学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

「コスモス─京城学派公法学の光芒」

2015-07-14 | 石川健治「7月クーデター説」の論理
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 7月14日(火)10時15分37秒

筆綾丸さんの木村草太氏に関する投稿をきっかけに、この四月から四半世紀ぶりに憲法の勉強を始め、岸信介や「偉大なる暗闇」の岩元禎、更に三谷隆正・羽仁五郎・林健太郎等に脱線しつつ、それでも長谷部恭男氏の著書を大体読み終わった頃に突如として長谷部ブームが勃発し、また、木村草太氏はニュースステーションのコメンテーターとなってしまいました。
ま、それなりに時流に沿っている感じがしないでもない今日この頃ですが、浦島太郎の私が今どきの憲法学界を大急ぎで眺め渡した結果、この人こそ現時点で一番注目すべき憲法学者であろうと思ったのは長谷部恭男氏でも木村草太氏でもなく、1962年生まれの石川健治氏ですね。
長谷部恭男氏と石川健治氏の最大の違いは何かというと、長谷部氏があまり冴えない風貌なのに対し、石川氏は大変な美男子である点で、ちょうど美濃部達吉と上杉慎吉の関係に似ています。
また、長谷部氏はシニカルでユーモラスな文体を特徴としますが、石川氏は雄大な構想力とともに華麗な修辞の才能に恵まれ、その文体は微かに古風な美文調も混じる独特のものですね。
「コスモス─京城学派公法学の光芒」冒頭は石川氏の文体の特徴をよく示しているので、少し紹介してみます。

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一 「京城」という問い

 いつの日か、戦後日本の公法学を過去のなかに探ろうとする人は、そこに、戦前の「京城」に端を発した、長く尾を引き、そして強く輝く、幾筋かの光芒を発見するであろう。堅固な理論と円熟した巨匠的筆致で戦後憲法学の指導的存在となった清宮四郎、名実ともに京城学派のリーダーであり国際的にも活躍した法哲学・社会哲学の尾高朝雄、ドイツ法思想とアメリカ法思想を股にかけた活躍でそのブリリアンスが一層際立つ憲法学の鵜飼信成、寡作ではあったが学問の厳格さと犀利な知性で後進を薫陶した国際法学の祖川武夫。彼らと、彼らが戦後に残した多くの卓れた後継者たちは、いずれ劣らず個性的で、強烈なアクセントを戦後公法学史に刻んでいる。それだけに、戦後公法学における「京城」性、あるいは戦後公法学における「半島」的なるもの、という設問は、これまで問われたことはほとんどないが、慎重な配慮と十分な準備さえあれば、これを提起するに値する。
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この「ドイツ法思想とアメリカ法思想を股にかけた活躍でそのブリリアンスが一層際立つ憲法学の鵜飼信成」に付されたのが、前回投稿で紹介した「注2」ですね。
石川氏の論文は「注」の分量が多くて、「コスモス」は全部で60頁ページほどの論文ですが、その内、本文は40頁、細かい活字の「注」が20頁なので、字数を数えれば全体の半分が「注」なのではないかと思われまする。
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