われのみや あはれとおもはむ きりぎりす なくゆふかげの やまとなでしこ
われのみや あはれと思はむ きりぎりす 鳴くゆふかげの やまとなでしこ
素性法師
私だけがしみじみと心を惹かれるのだろうか。こおろぎが鳴く夕刻の陽に照らされて咲く大和撫子の姿に。
すでに何度も出てきていますが、「きりぎりす」はこおろぎのこと。「やまとなでしこ」は現代では美しい日本女性を指して言うことが多いですが、もともとはもちろん植物の名で、カワラナデシコの別名。秋の七草のひとつですね。夕陽に映えて咲くナデシコの美しさを、自分ひとりで見ているのを惜しんでいて、つまりは愛しい人と一緒に見たい、ということでしょう。
今日で6月も終わりですね。以前にも書いたかもしれませんが、今年はコロナ騒動で実生活にもいろいろな変化があるせいか、いつにも増して月日が経つのが早い気がします。昨年10月末日から始めた「一日一首の古今和歌集」も今日でちょうど8カ月。よく欠かさず続けて来られたなぁと思いますが、それでも古今集全体からすればまだようやく五分の一ほど。先は長いですが、気長に続けていきたいと思います。