秋田県は24日、医薬品の製品試験で結果をねつ造するなどしたとして医薬品医療機器法に基づき、大館市に製造工場があるニプロファーマ(大阪市)に業務改善命令を出した。健康被害は確認されておらず、製品の自主回収は行わない。
■「深くおわび」
県によると、2019~22年、同社大館工場で製品試験を一部実施せず、過去のデータを流用して試験結果をねつ造したほか、試験結果が規格に適合しなかったにもかかわらず、適合したとの虚偽の試験記録を作った。さらに国の承認と異なる試験用標準品を使って試験を行った。
違反の対象となった製品は注射剤38品目、麻酔剤などの貼付剤4品目の計42品目。同社が工場で保管する製品を試験した結果、品質に問題はなかった。県は「ねつ造は担当レベルで行われ、組織的関与はなかった」としている。他の製薬会社からの指摘で発覚した。
同社は「生産数、業務量の増加で人員が充当されなかったことなどが原因の一つ」と説明。県は同社に再発防止策として改善計画の策定、提出を求めた。
同社の親会社ニプロ(大阪市)は「患者と家族、医療関係者に多大な迷惑をかけ、深くおわびする」とのコメントを出した。
感想;
これまでちょっとした試験方法が承認書と違うだけでも回収になっています。別法を十分なGMPの手当てをしていなかったとのGMP不備でした。
ところが今回は確信犯のSOP違反です。また記録の偽造は犯罪行為でもあります。
これまでの前例で行けば、行政処分と製品回収が当然です。監麻課は保管している製品を試験して適合でも回収させて来られました。
ただ、石川県の辰巳化学で、本来なら行政処分と製品回収がこれまでの前例でしたが、初めてそれをせずに改善命令だけにしました。
一貫性がありません。それとも方針を変更されたのでしょうか?
それならちょっとしたGMP不備での回収を止めていただきたいです。回収は自主回収ですが、背景に監麻課の意向が働いています。
「県は「ねつ造は担当レベルで行われ、組織的関与はなかった」としている。」
組織的関与はどこをいっているのでしょう?
これだけの製品(計42品目)を一人できません。またQC、QAは記録を見ていますので、QCとQAは知っていたと思われます。知らないとしたら、GMPがまったく機能していません。QC長とQA長がご存知なかったとすると、ご自分の業務は目隠しサインすることを思われていたとしか思えません。あるいは能力がなかったと言われても仕方ありません。
改善命令の中に下記がありますから、その通りだったのかもしれません。
「ニプロファーマ株式会社は、医薬品製造管理者について、その業務を遂行するため
に必要な能力及び経験を有する者を配置しなかったこと。」
今は試験担当者が試験したものをQCの別の人がダブルチェックしています。かつ、QAも確認しています。その確認時には記録も確認します。
委託先の監査でわかるくらいだから、記録に問題があったのです。記録のチェックでわからないはずはないです。
またHPには「LIMS(品質管理システム)による記録・データに裏打ちされた品質保証システムの構築といった品質保証体制の強化を推し進めております。 」と社長のあいさつにあります。大館工場のシステムはどうだったのでしょう?
第三者委員会の調査をされないのは、実態が公になるのを秋田県も避けたかったのではないかと勘ぐってしまいます。
ニプロファーマ大館工場が富山県でなくてよかったと思われているかもしれません。
このようなケースで製品回収がないなら、他のつまらないGMP不備での製品回収は止めて欲しいです。
違反内容
1 ニプロファーマ大館工場で製造する製品について、承認書と異なる方法により製造
及び試験を行っていたこと。また、製造・品質関連業務を適正かつ円滑に実施しうる
能力を有する責任者を適切に置かなかったこと及び製造・品質関連業務を適切に実施
しうる能力を有する人員を十分に確保しなかったこと。
⇒
GMP省令
第六条 製造業者等は、製造・品質関連業務を適正かつ円滑に実施しうる能力を有する責任者(以下この章において単に「責任者」という。)を、製造所の組織、規模及び業務の種類等に応じ、適切に置かなければならない。
2 製造業者等は、製造所の組織、規模及び業務の種類等に応じ、適切な人数の責任者を配置しなければならない。
3 製造業者等は、製造・品質関連業務を適切に実施しうる能力を有する人員を十分に確保しなければならない。
許可等業者において法令遵守体制を構築し、薬事に関する法令を遵守するために主体的に行動し、許可等業者による法令違反について責任を負う者として、許可等業者の役員のうち、薬事に関する業務に責任を有する役員(以下「責任役員」という。)を薬機法上に位置付け、その責任を明確化した。
さらに、許可等業者の法令遵守のためには、許可等業者の根幹である業務を管理する責任を有する責任者の役割が重要であることから、そのような業務の管理を行う上で必要な能力及び経験を有する者を責任者として選任することを許可等業者に対して義務付けた。
⇒
責任役員は取締役とし、社長も含まれます。
今回、この責任役員の責任に関しての言及は特にありません。
この法令遵守によるガイドラインでいっている「責任役員」への責任の在り方はどうなっていくのでしょう?