小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「第32回 日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会」へ参加しました。

2015年06月22日 18時46分04秒 | 予防接種
 この学会に参加するのは10年以上振りです。
 以前は足繁く通っていたのですが、開業してから足が遠のき、学会費も払わなくなり除名されて今日に至ります(苦笑)。

 もともとは喘息児の長期入院療法を行っている施設の情報交換の場というイメージがありました。
 しかし、吸入ステロイドが治療の中心となってから、施設入院が必要な重症喘息児が減り、さらに閉鎖されるようになり、学会の存在意義が薄れた時期もあったと思われます。
 
 本学会の特徴の一つに、看護師他のメディカルスタッフの参加が多いことが挙げられ、発表も盛んに行われていました。
 その流れで出てきたのが「小児アレルギーエデュケーター(PAE)」という資格。
 これをはじめてから息を吹き返した感があり、今回もメディカルスタッフ中心に盛り上がりを見せていました。

 それはさておき、今回私が聴講したのは2つのワークショップ。

■ ワークショップ2「アトピー性皮膚炎の今までとこれから」

W2-2「proactive療法とreactive療法」福家辰樹先生(浜松医科大学)
 話題の治療法を興味深く拝聴しました。ステロイド軟膏を止めるとすぐに悪化してしまう中等症以上のアトピー性皮膚炎患者さんに対して、軟膏塗布間隔を徐々に開けていき最終的には週2回程度塗り続けるという方法です。私の印象は「喘息は吸入ステロイドを長期投与する方法がスタンダードになっているが、アトピー性皮膚炎もステロイド軟膏を間欠的に長期使用するという同レベルの治療になってきたな」というものです。
 詳細なノウハウは今後の課題ですが、1日1回塗布に減らしてから隔日へ移行するのか、あるいは1日2回のまま隔日塗布へ移行するのか、質疑応答で盛り上がりました。そうそう、みんなが持つ疑問点です。

W2-4「アトピー性皮膚炎のかゆみを評価する」小林茂俊先生(帝京大学)
 精神科領域で用いられている睡眠分析の機器を用いて、アトピー性皮膚炎のかゆみを評価するという画期的方法の紹介です。
 TARC値と掻破行動が必ずしも一致しないことがわかりました。

■ ワークショップ3「食物アレルギーの今までとこれから」

W3-1「食物アレルギー治療の現在と今後」伊藤浩明先生(あいち小児保健医療総合センター)
 歯切れのよいトークで食物アレルギーの歴史を俯瞰する内容でした。
 食物アレルギーを“食べて治す”方法は毎日食べ続けなければならない、時々食べるのでは治らない、と断言していました。
 また、アレルギー疾患発症の環境因子で重要なのは「生後3ヶ月までの日光暴露量が少ないとアレルギー疾患になりやすい」とのこと。これはアトピー性皮膚炎や喘息に共通した事実で、アトピー性皮膚炎は「湿度」が大切ではないかとのイメージがありますが、「アトピー性皮膚炎発症因子に湿度は無関係」と説明していました。

W3-2「食物アレルギーに対する免疫療法」長門直香先生(下志津病院)
 「食物アレルギーは除去より食べる方が治癒につながるらしい」「完全除去はアナフィラキシーを作る」というまとめがインパクトあり。「では、食物アレルギー乳児には軽度の皮膚症状が出ても食べさせる方が治癒につながるのですか?」と質問したら「口周囲の接触蕁麻疹だけならその方法もあり、しかし全身反応がある場合は当てはまらない」という解答でした。この辺のプロトコールは今後変わっていく可能性がありそうです。


 久しぶりに缶詰状態で学会を聴講して疲れました。
 しかし相変わらず冷房がきつくて体調が悪化しました。エアコンの設定温度を見たら「23℃」になっていた!
 夏の学会会場は寒さ対策、冬の学会会場は暑さ対策が必要です(苦笑)。
コメント
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