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2022年10月26日 11:00東洋経済オンライン
少し前になりますが、猫にかまれたことをSNSで報告して、その後急死された方がニュースで取り上げられていました。ご遺族の方は、猫と関係ないと発表されています。しかし、猫や犬を飼っている人にとっては気になるもの。実際、仕事で猫にかまれたり、ひっかかれたりすることが多い筆者は、「猫にかまれたら、命の危険があるの?」との質問を猫や犬を飼っている人から多く受けました。実際のところはどうなのでしょうか。
少ないが、死亡例もある
そんなに例は多くありませんが、猫にかまれて亡くなった事故は起こっています。国立感染症研究所の「病原微生物検出情報(IASR)」月報(2019年7月号)は、以下のように報告しています。
患者は外の猫に餌やりをしていた人でした。いわゆる「餌やりさん」です。生来健康な50歳代の女性でしたが、餌付けしていた猫にかまれた2日後に、発熱、食欲低下、 嘔吐などの症状がありました。血液検査で白血球減少と血小板減少が認められ、症状が悪化し死亡しました。
病理解剖から、 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が疑われ、病理検査の結果でSFTSが原因であったことが明らかになりました。患者をかんだネコもSFTSウイルス(SFTSV)感染症を疑わせる症状があり、検査結果からも女性は猫からSFTSを感染したと考えられています。
つまり、SFTSVを原因とするマダニに刺された猫や犬にかまれた場合は、人命にかかわるということです。このようなことから、SFTS感染地域の野良猫は、SFTSウイルスを持っていることがあるので、かまれると命の危険があるといえます。
SFTSによる感染症は、 国内では年間50~100人程度の患者が発生していています(2014年5月1日までに届出・確認されている患者数は59例。都道府県別で最も多いのが宮崎県の13例)。その多くが、マダニですが、犬や猫の唾液からも感染するということなので、注意が必要です。
猫ではないのですが、フェレットにかまれて亡くなった警察官の例があります。
2019年に労災に当たる公務災害の認定を受けていたことがわかっています。詳しく見ていきますと、2002年にフェレットの捕獲作業中に手をかまれ、感染症の治療を続けていた警察官が、細菌に感染して炎症が広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と診断され、休職と復職を繰り返し、17年後に亡くなっています。死因を明らかにされていませんが、フェレットにかまれたことによるのでは、と推測されています。
誰でも猫にかまれて、亡くなるわけではないのですが、蜂窩織炎になると、亡くなる可能性が高くなります。蜂窩織炎は聞きなれない言葉ですが、皮膚の層構造の深いところから皮下脂肪にかけて細菌が感染した状態をこう呼びます。
この病気にかかると、患部は皮膚が赤く腫れて熱を帯び、触ると痛みを伴います。全身症状としては、発熱、寒気、関節痛やだるさなどがあります。蜂窩織炎の難しいところは、特別な検査はなく、医師の病歴聴取と身体診察と検査結果を組み合わせないと、診断に至らないことです(一般的に、血液検査では白血球やCRP(炎症を表す数値)が上昇しています)。
基礎疾患を持っている人は要注意
蜂窩織炎は、以下のような人がなりやすい傾向があります。
肥満やむくみがある人は、皮膚がパンパンに張っている状態なので、ちょっとしたことで傷がつきやすく、治りも悪くなります。具体的な病名は、糖尿病や慢性腎不全、慢性肝疾患、がんの人も浮腫(むくみ)ができやすいので蜂窩織炎のリスクが高いと言われています。
このような基礎疾患を持っている人は、猫などのペットにかまれないように注意しないと、かまれたり、ひっかかれたりしたところから、蜂窩織炎になり命にかかわることがあるのです。
また、すぐに命の危険があるわけではありませんが、「動物由来感染症(ズーノーシス)」に感染する場合もあります。これは、人獣共通感染症と呼ばれることもあります。WHOでは「脊髄動物と人の間を自然な条件下で伝播する微生物による病気または感染症(動物などでは病気にならない場合もある)」と定義しています。簡単にいうと、動物から人に感染する病気です。
ズーノーシスの原因は、WHOが確認しているだけで、200種類以上あるといわれています。これには、生物テロで使われる炭疽菌やペスト菌なども含まれています。ズーノーシスでも、人間・動物双方とも重症になるもの、動物は無症状でも人間は重症化するもの、またその逆もあります。
今回はその中でも、日本でも猫や犬によって「かまれる」「ひっかかれる」ことで動物から人にうつる病気を紹介しましょう。
重症化する病気に注意
猫ひっかき病
症状:猫にかまれたり、ひっかかれたりして発症する病気です。病原体を持っている犬やノミから感染することもあります。バルトネラ菌(Bartonella henselae)が原因です。患部が赤く腫れたり、化膿したりします。発熱、痛みがあり、ひどい場合は、腋窩のリンパ節まで腫れます。まれに脳炎になり意識障害を起こします。
感染経路:犬、猫、保有菌を持っている猫を血を吸ったノミから感染することも。
パスツレラ症
症状:猫のほぼ100%、犬の約75%が口腔内常在菌としてパスツレラ菌を持っています。具体的には、P.multocida、P.canis、P.dagmatis、P.stomatis の4種類を犬や猫が保菌しています。主な症状は、皮膚の化膿です。最新の調査では、呼吸器系の疾患、骨髄炎や外耳炎などの局所感染症、敗血症や髄膜炎など全身重症感染症もあり、ひどい場合は、死亡に至った例も確認されています。
感染経路:犬、猫
カプノサイトファーガ感染症
症状:犬や猫の口腔内に常在している3種の細菌、C. canimorsus、C. canis、C. cynodegmiが原因です。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などから始まり、ひどくなると、敗血症を起こし、死に至ることもあります。日本での報告は少ないです。
感染経路:犬、猫
では、実際にかまれてしまった場合はどうしたらいいでしょうか?筆者は仕事柄、猫によくかまれますが、そのときは、以下のことに気をつけています。
1. 水道水を流しながら、傷口をよく洗う。診察の途中でもいったん中断して、洗面所で洗い流します。丁寧にじっくりと。貯めた水ではなく、流れている水で洗浄することが大切です。
2. 傷の周りを押し出すように、洗う。さっと洗うのではなく、傷口の辺りの病原体を押し出すようにイメージして傷を洗ってください。抑え込むなどはよくないです。
3. 近くに水道水がない場合は、ペットボトルのミネラルウォーターでもいいので、かけながら洗う。
4. 患部から血が止まらない場合は、洗い流した後に圧迫止血。飼い主が猫に手をかまれて圧迫失血しても止まらず、救急車を呼んだことがあります。救急隊員が、5分以上患部を押してくれたことで、事なきを得ました。血が止まらないときは、揉んだりせずに、ひたすら押すことが大切です。
症状が出たらすみやかに医療機関に受診を
痛いからといってよく洗わなかったり、絆創膏を貼りっぱなしにしておくのは不衛生なのでダメです。患部が「赤く腫れてきた」「熱っぽい」「かたくなっている」などの異変を感じたり、体がだるいなどの不調を感じたら早めに医療機関にかかりましょう。かみ傷の場合は外科を受診してください。何の動物にかまれたかを伝えることも重要です。
猫や犬にかむまれたらすぐに命が危険ということは少ないですが、病気になることもありえます。猫や犬を飼っている人は、できるだけかまれないようにするだけでなく、特に猫の場合、長い爪は切るなどして、トラブルにならないよう事前に予防しましょう。自らの健康や命を守るには、科学的に正しい知識を持っておくことが重要です。
(石井 万寿美 : まねき猫ホスピタル院長、獣医師、作家)
感想;
猫などに嚙まれたりしたら、消毒をしても、体調がおかしくなったらすぐに医者にいくことなのでしょう。
その前に噛まれないようにすることですが。
やはり、きちんとした知識を持つことは自分を周りを守るために必要ですね。
2022年10月26日 11:00東洋経済オンライン
少し前になりますが、猫にかまれたことをSNSで報告して、その後急死された方がニュースで取り上げられていました。ご遺族の方は、猫と関係ないと発表されています。しかし、猫や犬を飼っている人にとっては気になるもの。実際、仕事で猫にかまれたり、ひっかかれたりすることが多い筆者は、「猫にかまれたら、命の危険があるの?」との質問を猫や犬を飼っている人から多く受けました。実際のところはどうなのでしょうか。
少ないが、死亡例もある
そんなに例は多くありませんが、猫にかまれて亡くなった事故は起こっています。国立感染症研究所の「病原微生物検出情報(IASR)」月報(2019年7月号)は、以下のように報告しています。
患者は外の猫に餌やりをしていた人でした。いわゆる「餌やりさん」です。生来健康な50歳代の女性でしたが、餌付けしていた猫にかまれた2日後に、発熱、食欲低下、 嘔吐などの症状がありました。血液検査で白血球減少と血小板減少が認められ、症状が悪化し死亡しました。
病理解剖から、 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が疑われ、病理検査の結果でSFTSが原因であったことが明らかになりました。患者をかんだネコもSFTSウイルス(SFTSV)感染症を疑わせる症状があり、検査結果からも女性は猫からSFTSを感染したと考えられています。
つまり、SFTSVを原因とするマダニに刺された猫や犬にかまれた場合は、人命にかかわるということです。このようなことから、SFTS感染地域の野良猫は、SFTSウイルスを持っていることがあるので、かまれると命の危険があるといえます。
SFTSによる感染症は、 国内では年間50~100人程度の患者が発生していています(2014年5月1日までに届出・確認されている患者数は59例。都道府県別で最も多いのが宮崎県の13例)。その多くが、マダニですが、犬や猫の唾液からも感染するということなので、注意が必要です。
猫ではないのですが、フェレットにかまれて亡くなった警察官の例があります。
2019年に労災に当たる公務災害の認定を受けていたことがわかっています。詳しく見ていきますと、2002年にフェレットの捕獲作業中に手をかまれ、感染症の治療を続けていた警察官が、細菌に感染して炎症が広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と診断され、休職と復職を繰り返し、17年後に亡くなっています。死因を明らかにされていませんが、フェレットにかまれたことによるのでは、と推測されています。
誰でも猫にかまれて、亡くなるわけではないのですが、蜂窩織炎になると、亡くなる可能性が高くなります。蜂窩織炎は聞きなれない言葉ですが、皮膚の層構造の深いところから皮下脂肪にかけて細菌が感染した状態をこう呼びます。
この病気にかかると、患部は皮膚が赤く腫れて熱を帯び、触ると痛みを伴います。全身症状としては、発熱、寒気、関節痛やだるさなどがあります。蜂窩織炎の難しいところは、特別な検査はなく、医師の病歴聴取と身体診察と検査結果を組み合わせないと、診断に至らないことです(一般的に、血液検査では白血球やCRP(炎症を表す数値)が上昇しています)。
基礎疾患を持っている人は要注意
蜂窩織炎は、以下のような人がなりやすい傾向があります。
肥満やむくみがある人は、皮膚がパンパンに張っている状態なので、ちょっとしたことで傷がつきやすく、治りも悪くなります。具体的な病名は、糖尿病や慢性腎不全、慢性肝疾患、がんの人も浮腫(むくみ)ができやすいので蜂窩織炎のリスクが高いと言われています。
このような基礎疾患を持っている人は、猫などのペットにかまれないように注意しないと、かまれたり、ひっかかれたりしたところから、蜂窩織炎になり命にかかわることがあるのです。
また、すぐに命の危険があるわけではありませんが、「動物由来感染症(ズーノーシス)」に感染する場合もあります。これは、人獣共通感染症と呼ばれることもあります。WHOでは「脊髄動物と人の間を自然な条件下で伝播する微生物による病気または感染症(動物などでは病気にならない場合もある)」と定義しています。簡単にいうと、動物から人に感染する病気です。
ズーノーシスの原因は、WHOが確認しているだけで、200種類以上あるといわれています。これには、生物テロで使われる炭疽菌やペスト菌なども含まれています。ズーノーシスでも、人間・動物双方とも重症になるもの、動物は無症状でも人間は重症化するもの、またその逆もあります。
今回はその中でも、日本でも猫や犬によって「かまれる」「ひっかかれる」ことで動物から人にうつる病気を紹介しましょう。
重症化する病気に注意
猫ひっかき病
症状:猫にかまれたり、ひっかかれたりして発症する病気です。病原体を持っている犬やノミから感染することもあります。バルトネラ菌(Bartonella henselae)が原因です。患部が赤く腫れたり、化膿したりします。発熱、痛みがあり、ひどい場合は、腋窩のリンパ節まで腫れます。まれに脳炎になり意識障害を起こします。
感染経路:犬、猫、保有菌を持っている猫を血を吸ったノミから感染することも。
パスツレラ症
症状:猫のほぼ100%、犬の約75%が口腔内常在菌としてパスツレラ菌を持っています。具体的には、P.multocida、P.canis、P.dagmatis、P.stomatis の4種類を犬や猫が保菌しています。主な症状は、皮膚の化膿です。最新の調査では、呼吸器系の疾患、骨髄炎や外耳炎などの局所感染症、敗血症や髄膜炎など全身重症感染症もあり、ひどい場合は、死亡に至った例も確認されています。
感染経路:犬、猫
カプノサイトファーガ感染症
症状:犬や猫の口腔内に常在している3種の細菌、C. canimorsus、C. canis、C. cynodegmiが原因です。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などから始まり、ひどくなると、敗血症を起こし、死に至ることもあります。日本での報告は少ないです。
感染経路:犬、猫
では、実際にかまれてしまった場合はどうしたらいいでしょうか?筆者は仕事柄、猫によくかまれますが、そのときは、以下のことに気をつけています。
1. 水道水を流しながら、傷口をよく洗う。診察の途中でもいったん中断して、洗面所で洗い流します。丁寧にじっくりと。貯めた水ではなく、流れている水で洗浄することが大切です。
2. 傷の周りを押し出すように、洗う。さっと洗うのではなく、傷口の辺りの病原体を押し出すようにイメージして傷を洗ってください。抑え込むなどはよくないです。
3. 近くに水道水がない場合は、ペットボトルのミネラルウォーターでもいいので、かけながら洗う。
4. 患部から血が止まらない場合は、洗い流した後に圧迫止血。飼い主が猫に手をかまれて圧迫失血しても止まらず、救急車を呼んだことがあります。救急隊員が、5分以上患部を押してくれたことで、事なきを得ました。血が止まらないときは、揉んだりせずに、ひたすら押すことが大切です。
症状が出たらすみやかに医療機関に受診を
痛いからといってよく洗わなかったり、絆創膏を貼りっぱなしにしておくのは不衛生なのでダメです。患部が「赤く腫れてきた」「熱っぽい」「かたくなっている」などの異変を感じたり、体がだるいなどの不調を感じたら早めに医療機関にかかりましょう。かみ傷の場合は外科を受診してください。何の動物にかまれたかを伝えることも重要です。
猫や犬にかむまれたらすぐに命が危険ということは少ないですが、病気になることもありえます。猫や犬を飼っている人は、できるだけかまれないようにするだけでなく、特に猫の場合、長い爪は切るなどして、トラブルにならないよう事前に予防しましょう。自らの健康や命を守るには、科学的に正しい知識を持っておくことが重要です。
(石井 万寿美 : まねき猫ホスピタル院長、獣医師、作家)
感想;
猫などに嚙まれたりしたら、消毒をしても、体調がおかしくなったらすぐに医者にいくことなのでしょう。
その前に噛まれないようにすることですが。
やはり、きちんとした知識を持つことは自分を周りを守るために必要ですね。
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