開幕した全人代会議で中国李克強首相は景気押し上げに向け、中国の財政政策は「一段と積極的」になると表明。2019年に企業の税金や手数料を約2兆元(2983億1000万ドル)削減する方針を示した。減税幅は18年の1兆3000億元を上回る規模となる。また、製造業、運輸、建設部門を支援するため、増値税(付加価値税)の税率を引き下げる計画も示した。製造業の税率は16%から13%、運輸・建設業は10%から9%に引き下げるとした。こうした大型刺激策で当面中国経済は大丈夫ですが、減速を止められなかったら世界経済を巻き込み大混乱に陥れるでしょう。日本には急激な円高と株価の下落です。しかし分かりやすく対策も打ちやすいですね。
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中国は実体経済の悪化を受けて、企業債の乱発がかねてから問題にはなっていた。その償還ラッシュは2019年から急増し、2021年にピークともいわれている。中国2大格付け機関の1つ、中誠信国際の推計では、年内に償還予定の社債総額は5.7兆~6.2兆元規模(国有企業債、民営企業債、CRMWなど)。特に地方政府融資プラットフォームの債権、民営企業債権、中小不動産関連債権の償還が危ういとされている。中でも不動産関連債権の償還は4026億元規模、これは2018年の倍の規模だ。また中信建設投資の推計では、2019年は4804億元規模の不動産関連債権の売り戻しを投資家たちは選択するとみられている。それを合わせると、償還期限を迎える不動産関連の債権は、第1四半期だけでも2263億元以上だという。国内債権だけではなく、海外の中国資本発行人のドル建て債権も同じような状況らしい。
ところが、2019年春節があけてまもなく、大手不動産企業が一斉に債権を発行している。マレーシアのフォレストシティ開発を手掛けていた碧桂園はじめ、中国恒大、中国奥園、融信中国、正栄地産、禹洲地産、緑地中国、世茂房地産などだ。2月18日までの集計で1546億元あまり(うち海外が729.9億元)の規模となった。2018年同期の規模を超える。不動産バブルがもう限界だといわれているのに、これはどういうことか。
「中国当局が不動産市場に対する規制を緩和する」という見込みが流れているからというのもあるが、ほとんどが償還のための債権発行だとみられている。新ローンで旧ローンを返済するのだ。このクラスの大手不動産企業ですら自転車操業に陥っている。
今年早々、人民大学の向松祚教授が、中国に「ミンスキーモーメント」(バブルが崩壊に転じる局面)が来る可能性を強く訴えていたことが話題になった。その時、向教授が最大の“灰色の犀”として指摘していたのは不動産バブルだ。中国の不動産市場規模は売り出し中不動産の延床面積から推計すると60兆ドル。全世界の1年分のGDPを合わせても70兆ドルあまりなのに、そんな馬鹿な話があるか、ということだった。
中国の株式市場A株の利潤の4分の3をわずか40社余りの不動産企業と銀行が占め、GDPの48%を占める家計債務の7割以上が不動産・住宅関連ローンで、地方政府収入の7割を占める政府性基金の9割が土地譲渡関連という状況で、不動産バブルが崩壊すれば、地方政府財政から企業から一般家庭まで阿鼻叫喚となるのは目に見えている。
不動産バブルと社債デフォルトという番いの犀が走り出せば、金融システミックリスクという犀の群れ全体が大暴れして、中国の市場を踏み荒らし、そこから飛び出して世界を踏み荒らしまくるかもしれない。
犀の角を不老長寿の薬と信じている富裕中国人は、密猟のやりすぎでアフリカの犀を絶滅の危機に追い込んできた。今、中国経済・金融マーケットに生息する犀は、中国を絶望的危機に追い込むかもしれない。これは犀の呪いというべきか?
福島 香織