ひさかたの なかにおひたる さとなれば ひかりをのみぞ たのむべらなる
ひさかたの なかに生ひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる
伊勢
月の中に生育する桂の名を持つ桂の里に住んでおりますので、月の光のような中宮様のご威光だけを頼りにしているのです。
詞書には「桂にはべりける時に、七条の中宮とはせたまへりける御返事にたてまつれりける」とあります。月には桂が生えているという中国伝来の故事を踏まえての詠歌で、0194、0463 も同様ですね。「七条の中宮」は第58代宇多天皇の中宮温子のこと。初句の「ひさかたの」は月にかかる枕詞ですが、ここではこれ自体が月を指します。