習近平国家主席の野望が明らかになりつつあります。バイドゥ、アリババ、テンセントなどのIT巨人が主導し、2030年には米国を追い抜き世界をリードする構想です。もし実現すれば、かつて、世界ナンバーワンを目指していた日本人にとっては面白くない展開です。しかし、日本の政治家と違い確実に長期的な展望で国を動かしている中国の影響力が増しているのは事実です。こんな時代に、具体的な対案も出さず、安倍がなどどと演説している政治家は時代遅れも甚だしいです。
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中国の習近平政権が「人工知能(AI)大国」に向けた政策を加速している。中国は昨年「次世代AI発展計画」を制定し「2030年までに世界をリードする」と目標を掲げた。米国を意識した「追い付き、追い越せ」式のハイテク戦略が米国の警戒心を招き、米中覇権争いに拍車を掛けている。
◇実は民間が主導
「ビッグデータ・AIの研究開発と応用を強化する」。李克強首相は今月、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告で訴えた。清華大学の報告書によると、過去20年間のAI関連論文数、AI絡みの特許取得数とも中国は米国を抑えてトップ。質はまだまだでも量は米国を追い越しつつある。
中国IT業界の巨人、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が先頭を走る中国デジタルイノベーションは、国家主導の政策の結果と思われがちだが、実はそうではない。若い企業家による民間の活力がけん引している側面が強い。
IT先進地区・広東省深センなどで調査を行う東京大社会科学研究所の伊藤亜聖准教授は「産業政策によって発展したという単純な話ではなく、政府が民間の活力をつぶさなかったのが大きい」と解説する。政府はまず規制を緩くし、企業家に自由な市場競争空間を用意した。これが新興企業の台頭を後押しした。
◇利便性と監視社会
企業家が追求したのが市民の利便性向上だ。例えば、テンセントのスマートフォン向けアプリ「ウィーチャット」はもともとチャットが主機能だったが、決済、配車、宅配、乗り物・宿泊や病院の予約、公共料金支払い、募金など、わずか5年のうちに統合型サービスを完成させ、10億人超のユーザーを引き付けた。
AI分野では人口14億人の下で、ビッグデータを活用できることが強みだ。子供の膨大な宿題に悩む家庭に好評なのが教育アプリ「作業※」(宿題サポート)。宿題をスマホのカメラで撮影するとAIが解答してくれるもので、中国メディアによると、利用者数は8000万人を突破した。
習政権は国民に、AIで生活の便利さを提供し、「党のおかげだ」と実感させようと躍起だ。一方で反体制的な動きに神経をとがらせ、AIによる顔認証システムなどで監視社会を構築、統治に役立てようとしている。
◇毛沢東と習氏の野望
ジェトロ・アジア経済研究所副主任研究員の木村公一朗氏は、「AIは、先発国が少なく、中国も先行できる分野。中国でも、大きな時代のカーブの中で追い越すチャンスが来た、と考えられている」と指摘する。これに対してトランプ米大統領は2月、「AI大国」として猛迫する中国に対抗し、AI分野の研究開発加速を指示する大統領令に署名した。
2049年ごろの「社会主義現代化強国」実現を掲げる習政権は、目標年次設定型の政策を格段に増やしている。目標実現によって共産党の正統性を保つ戦略だが、追い越されると危機感を強める米政権から見れば、中国の「挑戦状」と捉えたのも無理はない。
実は毛沢東はかつて米国を超えると豪語したことがある。1956年に「50~60年後に世界最強の資本主義国家・米国を追い越す責任がある」(毛沢東文集)と訴えた。60年後は16年。毛沢東を目指す習氏は、毛の「夢」が現実味を帯びつつあると、野望を抱いているのかもしれない。