小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「麻疹流行 → ワクチン推奨 → 品不足」の悪循環

2018年05月16日 10時21分26秒 | 予防接種
 2018年3月、沖縄にはじまる麻疹小流行が全国に飛び火しつつあります。
 案の定、厚生労働省は「ワクチンを接種しましょう」と呼びかけ始めました。

 すると必然的に「ワクチン不足」が発生します。
 これまで何度も繰り返されてきました。

 例えば、日本脳炎ワクチン。

 「自治体の推奨は3歳以降だが、定期接種としては生後6ヶ月から可能、実際に1歳の感染・発症例も出ている」ため、一部の心ある小児科医が「生後6ヶ月になったら日本脳炎ワクチンを接種しましょう」と実行に移したら、早速ワクチン不足が生じ、当院でも半年以上ワクチンの予約を止めざるを得ませんでした。

 東日本大震災の際に、ガソリンを求めてガソリンスタンドに車が殺到してあっという間にガソリン不足になったのと同じ構造ですね。

 当院でも薬品卸業者から「麻疹含有ワクチン(=MRワクチン)出荷調整」の連絡が入りました。
 子どもの定期接種用のワクチンは何とか確保するが、それ以外の希望者に接種するワクチンは手に入らないとのことです。
 地域医師会からも「50歳以上の成人は自然感染による免疫がある可能性が高く、ワクチン接種の優先順位は低い」とのFAXが届きました。

 なお、当院ではスタッフの麻疹罹患歴、ワクチン接種歴、抗体価をチェックし、ワクチン接種が必要な人にはすでに済ませています。
 備えあれば憂いなし、です。

■ はしか感染者150人超す 沖縄や愛知で患者増加
共同通信社:2018年5月15日
 沖縄や愛知を中心に増加している「はしか」の今年に入ってからの患者数が少なくとも153人に上ることが15日、国立感染症研究所などの集計で分かった。
 厚生労働省は2回のワクチン接種を受けるなど予防の徹底を呼び掛けている。
 同研究所が15日午前に発表したデータによると、今年に入ってから5月6日までに感染者が確認されたのは沖縄や愛知、東京、大阪など12都府県。前回9日の発表と比較すると、新たに兵庫県が加わった。
 流行は沖縄で3月、台湾から観光に来た30代男性がはしかを発症したのが発端。県内では11日までに全国で最も多い97人が感染した。
 はしかは非常に感染力が強く、発熱や発疹のほか、せきや目の充血などの症状が出る。
厚労省は11日、特に重症化しやすい妊婦や0歳児の感染を防ぐため、接触することの多い病院や保育園の職員に2回の予防接種を徹底する方針を決定した。

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写生と会館

2018年05月16日 07時23分34秒 | いのち
 ヒトのオスは射精に快感が伴います。
 これは種の保存のために神が仕組んだ本能。
 使用上の注意が必要で、社会性や相手の承諾がないとルール違反になるので、その本能を理性でコントロールする必要があります。
 しかしその不適切な使用により、性被害やセクハラが発生が後を絶ちません。

 さて、私が今まで読んだ本には「性行為に伴う快感はヒトしか有していない、チンパンジーでも存在しない」と書いてありました。
 なので、この記事を読んで驚きました。
 ハエも射精で快感・興奮を味わうらしいのです。
 しかも交尾を拒否されたオスのハエは、アルコール摂取量が増える?
 ・・・な、なんてこと。

■ ハエも射精で快感を味わう?
HealthDay News:2018/05/16:ケアネット
 オスは種にかかわらず、ハエの仲間であるショウジョウバエであっても射精で快感を味わうらしいことが、4月19日の「Current Biology」オンライン版に掲載された論文により報告された。ハエが射精で興奮を得ることを報告した研究は今回が初。また、この研究では、ショウジョウバエのオスはメスから交尾を拒否されると、代わりにアルコールの摂取量が増えることも分かった。この研究には科学的な目的が設定されており、研究者らは、今回の結果は薬物やアルコール依存の原因解明に役立つ可能性があるとしている。
 研究を行ったバル=イラン大学(イスラエル)のGalit Shohat-Ophir氏によると、今回の研究の目的は非常にシンプルなもので、ショウジョウバエのオスが求愛行動をするときやメスが性フェロモンに誘因されて近づいてくるとき、あるいは交尾をして精子や精液を放出するときなど、交尾のどの過程が脳内報酬系につながるのかの解明を試みたという。
 Galit Shohat-Ophir氏らは、オスのショウジョウバエを用いて、神経ペプチドのコラゾニンを発現する神経を活性化させて射精を促し、脳内報酬系を評価する実験を行った。その結果、コラゾニンを発現する神経の活性化は報酬系に関与しており、射精をすると喜びを感じているらしいことが分かった。Shohat-Ophir氏はCurrent Biology誌のプレスリリースで「オスのショウジョウバエにとって交尾は自然の報酬であり、交尾をすると“神経ペプチドF”と呼ばれる脳の報酬処理に関係する神経伝達物質の濃度が上昇した」と説明している。
 性的欲求が満たされたオスのショウジョウバエでは、代替の報酬とされたアルコールの摂取量が減少することも示された。ただし、メスとの性的な関係が交尾にまで至らなかったオスではアルコールの摂取量は減らないことも分かった。つまり、ヒトと同様にハエの世界でも振られた恋人は酒に溺れることがあることが示されたという。
 Shohat-Ophir氏は「喜びや快感を感じさせる脳内システムは、ヒトだけでなく全ての生き物に共通してみられ、まさに生存するための基本的かつ日常的な仕組みといえる。また、今回の研究では、交尾に成功する、あるいは拒絶されるといった性行動は薬物やアルコールの使用という報酬への欲求に関与する可能性が示唆された」と述べている。
 さらに、Shohat-Ophir氏らは、性行動などの自然な報酬と薬物の乱用は同じ脳の報酬系を介して処理されており、利用しやすいハエは、モデル生物として薬物依存に関するさまざまな側面の研究に用いることができると指摘している。同氏らは今後、射精や交尾が成功した情報が脳に達する過程について調べを進め、ヒトの薬物やアルコール依存リスクとの関連についても研究を続けていく予定だ。


<原著論文>
Zer-Krispil S, et al. Curr Biol. 2018 Apr 17.

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小児夜尿症における抗利尿ホルモン製剤(ミニリンメルト®)の適応についての疑問

2018年05月04日 15時44分26秒 | 小児医療
 小児科医生活30年を越えた私にとって、小児夜尿症は治療の手応えのない病気の代表です。
 まず、夜尿症には下記のごとく3つのタイプが存在し、それぞれ対応が異なります。従来行われてきた治療も併記しました;

1.多尿型:薄いオシッコがたくさん出る → (治療薬)抗利尿ホルモン薬
2.膀胱型:膀胱が少ししかオシッコをためられない → (治療薬)抗コリン薬
3.混合型:多尿型と膀胱型の両方の要素がある → (治療薬)上記を合わせたもの

 小学校入学前後の子どもが相談によくみえますが、タイプ別では膀胱型(膀胱が小さくて尿をためられないため朝までに溢れてしまう)が多く、このタイプには薬も効きにくいのです。急に膀胱が大きくなるなんて不可能ですからね。
 通院していてもなかなかよくならないため、いつの間にか通院が途絶え、しかし数年後に困ってまた受診され、また通院が途絶え・・・を繰り返している間に成長とともに治る、という経過をたどりがちです。
 
 多尿型は薄いオシッコであることを検査で確認後、適応と判断されれば抗利尿ホルモン薬を使用すると有効率は高いです。
 しかし近年、専門家の講演会を聞いていると、必ずしも“薄いオシッコ”と言わないことが気になっています。
 フローチャートで「この治療が効かなかったら次はこれ」の流れの中にオシッコの濃い薄いを問わずに組み込まれているのです。
 この疑問に答えてくれる書籍がなかなか見つかりませんでしたが、先日下記啓蒙書に出会いました;

□ 「夜尿症のみかた」(金子一成著)南山堂、2018年。



 早速、治療の抗利尿ホルモン薬の項目を読んでみました。
 すると、以下のようにはっきりと書かれていました;

 夜尿症に対して酢酸デスモプレシン製剤(ミニリンメルト®)は、海外においては尿の濃縮力を考慮されずに使用されているが、わが国における保険適用は「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症」とされている。
 したがって、尿浸透圧あるいは尿比重が低下していることを確認するために、酢酸デスモプレシン製剤投与前に観察期間を設けて、起床時第一尿を用いて尿浸透圧あるいは尿比重を3回測定して平均値を算出する。その平均値が800mOsm/L以下あるいは1.022以下であれば、「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症」であり、酢酸デスモプレシン製剤の適応となる。
 酢酸デスモプレシン製剤の夜尿症に対する効果は約7割の患者で認められる。


 ・・・スッキリしました。私のこだわりは間違っていないことがわかりました。

 さて、治りにくい膀胱型への対処法として、現在はアラーム療法がお勧めです。
 今まで使われてきた抗コリン薬は有効率が数割にとどまりますが、アラーム療法の有効率は7割と高い。
 しかも多尿型・膀胱型のタイプを選ばないのです。

 しかし、ちょっと待てよ・・・日本では従来、「夜尿症の子どもを夜間起こしてトイレに行かせるのはよくない」と指導してきたはず。アラーム療法って、それをやっていることになるけど、いいの?
 という疑問が湧いてきます。

 紹介した本には、「夜尿アラーム療法の作用機序は明確になっていないが」と断り書きの上で以下のように説明されています;

 夜尿症患者の未熟な排尿反射抑制神経回路を、膀胱が充満したときに覚醒させることで強化する、ある種の条件づけ療法と考えられる。
 すなわち夜尿のない子どもでは、膀胱が尿で充満すると膀胱の伸展刺激が脊髄を経て橋の排尿中枢(青斑核)を介して大脳に伝わり、高位蓄尿中枢が睡眠中の排尿を抑制するシグナルを発し、膀胱の収縮波抑制される(夜尿は起こらない)。夜尿アラーム療法はこの神経反射回路を強化するものと思われる。
 実際、夜尿アラーム療法で治癒した患者においては睡眠中の膀胱容量(蓄尿量)の増加がみられる。


 なんだかわかったようなわからないような説明ですねえ。
 「高位蓄尿中枢」っておそらく大脳皮質にあると思われますが、睡眠中にも働いているんだ・・・それを強化する治療?

 他の本ではこんな風に書いてありましたが、こちらの方がわかりやすいかな;

 尿が出たことをアラームで本人に知らせると、本人は「起きてトイレへ行くか」「トイレに行かないで我慢するか」の二択を迫られる。それを繰り返しているうちに「トイレへ行かないで我慢する」方向へ進み、徐々に膀胱にためられる量が増えて夜尿が治癒する。
 これは、親が寝ている本人を起こして寝ぼけ眼でトイレへ連れて行かれて排尿するのとは、脳に対する刺激が大きく異なる。



<まとめ>
 ようやく、小児夜尿症に対する有効な治療法が以下のように整理される時代になりました;
・多尿型 → 抗利尿ホルモン(酢酸デスモプレシン製剤:ミニリンメルト®)で70%に有効、再発率40%
・膀胱型 → アラーム療法で有効率70%、再発率15%
・混合型 → 抗利尿ホルモン(酢酸デスモプレシン製剤)+アラーム療法
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子どもの片頭痛にトリプタン製剤は使えるのか?

2018年05月03日 11時50分24秒 | 小児医療
 子どもの片頭痛は悩ましい病気です。
 なぜって、診断できても使用できる薬が限定されているからです。

 えっ、片頭痛の薬ってたくさん発売されてるはずでは?

 という感想を持つ方もたくさんいると思われます。
 しかし、片頭痛の治療薬として有名なトリプタン製剤は、大人には使えても子どもには使えません。
 その理由は、日本では「保険適応がない」からです。
 保険診療で認められているのは、かぜでよく処方されるアセトアミノフェンとイブプロフェンしかありません。
 それらを使っても効きが悪い、何とかして・・・という患者さんにどうしたらよいのでしょうか?
 私はそのような患者さんには漢方薬を勧めてきました。

 さて、最近発売された小児の頭痛関連本を購入して読んでみました。

□ 「小児・思春期の頭痛の診かた〜これならできる!頭痛専門小児科医のアプローチ〜」(藤田光江監修/荒木清・桑原健太郎著、南山堂、2018年)



 もちろん、一番の興味は「薬物治療」の項目。
 そこには「日本では認可されていないけど外国では認可されている、あるいは臨床治験データで安全性が確認されている薬剤は、アセトアミノフェン/イブプロフェンが無効の場合は使用可」と記載されています。
 これが現時点での小児頭痛専門家のスタンスのようですね。
 「日本では認可されていないけど外国では認可されている」というギャップを早くなくして欲しいものです。
 しかし日本の医療行政は慎重で石橋を叩いて渡る傾向があるため、ワクチンでも外国との“ワクチンギャップ”が埋められなくて問題視されてきた経緯もあります(HPVワクチンは逆に“お手つき”して社会問題化しましたが)。

 この本を読んだ結論です;
小児片頭痛患者に対してはアセトアミノフェンあるいはイブプロフェンを第一選択薬とし、無効の場合は「マクサルト®RPD錠を、体重40kg以上かつ12歳以上であれば1錠使用可能(25kg以上40kg未満では1/2錠)


<備忘録>

□ 片頭痛のメカニズム
 硬膜血管周囲の三叉神経の軸索に何らかの刺激が加わり、CGRP(calcitonin gene-related peptide)やサブスタンスP(SP)などの神経ペプチドが放出され、血管が拡張し、血漿タンパクの漏出および肥満細胞からのヒスタミンの遊離などにより神経原性炎症が生じることで発症する。三叉神経終末の刺激が順行性に伝えられると三叉神経核に至り、さらに視床を経由し大脳に至り、痛みとして自覚される。

□ 小児の片頭痛に対する第一選択薬はイブプロフェンとアセトアミノフェンである(慢性頭痛の診療ガイドライン2013)。
 
□ アセトアミノフェン
 10〜15mg/kg/回を4〜6時間空けて使用する。1回最大投与量は500mgで、1日1500mg以内にとどめる。
 2013年には静注製剤が承認された。
 1日1500mgを超える投与量を長期使用する場合は定期的に肝機能検査を行う。
 アセトアミノフェンの作用機序:代謝物であるAM404が中脳、延髄、脊髄後角のカプサイシン(TRPV1)受容体やカンナビノイド(CB1)受容体を活性化して鎮痛効果を発揮している。

□ NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
 NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)に阻害的に結合し、プロスタグランディンなどの合成を抑制し、疼痛閾値を上昇させることで鎮痛作用を発揮する。化学構造の違いにより多くの種類に分類される;
・サリチル酸系:アスピリン
・アントラニル酸系:メフェナム酸
・アリール酸系:ジクロフェナク、インドメタシン
・プロピオン酸系:イブプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン
 しかし、小児に対するNSAIDsの使用は限定的にすべきである。アスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸は、インフルエンザ流行期において急性脳症発症のリスクを高めると指摘されており、添付文書上においても15歳未満には原則使用不可と記載されている。

□ イブプロフェン
 イブプロフェンは小児に最も使用されている安全性の高いNSAIDsであり、アセトアミノフェン同様に国際的にも小児への使用が推奨されている薬剤である。
 5〜10mg/kg/回を6〜8時間空けて使用する。1日40mg/kg以内にとどめる。最も多い副作用は肝障害であり、長期に使用する場合には肝機能検査が必要である。

□ トリプタン製剤
 作用機序:頭蓋内血管平滑筋に存在する5HT-IB受容体を介し、血管収縮作用を示す。また三叉神経終末に存在する5HT-ID受容体を介して神経ペプチド放出を抑制する。これらの相乗効果により、神経原性炎症を抑制し、頭痛発作改善に効果を示す。
 トリプタンは小児の場合、成人ほどの効果を実感できないことをしばしば経験する。これは小児片頭痛の持続時間が成人より短いためなのか、受容体感受性が小児ゆえ未熟なのか、不明である。
 現時点では小児の片頭痛に対してトリプタンは第一選択薬とはならず、アセトアミノフェンやイブプロフェンが無効な、日常生活への支障度が高い頭痛に対し、小学校高学年以上の体格であれば使用を検討してもよい。
 米国FDAが認可した小児片頭痛に有効なトリプタンは以下の通り;
・アルモトリプタン
・リザトリプタンOD錠
・ゾルミトリプタン点鼻
・スマトリプタン・ナプロキセン複合錠
 上記のうち日本で使用可能なものはスマトリプタン点鼻イミグラン®点鼻液)とリザトリプタン内服マクサルト®RPD錠)であるが、トリプタン製剤は日本ではすべて小児適応がないという困った状況である。

□ トリプタン製剤の使用の実際
 錠剤は体重40kg以上かつ12歳以上であれば1錠を、25kg以上40kg未満であれば1/2錠を使用する。
 1日2回まで使用可能であり、投与間隔は2時間空ける(ナラトリプタンだけは4時間)。
 トリプタンは片頭痛が生じてから時間が経てば経つほど効果は得られにくくなる。とくに中枢感作により生ずるアロディニア(異痛症)を呈した場合には、ほぼすべての鎮痛剤やトリプタンが無効となるため、そこに至る前までに使用しなければならない。

 大学病院頭痛専門外来での調査では、約2割の片頭痛患児がいずれかのトリプタンを処方されており、いずれかのトリプタンが有効であった患児は90%であった。最初に使用したトリプタンが無効であっても、別のトリプタンが有効であった症例もある。

□ トリプタン製剤の副作用と禁忌;
(副作用)胸部圧迫感、悪心・嘔吐、傾眠
(禁忌)
・虚血性心疾患、脳血管障害
・片麻痺性偏頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛、網膜片頭痛
・エルゴタミン製剤との併用
・リザトリプタンとプロプラノロール

□ スマトリプタン(イミグラン®)
 トリプタン唯一の点鼻液があるため利用価値が高い。小児に対しても複数のランダム化比較試験により有効性と安全性が証明されている。
 悪心・嘔吐の随伴症状が多い小児の場合は内服困難例も存在するため、点鼻液はよい適応になる。ただし咽頭、舌後方に感じる強い苦みは点鼻薬独特の副作用であり、事前に十分説明しておく。

□ リザトリプタン(マクサルト®)
 最高血漿中濃度到達時間が最も短く、また血中半減期も短いため、効果発現が早く、持続時間の短い小児の片頭痛に対して有利な製剤である。スマトリプタン同様に小児に対する複数のランダム化比較試験により有効性と安全性が証明されている。口腔内崩壊錠があるため、登下校時や学校での授業中に適切なタイミングで内服しやすいという利点がある。
★ 片頭痛予防薬として使用されるプロプラノロール(インデラル®)との併用は禁忌。

□ 薬剤使用過多による頭痛(国際頭痛分類第3版)
 3ヶ月以上にわたり使用頻度が増す場合は予防薬使用を検討する。
・アセトアミノフェン:15日/月以上
・NSAIDs:15日/月以上
・トリプタン製剤/複合鎮痛剤:10日/月以上

□ 予防薬
 片頭痛発作の頻度が多く、薬物頓用でも生活に支障が出る場合は予防治療を考慮する。
 成人では月に2回以上あるいは6日以上が目安であるが、小児はケースバイケースで判断する。
・シプロヘプタジン(ペリアクチン®):抗ヒスタミン薬で、かぜの際の鼻水止めとして日常的に処方されている。小児片頭痛の予防薬の泰一選択薬の一つ(慢性頭痛の診療ガイドライン2013)であるが、片頭痛に対する保険適用はない。眠気、食欲増進の副作用がある。
・アミトリプチリン(トリプタノール®):三環系抗うつ薬。小児片頭痛の予防薬の泰一選択薬の一つ(慢性頭痛の診療ガイドライン2013)であるが、片頭痛に対する保険適用はない。ボストン小児病院の検討によると、アミトリプチリンは最も多く使用されている予防薬である。副作用として眠気、口渇、便秘に注意が必要。
・その他:バルプロ酸(デパケン®ほか):抗てんかん薬、塩酸ロメリジン(ミグシス®):カルシウム拮抗薬、プロプラノロール(インデラル®)β-遮断薬、トピラマート(トピナ®):新規抗てんかん薬・・・
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