小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新型コロナウイルスの起源をめぐる迷走

2021年11月21日 06時59分32秒 | 予防接種
武漢発の新型コロナウイルス。
当の中国は否定し、隠蔽します。
隠蔽工作が終わったところで、WHOの調査チームを受け入れましたが、
何も出てくる訳ありません。

武漢は起源なのではなく、最初のクラスター発生場所という説もありますし、
ヨーロッパの調査では、武漢の報告以前に血液中の抗体価上昇が確認されたと言うニュースも流れました。

というわけで、まだ解明されていません。
最近のニュースを紹介しておきます。

「新型コロナの最初の患者は “武漢市場の露天商”」…WHOの見解と異なる=米進化生物学者の研究結果
2021/11/19:WHW! KOREA)より抜粋;
「新型コロナウイルス感染症の最初の患者は、中国・武漢の華南海鮮卸売市場で働いていた露天商だ」という分析結果が発表された。この研究結果は、「華南海鮮卸売市場を訪問したことのない会計士が最初の患者だ」としたWHO(世界保健機関)の報告書の内容をくつがえすものである。
・・・米アリゾナ大学の進化生物学者であるマイケル・ウォロビー(Michael Worobey)博士は、2019年12月の新型コロナ大流行初期の状況を再構成した論文を国際学術誌“サイエンス”に掲載した。 ウォロビー博士の分析の結果、初期の患者19人のうち10人は華南海鮮卸売市場で働いていたり、そこに訪れたり、そこの人達と接触するなど、この市場と直・間接的につながっていたことがわかった。 「遺伝子データとこれまでの論文・メディア報道・初期の患者のインタビューの内容などを分析した結果、先のような結論に到達した」とウォロビー博士は明らかにした。 特に 「“1番患者”としてWHOの報告書に記載されている武漢の会計士が新型コロナの症状を示したのは、当初知られていた2019年12月8日ではなく、12月16日だった」という事実が新たに明らかとなった。 
 ことしの初め現場を訪問したWHO調査チームは、現地の病院の説明だけを聞いて「会計士が12月8日に初めて症状をみせた最初の新型コロナ患者だ」と判断した。しかし今回の論文を通して、当時その会計士は抜歯する歯科手術を受けたことで熱が出て、抗生物質の処方を受けていたという事実が確認された。 この会計士は現地メディアとのインタビューで「12月16日に熱が出て胸が痛かった。言葉を発するだけでも息が詰まった」として、新型コロナの症状が後に表れたことを証言している。 
 これまでWHOは、華南海鮮卸売市場を訪問したり野生動物と接したことないこの会計士を最初の患者と判断したため「この市場が新型コロナの発源地ではないかもしれない」という立場を示している。 
 今回の論文には「この会計士ではなく、12月11日に症状の表れた女性が新型コロナの最初の患者だ」と明示されている。 「これは、新型コロナの大流行が華南海鮮卸売市場で始まったのであり、ウイルスに感染した野生動物から人間へと伝染した可能性を示唆している」と米メディアは報じた。 ウォロビー博士は「華南市場から発生した初期の患者たちのほとんどが、タヌキを売っている区域を訪問した」という事実をあげながら「生きている野生動物市場がパンデミックの起源だという強力な証拠だ」と語った。 
 またウォロビー博士は論文を通じて「1100万人の住むこの都市で、初期の患者の半数がサッカー競技場1つ分の大きさの場所と関連している」とし「感染症の流行がこの市場から始まったのでなければ、このようなパターンを説明するのは困難だ」と伝えた。

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新型コロナは根絶できるか? 〜天然痘との比較〜

2021年11月03日 08時23分54秒 | 予防接種
人類がワクチンにより根絶できた感染症が一つだけ存在します。
それは「天然痘」。

根絶しやすい感染症はある特徴を持っていることが昔から指摘されてきました。
それらの要因について、天然痘と新型コロナ(COVID-19)を比較した記事が目にとまりましたので紹介します。

もう一つ、根絶一歩手前まで来たポリオも比較対象に入っています。

結論から申し上げると、
「ポリオよりわずかに容易だが、天然痘に比べると難しい」
との評価でした。

過去の報告で、根絶の可否を左右する要因17項目を用いた検討で、
文章ではわかりづらいので一覧表にしてみました。


<参考>
天然痘やポリオと比較したCOVID-19根絶の可能性1999年のHinman論文を参考にした感染症根絶スコア化の試み
 ニュージーランドOtago大学のNick Wilson氏らは、独自の方法を用いて、COVID-19根絶の可能性を天然痘やポリオと比較し、その可能性は天然痘よりはかなり低いが、ポリオよりは少し高いと試算し、COVID-19根絶の可能性を諦めるべきではないとするCommentaryをBMJ Global Health誌に投稿し、2021年8月9日に公開された。
 感染症の根絶(eradication)とは、「人類の努力によって開発された手段により、新たな感染者が世界的かつ恒久的にゼロに保たれているため、予防的な介入が不要になっている状態」と定義された。天然痘とポリオ(3種の血清型のうちの2種)がこれに該当する。それらの根絶にはワクチンが役割を果たした。ほかにもMMRワクチンの普及により麻疹・ムンプス・風疹は根絶可能と考えられている。また、ワクチンはないものの、根絶間近の寄生虫疾患もある。
 COVID-19に対しては、既に世界中でワクチンの接種が行われているが、新たな変異株の報告が相次いでおり、集団免疫達成の可能性を疑問視する声も多い。一方、天然痘は集団免疫状態を達成することなく根絶できた。天然痘の場合は、感染者が発生した時点で、一定範囲の全ての人にワクチンを接種する包囲接種(ring vaccination)を行い、感染拡大を防ぐ方法で目標を達成できた。
 COVID-19についても、いくつかの国や地域は、PHSMs(public health and social measures;国境検疫、身体的距離、マスク着用、核酸検査による感染者の検出と接触者追跡など)を徹底することによって、ワクチンがまだなかった時期に、感染者が出ない状況を一定期間維持できていた。
 著者らは今回、天然痘、ポリオ、COVID-19のそれぞれについて、1999年に発表されたHinmanの論文「Eradication of vaccine-preventable diseases」で使用されたリストに技術的、社会政治的、経済的要因を加味して、根絶の可能性についてスコア化を試みた。17項目の要因について、+(低い)、++(中間)、+++(高い)の3段階で評価し、根絶可能性スコアを推定した。
 17要因と、各疾患のスコアを以下に示す。
・・・・・・
 以上の17項目のうち、天然痘については「環境サーベイランスが有効」の項目はスコアなしとした。感染者には特徴的な症状が現れるため、環境サーベイランスの必要がないためだ。スコアの合計点と平均点は、天然痘が48点中43点と2.7点、ポリオは51点中26点と1.5点、COVID-19は51点中28点と1.6点になった。
 COVID-19根絶に関係する技術的な要因の中で、天然痘やポリオに比べて問題と見られるのは、ワクチン接種を受け入れられない人が少なくないこと、そして感染性が高く免疫を回避できる変異株が出現する可能性だ。しかし最終的には、ウイルスの適応進化は限界に達し、変異株に対応したワクチンの接種が可能になる、と著者らは予想している。
 COVID-19根絶に向けた次のステップとして、現在利用できる技術でCOVID-19を永久に根絶できるか、また根絶の試みが費用対効果と失敗リスクという2つの観点から好ましいかについて、専門家は検討する必要があると述べている。さらに情報に基づく意思決定には、COVID-19をコントロールすることが健康面と経済面の両方に及ぼす影響を総合的に評価できるモデルを構築し、分析することも必要だとしている。
 今回は非常に予備的な分析だが、COVID-19の根絶は、ポリオよりわずかに容易だが、天然痘に比べると難しいと考えられ、WHOその他の組織の専門家による公式な見解が待たれると著者らは結論している。

 原題は「We should not dismiss the possibility of eradicating COVID-19: comparisons with smallpox and polio.」、概要はBMJ Global Health誌のウェブサイトで閲覧できる。

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