小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アメリカでの新型コロナ軽症患者に対する外来治療(2022年2月)

2022年02月26日 07時35分16秒 | 新型コロナ
新型コロナワクチン接種が進む中、
ようやく軽症者を外来治療可能な新薬が登場してきました。

しかし現時点では日本ではまだ自由に処方できず、
インフルエンザに対するタミフルのように使うことはできません。

アメリカではどうなのでしょう。
事情を知るアメリカ在住の薬剤師さんの書いた記事が目にとまりました。

新型コロナへの治療薬が続々登場!ただし…
緒方さやか(2022/02/16:日経メディカルより抜粋;

アメリカのニューヨーク州では2/10から屋内のマスク着用義務が撤廃されたそうです(ただし、学校内、医療機関、公共交通機関ではマスク着用義務あり)。カリフォルニア州でも2月15日には同様に規制が緩和。

市民もマスクなしで散歩・会食し、ハグも可能・・・日本では考えられないことですね。

ただ、前提として日本と大きな違いがあります。
それは「大半の市民が新型コロナに感染済み」という事実。
たくさんの人が亡くなりましたから、
日本では許容できない犠牲の上に成り立つ“制限解除”です。

第6波中とはいうものの、まだ日本人はその1割も罹っていませんので、
アメリカと同じ制限解除は自殺行為になることは目に見えています。

アメリカ市民の感覚は、
「これで終わりとは思っていない」
「次の流行まで、つかの間の自由を満喫したい」
というものらしいです。

さて本題です。

入院していない(外来)COVID-19患者に対しては、主に電話診察でのフォローアップがなされているが、息切れなどの症状がひどい場合には、対面診療に切り替えられいるフロー。これらの外来患者の中で、

(1)症状があり、
(2)重症化するリスクが高く、
(3)現在は軽症~中等症(SpO2が94%以上)

──である患者には、2月9日時点で、以下に示す4つの薬剤が米国で使用可能となっている(無症状の患者は除外される)。
薬の効果とスタッフへの負担を鑑みて、日本でも承認されたばかりの経口薬パキロビッド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル)か、モノクローナル抗体医薬のゼビュディ(ソトロビマブ)が処方されることが多い。

やはりパキロビッドが期待の新薬として主役になってきていることがわかります。
ただ、効果増強目的で含まれているリトナビルが注意すべき併用薬の数を膨大にしているという難点があります。

また、アメリカでは風邪を引くとまず市販薬を使い、治りが悪いとその時点で初めて医療機関を受診する習慣であり、日本のような“早期投与”が難しい文化があります。
これは、インフルエンザの際のタミフルでも指摘され、アメリカで重傷者が多かったのはタミフルを早期に使用できなかったためという意見がありました。

<米国で使用されているCOVID-19治療薬>

◆ パキロビッド®(ニルマトレルビル・リトナビル)
・剤形:経口薬
・投与回数・期間:1日2回・5日間
・用量:ニルマトレルビル300mg(150mg錠2個)+リトナビル100mg(100mg錠1個)

 発症から5日以内に投与開始する必要があり、早ければ早いほどいい(ただ、この期間限定が結構キツい)。臨床試験ではプラセボ群と比較して、COVID-19による28日以内の死亡または入院のリスクを88%低下させた。
 薬物代謝酵素CYP3Aを阻害する「魔の薬物相互作用」の薬であり、スタチン、アムロジピンなど頻繁に処方される薬とも相互作用があることに注意を要する。上にリンクを挙げたパキロビッドのファクトシートでも、薬物相互作用に関する記述が7ページにも上る。
 処方時には、感染していない家族や友人が指定薬局まで取りに行く必要がある。eGFR(推算糸球体濾過量)が30~60/mL/分/1.73m3の患者さんには、ニルマトレルビル150mg+リトナビル100mgに減量して処方する。eGFRが30/mL/分/1.73m3未満の場合は使用できない。入院患者への使用は認可されていない。データはないものの、妊婦にも使用できる。

◆ 
ゼビュディ®(ソトロビマブ)
・剤形:静注薬
・投与回数・期間:1回(30分)
・用量:500mg

 静脈注射を行うためのスタッフ(看護師)が必要。発症から10日間以内に投与開始。早ければ早いほどいい。入院患者への使用は認可されていない。
 臨床試験ではプラセボと比較して、全ての原因による死亡または入院のリスクを79%低下させた(外部リンク:FACT SHEET FOR HEALTHCARE PROVIDERS EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF SOTROVIMAB)。アレルギー反応が出る場合があるため、注射後1時間は看護師が経過観察する必要がある。妊婦にも使用できる。

◆ 
ベクルリー®(レムデシビル)
・剤形:静注薬
・投与回数・期間:1日1回・3日間、5日間、10日間のいずれか
・用量:100mg

 連続して静脈注射を行うためのスタッフ(看護師)の負担が大きいため、外来での使用は難しい。

◆ 
ラゲブリオ®(モルヌピラビル)
・剤形:経口薬
・投与回数・期間:1日2回・5日間
・用量:200mg

 オミクロン株への効果は低いとされている。また、妊婦や18歳未満の患者には使用できないといった点から、上記3剤を使用できない場合のみ処方を考慮する。また、ウイルスの遺伝子変異を促して破壊させるという機序のため、新型コロナウイルスの新たな変異を助長してしまうのではないかという仮説もあるようだ。
 ちなみに、昨年12月後半までは頼みの綱だった抗体カクテル療法薬のREGEN-COV(日本での商品名ロナプリーブ[カシリビマブ・イムデビマブ]、静注もしくは皮下注)は、非常に残念なことにオミクロン株への効果が限定的とされ、既にもう使用されていない。
 そこで、モノクローナル抗体医薬の中で唯一、オミクロン株への効果が期待されているゼビュディへの注目が集まっているが、数週間前には全国的に供給量が不足していた。例えば、私が勤める医療機関に配布されたのは、週に数人分ほどだった。その上、静注での投与のため看護師の人員が必要になる。そんな看護スタッフも、欠員が出たERや病棟へのヘルプで忙しい。今は薬の供給も増えつつあるし、パキロビッドという経口薬のオプションもできた(そちらも数は絶対的に不足しているものの、今は増えつつある)。


・・・ラゲブリオ®は思ったほど重宝されていない様子。
第1選択薬に躍り出たパロキシバット®もその流通とか適応患者の選択とかで作業が多くて現場は大変なようです。

日本でパロキシバット®を有効活用するためには、
現在の“検査キット不足”を解消する必要があります。

当院ではPCRの器械はあるものの試薬が手に入らず、
宝の持ち腐れ状態が続いています。

外注、あるいは市が設置したPCRセンターでの検査では、
結果が出るまで数日かかってしまいます。

今後、国産の新薬(シオノギ製薬が申請中)の登場が待たれるところです。

■ 塩野義製薬、コロナ飲み薬で承認申請…100万人分の提供体制目指す
 塩野義製薬は25日、新型コロナウイルス感染症の経口治療薬(飲み薬)について、厚生労働省に対し、製造販売の承認を申請した。承認されれば、飲み薬としては米メルク、米ファイザーに続き3種類目、国内の製薬会社では初めてになる。最終段階の臨床試験(治験)終了前に、薬の使用を認める「条件付き早期承認制度」の適用を求めている。
 既に製造を始めており、3月末までに100万人分を提供できる体制の構築を目指している。
 この薬は、細胞内に入ったウイルスが増殖するのに必要な酵素の働きを妨げ、重症化を防ぐ仕組みだ。発症早期に使用する必要があり、軽症者が1日1回、5日間服用することを想定している。
 塩野義は、変異株「オミクロン株」に対しても有効性が期待できるとしている。

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