小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

経口妊娠中絶薬が日本で承認されました。

2023年06月25日 14時01分09秒 | 予防接種
経口避妊薬ではありません、経口“中絶”薬の話題です。

私は知り合いの産婦人科医のブログで知りました。
海外では既に使用されている経口妊娠中絶薬という分野、
とうとう日本でも認可されました。

処方できる医師は登録制です。
つまり産婦人科に行けばいつでもどこでも手に入るわけではなく、
研修を受けて資格を取得した産婦人科医しか処方できない仕組みになっています。

事前の説明会では「なかなか一筋縄にはいかない」印象のようです。
とくに「内服後に子宮内容がすべて排出されているかの確認」が大変らしい。

この薬を扱ったインタビュー記事が目に留まりましたので、紹介します。
連続2回にわたる内容です;

<ポイント>
・名称:メフィーゴパック(ミフェプリストン/ミソプロストール)
・使用期限:経腟超音波検査で子宮内妊娠が確認された妊娠9週0日以下
 (海外では妊娠7週までの国が多い)
・投与方法:
 ミフェプリストン200mgを経口投与し、
 その36〜48時間後にミソプロストール0.8mgを
 バッカル投与(歯茎に貼り付けて吸収させる)、
 その後4〜24時間で子宮内容物が排出される。
・2剤目内服後は入院して様子観察し、子宮内容物がすべて排出されたことを要確認
・効果:
 日本の臨床試験では93.3%が中絶を完遂、
 6.7%は外科的処置(搔爬法)の追加を要した
・副作用:37.5%・・・主なものは下腹部痛15%、下痢14.2%および嘔吐10.8%
・費用:10万円?

妊娠中絶方法について、一般の方からは、
「外科的掻爬は体に負担がかかり、経口薬の方が体に優しい」
という声が聞こえてくるものの、
そう単純なものではないことが記事からうかがえます。

国内初承認 経口中絶薬、適応像と注意点は?
2023年05月26日 Medical Tribune)より一部抜粋;
「海外では飲み薬による人工妊娠中絶が可能だが、日本にはその選択肢がない」ことへの批判などを背景に、関心が集まっていた経口中絶薬。今年(2023年)4月28日、厚生労働省はいわゆる経口中絶薬ミフェプリストン/ミソプロストール(商品名メフィーゴパック)の製造販売を正式承認した。同薬の承認をめぐっては、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会による今年1月の承認了承後にパブリックコメントの募集が実施され、その取りまとめに時間を要したため3月の薬事審議会での審議が見送られ、承認が4月にずれ込んだ。埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センターの高橋幸子氏に、今回新たに日本でも人工妊娠中絶の選択肢に加わったミフェプリストン/ミソプロストールの概要や適応となる患者像、使用時の注意点などについて聞いた。
・・・
――初めに、4月末に承認された経口中絶薬ミフェプリストン/ミソプロストールの概要を解説してください。

 この薬は、妊娠を維持する役割を持つプロゲステロンを遮断するミフェプリストンと、子宮収縮をもたらすプロスタグランジンであるミソプロストールの2剤を同梱したものです。経腟超音波検査で子宮内妊娠が確認された妊娠9週0日以下の女性に対する人工妊娠中絶に用います。
 ミフェプリストン200mgを経口投与し、36〜48時間後にミソプロストール0.8mgをバッカル投与(歯茎に貼り付けて吸収させる)すると、その後4〜24時間で子宮内容物が排出されます。日本の臨床試験では93.3%が中絶を完遂、6.7%は外科的処置(搔爬法)の追加を要しました。副作用の発現割合は37.5%で、主なものは下腹部痛15%、下痢14.2%および嘔吐10.8%と報告されています。

――今回の承認についてどのように受け止めていますか。

 人工妊娠中絶は、海外では妊娠12週未満に対して外科的処置と経口中絶薬が選択できるものの、これまで日本では母体保護法の規制下で、妊娠12週未満では外科的処置(搔爬法または吸引法、その併用)により子宮内容物を除去する方法、12〜22週未満で腟剤を挿入して分娩を誘発する方法しかありませんでした。今回の承認により妊娠9週0日までにおける選択肢が増えた点は、大いに評価すべきことです。



――経口中絶薬が適する患者像についてはどうお考えですか。

 海外での使用経験から、おおむね明確になっています。まず、外科的処置を避けたいなど本人が希望しているかどうか、そして外科的処置が難しい肥満や子宮筋腫を合併している場合などです(表)。この他、中絶の完遂が麻酔下か覚醒下かも、処置法を選択する上でのポイントです。

<経口中絶薬の適応例>
・本人の希望
 ✓経口中絶薬による中絶を希望
 ✓外科的介入を避けたい
・妊娠がごく初期である
・外科的処置が難しい
 ✓肥満(BMI>30)だが、その他の新血管系リスクがない
 ✓子宮の奇形、子宮筋腫、過去に子宮頚管手術を受けたことがある

・・・

――承認までの過程では、ウェブ上などでさまざまな意見が噴出しました。

 外科的処置に対する批判の声はやや誤解含みであったかと思います。数年前から「外科的処置、特に掻爬法は非人道的で、経口中絶薬こそが女性に優しい」といった対比とともに、日本の中絶法が外科的処置だけであることへの不満の矛先を、残念ながら産婦人科医に向けるという現象がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で起こりました。
 日本における人工妊娠中絶に伴う合併症の頻度は、海外に比べもともと低い上に、中絶の数自体が年々減少しています。海外と日本の比較でしばしば槍玉に挙げられる掻爬法についても、施行頻度が比較的多いものの合併症が多いわけではありません。近年では、子宮穿孔リスクを減らしながら遺残を減らす吸引法と搔爬法の併用が多く行われています。
 多くの日本の産婦人科医が初めて経口中絶薬を認知したのは、海外からの個人輸入で経口中絶薬を使用し死亡した異所性妊娠例でした。「経口中絶薬を容易に入手できるようにすべき」といった極端な声には、今の段階ではまだ日本の産婦人科医は使用経験に乏しいため、同意することはできません。
 また、所定の時間に完遂できる外科的処置と異なり、経口中絶薬による中絶が完遂に至るまでの時間には幅があり、外来と周産期管理で多忙を極める産婦人科診療において適切に管理するためには、自院での処方で、かつ夜間などにも対応する施設に収益が確保される点も重要です。
 2剤目の経口中絶薬を服薬後24時間経過しても子宮内容物が排出されない場合は搔爬法の併用を検討するので、外科的処置を殊更に批判し忌避するのは安全な中絶医療の実施という観点でも適切ではありません。既に経口中絶薬が普及している国でも、外科的処置と経口中絶薬を選択する割合は同程度といわれています。処置法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、善悪の概念で語るべきものではありません。それぞれの中絶法について、正確な情報提供に基づき適切な選択がなされ、安全に施行されることが大切です。
・・・

――承認に際しては、薬価が10万円に上るとの見方が広まり、批判も集まりました。

 2剤目の服薬から排出までは入院対応となったので、中絶に要する医療資源を考慮すると10万円は決して高くないというのが多くの産婦人科医の見解だと思います。海外の臨床成績を外挿したわけではなく、日本で臨床試験が実施され、有効性と安全性が慎重に検討された上で承認に至っています。こうした国内承認までのプロセスの堅牢性も評価されるべきだと思います。医療制度の違いなどを踏まえず誤解を含んだままコストの高低を語るのはあまり意味がありませんし、批判の矛先を産婦人科医に向けるのも理不尽です。ただ、費用負担を中絶の当事者に求める以外のサポートができないか、考える必要はあると思います。
 経口中絶薬の適応は、海外では妊娠7週までの国が多く、日本では9週0日まで使用できますが、この時期は既に胎児の体が形成されつつあることを視認できます。体外に排出される胎児を医療者と確認するプロセスからは、強い心理的ストレスを受ける可能性が否めません。
 何より、多くの産婦人科医はまだ経口中絶薬を使ったことがないのです。アフターピルのように産婦人科医なら誰でも処方したことがある薬というわけではありません。その意味でも、入院対応とした点は妥当だと考えられますし、経口中絶薬にせよ外科的処置にせよ、メンタルサポートなどのフォローの充実がこれまで以上に必要だと考えています。
 なお、海外留学中にルームメイトが経口中絶薬を使用する場面に遭遇した人によると、腹痛に苦しむ姿とルームメイトの「眠っている間に中絶できるなんて羨ましい」との言葉が印象に残ったそうです。この間、経口中絶薬については「女性に優しい中絶法」というイメージが先行した感がありますが、メリットとデメリットを冷静に考慮し、自分に合った中絶法を選択できるよう支援することが産婦人科医の役割です。

――女性の健康を守ると言う観点では、他にも「生理の貧困」問題、避妊費用、中絶費用と、特に若年女性における経済的負担に対する不満の声が聞かれますし、改善すべき課題ですね。

 今回沸き起こった中絶費用が高額であるとの不満についてもしかりですが、求めるべきは避妊および中絶費用の公費助成です。手技や費用に関する女性と産婦人科医の対立という構図から脱却し、ともに国に働きかけていく時期に入っていると考えています。国には、避妊や中絶に対する公費助成を、若年女性の健康と豊かな可能性を守るための投資であると認識してほしいと思っています。

▢ 国内初承認 経口中絶薬、社会的課題に迫る
・・・
――経口中絶薬が選択肢として機能する上での課題について、どのようにお考えでしょうか。

 経口中絶薬による人工妊娠中絶が実施できるのは、母体保護法指定医が所属する医療機関のみです。販売のルートも医薬品製造販売業者→卸売業者→登録された医療機関のみと定められていますが、登録医療機関数は現時点で80施設程度になる見込みです。まずは使用経験が集積され、登録医療機関が増えることが求められます。
 さらに、必要とする女性に適切に行き渡る状況を醸成できるか否かという点では、妊娠に気付いてから産むか否かを検討し中絶を決断する過程で、経口中絶薬が使える妊娠9週0日までに産婦人科医にアクセスできるのかが根本的かつ大きな課題です。

――妊娠によって教育や就労の機会すら脅かされる10〜20歳代前半の女性にとって望まぬ妊娠は深刻ですが、この世代は産婦人科の受診率が低いとされています。彼女らが産婦人科医に適切にアクセスするための方策はあるのでしょうか。

 安心できる産婦人科の受診先づくりとして、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の機会をうまく活用してもらいたいと考えています。そして、例えば試験や宿泊行事における月経調整、生理痛の相談などを低用量ピルを知るきっかけとし、自分の体とうまく付き合いコントロールすることを経験しながら、産婦人科医とのパートナーシップをつくってもらえたらと願っています。
 とはいえ、多くの産婦人科医は日常診療で多忙のため、診療場面で多岐に及ぶ性教育を担うのは困難です。そこで、受診先としての産婦人科クリニックと若年女性の橋渡し役として、性教育や受診勧奨などの役割を担う存在が必要だと考えています。
 例えば、私は大学の健康管理センターで月1回相談を担当しており、必要に応じて受診勧奨や受診先の相談を受けています。養護教諭が配置されている高校の保健室などに相談に対応する仕組みを設け、広く機能できればよいのですが、私立高校には養護教諭の配置義務はなく、学校教育現場での対応は自治体による違いも大きいため、国全体の取り組みとして充実していないのが現状です。
・・・
――産婦人科クリニックを受診する一歩手前の段階からの性教育と受診勧奨といった啓発の充実が鍵を握るものの、現状はその機会も内容も乏しい状況なのですね。

 そもそも、世界と比べ日本の何を非人道的、暴力的と称するかでいえば、日本では国際標準の性教育を受ける機会がほとんどありません。このことこそが暴力的で非人道的です。

――国際標準の性教育とは、どのようなものでしょうか。

 ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、包括的性教育として「さまざまなジェンダー、セクシュアリティを生きる全ての子供たちが、安心で安全な環境の中で、他者と対等で平等な関係を築き、自分の人生において性を豊かに楽しむことができるようになる教育」がうたわれています。日本はこのレベルに全く達していないどころか、国際社会で一般的な「性と生殖に関する健康の指針」すら学べないのが現状です。日本の子供たちは、義務教育では依然として性行為の内容や自分とパートナーを守る具体的な方法を教わる機会がありません。性教育で扱われる内容は、高校でようやく避妊と性感染症のみといういびつな構図のままです。

<性と生殖に関する健康の指針>
5-8歳 「妊娠は計画できるものである」と理解する
9-12歳 「コンドームのつけ方」を実習で学ぶ
12-15歳 避妊法の利点と欠点を理解し説明できるよう学ぶ
15-18歳 「どんなにきちんと避妊しても妊娠に至ることはある」ことを知り、意図せぬ妊娠に際しどう考え、どのように行動し、誰につながり、どんな資源を活用できるのかを学ぶ

――この項目の全てを熟知し説明できる大人が日本にどれほどいるのか疑問ですね。

 子供を守る役割を担う児童養護施設の職員であるにもかかわらず、望まぬ妊娠時における意思決定と選択肢のリミットをご存じなかったケースに遭遇しました。図は避妊法と中絶法などの意思決定のタイミングを示したものです。これらが、女性の健康を守る上で全ての人が熟知しておくべきであるとの認識が広がることを願います。
・・・
ーー日本の性交同意年齢は長らく13歳とされ、現在、16歳への引き上げが検討されています。仮に年齢が引き上げられるにせよ、自らを守る方法を具体的に学べないままリスクにさらされるというのでは、確かに非人道的ですね。

 10歳代の中絶や性感染症を予防する目的だけにとどまる性教育は、日本の現状にもそぐわなくなっています。以前に比べ性交経験率は下がり、10歳代の中絶率も低下しましたが、性行為は早期に経験する人と全く経験しない人に二極化しています。性行為は自分と他者を慈しむ親密なコミュニケーションの1つであり、豊かな人生を送る上で重要な要素です。しかし、日本の若年者は教育現場で性感染症と避妊しか教わらないため、「性行為=危険で煩わしいもの」という残念な認識にとどまってしまっており、そのような認識のまま成長している人も少なくないでしょう。
 性教育・性政策の充実で知られるスウェーデンの性交同意年齢は15歳です。その年齢を迎えると、性行為を行う権利があること、仮にリスクのある性行為であったとしても自らに選択の権利があると認められます。その上で、結果として困ったことが生じた場合のセーフティーネットもきちんと設けられているのです。
 同国では15〜23歳の青少年が保護者や学校に知られることなく無料で受診できる公的医療機関としてユースクリニックが各地にあり、医師、看護師、助産師、カウンセラーなどの専門職が配置されています。妊娠検査や性感染症検査、避妊具や緊急避妊薬、生理用品に加え、性に関するさまざまな知識・情報が提供されています。学校の性教育の一環として紹介されるので、非常に認知度の高い施設です。
 このようなユースクリニックの在り方は、自分と他者を尊重できる次世代を育成する上で大いに参考にすべきです。例えば、東京都では昨年度からユースクリニックに対する予算が組まれるなどの動きがあります。ようやく見えてきた国際標準の包括的性教育の普及の兆しとして期待しています。

――経口中絶薬承認前に実施されたパブリックコメントではおよそ1万2,000件の意見が寄せられ、そのうち約3割が反対意見でした。

 中絶反対の姿勢を示す団体は少なからず存在し、性教育に対しても抑制的です。しかし、中絶はセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の1つであり、中絶を選ぶか選ばないかは当事者が自らの人生を最大限に尊重して選択すべきです。もちろん、産むことを選択した女性へのサポートの充実が必要であることは言うまでもありません。自分の体に関する意思決定権が自分にあり、尊重されるべきものであるとの認識を普及する必要があります。
 そもそも、日本では自分の体について自らの意思で選択する習慣が定着していないように感じます。その理由として、乳幼児期からのコミュニケーションにおいて意思が尊重されていない傾向が影響しているようです。・・・
 性行為は最も親密なコミュニケーションです。「いいよ/嫌だよ」といった双方の対等な意思に基づき行動を修正するという、適切なコミュニケーションの経験が成長の過程で蓄積されることが大切です。繰り返しになりますが、さまざまなジェンダー、セクシュアリティを生きる全ての子供たちが、安心で安全な環境の中で、他者と対等で平等な関係を築き、自分の人生において性を豊かに楽しむことができるようになることを学ぶ包括的性教育の普及が、次世代を育成する上で必要な取り組みだと考えています。

10代の女子のSOS(緊急避妊!妊娠?性感染症?)に遭遇した際に、
相談できる窓口をこちらにまとめました。


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RSウイルス感染症とワクチン開発

2023年06月25日 10時59分25秒 | 予防接種
今年(2023年)は小児科外来にとって特異な年です。
5月8日に新型コロナ感染症が2類相当から5類相当へ変更され、
それに伴い感染対策が緩められました。

すると、今まで影を潜めていたもろもろの風邪ウイルスたちが、
「待ってました!」
「やっと出番が来た」
と言わんばかりに流行し始めました。

夏に近づく季節なのに、
冬に流行するインフルエンザやRSウイルスが流行ったり、
それに交じって夏風邪のヘルパンギーナやアデノウイルスが出たり…。

この中で小児科医がマークするのがRSウイルスです。
乳児が罹ると気管支炎をおこしやすく、
呼吸困難~哺乳不良~睡眠障害が出てきて、
入院治療が必要になることが少なからずあります。

私は小児科医ですが、
生後3か月未満の赤ちゃんが風邪症状で受診すると、
迅速検査でRSウイルスをチェックする習慣があります。

結果が陽性なら、
「今は重症感はありませんが、
 数日後にはぜーぜー息が苦しくなる可能性があります、
 治るまで通うつもりでいてください」
と説明しています。

生後6か月までは要注意、
生後3か月未満はハイリスクです。

このようなRSV感染症に対して、
医療界は手をこまねいてみているだけではありません。
昔からワクチン開発が進められてきました。
紆余曲折を経て、ようやく実用化できる製品が出てきました。
それを扱った記事を紹介します。

高齢者と妊婦に対してワクチンの知見を行い、
後者はその後生まれた赤ちゃんの重症化率を70~80%下げたと報告され、
期待が膨らみます。

新たなRSウイルスワクチン、高齢者と乳児の双方で効果を発揮
 ファイザー社が開発したRSウイルスワクチンは、高齢者と乳児の双方でRSウイルス感染症を安全かつ効果的に予防するという2件の臨床試験の結果が報告された。ファイザー社は、同ワクチンの高齢者に対する接種が5月までに、妊婦に対する接種が8月までに米食品医薬品(FDA)により承認されるものと見ている。
・・・
 RSウイルスに感染しても、通常は風邪様の症状が現れる程度だ。しかし米国では、1歳未満の子どもの気管支炎と肺炎の最も一般的な原因ウイルスがRSウイルスである。また、このウイルスは高齢者、特に健康状態が不良な人にリスクをもたらす。米疾病対策センター(CDC)によると、毎年、5万8,000〜8万人の5歳未満の子ども、および6万〜16万人の高齢者がRSウイルス感染症で入院し、さらに6,000〜1万人の高齢者が同感染症により死亡しているという。
 RSウイルスワクチンの臨床試験は1960年代に実施されたが、ワクチンにより産生された抗体が、ウイルスへの感染や重症化を促してしまう「抗体依存性感染増強」を引き起こし、失敗に終わった。
 しかし、2010年代初頭、米国国立衛生研究所(NIH)の研究グループが、RSウイルスのヒト細胞への侵入に関わるウイルス表面のFタンパク質がヒト細胞の受容体と結合し、ウイルス粒子が細胞膜と融合した後に構造を変えることを突き止めた。そして、RSウイルスワクチンが効果を発揮するには、融合前のFタンパク質の構造をターゲットにする必要があることを報告した。
・・・
 一方、妊婦を対象に18カ国で実施された第3相試験では、妊娠24〜36週の妊婦にファイザー社のRSウイルスワクチン(3,682人)、またはプラセボ(3,676人)がランダムに投与された。その後、生まれた子どもの追跡調査を行い、ワクチンによって産生された母親の抗体が子どもに保護効果をもたらすのかどうかを確認した。
 RSワクチン接種群の子ども3,570人、プラセボ接種群の子ども3,558人を対象にした中間解析の結果、入院を要するような重症の下気道感染症が生じたのは、生後90日以内ではRSワクチン接種群の子どもで6人、プラセボ接種群の子どもで33人(ワクチンの有効性81.8%)、生後180日以内では同順で19人と62人(ワクチンの有効性69.4%)であることが明らかになった。
 ファイザー社の副社長であり臨床ワクチン研究の長を務めるBill Gruber氏は、「乳児を守るためには、妊娠中の母親がワクチンを接種し、抗体を子どもに受動的に移行させる必要がある。FDAの承認が早ければ早いほど、RSウイルスワクチンを接種できる妊婦の数が増え、保護される乳児の数も増える」と話している。
・・・

<原著論文>

この記事ではファイザー社のワクチンを扱っていますが、
世界中の製薬会社がしのぎを削って開発中です。
しかし乳児への効果を期待する妊婦対象は…
ファイザー社だけのようですね。

▢ RSウイルスワクチン、GSKがライバル抑え開発競争に勝利
 英グラクソ・スミスクラインは5月2日、米国でRSウイルスワクチンの承認を世界で初めて取得し、ライバルであるファイザー(米)、モデルナ(同)、バイエルン・ノルディック(デンマーク)に先んじることに成功した。
・・・
RSウイルスに対するワクチンや治療薬を開発している企業とその開発状況をまとめた。
 
GSK
米FDA(食品医薬品局)は2日、GSKのRSウイルスワクチン「Arexvy」を承認した。欧州の当局も4月下旬、このワクチンの承認を勧告している。同社は、米国で次のRSウイルスの流行シーズンが始まる前に同ワクチンが利用可能になることを期待している。
GSKのワクチンは60歳以上の成人を対象とした後期臨床試験で、RSウイルス感染に対して82.6%の有効性を示したことが昨年10月に公表されている。
 
ファイザー
ファイザーは、高齢者向けだけでなく、妊婦に接種することで乳児の感染を出生時から予防するワクチンの開発を進めている。FDAは同社のRSウイルスワクチンの成人への使用について、今月中に承認の可否を判断する予定だ。
ファイザーは昨年11月、同社のRSウイルスワクチンを妊婦に接種した場合、乳児の重症感染症を予防する効果が81.8%だったとする後期臨床試験の結果を発表した。同社は、60歳以上の成人を対象とした別の臨床試験でも66.7%の有効性が示されたと昨年8月に発表している。
 
モデルナ
モデルナが開発中のRSウイルス用mRNAワクチンは、60歳以上の成人を対象に行った後期臨床試験で、咳や発熱など少なくとも2つの症状を予防する効果が83.7%だったと発表している。
同社は60歳以上を対象とするRSウイルスワクチン「mRNA-1345」について、今年第2四半期に米国で申請する方針だ。
 
サノフィ/アストラゼネカ
仏サノフィと英アストラゼネカは昨年11月、抗RSウイルス抗体ニルセビマブについて、乳児のRSウイルス関連疾患の予防を目的に欧州で承認を取得した。FDAも審査を進めている。
ニルセビマブは後期臨床試験で、いくつかの種類の下気道感染症に対してプラセボと比較して74.5%の有効性を示した。
 
メルク
米メルクも、乳幼児のRSウイルス感染症を予防する抗体医薬クレスロビマブの後期試験を行っている。同試験は2024年に完了する予定だ。
 
バイエルン・ノルディック
デンマークに本社を置くバイエルン・ノルディックは昨年4月、60歳以上を対象としたRSウイルスワクチンの後期臨床試験を開始した。試験結果は今年半ばまでに出る予定だ。

この記事では言及していませんが、
明暗を分けて治験を中止した製薬会社もあります。

米J&J、RSウイルスワクチンの後期試験打ち切りへ
米医薬品・健康関連用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は29日、開発中の成人用の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症ワクチンの後期臨床試験を打ち切ると発表した。患者にとって最も高い効果をもたらす可能性のある医薬品開発に注力するためとしている。
同社は2021年に60歳以上の被験者2万7000人強が参加する世界規模の試験を開始。米国、英国、カナダ、オーストラリア、チリ、ブラジル、中国などの約300カ所で試験が進められてきた。試験の詳細は明らかにしなかった。・・・



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腸内細菌叢を乱す薬剤は?

2023年06月25日 09時01分28秒 | 予防接種
昔は風邪を引いて熱を出すと、
「抗生物質をください」
という患者さんが当たり前のようにいました。

近年、風邪の原因のほとんどがウイルスであることが認知され、
また抗生物質乱用による弊害(耐性菌や胃腸障害)も有名になり、
そのような患者さんが減りました(ゼロにはなりませんが)。

ただ、近隣の耳鼻科開業医では、
現在でも「風邪を引いたら抗生物質ありき」
というところがあります。
患者さんへの説明では、
「中耳炎・副鼻腔炎予防」
ということですが、
知識を持った患者さんはドクターショッピングし始め、
当院にたどり着くパターンです。

以前から気になっているのが、
抗生物質内服による下痢です。
「抗生物質は腸内細菌叢の善玉菌もやっつけてしまうので、
 バランスが崩れて下痢をする」
と説明されてきましたが、
この影響が長く続くのかどうか、誰も教えてくれません。
直接の答えにはなりませんが、
「どんな薬剤が腸内細菌叢に影響するのか?」
という報告を扱った記事が目にとまりましたので紹介します。

他のパラメーターよりも薬剤の影響が大きいことは予想されましたが、
食習慣の3倍という数字には驚きました。
つまり、食習慣を変えて腸内細菌叢を元気にしても、
薬剤により簡単に壊されてしまう、ということ?

薬剤の中で私が気になっていた抗生物質は第三位でした。
一位はお腹に作用する潰瘍治療薬系、
二位は糖尿病治療薬(ちょっと意外)。

また、腸内細菌叢が影響を受けても、
薬剤中止後に回復するという記載もありました。
すると、抗生物質で下痢をしても、
下痢が治ることには腸内細菌叢も元に戻りつつある、
と考えていいのでしょうか・・・

何かと注目される腸内細菌叢、
抗生物質によるバランスの乱れの長期影響について知りたいところです。

薬剤や生活習慣は腸内細菌叢にどう影響?
 さまざまな外的・内的要因が腸内細菌叢のバランスに影響を及ぼすことが知られているが、それらの要因を網羅的に解析した研究は少ない。東京医科大学消化器内視鏡学准教授の永田尚義氏らは、日本人約4,200例を対象にさまざまな生活習慣や臨床情報を腸内微生物叢情報と統合した世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを構築。腸内細菌叢に与える影響は食事、生活習慣、疾患よりも薬剤投与によるものが強いことなどをGastroenterology(2022; S0016-5085: 00732-6)に報告した。
・・・
 データベースは「Japanese 4D(Disease Drug Diet Daily life)コホート」と命名され、メタデータにはさまざまな疾患や投与薬剤、食習慣、生活習慣、身体測定因子、運動習慣などが含まれている。薬剤に関しては750種類以上の薬剤投与歴が網羅的に収集された(図)。
図. Japanese 4D(Disease Drug Diet Daily life)コホート

(東京医科大学プレスリリースより)

 4,198例の糞便検体をショットガンメタゲノムシークエンスで解析し、腸内細菌1,773種、腸内細菌の遺伝子機能1万689個、薬剤耐性遺伝子403個を同定した。
・・・
 解析の結果、日本人の腸内には
 Bacteroides属
 Bifidobacterium属
 Clostridiales属
 Blautia属
 Faecalibacterium属
などが多いことが示された。
 腸内細菌叢のバランスに影響を及ぼす要因としては薬剤の影響が最も強く、次いで疾患、身体測定因子(年齢・性・BMI)、食習慣、生活習慣、運動習慣と続いた。薬剤の影響は食習慣、生活習慣、運動よりも3倍以上強く、属、種、遺伝子機能などのレベルで解析しても同様だった。

・・・
 薬剤の種別による腸内細菌叢への影響については、

 消化器疾患治療薬
 糖尿病治療薬
 抗生物質
 抗血栓薬
 循環器疾患治療薬
 脳神経疾患治療薬
 抗がん薬
 筋骨格系疾患治療薬
 泌尿器・生殖器疾患治療薬
 その他(呼吸器系疾患治療薬や漢方薬)
の順で影響が強かった。


消化器系疾患治療薬の中では、
 プロトンポンプ阻害薬(PPI)、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの胃酸分泌抑制薬
 浸透圧性下剤
 アミノ酸製剤
 胆汁酸排泄促進薬
の影響が強く、糖尿病治療薬では
 αグルコシダーゼ阻害薬
の影響が最も大きかった。

また、特定の疾患とその疾患の治療薬では腸内細菌の変動は異なることも明らかとなった。
既報では検討する薬剤が50種程度と少なかったが、今回の研究では759種類もの薬剤を解析しており、同氏らは「疾患治療薬という大分類で腸内細菌叢への影響を概観しつつ、個々の治療薬の影響が明らかにされた」と評価する。
・・・
 腸内細菌叢に及ぼす多剤併用の影響については、併用薬が増えるにつれて日和見感染症を引き起こすEnterococcus faecium、Enterococcus faecalis、Klebsiella Oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Streptococcus pneumoniaeなどの菌種が増加する正の相関が示された。また、併用薬が増えるにつれて腸内細菌叢がコードする耐性遺伝子の量も増加した。さらに、薬剤投与数の増加に伴い免疫の恒常性を保つ作用を有する酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生する菌(Blautia、Faecalibacterium、Lachnospiraceae、Eubacterium、Clostridium、Dorea)の減少も示された。
 腸内細菌叢の変化が薬剤や多剤併用によるものか否かについては、
PPI投与後にLactobacillus属やStreptococcus属の腸内細菌の増加やE. faeciumやS. pnuemoniaeなどの日和見感染症を引き起こす病原菌種が増加すること、PPI投与を中断すると減少することが示された。これらの結果は過去の横断研究の報告と一致しており、腸内細菌叢の変化の原因が薬剤投与であること、PPI投与により変化した腸内細菌叢は投与中止により改善する可能性が示唆された。
 また、併用薬が増加した被験者ではStreptococcus属やLactobacillus属などの腸内細菌やcationic antimicrobial peptide resistanceなど特定の代謝経路に関わる遺伝子が増加し、併用薬を減少することで減少した。
 永田氏らは「世界に類を見ない情報量と多数例の解析から、薬剤が及ぼす腸内マイクロバイオームへの広範囲な影響が明らかになった。この影響は可逆的な一面もあり、不要な薬剤の投与を見直す必要性が強調された」と結論。「今回の研究結果は、個別の薬剤がどういった腸内細菌叢に影響を及ぼすのかを参照できる『カタログ(辞書)』を提供したといえる。薬剤選択における有用な知見であり、腸内細菌の変化は薬剤の長期使用や多剤併用により生じる副作用を予測するバイオマーカーとなりうる。また、特定の腸内細菌をターゲットとした薬剤関連疾患の発症予防や治療法の開発につながることが期待される」と展望した。

<参考>
▢ 薬の種類や多剤併用が及ぼすヒト腸内細菌への全貌を解明
~世界に類を見ない腸内細菌叢ビッグデータベースを構築~

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乳児アトピー性皮膚炎の治療は食物アレルギーの予防となりえるか? ~PACI Study~

2023年06月22日 06時33分23秒 | 予防接種
…2008年に発表された「二重抗原暴露説」から、アレルギー専門医にずっと注目されてきたことです。
 そして2023年、この概念を実証する研究結果が国立成育医療センターから報告されました。

 私自身、5年ほど前から、かゆみを伴う乳児湿疹を反復する例に、プロアクティブ療法に準じたタイトコントロールを実施してきました。
 しかしその際にハードルとなる事象に何回も遭遇し、手探りで模索するとともに情報を探し、すると今回「PACI Study」を発表された成育医療センターのチームに出会い、山本喜和子先生からアドバイスを受けながら進めてきました。
 すると、食物アレルギー発症者が減少したことが実感できました。なにより、皮膚の状態がよいのでアレルギー検査を行う頻度が激減したのです。
 というわけで、この成績がとても気になります。

アトピーの早期積極治療で卵アレルギー予防~二重抗原曝露仮説を実証
 乳児期に発症したアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーの発症リスクを高めるとされる。国立成育医療研究センターアレルギーセンターセンター長の大矢幸弘氏らは、アトピー性皮膚炎への早期積極治療による食物アレルギー発症予防効果を検討する多施設共同評価者盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。二重抗原曝露仮説を実証する世界初の報告をJ Allergy Clin Immunol 〔2023; S0091-6749(23)00331-7〕に発表した。
◆ 全国16施設、318例を検討
 2008年に提唱された「二重抗原曝露仮説」によると、湿疹などにより荒れた皮膚からのアレルゲン侵入はアレルギーの発症リスクを高める一方、消化管で吸収されたアレルゲンはアレルゲンとして認識されず、アレルギーの発症リスクを下げるとされる。
 この仮説が正しければ、食物アレルギーの発症予防には
①アトピー性皮膚炎の発症予防や早期治療による経皮感作の予防
②アレルギーの原因となりうる食物の早期の経口摂取による経口免疫寛容の誘導
―の二重の介入が有効と考えられる。
これまで、②については2017年に同センターが離乳期早期の鶏卵摂取による鶏卵アレルギーの発症予防効果を報告したのをはじめ(Lancet 2017; 389: 276-286)、複数の研究が報告されているが、①についてはRCTでの報告はまだない。
 そこで大矢氏らは、アトピー性皮膚炎に対する早期積極治療による食物アレルギー発症予防効果を検討するPACI Studyを全国16施設で実施した。対象は生後7~13週の乳児で、最低28日間持続または断続的な痒みを伴う湿疹を有し、The U.K. Working Party(UKWP)の診断基準でアトピー性皮膚炎と診断された318例。アトピー性皮膚炎に対して積極的な治療を行う群(積極治療群)318例と、標準的な治療を行う群(標準治療群)322例にランダムに割り付け、生後28週時での鶏卵アレルギーの有病率を検討した。
 なお、積極治療群では保湿薬の1日2回の使用に上乗せして、ステロイド外用薬を以下のスケジュールで無症状の部位を含む全身に使用した。同氏らによると、ステロイドを湿疹部に限定して使用すると無症状の炎症から新たな湿疹が出現するなど寛解の実現が困難になる患者が多いことから、積極治療群では湿疹のない部分を含めた全身への使用としたという。
・・・
 一方、標準治療群では保湿薬の1日2回の使用に上乗せして、ステロイド外用薬を湿疹が発現した部位のみに、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に基づいて使用した。また、両群ともレスキュー薬として担当医の判断でモメタゾンフランカルボン酸エステルの使用も可能とした。
◆ 積極治療群で鶏卵アレルギーの発症が10.5%ポイント低下
 検討の結果、28週時における鶏卵アレルギーの有病率は、標準治療群と比べ積極治療群で有意に低かった(41.9% vs. 31.4%、P=0.0028、リスク差-10.5%ポイント、片側CIの上限-3.0%)。
 ただし、成長障害での入院例が積極治療群の6例で見られた。また、因果関係は不明だが標準治療群と比べて積極治療群で体重(平均差-422g、95%CI -553~-292g)および身長(同-0.8cm、-1.22~-0.33cm)が低かった。
 以上の結果から、大矢氏らは「食物アレルギーの発症予防には、乳児期のアトピー性皮膚炎を早期に積極治療し、経皮感作のリスクを低下させることが重要であることが示され、二重抗原曝露仮説を実証する結果となった」と結論。
 その上で「乳児期のアトピー性皮膚炎の重症度には個人差が大きいため、実臨床においては患者の症状や重症度などに合わせて適切な強さのステロイド薬を使用し、使用期間と減量スケジュールを慎重に検討し寛解状態を実現・維持し、副作用を回避することが求められる」と付言している。

標準治療群では卵アレルギーを4割発症、積極治療群で3割発症、という結果です。
私の印象では、
・思っていたほど差が出なかった。
・積極治療群で3割発症は多い。
です。
今回比較したのが「標準治療群」であり、無治療ではなかったことが差が小さい要因と思われます。
また、積極治療群では、私の実臨床の印象では1~2割にとどまると思われるのですが・・・これは治療開始前にすでに監査されていたかどうかも検討項目に入れないとメリハリの付いた結論は出にくいと思いました。
というのは、当院で治療を始める乳児早期(生後3~4か月)患者さんでも、すでに皮膚科や小児科を数件ドクターショッピングしたのちに受診される例が少なからず存在するからです。おそらくそのような例は、当院で治療を始める前にすでに食物アレルギー体質が成立していることが予想されます。


<参考>
山本希和子ほか(PubMed)

要約
バックグラウンド: 早期発症アトピー性皮膚炎は食物アレルギーの強力な危険因子であり、早期の効果的な治療が経皮感作を予防する可能性があることを示唆しています。
目標: この研究では、臨床的に影響を受けた皮膚と影響を受けていない皮膚へのアトピー性皮膚炎の強化された治療が、臨床的に影響を受けた皮膚のみに対する反応治療よりも鶏の卵アレルギーの予防に効果的であるかどうかをテストしました。
メソッド: これは、多施設、並行群間、非盲検、評価者盲検、ランダム化比較試験(PACI[皮膚介入によるアレルギーの予防]研究)でした。この研究では、アトピー性皮膚炎の生後7〜13週の乳児を登録し、乳児を1:1の比率でランダムに割り当て、早期皮膚治療の強化または局所コルチコステロイド(TCS)を使用した従来の反応性治療に割り当てました。主要アウトカムは、28週齢の経口食物チャレンジによって確認された即時鶏卵アレルギーの割合であった。
業績: この研究では、650人の乳児を登録し、640人の乳児を分析しました(強化された[n = 318]または従来の[n = 322]治療)。強化された治療は、従来の治療と比較して鶏卵アレルギーを有意に減少させ(31.4% vs 41.9%、P = 0028.10、リスク差:-5.1%、片側CIの上限:-3.0%)、422週齢で体重(平均差:-95 g、553%CI:-292〜-0 g)および身長(平均差:-8.95 cm、1%CI:-22.0〜-33.28 cm)を低下させました。
結論: この研究は、鶏の卵アレルギー予防戦略の構成要素として、適切に制御されたアトピー性皮膚炎管理の可能性を強調しました。この試験の強化された治療プロトコルは、TCSの副作用を回避するために、日常診療で鶏卵アレルギーを予防するためのアプローチと見なす前に変更する必要があります。TCSによる寛解導入後、TCSの安全性上の懸念を克服するための代替の積極的な治療法として、効力の低いTCSまたは他の局所療法による維持療法を検討することができます。



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マスク再考2023

2023年06月05日 07時11分15秒 | 予防接種
飛沫感染する感染症にとって、マスクが有効であることは明らかです。
しかし「マスク着用義務化」はそれだけではなく、
疾患の重症度や社会への影響も考慮して判断されます。

前項に続き、マスクについて考えてます。
こちらの記事が参考になりました。

▢ 5類移行でマスク着脱議論が再び炎上、それって誰の何のため?
2023/05/12:ケアネット)より一部抜粋;
…2023年5月8日から、ついに新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、感染症法上の5類扱いとなった。とは言っても、多くの一般人にとっては5月7日と5月8日で一気にガラリと生活が変わるわけではないだろう。ただ、接客が伴う各種業界ではこの日を機に以下のようにさまざまな変化が起こることが報じられている。
・『「3年間お世話になりました」処分か保管?アクリル板どうする「5類移行」正式決定』(テレビ朝日)
こうした身近な変化から、多くの人はいわゆる「コロナ禍」という言葉が有していた深刻さから徐々に解放されていくのだろう。
・・・
この3年間、新型コロナに関しては嵐のように大量のニュースが流れた。その時々で伝わった情報を理解しつつも、状況が頻繁に変化するため、多くの人が混乱しただろう。私なりにいまだに残るこのウイルスの厄介さを箇条書きにすると以下のようになる。
  • 感染力が既存の感染症の中でもかなり高いほうに分類される
  • 重症化・死亡リスクが集団によって大きく異なる
  • 短期間で感染の主流をなすウイルス株(変異株)が入れ替わった
  • ウイルス株の入れ替わりとともにワクチンの効果が変動した(とくにオミクロン株出現以降)
  • 感染力のピークが発症前にある
なかでも最後の性質は、今回のユニバーサル・マスク対策の根拠となっている。また、日常会話の飛沫で容易に感染してしまうことから、人との接触を避けることが対策の核となり、飲食業を中心に一部の業態が深刻なダメージを被った。ちなみに前述の知人も飲食業ではないが、深刻なダメージを食らった業種の人である。その意味で社会の中でもコロナ禍に対する「恨み」にはかなりの濃淡がある。
一方、感染症法上の5類になったところでウイルスそのものは根絶されたわけでも何でもなく、重症化・死亡リスクの高い人たちは依然として一定の警戒が必要である。その結果、そうした人の中にはなかなかマスクを手放せない人もいる
これらを総合すると、新型コロナを巡る問題はどうしても社会の分断を招きやすい性質を有してしまう。
…子供がマスクを外しやすくなるように、この5類化を機に学校では教職員や来訪する保護者は半ば強制的かつ一律的にマスクを外すことを求めている(少なくとも私はそう受け取って応酬した)。しかし、これはかなり困難な話だ。学校にも一定数はいるはずの重症化・死亡リスクの高い人に対し、公権力はリスクが上昇する方向への行動変容を強いることはできないからだ。
文部科学省の都道府県・指定都市教育委員会の教育長などへの通知でも原則は「マスクの着用を求めないことを基本とする」としつつも、「基礎疾患があるなど様々な事情により、感染不安を抱き、マスクの着用を希望したり、健康上の理由によりマスクを着用できない児童生徒もいることなどから、学校や教職員がマスクの着脱を強いることのないようにすること」と付記している。
・・・
いずれにせよ新型コロナに関して現時点の知見が維持される限り、私自身の主張が今後も大きく変わることはない。一方、一律的に常時マスクを外して元の生活にシンプルに戻りたいと考える人の気持ちもわからないわけではない。多分、今後は医療従事者の皆さんもこうした一般人の思いと医学・公衆衛生学的な知見が軽く火花を散らす局面にたびたび遭遇するだろう。

当院に来院する患者さんたちは、
コロナに感染しても重症化しない子供たちがほとんどです。
では私もマスクを外していいかと言われると、
今年還暦で持病もちの私は重症化リスクが高いため、
N95マスク(息が苦しくなるほど密閉性の高いマスク)をずっと着用しています。
高齢者や高齢者施設で働く人々も、マスクを外しにくいでことでしょう。

結局、マスクの着脱は、
その人自身、あるいは生活環境により重要性が異なることを知り、
その人の判断を否定しない、同調圧力をかけない雰囲気作りが必要です。
それには、「正しい知識」が必要ですね。

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学校におけるマスクの効果2023

2023年06月05日 06時42分59秒 | 新型コロナ
2023年5月8日に新型コロナの法律上の扱いが2類相当から5類相当へ変更され、
現場では感染対策が緩みました。
それとともに、季節外れのインフルエンザが日本各地で流行しています。
この現象は、
「いかにマスクが有効であったか」
を如実に表しています。

しかし現実社会では、
マスク着用によるメリットとデメリットをはかりにかけて、
どちらを選択するかを判断することになり、
日本ではマスクをして感染症流行を抑えるよりも、
経済活動やヒトの表情が見えた方が子供の成長にとってベター、
ということになったのでしょう。

新型コロナの厄介なところは、
年齢層や持病により重症化リスクが大きく異なることです。
ですから一律に「マスク着用」あるいは「マスクなし」という指示は、
どちらかからクレームが発生することが想定されます。

医療者から見ると当たり前のことですが、
学校におけるマスク着用が有効であったという最近の報告を紹介します。


学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに
ケアネット:2023/05/31)より一部抜粋; 
…スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、SARS-CoV-2感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。
 研究グループは、2022年1~3月(オミクロン株の流行期)において、スイスの2つの中学校(90人、1教室あたり平均18人)を対象として、マスク着用や空気清浄機の有無によるSARS-CoV-2感染リスクの変化を検討した。
 7週間の期間(マスク着用義務化[学校A:2週間、学校B:4週間]、非介入[それぞれ3週間、1週間]、空気清浄機使用[いずれも2週間])において、疫学データ(新型コロナウイルス感染症の症例)、環境データ(CO2濃度、エアロゾル濃度など)、分子データ(唾液とバイオエアロゾル[ウイルスなどの生物に由来する粒子])が収集された。
【結果】
(SARS-CoV-2が含まれた唾液サンプルの割合)
非介入時11.5%、マスク着用義務化時5.7%、空気清浄機使用時7.7%
(SARS-CoV-2が含まれたバイオエアロゾルサンプルの割合)
非介入時8.1%、マスク着用義務化時7.1%、空気清浄機使用時5.0%
(SARS-CoV-2感染リスク)
非介入時と比べてマスク着用義務化時で低かった(調整オッズ比[aOR]:0.19、95%信用区間[CrI]:0.09~0.38)。空気清浄機使用時は非介入時と同様であった(aOR:1.00、95%CrI:0.15~6.51)。
・試験期間中、マスク着用義務化によりSARS-CoV-2感染が9.98件(95%CrI:2.16~19.00)回避されたと推定された。

<原著論文>

スイスの小学校では一クラス18人という数字にまず、驚きました。
それはさておき、
「マスク着用義務化により感染リスクが81%減少した」
という結果にうなづいた次第です。

私は医療者で日々発熱患者に接触し、
かつ持病もちでハイリスクなので、
診療中のN95マスク着用は続ける予定です。

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with コロナ時代の“かぜ”の自然歴

2023年06月04日 12時26分06秒 | 感染症
一過性の軽症ウイルス感染症で気道がターゲットになるタイプを、
私たちは「急性上気道炎」と呼んでいます。
一般的には“かぜ”ですね。

毎年春になると、新たに集団生活(入園)を始めた乳幼児が“かぜ”をもらい、
小児科外来はにぎわいます。

集団生活の中では誰かしら風邪をひいていて、
それが一種類ではなく複数ありますので、
何回も風邪をもらってしまい、
登園する日数より休んでいる日数の多い子どもも出てきます。
治りきる前に次の風邪をもらうと症状が切れずにつながってしまうのですね。

心配した保護者が、
「ずっと風邪をひいています」
「この子はどこかおかしいのでしょうか」
と聞いてきます。

私の答えは、
「元気であれば心配いりません」
「いくつかの風邪を繰り返しているだけでしょう」
「鼻水をよく観察すると、それがわかります」
「風邪の初期は水っぱなで透明、数日すると白く濁ってきます」
「それとともに痰が絡んで咳も出ます」
「咳鼻痰がダラダラ続きながら治っていきます」
「もし、鼻水が透明になったら、それは次の風邪の始まりです」
といった感じです。
すると保護者はうんうん頷いて納得してくれます。
「私はこの状態を“入園症候群”と呼んでいます」
と付け加えることもあります。

さて、学生時代の講義では“かぜ”について教えてもらった記憶がありません。
珍しくて重症化する病気は試験のヤマなので覚えましたが、
実際に働き始めるとめったに出会いません。
日々診療する風邪に関してはスルーでした。
だから、風邪に関する知識は医師になってから勉強したり、経験したりしたものです。

先日、WEBセミナーを聞いていたら、
「風邪の自然歴」に始まり、乳幼児のウイルス性気道感染症、covid-19 前後の変化、漢方治療の応用などの解説がありました。

■ 「covid-19 新興後の子どもの呼吸器ウイルス感染症と漢方薬への期待」
(松江赤十字病院感染症科 成相昭吉Dr)

わかりやすかったので、ここにメモを残しておきます。

鼻水+湿性咳嗽±発熱=“かぜ”の始まり
・“かぜ”は呼吸器ウイルス感染症、急性上気道炎と同じ意味。
・ここで大切なのはか「鼻水」ではじまること。
・急性上気道炎が細菌感染により生じたという報告はこれまでにない(※1)。

乳幼児による続発症のない上気道炎の自然歴(※2)
・2-4日の潜伏期の後発熱・鼻漏・咳嗽で発症する。
・発熱は3日以内に解熱する。
・解熱すると鼻漏・鼻閉・咳嗽は増強する。
・諸症状は9日以内に消退し、10日を超えない(10 day mark)。

乳幼児の“かぜ”に続発する合併症
・肺炎球菌とインフルエンザ菌が原因
1.急性中耳炎
・発症1‐2日後に、不機嫌、耳痛、鼓膜膨隆で発症する。
2.市中肺炎
・4日以上発熱持続、または1日解熱後に再発熱する。
・夜間の睡眠に影響する湿性咳嗽。
3.細菌性副鼻腔炎
・“かぜ”のあと、1や2の続発がなく、10 day mark を超えて、夜間も湿性咳嗽を認める。
・“鼻水の色”は病的意味を持たない。

 アデノウイルスは感染後長期(半年?)に咽頭に潜在することから、咳嗽を認める症例から複数検出されたうちのアデノウイルスは、そこにいるだけの可能性がある(※3)

 ライノウイルスについて
・エンベロープを持たないRNAウイルスで A, B, C の3種に分かれる。
・C種は2006年に確認された。
・A種は70以上、B種は20以上、C種は50以上、併せて160を超える遺伝子型が確認されている。
・対応する気道上皮細胞受容体は、A種・B種が糖たんぱく質 ICAM-1(intercellular adhesion molechle 1)、C種は膜貫通型タンパク質 CDHR3(cadherin related family member 3)。
・下気道炎(喘鳴を認めた症例)ではC種が3/4、A種が1/4というフィンランドからの報告がある。
・全年齢層の“かぜ”の1/3を占める。小児の呼吸器疾患の原因ウイルスとしても最多。
・飛沫感染・接触感染・エアロゾル感染で伝播し、潜伏期は1~3日。
・軽度の上気道炎から重い喘鳴疾患と多様な病像を形成する。
・気道の炎症病変は免疫応答による間接的気道上皮損傷と考えられている。
・自然免疫から逃れるすべを持つ(免疫逃避)ため、ワクチンも抗ウイルス薬も創薬困難。
・母子免疫は無効(生後間もなくから感染する)。
・ライノウイルスには「生後1年で9回感染する」(※4)、「生後1年に4回顕性感染する」(※5)というデータあり。
★ RSVの母子免疫有効期間は生後2週間程度。

 “易感冒児”とは?
・年間6回以上風邪をひく子ども
・インターフェロンγ産生が弱い可能性がある(※6)。
・乳児早期の無症候性ライノウイルス感染症が、乳児期後半以降に“易感冒児”になる端緒となる可能性あり。

▢ RSウイルスについて
・1956年にチンパンジーから検出、1957年に小児から検出された。ウイルス分離で培養細胞を融合させた合胞体(syncytium, シンシチウム)を作ることから命名された。
・エンベロープを持つRNAウイルス。
・エンベロープにあるG蛋白の抗原性の相違からA株とB株のサブグループに分類され、さらにそれぞれに10を超える遺伝子型がある。
・A株とB株の毒力に差はない。
・飛沫・接触感染で広がる。潜伏期は3-6日。1歳までに60%、2歳までに100%が感染する。
・不顕性感染・潜伏感染はないとされている。
・中和抗体による感染阻止効果は完全でないため、幼児期までに2-3回は再感染する。

RSウイルス細気管支炎
・1歳未満の気道感染症による初発喘鳴を細気管支炎とすると、その原因ウイルスの筆頭がRSVで約80%を占める。
・下気道炎を形成するのは“自然免疫反応によるサイトカインストーム”と考えられている。
・細気管支上皮の壊死、線毛上皮の脱落、細気管支周囲への炎症細胞浸潤、粘膜下組織の浮腫、粘液分泌亢進などにより、細気管支が狭窄・閉塞し呼吸障害を惹起する。
・臨床経過;感染乳幼児の20-40%が下気道炎に至り、1‐2%が入院となる。
(潜伏期)4-5日
  ↓
(上気道炎)2-3日:発熱、鼻汁
  ↓
(下気道炎)4-5日:咳、喘鳴、呼吸困難
  ↓ 
(回復期)

喘息発作出現日と感染ウイルスの種類(※7)
・ライノウイルス/エンテロウイルスD68:風邪を発症してすぐに増悪(1.4日後)
・RSV/ヒトメタニューモウイルス:風邪を発症後3-4日後に増悪(4.1日後)

 呼気性喘鳴を認めた乳幼児におけるウイルス検出
・生後6か月まではRSVが圧倒的に多い。
・生後6か月以降ははRVCが優勢になる。
・RSVは4歳までの急性喘鳴に関与する。

RSV下気道炎の病型
・境界線があるが一連のスペクトラムをなす:
 ✓1歳までは細気管支炎
 ✓1歳を超えると喘息発作
・異なる病態が形成される理由は?
→ 初回感染の自然免疫応答が強力なためか…。

 covid-19 と喘息発作
・covid-19 は喘息増悪をほとんど起こさない。
・他のウイルス同時検出例では下気道狭窄をきたす例が多く、酸素投与・呼吸補助を必要とする例が多く、ICU入室例も多かった。

オミクロン株と熱性けいれん
・デルタ株以前:デルタ株:オミクロン株以降の熱性けいれん発生率は1.3:3.1:13.4%。

突発性発疹だけ、コロナ前後で変化がなかった
・突発性発疹の原因ウイルスはHHV-6とHHV-7。
・HHV-6 は1986年に発見され、1988年に突発性発疹の原因ウイルスであることが判明した。
・HHV-6 は現在は塩基配列・抗原性の違いによりHHV-6AとHHV-6Bに分けられ、HHV-6Bが突発性発疹の原因ウイルス。
・HHV-7 は1990年に発見された。HHV-7の初感染はHHV-6Bより遅く、幼児にピークを認める、2度目の突発性発疹として経験することが多い。
・既感染健康成人唾液からHHV-7は検出されるが、HHV-6Bは検出されない。
→ HHV-6Bの感染源は集団保育乳幼児・同胞の唾液(突発疹回復期・3-5歳幼児)、HHV-7の感染源は既感染者(両親)唾液。

熱性けいれんとIL-1β
・熱性けいれん例ではIL-1βによる痙攣閾値低下が関与している(※8)。
・麻黄湯は炎症サイトカイン(TNFα、IL-6、IL-1β、IFN-β)を抑制する。
・上気道炎に対する初期治療として、38℃以上の発熱を認める子どもに麻黄湯を投与すると熱性けいれん発症を減らせるのではないか?


<参考>
※1)Kronman MP, et al. Pediatrics 134: e956-e965, 2014
※2)Wald ER, et al. Pediatrics 2013; 132: e262-280
※3)J Virol 83: 2417-2328, 2009
※4)Pediatr Infec Dis J. 2015; 34; 907-909
※5)Pediatrics. 2016; 138: e20161309
※6)Thomas M, et al. Amburatory Pediatrics 2002; 2: 261
※7)成相昭吉. 日小呼誌 2021; 32: 47-54
※8)福田光成. 脳と発達 2018; 50: 327-335
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