あきくれど いろもかはらぬ ときはやま よそのもみぢを かぜぞかしける
秋来れど 色もかはらぬ 常盤山 よその紅葉を 風ぞ貸しける
坂上是則
秋が来ても色が変わらないはずの常盤山の木々が紅葉しているのは、他の地の紅葉を風が運んできたのだな。
その名前から、色が変わらない(=紅葉しない)というイメージのある常盤山。その常盤山が実際には紅葉しているのは、他所の紅葉を風が運んできたのだろうと雅な想像をして見せる機智。
作者坂上是則の歌はここまでで計五首。
佐保山の ははその色は うすけれど 秋は深くも なりにけるかな (0267)
もみぢ葉の 流れざりせば 竜田川 水の秋をば 誰か知らまし (0302)
み吉野の 山の白雪 積もるらし ふるさと寒く なりまさるなり (0325)
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 (0332)
こうして並べて改めて鑑賞すると、ははその黄色、紅葉の赤、雪の白など、「色」のイメージの強い歌が一つの特徴(歌風)のように思えますね。^^