みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれむとおもふ われならなくに
陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れむと思ふ われならなくに
河原左大臣
陸奥のしのぶもぢずりの乱れ模様のように私の心が乱れてしまったのは誰のせいなのか。あなた以外の誰かのために心を乱して思い慕おうとする私ではないのですよ。
「しのぶもぢずり」は、現在の福島県信夫地方から産出された、乱れ模様の摺り衣のことで、初二句が第四句の「乱れ」を導く序詞になっています。百人一首(第14番)にも採録された名歌ですが、百人一首では、第四句が「乱れそめにし」となっていますね。
作者の河原左大臣(かわらのひだりおおいもうちぎみ)とは、平安時代初期の貴族源融(みなもと の とおる)のこと。古今和歌集にはこのあと 0873 にも登場する他、後撰和歌集にも二首が採録されています。