しらゆきの ふりしくときは みよしのの やましたかぜに はなぞちりける
白雪の 降りしくときは み吉野の 山下風に 花ぞ散りける
紀貫之
白雪が降りしきる時には、吉野の山から吹き降ろす風に花が舞い散ることだ。
一見すると「雪が降り花が散る」ということでどこにも「祝賀」の表現がないように見えますが、「花」は雪を花びらに見立てたもの。風に舞い散る雪を春たけなわの美しい花吹雪に見立てることで、一気に季節を厳しい冬から生命の息吹く春に飛び、穏やかに飛び舞う無数の花びらが主の長寿を寿いでいる情景を表現して見せたのでしょう。冬から春へ季節をつなぐことで、時の永続性を詠んだとの解説もありました。
貫之らしい一首のように思えます。