小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「子どもの感染症~予防のしかた・治しかた~」

2010年06月26日 06時48分49秒 | 感染症
金子光延著、講談社(2008年発行)

 しばらく前に同じ著者の「よくわかる、子どもの医学」という本を読み、「自分と同じスタンス」を感じました。その時に探して購入してあった同じ著者の本を引っ張り出して読んでみました。

 実は、10年以上前の開業医は最新の医学知識を取り入れ、診療レベルを維持するのが大変でした。学会参加もままならず、大学図書館へ通って医学雑誌や論文を拾い読みする方法しかなかったのです。
 ところが、インターネットの普及に伴い、たくさんの情報を自宅にいながら入手可能な時代になりました。隔世の感があります。今時の開業小児科医は、目の前の患者さんを診療しながら最新知識をアップデートできるのです。

 この本はまさに「小児科医の現場からの声」であり、まだ分厚い教科書には載っていない新事実や、現場のノウハウが詰め込まれている内容です。これを読めば小児科医の日々の仕事がわかってしまいますね(苦笑)。

 子育て中のお母さん・お父さんのみならず、小児科標榜医(本来の専門は内科や耳鼻科の先生が「小児科も診ますよ」というスタンスで看板に表示)にも読んでいただきたいと思いました。

<ポイント>
・・・ウンウンうなづきながら読んだところを抜粋します。

■ 風邪の9割はウイルスが原因で、ウイルスに抗生物質は効きません。

■ 「熱が出たら抗生剤」の功罪:
 抗生物質が必要な感染症は、ふつう5日間以上投与が必要であり(例えば溶連菌では10日間)、「熱が下がるまで数日投与」という抗生物質の使用法は教科書には記載がありません。熱が出ただけでその度に抗生物質を使っていると、体内に抗生物質が効かない「耐性菌」を育ててしまい、本当に必要になったときに効かなくて治療困難・・・という事態が予想されます(現実に中耳炎でも入院治療が必要な例が出てきました)。

■ 「治癒証明書」が必要な感染症だけがうつるわけではありません。風邪はみんな「伝染るんです」。

■ 風邪ウイルスが体に入っても症状が出ないことがあります(不顕性感染)が、でも人にうつす力はあります。

■ 生後半年以降の子どもの発熱は風邪ウイルスによることが多いのですが、生後3ヶ月未満の赤ちゃんの発熱は、風邪ではない病気が隠れていることがあります・・・救急疾患!

■ 鼻水が続くと「蓄膿症」が心配になりますが、10日間以上青っぱなが続く場合に疑うことになっています(ガイドライン上)。サラサラの透明な鼻水が続くときは、蓄膿症ではなくアレルギー性鼻炎を疑います。

・・・個々の感染症については書ききれないので省略しますが、私が毎日の診療で説明していることと共通点がいっぱいありました。こんな内容を乳児検診などで説明できれば、子育て中のお母さん方がどれだけ安心することか・・・。

コメント
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