小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「舌下免疫療法~小児への適応拡大」(大久保公裕 著)

2014年08月31日 13時07分48秒 | 花粉症
先日届いた日本小児アレルギー学会誌(Vol.28, No.3 2014)に表題の論文が掲載されていました。
著者は日本医科大学耳鼻咽喉科の大久保公裕先生、アレルギー関連学会では花粉症治療のご意見番です。

2014年10月に発売予定の「シダトレン®スギ花粉舌下液」の適応年齢は12歳以上となっていますが、現在5歳以上の臨床試験の準備が進められているそうです。

免疫療法は花粉症/アレルギー性鼻炎にはほぼ確立された治療法ですが、喘息では有効/無効の両方の報告が混在し、アトピー性皮膚炎では評価されていないようですね。

今後も適応拡大の動向に注目したい治療法です。

メモ
自分自身のための備忘録。

□ 皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy: SCIT)と舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)
 SCITは100年以上の治療経験があるがアナフィラキシーの可能性や施行法が煩雑等いくつかの欠点があり日本では標準治療になっていない。これを解決すべくSLITが開発され、安全で実用化が近い方法である。

□ SCITの有効率
・国際的にHD/ダニで80%の主観的有効率
・米国におけるブタクサの治療では90%以上の有効率
・日本におけるスギ花粉症に対する効果は70%の有効率
・内科領域では中等症以下のアトピー型喘息に対して80-90%の有効率
・皮膚科領域では一般的にSCITは効果がないと考えられており、ガイドラインでも標準的治療には取りあげられていない。
・小児科領域では、喘息/アレルギー性鼻炎共に有効であるとのエビデンス、花粉症に対するSCITが喘息の発症を抑制したデータが存在する。しかし小児では成人よりアナフィラキシー様の過剰免疫反応の頻度が高いことが報告されている。

SLITの安全性
 SLITは欧州で高い有効性を示し、これを評価した二重盲検比較試験のどれをとってもアナフィラキシーの報告はない。
 しかしアナフィラキシーが生じないと断言することはできない。

□ SCIT vs SLIT
・ダニに対する喘息+通年性アレルギー性鼻炎合併症例36例をランダム化して評価し、SCITとSLITはどちらも鼻炎症状は減少させたが、喘息症状はSCITのみで改善した(1999年)。症例数が少ないのが難。
・シラカバ花粉症58例をランダム化してSCIT19例、SLIT14例、プラセボ15例に分けて検討し、SCIT、SLITとも改善し、またプラセボに対しての優位性が確認されている。症例数が少ないのが難。

□ SLITの有効性
・Wilsonらのコクラン共同メタアナリシスで明らかにSLITに効果があることが証明された。
・現在もっとも新しい評価として再びメタアナリシスを用いた評価研究では、その評価方法や否定的な論文は発表されないことなどの問題点(発表バイアス)をつき、有効だと報告している論文のいくつかSLITの試験でも状況によっては有意な有効性がないと判断されている。

□ 小児科領域でのSLITの有効性
小児のスギ花粉症に対してもSLITの効果が検証されているが、まだエビデンスはない。
・軽症/中等症の喘息小児を対象とした試験では、ダニに対するアレルギー反応を有意に抑制したにもかかわらず、SLITの追加的有用性は証明されなかった。
・喘息の症状は抑制できなかったが、花の抗原反応性は変化させたとの報告あり。
・最近の論文では小児のダニ通年性アレルギー性鼻炎に対して有効との報告。
・喘息に関しては、成人ではその有用性に関して不安視されているが、システマテェックレビューでは小児の喘息で有用であるとの報告もなされている。

□ 外国のSLIT使用状況
国際的には小児では5歳以上の適応が通年性アレルギー性鼻炎にある。その一方で、喘息に関しては小児での効果はまだ国際的に共通のコンセンサスが得られていない。
・Stellergenes社(フランス):ダニ抗原エキスによる12歳以上のアレルギー性鼻炎
・ALK ABELLO社(デンマーク):12歳以上のアレルギー性鼻炎(喘息に対しては開発中)
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「風邪に抗生物質」が薬剤耐性菌を造り、自分の首を絞めることに・・・

2014年08月31日 12時29分01秒 | 医療問題
 抗生物質の乱用が社会問題化している昨今。
 近年、抗生物質は抗菌薬と言い換えられるようになりました。その理由は、抗菌薬は細菌をやっつける薬であることを明確化するため。
 いわゆる風邪の90%はウイルス性であり抗菌薬は効きません。
 残りの10%が細菌性で、その内容は「溶連菌性咽頭炎」「咽頭扁桃膿瘍」「化膿性中耳炎」「マイコプラズマ肺炎」などであり、これを見極めて適切に処方するスキルが臨床医に求められています。
 「風邪ですね、じゃあ抗生物質を出しておきます」という方針は「見極める自信がないことを白状する行為」と見ることもできます。

 目に付いたAFPによる記事を集めてみました(一部抜粋)。
 アジア地域では医師の処方箋なしに薬局で抗菌薬が購入できると聞いていましたが、インドではそれが中止になったことを知りました(表向きは)。
 しかし家畜のエサに抗菌薬を使われては、医師にはどうしようもありませんね(泣)。

高まる薬剤耐性菌リスク、インドの抗生物質多用が世界の問題に(2014年08月31日:AFP)
 重度の肺炎や気管支炎といった急性の細菌感染症の治療に使われる強力な抗生物質は、本来、最後の最後に頼るべき薬とされる。インドでも処方箋なしの販売は昨年、違法化された。しかし、AFP記者は多くの客でにぎわう薬局で、およそ700ルピー(約1200円)で簡単に購入できた。
 医師や医療専門家らは、人口12億人のインドでこのように手軽に抗生物質が入手できる事実が、薬剤耐性菌を増やし、地球規模の問題をもたらしていると指摘する。治療可能となって久しい病気が、再び不治の病になりかねないのだ。
「抗生物質への耐性が上がってきているのは恐怖だ」と、インド医薬品規制当局のGN・シン(GN Singh)局長はAFPの取材に語った。「誤用や乱用は、あってはならない。そのうち、軽い病気でも治せなくなる」
 だが、抗生剤が簡単に入手できてしまう現実に「驚きはしない」とシン局長。薬剤師や過剰処方する医師を取り締まり、使い過ぎの危険を患者に説いているが、苦戦しているという。
世界で増加する抗生剤使用、インドがけん引
 米プリンストン大学(Princeton University)が7月に発表した研究「Global Trends in Antibiotic Consumption 2000-2010(抗生物質消費の世界的傾向・2000~2010年)」によれば、抗生物質の過剰使用は、インドをはじめとする新興国で顕著だという。
 経済規模124億ドル(約1.3兆円)のインドの医薬品産業は、世界の抗生物質の3分の1近くをまかなっている。
 インドでは、寝ていれば自然に治るような軽い病気でもすぐに治そうと抗生物質を常用する人々が、台頭する中間所得層で増えている。医師たちも、抗生物質が効かない病気にも誤って処方していると、消化器系が専門のスディープ・カナ(Sudeep Khanna)医師は証言する。
「患者から多大なプレッシャーをかけられることが多い。患者はすぐに楽になりたいと思い、医者も早く回復させようと過度な治療を行う傾向がある」(カナ医師)
 プリンストン大の研究では、世界の抗生物質の使用量は2000年からの10年間で36%増えた。世界最大の消費国は62%増のインドだ。
*スーパー耐性菌の温床にも
 抗生剤の乱用は、薬物耐性のある「スーパーバグ(超強力細菌)」を生む温床となりつつあり、貧困層が多く公衆衛生が不十分なインドに甚大な影響をもたらしていると専門家は指摘する。
 2010年、ニューデリーで、ほとんどの抗生物質が効かない新型スーパー耐性菌「NDM-1(ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ、New Delhi metallo-beta-lactamase 1)」が発見された際は、世界中がパニックに陥った。
 一方、インドには世界の結核患者860万人の25%が暮らしており、2種類以上の抗生物質に耐性のある「多剤耐性結核」の症例も増えている。
インド政府は昨年、46種類の強力な抗生物質について、処方箋なしの販売を禁止した。この中には結核治療に使われる抗生剤も含まれている。この新政策の下では、抗生物質の製造・販売をチェックし、処方箋の記録を付け、人々の理解を深めるための最善の方法を記したガイドラインが全ての医療関係者に配られる。
 国立インド医学研究評議会(Indian Council of Medical Research)のVM・カトク(VM Katoch)議長は、抗生物質の誤用リスクについて国民を広く教育することが急務だと指摘。「インド人は、深く考えることなく気軽に抗生物質を使いすぎている」と苦言を呈した。

抗生物質効かない薬剤耐性菌のまん延、専門家らが警鐘(2014年01月21日:AFP)
 専門家の中には、抗生物質の不適切な使用が、世界温暖化やテロ攻撃に匹敵する規模の脅威を健康にもたらしていると指摘する者もいる。ただ薬剤耐性のまん延は完全に予防することができる。
 仏パスツール研究所(Pasteur Institute)で抗生物質の研究チームを率いるパトリス・クルバラン(Patrice Courvalin)氏は、「病気の治療が不可能になるということだけでなく、この20年~30年間の進歩が台無しにすらなりかねない」と指摘する。
 重篤患者に特定のリスクをもたらす日和見感染細菌に対して有効な抗生物質がなければ、大きな手術、臓器移植、がんや白血病の治療ができなくなる可能性があるという。
 英カーディフ大学(Cardiff University)のティモシー・ウォルシュ(Timothy Walsh)教授(医微生物学)は、「世界の一部の国々では、抗生物質がすでに底をついている」と語る。
「インド、パキスタン、バングラデシュ、そしておそらくロシア、東南アジア、南米中部などでは、既に手遅れになりかけている。何も残っていない。しかも不幸なことに、供給経路にさえ残っていないのだ」
 服用期間が短すぎる、服用量が少なすぎる、服用を途中でやめるなど、誤った方法での服用で、抗生物質に変異した細菌を殺す効果はなくなる。
 服用した薬剤は他の細菌にもダメージを与えるため、優位性を得た耐性菌は他の細菌を支配し増殖することになる。
 問題の根底には、医師による抗生物質の不適切あるいは不必要な処方がある。アジアやアフリカなどの一部の地域においては、処方箋なしで安易に薬剤を入手できるケースもあるという。
 薬剤耐性のまん延を防ぐには、分別のある薬剤の使用が大事となる。感染がウイルス性と細菌性のどちらなのか、治療効果があるかどうかをより慎重にかつ迅速に診断する必要がある。
 畜産業者は家畜に抗生物質を与えることをやめ、病院や個人は細菌の拡散を防ぐために衛生面を向上させる必要がある。

家畜への抗生物質投与にガイドライン、米FDA 耐性菌懸念で(2013年12月12日:AFP)
 薬剤耐性菌が世界的に増えていることを受けて、米食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は11日、家畜への抗生物質の定期的な投与を抑制する業界向けガイドラインを発表した。
 ガイドラインに強制力はなく、適用は任意。また、使用を制限する薬剤についても、健康な家畜の成長促進や生産量増大を目的としたものに限定する。さらに3年をめどに、人の感染症治療に重要な抗生物質の家畜への使用を全廃するほか、家畜の病気予防や治療のための薬剤でも、投与に際して獣医師の処方を義務付けるとしている。
 世界保健機関(World Health Organization、WHO)は結核やマラリア、淋病といった人の感染症で薬剤耐性菌が広がっている大きな要因の1つに、家畜に対する抗生物質の乱用があると指摘している。

「喉の痛みに抗生物質」いまだ6割、耐性菌への懸念 米調査(2013年10月04日:AFP)
 米国では喉の痛みを訴える患者のうち抗生物質が必要なのは1割程度にすぎないにもかかわらず、患者の約6割に抗生物質が処方されているとの調査結果をまとめたレター論文が3日、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)に掲載された。
 抗生物質が効かないスーパーバグ(超強力細菌)発生の一因となるため、抗生物質の過剰処方は危険だ。米国の保健当局は、世界の主な細菌感染症のほぼ全てが、一般的な抗生物質治療に対して耐性を示すようになっていると繰り返し注意を呼び掛けている。
 米ハーバード大学(Harvard University)と米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)に所属するマイケル・バーネット(Michael Barnett)氏とジェフリー・リンダー(Jeffrey Linder)氏は最新の研究論文で、1997~2010年に診療所と救急診療部の8100件以上の受診データを分析した。
 論文によると、1993年ごろは70~80%程度だった抗生物質の処方率は、2000年ごろ60%程度に下がったが、その後は横ばいだという。
「喉の痛みを訴えて受診する成人患者について言えば、一般的な原因の中では唯一抗生物質が必要になるA群溶血性レンサ球菌(Group A Streptococcus、GAS)の有病率は約10%だ」と論文は指摘する。病原菌の抗生物質耐性が強くなる懸念があるにもかかわらず、医師は必ずしも必要ではないペニシリン、アモキシシリン、エリスロマイシンなどの治療薬を日常的に処方する習慣を変えようとしないという。

抗生物質が効かない薬剤耐性菌の脅威(2013年09月18日:AFP)
 米国では少なくとも年間200万人が抗生物質に耐性を持つ感染症にかかり、2万3000人がこの種の感染症で死亡しているとの最新の調査報告が、米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)より発表された。
 これらの数字は、抗生物質を使いすぎないことの重要性を強調している。調査対象の症例の半数で、例えばウイルス感染症などで、抗生物質の使用は不要か、もしくは不適切ですらあったと研究者らは指摘している。
 また、感染症に効果的な治療薬が不足する危険性に対しても、報告書は注意を促している。現状では、新しい抗生物質の開発数は、短期の必要量を満たすには至っていない。
 今回の調査対象の病原菌18種の大半は、ありふれたタイプの細菌で、危険度によって「緊急」「懸念」「重要」の3つのカテゴリーに分類されている。フリーデン所長によると、「緊急」グループの中には、特に興味深い次の3種類の病原菌が存在するという。
カルバペネム耐性腸内細菌(Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae、CRE)は「悪夢の細菌」で、基本的にすべての抗生物質に耐性を持ち、血液中に入ると死に至る場合がある。
クロストリジウム・ディフィシレ菌(Clostridium Difficile)は、命を脅かす感染症菌の1つで、年間1万4000人の死亡と25万件の入院に関連している。
薬剤耐性淋菌(りんきん)(Drug-Resistant Gonorrhea)は、米国で毎年80万件以上の感染が発生しており、利用可能なすべての薬剤に耐性を示す割合が増加している。
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「近親交配」というタブー。

2014年08月30日 07時58分17秒 | 医療問題
 医学的・慣習的に世界中どの民族でも“タブー”とされてきた「近親婚」。
 遺伝子構成が近いヒト同士から生まれた子どもは、遺伝病(劣勢遺伝)が発症しやすいとされ、自然に忌避する習慣が生まれ守られてきました。
 まあ、理論的にはそうなんだろうな、程度に思ってきたところ、この衝撃的なニュースが目に入りました;

豪で「近親相姦農場」見つかる、先天異常の子ら12人保護(2013年12月13日、AFP)
【12月13日 AFP】オーストラリアの地方部で、数世代にわたって近親相姦を繰り返していた農場から虐待状態にある5~15歳の子ども12人が保護されていたことが分かった。肢体の不自由な子どもや障害児もおり、同国内に衝撃が広がっている。
 警察官と児童福祉当局の職員が訪問した農場には、子どもたちの他に30人ほどの成人の男女が暮らしていた。この家族は4世代にわたって、おじとおば、兄弟と姉妹が近親相姦によって子を産み、さらにその子どもたちにも近親交配で子を出産させていた。
 遺伝子検査の結果、12人の子どものうち11人が近親間に生まれており、うち5人の両親は「非常に近い血縁関係」にあった。子どもたちには聴覚や視覚などにさまざまな障害が生じていた。
 この家族はトレーラーハウス2台と2棟の小屋、2つのテントに分かれて住んでいた。水道や下水設備はなく、子どもたちの歯の衛生状態は劣悪で、トイレはやぶの中でしていた。女の子たちは便器やトイレットペーパーの使い方を知らず、歯ブラシを見たこともなかった。
 子どもたちの話し方は非常に分かりにくく、学校に全く通っていなかった子や、たまにしか顔を出さなかった子もいた。全員に発達遅延か認知障害があり、7人は「理解可能な言葉を話すことができない」という。
 農場の周囲には電気柵が巡らされていたが、子どもたちのベッドの1つにはカンガルーの子が1匹寝ていた。敷地内にはチェーンソーや大きなゴミ袋が散乱していた。
 農場では他にもう1人の子どもが生まれていたが、遺伝上の問題が原因で生後2か月で死亡したという。


 「動物以下」になってしまったヒト達。
 一方、意図せず「近親婚」になってしまう可能性が指摘された「精子ドナー問題」;

1人の精子ドナーから多数の子ども、近親相姦の危険性も(2011年10月09日、AFP)
 1人の精子ドナーから数十人の子ども――SFのシナリオのような話だが、米国やカナダでは、規制が緩いために同じ父親から数十人、数百人の子どもが生まれており、専門家らが懸念を示している。
 カナダ保健省によると、フランスや英国とは違い、カナダや米国には、1人の精子ドナーからつくってもよい子どもの人数を制限する法律がない。
 国際的な基準では、同一の精子ドナーからの妊娠は20回が限度とされている。またデンマークでは同一ドナーからの子どもは25人までに制限されている。さらに、多くの精子バンクが独自の規制を設けている。
 だが、規則は常に守られるとは限らない。「デザイナーベビー」を産もうとする家族は、特定の遺伝子や特徴、たとえば目の色やIQレベルなどを基準に、カタログからドナーを慎重に選択する。その結果、特定の人気ドナーが多くの子どもの生物学的父となっている。
 カナダと米国では最近この問題が取り上げられ、いくつかの映画やドキュメンタリーも製作された。
 ことし発表されたカナダのコメディー映画「スターバック(Starbuck)」は、手早く簡単に金稼ぎをするために精子を売っていた男性が、意図せずして533人の生物学的な父になっていたというストーリーだ。
 また、トロント(Toronto)のドキュメンタリー制作者、バリー・スティーブンス(Barry Stevens)氏は、自分の経験をもとにした作品を制作した。
 スティーブンス氏は精子提供を受けて英国で生まれたが、彼の生物学的父は、精子バンクを通じて30年間でなんと500~1000人の子どもをつくっていたという。スティーブンス氏の異母きょうだいたちは、カナダ、米国、欧州、その他に広がっている。まさに「事実は小説よりも奇なり」だ。
 専門家たちは、1人のドナーに過剰に依存することで、遺伝的疾患や先天性異常が広がる危険性が高まると警告している。また、一部専門家は、異母きょうだい同士の意図しない近親相姦(そうかん)の危険性すらあると指摘する。
 スティーブンス氏は「ある1人のドナーの子ども同士が出会い、セックスをして、子どもを産む可能性は除外できない。さらには、ドナー自身が、自分の娘とセックスをすることだってあるかもしれない」と述べる。
 カルガリー大学(University of Calgary)の生命倫理学専門家、Juliet Guichon氏は、子どもたちの意図しない近親相姦は想像するよりも頻繁に発生していると指摘する。「精子ドナーを求める人は、同じ社会的・経済的地位の出身者。顔見知りだったり、同じ医師にかかっていたり、近所に住んでいたりする」
 2004年以降、精子ドナーへの対価支払いを中止したカナダでは、結果として在庫が枯渇し、医療機関は米国を中心とした輸入精子に大きく依存している。


 上記で出てきたドキュメンタリーの一つを以前見たことがあります;

“ドナー150”を探して~精子提供者と子どもたち~(2011年10月25日:NHK-BS)
原題:Donor Unknown
制作:Met Film / Redbird Production (イギリス 2011年)
 ペンシルバニア州で二人の母親と暮らすジョーエレン。精子バンクから提供された精子で生まれた彼女は、会ったことのない「父親」について、あれこれ想像しながら育った。父親は<ドナー150>と番号で呼ばれ、記録には身体的特徴や学歴、職業などだけが書かれていた。やがてインターネット上で同じドナーの子どもたちをつなぐサイトに登録した彼女の元に、異母姉ダニエルからのメールが届く。人生で最も嬉しい瞬間だったとジョーエレンは振り返る。メールや電話で交流を深め、ついに対面した二人はごく自然に相手を姉妹だと感じる。
 二人の出会いが新聞で紹介されたことから、「私の父親もドナー150だ」と名乗り出る人が相次ぎ、少なくとも14人の兄弟姉妹がいることがわかった。そしてついに、彼らは“父親”を探し出した。
 ロサンゼルスのヴェニス・ビーチ。<ドナー150>ことジェフリーの住まいはキャンピングカーだ。ダンサー、役者、ミュージシャン、ストリッパーなどをしていたが、もっと自由に生きたいと仕事を辞め、犬やハトと暮らし始めた。若い頃、ひょんなことからドナーになり8年間、精子バンクに精子を提供して収入の足しにしていた。
 ジェフリーに会うことを決意したジョーエレンたち。その生き方に戸惑いつつも、ただのドナーではなく、ジェフリーという存在とのつながりを確認する。一方、ジェフリーも、彼らとの出会いに確かな実感と今までにない感動を覚える。


 これが精子ドナーではなく、色を好む男性の不倫歴の末に生まれた子どもたちだったらどうだろう・・・こんな乗りで「同窓会」を開くことはあり得ないでしょうね。
 なにか釈然としないものが残ります。

 すると、こんな記事も気になってきます;

祖父の精子で誕生118人…体外受精、17年間で(2014年7月28日:読売新聞) 
 夫婦以外の卵子や精子を使った非配偶者間体外受精の実施を国内で初めて公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町、根津八紘やひろ院長)は、これまでに夫婦79組が、夫の実父から精子提供を受け、118人の子どもが誕生したとする結果をまとめた。31日、東京都内で開かれる日本受精着床学会で発表する。
 同クリニックによると、1996年11月から昨年末まで、夫に精子がない110組が、夫の実父(50歳代~70歳代)の精子と妻の卵子で体外受精をした。子どもを得た79組中19組が2回以上出産した。移植1回当たりの妊娠率は38%だった。
 非配偶者間体外受精に関する法規定はないが、日本産科婦人科学会(日産婦)は体外受精を夫婦間に限っている。一方、厚生労働省審議会は2003年、匿名の第三者からの体外受精を認める報告書を出し、兄弟姉妹らからの提供は人間関係が複雑になりやすいなどの理由で当面は認めないとした。
 匿名の第三者の精子を妻の子宮に注入する非配偶者間人工授精では、国内で49年以降、1万人以上が生まれたとされる。日産婦も97年に追認している。
 国内の多くの医療機関では、精子がない夫婦が子どもを望む場合、選択肢として非配偶者間人工授精と養子縁組のみを示している。
 根津院長は「身内からの提供を望む夫婦は少なくない。カウンセリングを重ねて、慎重に行っている。血のつながりがあった方が、提供者家族も含めて良好な家族関係を築きやすい、出自が明確になるという面もある」と話している。


 医学的には、妻と義父との関係では近親婚にはなりませんが、社会的・倫理的な問題があります。
 実際に妻が夫の父親と性行為に及ぶと不倫、子どもができると家庭崩壊という流れになるのがふつう。
 それが不妊治療という目的では正当化される?

 私には是非の判断ができかねる問題です。
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ためしてガッテン「美肌の大敵! 治らないニキビの正体」

2014年08月01日 20時08分13秒 | 医療問題
2014年7月30日に放映されました。
あまり期待しないで見はじめましたが、結構なかなか・・・いや実に勉強になりました。

番組紹介
今回のテーマは、お肌の大敵「ニキビ」。
知らないうちにできていたり、なかなか治らず跡が残ったりするニキビを早く治そうと、さまざまなケアをしている人は多いのではないでしょうか。
ところが、“ニキビ”と思っていた症状が、まったく異なる「偽ニキビ」の場合があったのです。
今までよかれと思ってやっていたニキビ対策で、眠れないほどの激痛やボツボツが大増殖するなど、重篤な症状に襲われてしまうことも!
普通のニキビのようで実際は異なる3つの偽ニキビのメカニズムや正しい対処法などをお伝えしていきます。


思春期のニキビは油の過剰分泌、青年期以降のニキビは乾燥肌が主な原因、という説明に目から鱗が落ちました。
また「偽ニキビ」と称して、ニキビに似ているけどニキビじゃない、ニキビの治療をしても悪化してしまう病気を3つ挙げていました。

■ 扁平疣贅

 ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の感染症です。顔を触るクセが広がる主因。また、フェイス・ケアに熱心なほど広がってしまう恐怖。

マラセチア毛包炎
 顔面のニキビはアクネ菌が主因ですが、背中のニキビはマラセチアが主因との説明でした。違いは発生数でアクネ菌<マラセチアだそうです。
 アクネ菌は細菌なので抗菌薬(=抗生物質)が有効ですが、マラセチアは真菌(=カビ)なので抗菌薬は無効、抗真菌薬が有効です。

■ 面疔
 古くから「命に関わる病気」と言われた鼻にできる“おでき”。毛細血管を通って脳に達すると重症化するので都市伝説ではありません。
 犯人はブドウ球菌です。
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