前項に引きつづき、「第5回総合アレルギー講習会」(2018.12.15-16)テキストを読んで目にとまったことをメモしたものです。
基礎医学の分野でのアレルギーも、私がアレルギー学会専門医になった四半世紀前から当然進歩しています。
基本中の基本である、Coombs &Gellによるアレルギー分類が、現在はタイプIVが4つに再分類されていることを最近知り、驚きました。
インターロイキン(IL)の数はどんどん増えて、現在IL-33が話題になっています。
アレルギーの発症機序は複雑なのでさておき、この項目では主にアレルゲン情報をまとめました。
近年、アレルゲンコンポーネント情報も充実してきました。
従来のアレルギー検査では、検査陽性と症状出現が必ずしも一致しなくて医師も患者も混乱していました。コンポーネントを検査できるようになるにつれ、診断精度・一致率が上がることが期待できます。
しかし、より複雑になり検査の読み方も単純ではなく、やはり習熟する必要があります。
例えば、シラカバのアレルゲンコンポーネントBet v 2(=プロフィリン)は他の植物・果実に交差反応性があるので、検査するとたくさんの項目が弱陽性に出る傾向がありますが、実際に食べても症状が出ないヒトが珍しくありません。これを知らない非専門医は「検査陽性だから食べてはいけません」と簡単に言ってしまうので、困ってしまいます。
<メモ>
□ I型アレルギー(Coombs&Gell分類)の即時型反応と遅発型反応
(即時型反応)食直後〜2時間
・脱顆粒:ヒスタミン、セロトニン
・産生放出:ロイコトリエン、プロスタグランジン
(遅発型反応)食後数時間〜
・産生放出:Th2サイトカイン、ケモカインなど
□ 食物アレルゲンとは?
・IgE依存性(I型アレルギー):IgE受容体を架橋できる、TCR(T細胞受容体)に結合できる
→ たんぱく質>高分子多糖類、ポリアミノ酸、低分子化合物(ハプテン)
・IgE非依存性(IV型アレルギー):TCRに結合できる
→ たんぱく質、低分子化合物(ハプテン)
□ エピトープ(抗原決定基)とは?
・T細胞エピトープ:アレルゲンたんぱく質中の連続した5-8アミノ酸のペプチド。結合した抗原提示細胞(樹状細胞など)が抗原をエンドサイトーシスで取り込み、消化・分解してMHCクラスII分子よりナイーブT細胞のTCRに提示する。
・B細胞エピトープ(Igエピトープ):アレルゲンたんぱく質中の1-6個の単糖の糖鎖・8-18アミノ酸のペプチド(連続・不連続)。IgEエピトープの多くはたんぱく質の表面に位置する。構造的エピトープは変性すると壊れる。
□ 一般的な食物アレルゲンの特徴
・多量に存在(種子貯蔵たんぱく質など)
・加工や調理(熱)に安定(S-S結合が多い)
・消化酵素抵抗性(ペプシン、キモトリプシンなど)
・分子量10kDa〜70kDa(FceRI架橋可能な大きさ)
□ 食品アレルゲンと各種処理に対する安定性の差
1.加熱
(加熱に安定)
・卵白:ovomucoid
・牛乳:β-LG、α-カゼイン、α-LA
・ピーナッツ:Ala h 1、Ala h 2
・米:RP16kD
・ソバ:16kD、24kD
・大豆:Kunitz tripsin inhibitor
・タラ:parvalbumin
・エビ:tropomyosin
・モモ:Lipid transfactoy
(加熱に不安定)
・果物・野菜
・卵白:ovalbumin
・牛乳:β-LG
2.酸
(酸に安定)
・卵白:ovalbumin
・牛乳:β-LG
・ピーナッツ:65kDa
(酸に不安定)
・果物
3.消化酵素
(消化酵素に安定)
・卵白:ovomucoid
・牛乳:β-LG
・ピーナッツ:Ala h 1, Ala h 2, peanut lectin
・米:RP16kD
・ソバ:16kD、24kD
・大豆:Kunitz trypsin inhibitor, soy lectin
・タラ:parvalbumin
□ アレルゲン命名法
由来する植物または動物の学名から決定される。
学名の「属」の最初の3文字、「種」の最初の1文字、(基本的に)同定順の数字・番号
(例)食物(学名) → たんぱく質名(アレルゲン名)
・ニワトリ(Gallus domesticus) → オボムコイド(Gal d 1)、オボアルブミン(Gal d 2)
・ウシ(Bos domesticus) → α-ラクトアルブミン(Bos d 4)、αS1-カゼイン(Bos d 9)
・小麦(Triticum aestivum) → プロフィリン(Tri a 14)、ω5-グリアジン(Tri a 19)
・ソバ(Fagopyum esculentum) → 2sアルブミン(Fag e 2)、7sピシリン(Fag e 3)
・落花生(Arachis hypogea) → 2sアルブミン(Ara h 2)、11sグロブリン(Ara h 3)
※ 数字には例外がある。交差反応性によって関連するコンポーネントがある場合は、そのアレルゲン番号がまだ利用可能であれば同じ数となる。
<参考>
・WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-Committee
・Allergome
□ 鶏卵アレルゲン(Gallus domesticus)
★ アレルゲン名:略号:分子量(kDa):含量(%)
(卵白)
・Ovomucoid(OVM):Gal d 1:28:11
・Ovalbumin(OVA):Gal d 2:45:54
・Ovotransferrin(OVT):Gal d 3:76.6:12
・Lysozyme:Gal d 4:14.3:3.4
(卵黄)
・Chicken Serum Albumin:Gal d 5:69
□ 牛乳アレルゲン(Bos domesticus)
・α-Lactalbumin:Bos d 4:14.2:4
・β-Lactoglobulin:Bos d 5:18.3:10
・Caseins:Bos d 8:20-30:80
(カゼインのコンポーネントはBos d 9-12にさらに分類されている)
□ 小麦アレルゲン(Triticum aestivum)
(塩可溶性アレルゲン)・・・パン職人喘息、アトピー性皮膚炎、小麦接触じんま疹患者で同定
・Non-specific lipid transfer protein 1(Tri a 14):9:ー
・Dimeric α-amylase Inhibitor 0.19(Tri a 28):13:ー
・Thiol reductase homologue(Tri a 27):27:ー
(塩不溶性アレルゲン)・・・食物依存性運動誘発アナフィラキシー患者で同定
・ω5-Gliadin(Tri a 19):65:ー
・High molecular weight glutenin subunits:Tri a 26:88
□ 果物・野菜アレルゲン
★ Panallergen:他の植物との交差反応性を有するアレルゲン
※ アレルゲン:分子量(kDa):交差反応する食物:特徴
・β-1,3-glucanase(PR-2):33-39:バナナ、オリーブ:糖タンパク質(CCDの一種)、ラテックスHev b 2と交差
・Chitinases(PR-3,4), Hevein-like protein(PR-7):32, 20:ラテックス、アボガト、バナナ、カブ:キチン結合部位の相同性が高い
・
□ 魚類・甲殻類アレルゲン
(魚類アレルゲン)
・Parvalbumin:38:ー
(甲殻類アレルゲン)
・Tropomyosin:38:ー
※ トロポミオシンは、甲殻類、軟体類(タコ、イカ、貝)、節足動物(ダニ、ゴキブリ)と高い相同性を有する。
□ アレルゲンスーパーファミリー(食物アレルギー)
共通の起源から進化してきたタンパク質は同じファミリーに分類される共通の基本構造を有しているため交差反応をきたしやすい。
(植物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・プロラミン:穀類のプロラミン、Bifunctional inhibitor, 2Sアルブミン、Non-specific lipid-transfer proteins(nsLTP)
・クーピン:ビクリン、レグミン
・Bet v 1-like:Bet v 1
・Profilin-like:プロフィリン
(動植物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・EF-hand:ポルカルチン、パルブアルブミン
(動物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・Tropomyosin-like:トロポミオシン
□ 口腔アレルギー症候群(OAS, Oral Allergy Syndrome)=花粉・食物アレルギー症候群(PFAS, Pollen-associated Food Allergy Syndrome)
果物や生野菜を摂取した直後から、口腔内から喉にかけて、または耳の奥にぴりぴりとかチカチカと異常を感じる。
加熱調理した野菜や缶詰は食べられる。
花粉症患者にみられる食物アレルギー。
回避:違和感を生じる新鮮な果物や野菜の摂取を控える。
軽減策:加熱処理によるアレルゲン低減化、低温殺菌処理されたジュースや缶詰、ジャムは食べられる。
<参考>
・Ortolani C, et al. Ann Allergy 1988
・Valenta R, Kraft D. JACI 97: 893-895, 1996
□ シラカンバ花粉コンポーネント「Bet v 1」
・生体防御タンパク質 PR-10
・糖鎖を有しない 分子量17kDa
・加熱や消化酵素に弱い(構造的エピトープ)
・OAS(PFAS)の主要な原因
□ Bet v 1 ホモログ間のアミノ酸類似性
(凡例)アレルゲン名(植物名)アミノ酸類似性%
Aln g 1(ハンノキ)81%
Mal d 1(リンゴ)56%
Pru p 1(モモ)59%
Pru ar 1(アンズ)60%
Pru av 1(サクランボ)59%
Pyr c 1(西洋ナシ)58%
Rub i 1(レッド・ラズベリー)56%
Api g 1(セロリ)42%
Dau c 1(ニンジン)56%
Act c 8(ゴールドキウイ)50%
Act d 8(キウイ)50%
Sola l 4(トマト)45%
Cor a 1(ヘーゼルナッツ)73%
Ara h 8(ピーナッツ)47%
Gly m 4(大豆)48%
Vig r 1(緑豆)45%
□ シラカバのアレルゲンコンポーネント「Bet v 2」=プロフィリン
・真核生物が共通に持つアクチン結合性たんぱく質
・糖鎖を有しない 分子量12-15kDa
・加熱や消化酵素に弱い(臨床症状との関わりは少ない)
・カバノキ科とイネ科花粉のPFASに関わる。
□ プロフィリン間のアミノ酸類似性
Phl p 12(オオアワガエリ)78%
Mal d 4(リンゴ)77%
Pru p 4(モモ)76%
Pru av 4(サクランボ)75%
Pyrc 4(西洋ナシ)83%
Api g 4(セロリ)80%
Sola l 1(トマト)74%
Cor a 2(ヘーゼルナッツ)77%
Ara h 5(ピーナッツ)73%
Gly m 3(大豆)75%
Cit s 2(オレンジ)74%
Cuc m 2(マスクメロン)74%
Mus a 1(バナナ)78%
※ オレンジ、メロン、バナナではプロフィリンがアレルゲンと考えられている。
□ LTP(Lipid transfer protein)症候群
・LTPは果実の表皮組織に多く存在する。
(例)Pru p 3(モモ)、Mal d 3(リンゴ)、Pur ar 3(アンズ)、Pru av 3(サクランボ)、Fra a 3(イチゴ)、Pru d 3(プラム)、Rub i 3(レッド・ラズベリー)・・・、Cor a 8(ヘーゼルナッツ)、Jug r 3(クルミ)・・・
・加熱に強い(加熱しても食べられない)、消化酵素に強い(全身症状をきたしうる)
・回避:缶詰やジャムを含めて果実の摂取を控える。
・軽減策:モモ舌下免疫療法を試みた報告がある(Fernandez-Rivas M, et al. Allergy. 2009 64(6):876-83.)。
□ 魚アレルゲンコンポーネント:パルブアルブミン(Parvalbumin: PA)
・Ef-Handスーパーファミリー
・Caイオンを除くと高次構造が変わり、アレルゲン性も低下する。
□ タラパルブアルブミン Gad c 1 との類似性
Lep w 1(カレイ)57-66%
Cyp c 1(コイ)69-77%
Onc m 1(ニジマス)47-62%
Sal s 1(大西洋サケ)54-66%
Thu a 1(キハダマグロ)66-75%
Xip g 1(メカジキ)64-73%
Gad m 1(大西洋タラ)65-72%
Clu h 1(ニシン)61-71%
Sar sa 1(マイワシ)61-68%
Gal d 8(ニワトリ)51-62%
Ran e 2(トノサマガエル)61-70%
□ 魚アレルゲンの回避と軽減策
・回避:魚アレルギーの患者指導に生物学分類表はアレルゲン性と一致していないため利用できない。
・軽減策:マグロの缶詰(ツナ缶)は、製造過程(加圧加熱殺菌)でアレルゲン性が低減化する(参考⇩)。
<参考>
・J Bernhisel-Broadbent, et al.:JACI 90(1992)
基礎医学の分野でのアレルギーも、私がアレルギー学会専門医になった四半世紀前から当然進歩しています。
基本中の基本である、Coombs &Gellによるアレルギー分類が、現在はタイプIVが4つに再分類されていることを最近知り、驚きました。
インターロイキン(IL)の数はどんどん増えて、現在IL-33が話題になっています。
アレルギーの発症機序は複雑なのでさておき、この項目では主にアレルゲン情報をまとめました。
近年、アレルゲンコンポーネント情報も充実してきました。
従来のアレルギー検査では、検査陽性と症状出現が必ずしも一致しなくて医師も患者も混乱していました。コンポーネントを検査できるようになるにつれ、診断精度・一致率が上がることが期待できます。
しかし、より複雑になり検査の読み方も単純ではなく、やはり習熟する必要があります。
例えば、シラカバのアレルゲンコンポーネントBet v 2(=プロフィリン)は他の植物・果実に交差反応性があるので、検査するとたくさんの項目が弱陽性に出る傾向がありますが、実際に食べても症状が出ないヒトが珍しくありません。これを知らない非専門医は「検査陽性だから食べてはいけません」と簡単に言ってしまうので、困ってしまいます。
<メモ>
□ I型アレルギー(Coombs&Gell分類)の即時型反応と遅発型反応
(即時型反応)食直後〜2時間
・脱顆粒:ヒスタミン、セロトニン
・産生放出:ロイコトリエン、プロスタグランジン
(遅発型反応)食後数時間〜
・産生放出:Th2サイトカイン、ケモカインなど
□ 食物アレルゲンとは?
・IgE依存性(I型アレルギー):IgE受容体を架橋できる、TCR(T細胞受容体)に結合できる
→ たんぱく質>高分子多糖類、ポリアミノ酸、低分子化合物(ハプテン)
・IgE非依存性(IV型アレルギー):TCRに結合できる
→ たんぱく質、低分子化合物(ハプテン)
□ エピトープ(抗原決定基)とは?
・T細胞エピトープ:アレルゲンたんぱく質中の連続した5-8アミノ酸のペプチド。結合した抗原提示細胞(樹状細胞など)が抗原をエンドサイトーシスで取り込み、消化・分解してMHCクラスII分子よりナイーブT細胞のTCRに提示する。
・B細胞エピトープ(Igエピトープ):アレルゲンたんぱく質中の1-6個の単糖の糖鎖・8-18アミノ酸のペプチド(連続・不連続)。IgEエピトープの多くはたんぱく質の表面に位置する。構造的エピトープは変性すると壊れる。
□ 一般的な食物アレルゲンの特徴
・多量に存在(種子貯蔵たんぱく質など)
・加工や調理(熱)に安定(S-S結合が多い)
・消化酵素抵抗性(ペプシン、キモトリプシンなど)
・分子量10kDa〜70kDa(FceRI架橋可能な大きさ)
□ 食品アレルゲンと各種処理に対する安定性の差
1.加熱
(加熱に安定)
・卵白:ovomucoid
・牛乳:β-LG、α-カゼイン、α-LA
・ピーナッツ:Ala h 1、Ala h 2
・米:RP16kD
・ソバ:16kD、24kD
・大豆:Kunitz tripsin inhibitor
・タラ:parvalbumin
・エビ:tropomyosin
・モモ:Lipid transfactoy
(加熱に不安定)
・果物・野菜
・卵白:ovalbumin
・牛乳:β-LG
2.酸
(酸に安定)
・卵白:ovalbumin
・牛乳:β-LG
・ピーナッツ:65kDa
(酸に不安定)
・果物
3.消化酵素
(消化酵素に安定)
・卵白:ovomucoid
・牛乳:β-LG
・ピーナッツ:Ala h 1, Ala h 2, peanut lectin
・米:RP16kD
・ソバ:16kD、24kD
・大豆:Kunitz trypsin inhibitor, soy lectin
・タラ:parvalbumin
□ アレルゲン命名法
由来する植物または動物の学名から決定される。
学名の「属」の最初の3文字、「種」の最初の1文字、(基本的に)同定順の数字・番号
(例)食物(学名) → たんぱく質名(アレルゲン名)
・ニワトリ(Gallus domesticus) → オボムコイド(Gal d 1)、オボアルブミン(Gal d 2)
・ウシ(Bos domesticus) → α-ラクトアルブミン(Bos d 4)、αS1-カゼイン(Bos d 9)
・小麦(Triticum aestivum) → プロフィリン(Tri a 14)、ω5-グリアジン(Tri a 19)
・ソバ(Fagopyum esculentum) → 2sアルブミン(Fag e 2)、7sピシリン(Fag e 3)
・落花生(Arachis hypogea) → 2sアルブミン(Ara h 2)、11sグロブリン(Ara h 3)
※ 数字には例外がある。交差反応性によって関連するコンポーネントがある場合は、そのアレルゲン番号がまだ利用可能であれば同じ数となる。
<参考>
・WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-Committee
・Allergome
□ 鶏卵アレルゲン(Gallus domesticus)
★ アレルゲン名:略号:分子量(kDa):含量(%)
(卵白)
・Ovomucoid(OVM):Gal d 1:28:11
・Ovalbumin(OVA):Gal d 2:45:54
・Ovotransferrin(OVT):Gal d 3:76.6:12
・Lysozyme:Gal d 4:14.3:3.4
(卵黄)
・Chicken Serum Albumin:Gal d 5:69
□ 牛乳アレルゲン(Bos domesticus)
・α-Lactalbumin:Bos d 4:14.2:4
・β-Lactoglobulin:Bos d 5:18.3:10
・Caseins:Bos d 8:20-30:80
(カゼインのコンポーネントはBos d 9-12にさらに分類されている)
□ 小麦アレルゲン(Triticum aestivum)
(塩可溶性アレルゲン)・・・パン職人喘息、アトピー性皮膚炎、小麦接触じんま疹患者で同定
・Non-specific lipid transfer protein 1(Tri a 14):9:ー
・Dimeric α-amylase Inhibitor 0.19(Tri a 28):13:ー
・Thiol reductase homologue(Tri a 27):27:ー
(塩不溶性アレルゲン)・・・食物依存性運動誘発アナフィラキシー患者で同定
・ω5-Gliadin(Tri a 19):65:ー
・High molecular weight glutenin subunits:Tri a 26:88
□ 果物・野菜アレルゲン
★ Panallergen:他の植物との交差反応性を有するアレルゲン
※ アレルゲン:分子量(kDa):交差反応する食物:特徴
・β-1,3-glucanase(PR-2):33-39:バナナ、オリーブ:糖タンパク質(CCDの一種)、ラテックスHev b 2と交差
・Chitinases(PR-3,4), Hevein-like protein(PR-7):32, 20:ラテックス、アボガト、バナナ、カブ:キチン結合部位の相同性が高い
・
□ 魚類・甲殻類アレルゲン
(魚類アレルゲン)
・Parvalbumin:38:ー
(甲殻類アレルゲン)
・Tropomyosin:38:ー
※ トロポミオシンは、甲殻類、軟体類(タコ、イカ、貝)、節足動物(ダニ、ゴキブリ)と高い相同性を有する。
□ アレルゲンスーパーファミリー(食物アレルギー)
共通の起源から進化してきたタンパク質は同じファミリーに分類される共通の基本構造を有しているため交差反応をきたしやすい。
(植物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・プロラミン:穀類のプロラミン、Bifunctional inhibitor, 2Sアルブミン、Non-specific lipid-transfer proteins(nsLTP)
・クーピン:ビクリン、レグミン
・Bet v 1-like:Bet v 1
・Profilin-like:プロフィリン
(動植物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・EF-hand:ポルカルチン、パルブアルブミン
(動物性アレルゲンタンパク質スーパーファミリー)
・Tropomyosin-like:トロポミオシン
□ 口腔アレルギー症候群(OAS, Oral Allergy Syndrome)=花粉・食物アレルギー症候群(PFAS, Pollen-associated Food Allergy Syndrome)
果物や生野菜を摂取した直後から、口腔内から喉にかけて、または耳の奥にぴりぴりとかチカチカと異常を感じる。
加熱調理した野菜や缶詰は食べられる。
花粉症患者にみられる食物アレルギー。
回避:違和感を生じる新鮮な果物や野菜の摂取を控える。
軽減策:加熱処理によるアレルゲン低減化、低温殺菌処理されたジュースや缶詰、ジャムは食べられる。
<参考>
・Ortolani C, et al. Ann Allergy 1988
・Valenta R, Kraft D. JACI 97: 893-895, 1996
□ シラカンバ花粉コンポーネント「Bet v 1」
・生体防御タンパク質 PR-10
・糖鎖を有しない 分子量17kDa
・加熱や消化酵素に弱い(構造的エピトープ)
・OAS(PFAS)の主要な原因
□ Bet v 1 ホモログ間のアミノ酸類似性
(凡例)アレルゲン名(植物名)アミノ酸類似性%
Aln g 1(ハンノキ)81%
Mal d 1(リンゴ)56%
Pru p 1(モモ)59%
Pru ar 1(アンズ)60%
Pru av 1(サクランボ)59%
Pyr c 1(西洋ナシ)58%
Rub i 1(レッド・ラズベリー)56%
Api g 1(セロリ)42%
Dau c 1(ニンジン)56%
Act c 8(ゴールドキウイ)50%
Act d 8(キウイ)50%
Sola l 4(トマト)45%
Cor a 1(ヘーゼルナッツ)73%
Ara h 8(ピーナッツ)47%
Gly m 4(大豆)48%
Vig r 1(緑豆)45%
□ シラカバのアレルゲンコンポーネント「Bet v 2」=プロフィリン
・真核生物が共通に持つアクチン結合性たんぱく質
・糖鎖を有しない 分子量12-15kDa
・加熱や消化酵素に弱い(臨床症状との関わりは少ない)
・カバノキ科とイネ科花粉のPFASに関わる。
□ プロフィリン間のアミノ酸類似性
Phl p 12(オオアワガエリ)78%
Mal d 4(リンゴ)77%
Pru p 4(モモ)76%
Pru av 4(サクランボ)75%
Pyrc 4(西洋ナシ)83%
Api g 4(セロリ)80%
Sola l 1(トマト)74%
Cor a 2(ヘーゼルナッツ)77%
Ara h 5(ピーナッツ)73%
Gly m 3(大豆)75%
Cit s 2(オレンジ)74%
Cuc m 2(マスクメロン)74%
Mus a 1(バナナ)78%
※ オレンジ、メロン、バナナではプロフィリンがアレルゲンと考えられている。
□ LTP(Lipid transfer protein)症候群
・LTPは果実の表皮組織に多く存在する。
(例)Pru p 3(モモ)、Mal d 3(リンゴ)、Pur ar 3(アンズ)、Pru av 3(サクランボ)、Fra a 3(イチゴ)、Pru d 3(プラム)、Rub i 3(レッド・ラズベリー)・・・、Cor a 8(ヘーゼルナッツ)、Jug r 3(クルミ)・・・
・加熱に強い(加熱しても食べられない)、消化酵素に強い(全身症状をきたしうる)
・回避:缶詰やジャムを含めて果実の摂取を控える。
・軽減策:モモ舌下免疫療法を試みた報告がある(Fernandez-Rivas M, et al. Allergy. 2009 64(6):876-83.)。
□ 魚アレルゲンコンポーネント:パルブアルブミン(Parvalbumin: PA)
・Ef-Handスーパーファミリー
・Caイオンを除くと高次構造が変わり、アレルゲン性も低下する。
□ タラパルブアルブミン Gad c 1 との類似性
Lep w 1(カレイ)57-66%
Cyp c 1(コイ)69-77%
Onc m 1(ニジマス)47-62%
Sal s 1(大西洋サケ)54-66%
Thu a 1(キハダマグロ)66-75%
Xip g 1(メカジキ)64-73%
Gad m 1(大西洋タラ)65-72%
Clu h 1(ニシン)61-71%
Sar sa 1(マイワシ)61-68%
Gal d 8(ニワトリ)51-62%
Ran e 2(トノサマガエル)61-70%
□ 魚アレルゲンの回避と軽減策
・回避:魚アレルギーの患者指導に生物学分類表はアレルゲン性と一致していないため利用できない。
・軽減策:マグロの缶詰(ツナ缶)は、製造過程(加圧加熱殺菌)でアレルゲン性が低減化する(参考⇩)。
<参考>
・J Bernhisel-Broadbent, et al.:JACI 90(1992)