平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

トランプ暗殺未遂事件の写真~この写真から権力者がつくりだす『物語』について考える

2024年07月24日 | その他
 トランプ大統領候補の暗殺未遂事件。
 この写真がピューリッツァー賞の候補になるらしい。

 

 星条旗をバックに血を流しながら拳を突き上げるトランプ氏。
 守っているSPのひとりが女性。
 いろいろ象徴的な1枚だ。

 さてトランプ氏。
 この出来事を使って、さまざまな『物語』を作っている。

・不法移民のデータのスクリーンを確認するために右を向いて自分は助かった。
 →神は自分の不法移民の政策を支持した。

・自分は銃撃を免れて生きている→神は自分に味方している。

 僕はどうかと思うが、この『物語』を信じる人もいる。
 日本の安倍信者さんの間ではこんな話が流れた。

・トランプ氏は親友の安倍さんが傍にいるのを感じて右を向いた。
 →安倍さんは親友のトランプ氏を助けた! 安倍さん、すごい!

 今回の銃撃事件がトランプ氏の自作自演だとは思わないが、
 為政者はこうして『物語』を作っていく。
 自分自身を神格化していく。
 ……………………………………………………………

 過去、報道写真は世界に衝撃を与え、世論を動かしてきた。

・スペイン内乱を撮ったロバート・キャパの『崩れ落ちる兵士』
・太平洋戦争の『硫黄島の星条旗』
・映画にもなったユージン・スミスの水俣病の写真『入浴する智子と母』
・スーダンの『ハゲワシと少女』
・ベトナム戦争の『静かな雨 静かな時』
・ピューリッツァー賞を取った『浅沼社会党委員長の暗殺』

 このように1枚の写真は人々に衝撃を与え、世界を動かす。
 まさに「百聞は一見にしかず」だ。

 ただ『崩れ落ちる兵士』と『硫黄島の星条旗』は「やらせ」らしい。
 作家の沢木耕太郎氏は『崩れ落ちる兵士』について次のように分析している。
「キャパはユダヤ人だったからドイツを嫌っていて『崩れ落ちる兵士』を撮った」
『硫黄島の星条旗』は戦意高揚のために意図的に撮られた。
 映画『硫黄島からの手紙』には「やらせ」の描写がある。
 
 このように写真はときどき嘘をつく。
 世論を誘導しようとする。
 現在はフェイク動画やフェイク画像が山のようにある時代だから
 情報の取捨選択には注意を払わなければならない。

 石丸伸二現象を起こした『切り抜き動画』にも要注意。
 良い所だけ切り抜かれて、都合の悪い所はカットされている可能性がある。

 あとは前段で書いた、権力者が作る『物語』。
 権力者の『物語』を安易に信じて、「この人はすごい人だ」と思うのはとても危険だ。
 これが「信仰」みたいになると完全に盲目になる。

 考えてみると、世界のほとんどの宗教は『物語』で語られている。
 キリスト教しかり、イスラム教しかり、仏教も経典は『物語』だ。
 理由は『物語』の方が人々の心に届きやすいからだろう。

 権力者の作る『物語』を信じて盲目的になるのはやめよう。


※関連サイト
「ピューリッツァー賞の写真部門」


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4 コメント

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どこまでがやらせか (2020-08-15 21:49)
2024-07-26 07:01:33
今回の余りにも劇的な構図の写真を見て「これはあらかじめ仕込まれていたヤラセだ」という人もいるようです。
ただ、これはやらせではないでしょう。こういった事件があるにしてもないにしても、プロカメラマンなら「ある程度カッコよく撮影出来そうなポイント」で待ち構えているものです。それすらやらせとしてしまうのは、少々やり過ぎかと思います。

ただ、今回は
1.トランプさんが撃たれてかがみ込んだ
2.1度おそるおそる立ち上がってまわりの様子をうかがい、またしゃがんだ
3.もう1度立ち上がって拳を振り上げた
の3シーンがありました。
シーン2の「1度おそるおそる立ち上がってまわりの様子をうかがった」ときですが、髪の毛はボサボサ、弱々しい老人が、狼狽してビクビクしていたような様子でした。
ところが、ここからシーン3になると、力強い英雄のような振る舞いになりました。とっさの判断なのか、周りの人たちにささやかれたのか、その辺は分かりませんが、シーン2との落差が大きくて、思わず苦笑いでした。

ところが、時間が経ってくると、このシーン2の映像がだんだん流れなくなり、1と3だけの映像に編集されています。
まあ、その方が普段のトランプさんのイメージですし、そういう映像の文脈で流したいでしょうが、そういう「いかにもトランプさんらしい絵面」にしてしまう編集の方が「意図ある編集」と考えます。
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プロの仕事 (コウジ)
2024-07-26 08:29:36
2020-08-15 21:49さん

いつもありがとうございます。

>プロカメラマンなら「ある程度カッコよく撮影出来そうなポイント」で待ち構えているものです。
そうですよね。
このポイントにカメラマンが走り込んで撮っている映像を見ました。
まさにプロの仕事!

銃撃シーンに関しては、2が省略されていったんですね。
単なる尺の問題なのか、インパクトのあるシーンだけを見せたかったのか、トランプ氏をカッコよく見せたかったのか、編集者の意図はわかりませんが、映像はこうして作られていくんですね。
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崩れ落ちる老人 (象が転んだ)
2024-08-04 09:32:11
「崩れ落ちる兵士」ですが、恋人ゲルダは既に偉大な業績あるアメリカ人カメラマンのロバート•キャパなる実在した人物をモデルに、困窮してたアンドレ(後のキャパ)に被せます。
目論見通り、写真の大成功のお陰で仕事が軌道に乗るも、ゲルダの策略がばれ、アンドレ自身が”キャパ”になり、ゲルダ自身も写真家として自立し、2人とも写真家として活躍します。

トランプ陣営に、これ程のトリックが用意されてたかは疑問ですが、”崩れ落ちる老人”であった事は確かですよね。
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現実は複雑 (コウジ)
2024-08-04 18:10:51
象が転んださん

いつもありがとうございます。

恋人ゲルダ。
「崩れ落ちる兵士」にはいろいろ複雑な経緯があるみたいですね。

〝崩れ落ちる老人〟は銃撃の件で確定かと思いましたが、ハリス氏の登場で風が変わったみたいですね。
まさに現実は複雑です。
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