オンライン診療とは、患者さんが来院せずにインターネットを使って診療することを言います。
当院では今まで導入してきませんでした。
理由は「直接の診察なしに、診断・治療することなんてありえない」という単純なものです。
ただ、重症心身障害児を診療している医院では必要だと感じてきました。
患者さんが来院するには多くのエネルギーを費やすからです。
実際に導入している医院は「在宅医療」をしている診療所が多いと思います。
でも当院はそのような患者さんを診療していません。
しかし、2018年4月に診療報酬体系が改定され、注目を浴びるようになりました。
はて、導入した方がよいのかな?
私の疑問は解決するのかな?
と気になり出しました。
「オンライン診療」の基礎知識を引用;
■ オンライン診療は進むの?(2018.4.28:m3.com)より抜粋
オンライン診療が広がり始めたのは、2015年以降です。医師法は原則として対面診療を想定していますが、厚生労働省は1997年に離島などの遠隔地では電話などによる遠隔診療が可能との通知を出し、2015年には離島などに限定しないとの方針を打ち出しました。さらに2017年にはテレビ電話やメール、SNSなどを組み合わせた診療も違法ではないとの通知を出し、オンライン診療向けの専用のシステム・サービスを提供する事業者も増えてきました。
◇ 今回の診療報酬改定で変わったこと;
診療報酬改定以前、オンライン診療は「患者からの求めによる電話等再診」として算定されていました。再診料は72点で、医学管理料は加点されませんが、実施要件は比較的緩く、実施しやすいものでした。
一方、今回の診療報酬改定では、一定の要件を満たせば、「オンライン診療料」として70点、「オンライン医学管理料」として100点を算定できるようになりました(「オンライン診療料70点、医学管理料100点」「オンライン診療、情報通信機器の費用は別途徴収可」などを参照)。
ただ、初診から6カ月の間は毎月同一の医師により対面診療を行い、かつ初診から6月以上経過していること、連続する3月は算定できないこと、また施設基準として、緊急時に30分以内で診察可能な体制を有していることなどの要件が厳しすぎるとの指摘があります。一方、今改定で、再診料の見直しも行われ、「定期的な医学管理を前提として行われる場合は算定できない」とされ、定期的なオンライン診療を再診料で算定することもできなくなりました。当面、オンライン診療の大幅な普及は難しいと見られています。
なるほど。
開業医にとっては下線部の「緊急時に30分以内で診察可能な体制を有している」は無理そうですね。
どうも厚労省は医者に「24時間体制で働け」と言いたいようです。
日本政府主導の“ブラック職業”ですね。
余談ですが、昨今、大学医学部入試で女子学生の差別が問題になっています。
大学側の理由は「数にならないから」です。
実際に、私が勤務医の頃、女性の小児科医は5年で8割が現場を退いていました。
過酷な勤務状況に絶えられなかったのです。
その頃思ったことは、
「このような勤務状況であることを医学部受験生に知らせておいて欲しい」
「同時に、勤務環境を改善して欲しい」
でした。
二つとも、改善されていませんが・・・。
以上、脱線話でした。
さて、オンライン診療で小児科関係の記事はないかと検索したら、下記の記事が目にとまりました。
なるほど、なるほど。
読んでみて、自分の外来にも少ないながらオンライン診療が有利な患者さんがいることがわかりました。
当院では処方の上限を1ヶ月に設定しています。
状態が安定しているけど通院が必要な中高生は確かに大変そうで、いつの間にか来なくなってしまうことがまれではありません。
このような患者さんはオンライン診療の恩恵を受けることができそうです。
例えば、喘息の定期治療をしている患者さん達。
小学校まではスムーズに通院できるのですが、中学生・高校生になると部活その他で忙しくなり、夕方6時までの診療時間には来院しにくいのです。病状が安定していれば、自ずと通院から足が遠のきがち。
しかし、喘息のくすぶりがなくなるわけではないので、きっかけがあればまた喘息発作が出てきます。とくに運動ですね。
すると、「これ以上走ったら苦しくなる」と運動を患者さん自らセーブしがちになり、実力が発揮できなくなります。
それが日常化すると、本人も慣れてしまってセーブしていることを忘れてしまい、「調子よい」と思い込んでしまうのです。
これは危険です。
このような治療不十分な患者さんが、突然悪化して呼吸困難・意識消失して救急車騒ぎを起こすのです。
しかし喘息発作状態なのに、患者本人が調子悪く感じていない・・・ゆゆしき問題です。
このようなリスクを回避するために、通院のハードルを下げるという意味で、オンライン診療は有意義だと思いました。
また、下記記事の文中にあるように、喘息の他にも「アレルギー性鼻炎、花粉症、舌下免疫療法、慢性じんましん、夜尿症、便秘」なども病状が安定していれば対象疾患に入りそうです。
あとは、オンライン診療システム導入と維持に必要な投資と、患者数を天秤にかけて導入を検討することになりますね。
■ 「子どもとオンライン診療」より抜粋
(2018年05月05日:朝日新聞)
黒木 春郎(外房こどもクリニック院長)
◇ 医療保険でオンライン診療が提供可能に
本論を執筆中の2018年2月7日、中医協(中央社会保険医療協議会)から診療報酬改定案の答申がなされた。そこに、「オンライン診療料」と「オンライン医学管理料」に代表される項目が新設されている(詳細は中医協答申*1を参照)。これにより今後オンライン診療が、外来診療・入院・訪問診療に次ぐ4つ目の診療スタイルとして、広く普及されていくことを期待する。
【2018年度改定でのオンライン診療への対応】
(新設)オンライン診療料
(新設)オンライン医学管理料
(新設)オンライン在宅管理料・精神科オンライン在宅管理料
対面診療の原則の上で、有効性や安全性などへの配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、情報通信機器を用いた診察や、外来・在宅での医学管理を行った場合に算定できる。
◇ 電話などによる再診の見直し
患者などから電話などによって治療上の意見を求められて指示した場合に算定が可能であるとの取り扱いがより明確になるよう要件を見直す(定期的な医学管理を前提とした遠隔での診察は、オンライン診療に整理)。
◇ オンライン診療とは具体的にどのようなものか
オンライン診療とは、インターネットに接続されたパソコン画面上で行う診療である。ビデオチャットを通じて医師と患者さんはコミュニケーションをとる。予定の時刻に、インターネット環境を備えた場所で、患者さんにパソコンやスマートフォン、タブレットなどを前にして準備してもらう。
医師もオンライン診療システムを立ち上げ、カルテ情報を開いて、モニター画面を通じて患者さんと向き合う。画面上で児と保護者と面談し、児の表情などを確認し、経過を確認する。医薬分業の場合は処方箋を郵送する。
筆者のクリニックでは処方箋の有効期限を1週間と通常より長くしてある。医師と患者さんとの関係が安定しており、児の状態も視診と問診で診断・治療が可能な状態であれば、ビデオチャット上での診療は医学的に十分可能である。診察は予約制で急性疾患には対応しない。オンライン診療が可能かどうかは医師が判断する。
厚生労働省が3月30日に公表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(指針)では、オンライン診療推進という理念がありながらも、同時に抑制するかのような制約も見受けられる。オンライン診療の悪用を防ぐために精密な文言を作らなければならないという制度設計側の主張は理解できる。今回の改定が完璧なものでないことは仕方がない。むしろオンライン診療実践者が事例を多数上げて、オンライン診療の優位点を社会発信することが大切となる。その上で2年後の保険制度設計がより緻密に、時代に応じたものとなることを期待する。
患者さんにとっては通院の労力が軽減され、その結果アドヒアランスも向上する。一方、医療側からは、オンライン診療システムを立ち上げて閉じる時間を考えると、対面診療の方がやや効率的である。改定前(2018年2月時点)の保険制度では運営上はやや不利であるが、当院では患者通院支援のシステムとして採用した。システムそのものは、複数のベンチャー企業がサービスを提供しており、導入は容易である。
◇ オンライン診療の理念・経緯・現状―地域医療の新しい概念
筆者のクリニックでは2016年6月にオンライン診療を導入した。筆者がオンライン診療を導入した理由は、それが地域医療に大きな変革を及ぼす可能性を直感したからである。新しい地域医療の概念という点では、十数年前の「在宅医療」制度の登場が想起される。それまでも「往診」という概念こそ存在したが、その後に在宅医療という概念が一分野として確立した。同様に、入院診療・外来診療・在宅診療と並んで、オンライン診療が一つの分野として確立すると予想される。
これまでの医療との違いは患者さんが自分の都合の良い場所から医療へアクセスできることにある。これまでの外来診療では、患者さんは医療機関へ出向かなければ患者になれなかった。オンライン診療はそこが異なる。このことは医療の概念の大きな変化の潜在的可能性を思わせる。先に述べたように、今回の診療報酬改定でそれが具体化された。
オンライン診療の適応に関して、筆者は以下2点を考える。
① 問診と視診で診察が可能な場合
② 医師患者間の信頼関係が成立していること
小児科では、状態の安定した気管支喘息・神経発達症・重度心身障害・てんかん・アレルギー性鼻炎・舌下免疫療法・慢性じんましんなどが対象となり、さらに夜尿症や便秘なども挙げられる。
オンライン診療に対する否定的な意見として、「医師の診療は五感を通して行うものであり、ビデオチャットでは診療は成立しない」というものがある。しかし、上記の要件を満たせば、対面診療にオンライン診療を取り入れることは可能であるばかりか、患者の利益の大きなものである。
米国では、telemedicineとしてさまざまな形のオンライン診療が、すでにかなり広く行われている。医師と患者との遠隔健康医療相談、認知行動療法、カウンセリング・心理療法、慢性疾患の教育におけるオンライン診療の利用などについて報告されている*2。
米国とわが国では医療制度が根本から違うので、比較は難しい。今回のオンライン診療料、オンライン医学管理料の新設およびそれの条件づけは、個人的な解釈だが、まずもってオンライン診療というものを制度に取り入れることを優先したもので、厚労省としては完璧な報酬規程を作るよりも、オンライン診療についてのさまざまな懸念に配慮したものを作ってスタートさせたのだと考える。したがって2年後の次回改定では、オンライン診療の事例を検討して、実情に即した規定となっていくものと考えている。さまざまな懸念とは、無診診療や医療機関の届け出の無意味化、従来医療機関と保険者のみが把握していた個人の診療内容がシステム業者を介することで漏出しないかとの危惧など、多岐にわたる。これらについて、2年間かけて、特に事例の積み上げを通して、制度設計をしていくのだと思っている。
わが国でも、さまざまな取り組みが開始されている。福島県南相馬市の市立小高病院では、オンライン診療を用いた在宅診療を導入している。点在する患者さんを看護師が回り、血圧・脈拍などを計測し、タブレットを立ち上げて、患者さんと病院の医師をつなぐものである。
また東京都心では、オンライン診療を活用して、精神科診療や慢性疾患の治療を行っているクリニックもある。患者さんは職場に近い都心のクリニックを受診し、再診以降は適宜オンライン診療を用いるわけである。都心から遠い自宅からのアクセスが可能となる。禁煙外来での有効性が示されている。舌下免疫療法でもオンライン診療によるアドヒアランス向上が報告されている。
福岡市では、福岡市医師会の全面協力によってオンライン診療を導入した在宅医療を進める地域実証実験が開始されている*3 *4。福岡市は短い期間でオンライン診療の地域モデルとなった。今回のオンライン診療料の新規算定にこの地域実験が果たした役割は非常に大きなものだったと思う。
ビデオチャットを利用した遠隔健康医療相談事業がある。これは医療行為ではなく相談事業であり、小児科医が保護者や患者さんの医療上の相談に乗るものである。相談者は、スマートフォンなど自分が使い慣れた機器で、自分のアクセスしやすい時間に相談できることが特徴である。この「小児科オンライン」という相談事業を展開している株式会社Kids Publicは、産後ケアとしての「小児科オンライン」の有効性の評価を目的として、成育医療研究センター、横浜市栄区との産学官連携による実証実験に参加している。
◇ 小児医療ならではの必要性
日本の出生率は年々減少し、小児人口も漸減している。一方、小児科外来患者数は漸増している。また、小児救急電話相談件数は年々増加しているが、小児救急患者は軽症が多いのが特徴である*5。これは小児疾患の構造変化と保護者の意識の変容、助成も含めて小児医療へのアクセスが容易になったことなどが要因として挙げられる。
子どもの数は減っている。小児科外来患者数は漸増、救急外来は軽症者が多く、そして救急相談は増加している。これは何を意味するのであろうか。小児科の需要は小児人口の減少にもかかわらず増加している。では、小児科の医療資源はどうであろうか。小児科医師数は漸増、医療施設は漸減である。ここで医師の偏在という問題がある。医師数は各自治体間で大きな差があり、また各自治体内部でも偏在は著明である*5。医師数の偏在、小児医療の需要の増加、そして小児疾患の構造変化が現在の小児医療の背景である。
人口減少モードへの突入を受けて、政府は「子育て世代包括支援」を掲げている。小児医療の向上は患者さんとご家族の生活の質を上げることにつながる。国を挙げての「子育て支援」の今こそ、小児医療を充実させるべき時である。当院でのオンライン診療の経験を図に示す。当院の特性もあるが、冒頭に提示した症例にように遠方の患者さんから近隣の方までさまざまな事例がある。
◇ 制度上の小児科領域における課題
先に示したように今回の診療報酬改定で、オンライン診療料、オンライン医学管理料新設が提案された。対象は表に示すように限られた疾患である。
表 「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」
この中で小児科診療に関連が高いものは、小児科療法指導料、てんかん指導料などであるが、日常診療ではこれらに含まれる疾患は限られる。また、改定での電話再診の見直しを考えると、上記対象疾患以外の新規患者に対してオンライン診療の開始が困難になることが懸念される。
オンライン診療は小児医療との相性が良く、患者さんとその家族への利点は大きいものである。国を挙げての「子育て支援」といわれる中、オンライン診療に関しても小児科への配慮が望まれる。
なお、オンライン診療料が算定可能な対象は初診から6カ月以上を経過した患者さんで、連続する3カ月は算定できないとされる。詳細は中医協答申*1や厚労省通知を参照されたい。また、今後制度の変更はありうることを付記する。
<総括>
1. オンライン診療により、患者さんの利便性は向上し、医療の質は上がる。
2. また物理的な距離を超えた医療が実現される。
3. それらにより、新しい地域医療概念となる可能性がある。
4. 現状では小児医療は偏在している。小児医療の充実には、医療へのアクセスの改善が必要である。
5. 子育て支援の中心に、小児医療の充実が置かれることが望まれる。
<参照文献>
*1 厚生労働省「個別改定項目について」. 中央社会保険医療協議会総会(第389回) 答申について. 2018年2月7日. p.395-400. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf (accessed 2018-04-03).
*2 Bryan L. Burke Jr; R. W. Hall; the SECTION ON TELEHEALTH CARE. Telemedicine: Pediatric Applications. Pediatrics. 2015, 136(1), e293-e308. Doi: 10.1542/peds.2015-1517.
*3 平成29年度厚生労働科学特別研究事業「情報通信機器を用いた診療についてのルール整備に向けた研究」(研究代表者 武藤真祐). 2018年2月8日. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000193829_1.pdf (accessed 2018-04-03).
*4 ICTで「かかりつけ医」を強化、福岡市で実証開始. 2017年4月25日. 日経デジタルヘルス. http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/042507328 (accessed 2018-04-03).
*5 厚生労働省「小児医療に関するデータ」. 第1回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会 子どもの医療に関する現状について. 2015年9月2日. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000096261.pdf (accessed 2018-04-03).
当院では今まで導入してきませんでした。
理由は「直接の診察なしに、診断・治療することなんてありえない」という単純なものです。
ただ、重症心身障害児を診療している医院では必要だと感じてきました。
患者さんが来院するには多くのエネルギーを費やすからです。
実際に導入している医院は「在宅医療」をしている診療所が多いと思います。
でも当院はそのような患者さんを診療していません。
しかし、2018年4月に診療報酬体系が改定され、注目を浴びるようになりました。
はて、導入した方がよいのかな?
私の疑問は解決するのかな?
と気になり出しました。
「オンライン診療」の基礎知識を引用;
■ オンライン診療は進むの?(2018.4.28:m3.com)より抜粋
オンライン診療が広がり始めたのは、2015年以降です。医師法は原則として対面診療を想定していますが、厚生労働省は1997年に離島などの遠隔地では電話などによる遠隔診療が可能との通知を出し、2015年には離島などに限定しないとの方針を打ち出しました。さらに2017年にはテレビ電話やメール、SNSなどを組み合わせた診療も違法ではないとの通知を出し、オンライン診療向けの専用のシステム・サービスを提供する事業者も増えてきました。
◇ 今回の診療報酬改定で変わったこと;
診療報酬改定以前、オンライン診療は「患者からの求めによる電話等再診」として算定されていました。再診料は72点で、医学管理料は加点されませんが、実施要件は比較的緩く、実施しやすいものでした。
一方、今回の診療報酬改定では、一定の要件を満たせば、「オンライン診療料」として70点、「オンライン医学管理料」として100点を算定できるようになりました(「オンライン診療料70点、医学管理料100点」「オンライン診療、情報通信機器の費用は別途徴収可」などを参照)。
ただ、初診から6カ月の間は毎月同一の医師により対面診療を行い、かつ初診から6月以上経過していること、連続する3月は算定できないこと、また施設基準として、緊急時に30分以内で診察可能な体制を有していることなどの要件が厳しすぎるとの指摘があります。一方、今改定で、再診料の見直しも行われ、「定期的な医学管理を前提として行われる場合は算定できない」とされ、定期的なオンライン診療を再診料で算定することもできなくなりました。当面、オンライン診療の大幅な普及は難しいと見られています。
なるほど。
開業医にとっては下線部の「緊急時に30分以内で診察可能な体制を有している」は無理そうですね。
どうも厚労省は医者に「24時間体制で働け」と言いたいようです。
日本政府主導の“ブラック職業”ですね。
余談ですが、昨今、大学医学部入試で女子学生の差別が問題になっています。
大学側の理由は「数にならないから」です。
実際に、私が勤務医の頃、女性の小児科医は5年で8割が現場を退いていました。
過酷な勤務状況に絶えられなかったのです。
その頃思ったことは、
「このような勤務状況であることを医学部受験生に知らせておいて欲しい」
「同時に、勤務環境を改善して欲しい」
でした。
二つとも、改善されていませんが・・・。
以上、脱線話でした。
さて、オンライン診療で小児科関係の記事はないかと検索したら、下記の記事が目にとまりました。
なるほど、なるほど。
読んでみて、自分の外来にも少ないながらオンライン診療が有利な患者さんがいることがわかりました。
当院では処方の上限を1ヶ月に設定しています。
状態が安定しているけど通院が必要な中高生は確かに大変そうで、いつの間にか来なくなってしまうことがまれではありません。
このような患者さんはオンライン診療の恩恵を受けることができそうです。
例えば、喘息の定期治療をしている患者さん達。
小学校まではスムーズに通院できるのですが、中学生・高校生になると部活その他で忙しくなり、夕方6時までの診療時間には来院しにくいのです。病状が安定していれば、自ずと通院から足が遠のきがち。
しかし、喘息のくすぶりがなくなるわけではないので、きっかけがあればまた喘息発作が出てきます。とくに運動ですね。
すると、「これ以上走ったら苦しくなる」と運動を患者さん自らセーブしがちになり、実力が発揮できなくなります。
それが日常化すると、本人も慣れてしまってセーブしていることを忘れてしまい、「調子よい」と思い込んでしまうのです。
これは危険です。
このような治療不十分な患者さんが、突然悪化して呼吸困難・意識消失して救急車騒ぎを起こすのです。
しかし喘息発作状態なのに、患者本人が調子悪く感じていない・・・ゆゆしき問題です。
このようなリスクを回避するために、通院のハードルを下げるという意味で、オンライン診療は有意義だと思いました。
また、下記記事の文中にあるように、喘息の他にも「アレルギー性鼻炎、花粉症、舌下免疫療法、慢性じんましん、夜尿症、便秘」なども病状が安定していれば対象疾患に入りそうです。
あとは、オンライン診療システム導入と維持に必要な投資と、患者数を天秤にかけて導入を検討することになりますね。
■ 「子どもとオンライン診療」より抜粋
(2018年05月05日:朝日新聞)
黒木 春郎(外房こどもクリニック院長)
◇ 医療保険でオンライン診療が提供可能に
本論を執筆中の2018年2月7日、中医協(中央社会保険医療協議会)から診療報酬改定案の答申がなされた。そこに、「オンライン診療料」と「オンライン医学管理料」に代表される項目が新設されている(詳細は中医協答申*1を参照)。これにより今後オンライン診療が、外来診療・入院・訪問診療に次ぐ4つ目の診療スタイルとして、広く普及されていくことを期待する。
【2018年度改定でのオンライン診療への対応】
(新設)オンライン診療料
(新設)オンライン医学管理料
(新設)オンライン在宅管理料・精神科オンライン在宅管理料
対面診療の原則の上で、有効性や安全性などへの配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、情報通信機器を用いた診察や、外来・在宅での医学管理を行った場合に算定できる。
◇ 電話などによる再診の見直し
患者などから電話などによって治療上の意見を求められて指示した場合に算定が可能であるとの取り扱いがより明確になるよう要件を見直す(定期的な医学管理を前提とした遠隔での診察は、オンライン診療に整理)。
◇ オンライン診療とは具体的にどのようなものか
オンライン診療とは、インターネットに接続されたパソコン画面上で行う診療である。ビデオチャットを通じて医師と患者さんはコミュニケーションをとる。予定の時刻に、インターネット環境を備えた場所で、患者さんにパソコンやスマートフォン、タブレットなどを前にして準備してもらう。
医師もオンライン診療システムを立ち上げ、カルテ情報を開いて、モニター画面を通じて患者さんと向き合う。画面上で児と保護者と面談し、児の表情などを確認し、経過を確認する。医薬分業の場合は処方箋を郵送する。
筆者のクリニックでは処方箋の有効期限を1週間と通常より長くしてある。医師と患者さんとの関係が安定しており、児の状態も視診と問診で診断・治療が可能な状態であれば、ビデオチャット上での診療は医学的に十分可能である。診察は予約制で急性疾患には対応しない。オンライン診療が可能かどうかは医師が判断する。
厚生労働省が3月30日に公表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(指針)では、オンライン診療推進という理念がありながらも、同時に抑制するかのような制約も見受けられる。オンライン診療の悪用を防ぐために精密な文言を作らなければならないという制度設計側の主張は理解できる。今回の改定が完璧なものでないことは仕方がない。むしろオンライン診療実践者が事例を多数上げて、オンライン診療の優位点を社会発信することが大切となる。その上で2年後の保険制度設計がより緻密に、時代に応じたものとなることを期待する。
患者さんにとっては通院の労力が軽減され、その結果アドヒアランスも向上する。一方、医療側からは、オンライン診療システムを立ち上げて閉じる時間を考えると、対面診療の方がやや効率的である。改定前(2018年2月時点)の保険制度では運営上はやや不利であるが、当院では患者通院支援のシステムとして採用した。システムそのものは、複数のベンチャー企業がサービスを提供しており、導入は容易である。
◇ オンライン診療の理念・経緯・現状―地域医療の新しい概念
筆者のクリニックでは2016年6月にオンライン診療を導入した。筆者がオンライン診療を導入した理由は、それが地域医療に大きな変革を及ぼす可能性を直感したからである。新しい地域医療の概念という点では、十数年前の「在宅医療」制度の登場が想起される。それまでも「往診」という概念こそ存在したが、その後に在宅医療という概念が一分野として確立した。同様に、入院診療・外来診療・在宅診療と並んで、オンライン診療が一つの分野として確立すると予想される。
これまでの医療との違いは患者さんが自分の都合の良い場所から医療へアクセスできることにある。これまでの外来診療では、患者さんは医療機関へ出向かなければ患者になれなかった。オンライン診療はそこが異なる。このことは医療の概念の大きな変化の潜在的可能性を思わせる。先に述べたように、今回の診療報酬改定でそれが具体化された。
オンライン診療の適応に関して、筆者は以下2点を考える。
① 問診と視診で診察が可能な場合
② 医師患者間の信頼関係が成立していること
小児科では、状態の安定した気管支喘息・神経発達症・重度心身障害・てんかん・アレルギー性鼻炎・舌下免疫療法・慢性じんましんなどが対象となり、さらに夜尿症や便秘なども挙げられる。
オンライン診療に対する否定的な意見として、「医師の診療は五感を通して行うものであり、ビデオチャットでは診療は成立しない」というものがある。しかし、上記の要件を満たせば、対面診療にオンライン診療を取り入れることは可能であるばかりか、患者の利益の大きなものである。
米国では、telemedicineとしてさまざまな形のオンライン診療が、すでにかなり広く行われている。医師と患者との遠隔健康医療相談、認知行動療法、カウンセリング・心理療法、慢性疾患の教育におけるオンライン診療の利用などについて報告されている*2。
米国とわが国では医療制度が根本から違うので、比較は難しい。今回のオンライン診療料、オンライン医学管理料の新設およびそれの条件づけは、個人的な解釈だが、まずもってオンライン診療というものを制度に取り入れることを優先したもので、厚労省としては完璧な報酬規程を作るよりも、オンライン診療についてのさまざまな懸念に配慮したものを作ってスタートさせたのだと考える。したがって2年後の次回改定では、オンライン診療の事例を検討して、実情に即した規定となっていくものと考えている。さまざまな懸念とは、無診診療や医療機関の届け出の無意味化、従来医療機関と保険者のみが把握していた個人の診療内容がシステム業者を介することで漏出しないかとの危惧など、多岐にわたる。これらについて、2年間かけて、特に事例の積み上げを通して、制度設計をしていくのだと思っている。
わが国でも、さまざまな取り組みが開始されている。福島県南相馬市の市立小高病院では、オンライン診療を用いた在宅診療を導入している。点在する患者さんを看護師が回り、血圧・脈拍などを計測し、タブレットを立ち上げて、患者さんと病院の医師をつなぐものである。
また東京都心では、オンライン診療を活用して、精神科診療や慢性疾患の治療を行っているクリニックもある。患者さんは職場に近い都心のクリニックを受診し、再診以降は適宜オンライン診療を用いるわけである。都心から遠い自宅からのアクセスが可能となる。禁煙外来での有効性が示されている。舌下免疫療法でもオンライン診療によるアドヒアランス向上が報告されている。
福岡市では、福岡市医師会の全面協力によってオンライン診療を導入した在宅医療を進める地域実証実験が開始されている*3 *4。福岡市は短い期間でオンライン診療の地域モデルとなった。今回のオンライン診療料の新規算定にこの地域実験が果たした役割は非常に大きなものだったと思う。
ビデオチャットを利用した遠隔健康医療相談事業がある。これは医療行為ではなく相談事業であり、小児科医が保護者や患者さんの医療上の相談に乗るものである。相談者は、スマートフォンなど自分が使い慣れた機器で、自分のアクセスしやすい時間に相談できることが特徴である。この「小児科オンライン」という相談事業を展開している株式会社Kids Publicは、産後ケアとしての「小児科オンライン」の有効性の評価を目的として、成育医療研究センター、横浜市栄区との産学官連携による実証実験に参加している。
◇ 小児医療ならではの必要性
日本の出生率は年々減少し、小児人口も漸減している。一方、小児科外来患者数は漸増している。また、小児救急電話相談件数は年々増加しているが、小児救急患者は軽症が多いのが特徴である*5。これは小児疾患の構造変化と保護者の意識の変容、助成も含めて小児医療へのアクセスが容易になったことなどが要因として挙げられる。
子どもの数は減っている。小児科外来患者数は漸増、救急外来は軽症者が多く、そして救急相談は増加している。これは何を意味するのであろうか。小児科の需要は小児人口の減少にもかかわらず増加している。では、小児科の医療資源はどうであろうか。小児科医師数は漸増、医療施設は漸減である。ここで医師の偏在という問題がある。医師数は各自治体間で大きな差があり、また各自治体内部でも偏在は著明である*5。医師数の偏在、小児医療の需要の増加、そして小児疾患の構造変化が現在の小児医療の背景である。
人口減少モードへの突入を受けて、政府は「子育て世代包括支援」を掲げている。小児医療の向上は患者さんとご家族の生活の質を上げることにつながる。国を挙げての「子育て支援」の今こそ、小児医療を充実させるべき時である。当院でのオンライン診療の経験を図に示す。当院の特性もあるが、冒頭に提示した症例にように遠方の患者さんから近隣の方までさまざまな事例がある。
◇ 制度上の小児科領域における課題
先に示したように今回の診療報酬改定で、オンライン診療料、オンライン医学管理料新設が提案された。対象は表に示すように限られた疾患である。
表 「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」
この中で小児科診療に関連が高いものは、小児科療法指導料、てんかん指導料などであるが、日常診療ではこれらに含まれる疾患は限られる。また、改定での電話再診の見直しを考えると、上記対象疾患以外の新規患者に対してオンライン診療の開始が困難になることが懸念される。
オンライン診療は小児医療との相性が良く、患者さんとその家族への利点は大きいものである。国を挙げての「子育て支援」といわれる中、オンライン診療に関しても小児科への配慮が望まれる。
なお、オンライン診療料が算定可能な対象は初診から6カ月以上を経過した患者さんで、連続する3カ月は算定できないとされる。詳細は中医協答申*1や厚労省通知を参照されたい。また、今後制度の変更はありうることを付記する。
<総括>
1. オンライン診療により、患者さんの利便性は向上し、医療の質は上がる。
2. また物理的な距離を超えた医療が実現される。
3. それらにより、新しい地域医療概念となる可能性がある。
4. 現状では小児医療は偏在している。小児医療の充実には、医療へのアクセスの改善が必要である。
5. 子育て支援の中心に、小児医療の充実が置かれることが望まれる。
<参照文献>
*1 厚生労働省「個別改定項目について」. 中央社会保険医療協議会総会(第389回) 答申について. 2018年2月7日. p.395-400. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf (accessed 2018-04-03).
*2 Bryan L. Burke Jr; R. W. Hall; the SECTION ON TELEHEALTH CARE. Telemedicine: Pediatric Applications. Pediatrics. 2015, 136(1), e293-e308. Doi: 10.1542/peds.2015-1517.
*3 平成29年度厚生労働科学特別研究事業「情報通信機器を用いた診療についてのルール整備に向けた研究」(研究代表者 武藤真祐). 2018年2月8日. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000193829_1.pdf (accessed 2018-04-03).
*4 ICTで「かかりつけ医」を強化、福岡市で実証開始. 2017年4月25日. 日経デジタルヘルス. http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/042507328 (accessed 2018-04-03).
*5 厚生労働省「小児医療に関するデータ」. 第1回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会 子どもの医療に関する現状について. 2015年9月2日. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000096261.pdf (accessed 2018-04-03).