する成分が含まれる風邪薬に効果があることを示す一貫したエビデンスはなかった。
 また、ナプロキセン(ナイキサン®)イブプロフェン(ブルフェン®)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の試験データの分析からも、これらの効果を裏付けるエビデンスはないことが分かった。
 ACCPがこのトピックについてシステマティックレビューを実施したのは2006年に発表した咳ガイドライン以来だが、 「残念ながら2006年以降、風邪が原因の咳に対する治療の選択肢にはほとんど変化がない」と同氏らは説明している。
 では、眠れないほどつらい咳にはどう対処すればよいのだろうか。
 Malesker氏によると、1歳以上の小児に対しては蜂蜜にある程度の効果があることを示した複数の研究があるという。
 ただし、1歳未満の小児に蜂蜜は与えるべきではないとしている。
また、成人の咳には亜鉛トローチが有効であるとの弱いエビデンスがあるが、使用を推奨するには不十分で、亜鉛には副作用もあるため注意が必要だとしている。
 このほか、チキンスープやネティポット(鼻洗浄)といった民間療法についても強いエビデンスはなかった。
ただし、Malesker氏は「お気に入りのお茶やスープを飲んで気分が良くなるなら、そうするべき」と話す。
また、市販の風邪薬を試す場合、医師や薬剤師に相談することが望ましく、特に2歳未満の小児に薬を飲ませる場合にはかかりつけの小児科医に相談すべきだとしている。
 さらに、市販されている風邪薬には眠気などの副作用があることに加え、咳止めのシロップに含まれていることの多いデキストロメトルファン(メジコン®)には乱用リスクがある点についても注意が必要だという。
 米国立ユダヤ医療研究センターのDavid Beuther氏は「咳を止める効果的な手段がいまだに見つかっていないことにいら立ちを感じている。
 風邪による咳は睡眠やQOL(生活の質)に影響することもある」とした上で、「そんな時は手っ取り早い方法を求めがちだが、休暇を取って安静にすることも必要だ」と助言している。
 水分摂取も咳の原因となる粘液を洗い流すのに有効だという。
 なお、頻繁に風邪をひく場合や咳が長引く場合は軽度の喘息や慢性副鼻腔炎などの疾患が隠れている可能性もあるため、医師に相談した方がよいとしている。


 上記報告では「蜂蜜」がよいと記されていますが、近年この作用メカニズムも中枢性鎮咳薬と同じではないかとの研究発表もあり、今後の解析が臨まれます。

 当院ではふつうの風邪薬で治りの悪い患者さんに漢方薬をお勧めしています。
 例えば鼻水止め。
 西洋薬では抗ヒスタミン薬しかありません。
 しかし漢方薬では複数の方剤を使い分けます。
・風邪の初期のくしゃみ・鼻水には小青竜湯
・数日後、鼻水が濁ってきて奥にたまってつらそうなら葛根湯加川芎辛夷
・慢性化し、青っ洟がたくさん出続けるとき(蓄膿症・副鼻腔炎)は辛夷清肺湯
 等々。
 西洋薬の風邪薬を処方後「あの薬が効いたので同じものをください」という方は滅多にいませんが、
 漢方薬を処方後「あの薬が効いたので同じものをください」という方は少なからず存在して、皆さんリピーターになります。
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