「野球の神様」ベーブ・ルース以来、大リーグでは104年ぶりの「2桁勝利、2桁本塁打」を達成したエンゼルスの大谷翔平。実は、また一つ、二刀流ならではの偉業が視界に入ってきた。日本時代を含めた大谷自身も、ルースも届かなかった「規定投球回」と「規定打席」の同時達成だ。
■「打席」は確実、問題は「投球回」
大谷は昨年、日米で初めて規定打席に到達した。規定打席とは、日本のプロ野球や大リーグでは、「試合数×3・1打席」で計算され、年間162試合の大リーグの場合は「502」。首位打者になるためには、この打席数をクリアしなければならない。大谷は今季も既に465打席に達していて、大きなけがなどがない限り、達成は間違いない。
今月12日(日本時間13日)終了時点で投手として19登板、10勝7敗、防御率2.68をマーク。規定投球回に2イニング足りない111回を投げて157三振を奪っている。 ポイントは、規定投球回だ。試合数と同じイニング数、つまり大リーグでは「162」で、最優秀防御率のタイトル獲得の条件でもある。先発投手が責任投球回を投げつつ、ローテーションを守り続けないと到達が難しい数字だ。
大谷は昨年、ローテーションはほぼ守ったが、投球回数は130回3分の1にとどまり、31回余りも足りなかった。多くの先発投手が中4~5日の間隔で投げる中、1週間に1度の「中6日」が基本だったからだ。今季も前半戦は1週間後に試合がなかった3試合を除き、6日以上、間隔を空けていた。
ところがオールスター戦後の後半戦からは3試合連続で、中5日で登板。次回の日本時間16日も、他の投手との順番を変えてまで中5日でマウンドに上がる。
このまま原則、中5日を続ければ、あと9度の登板が見込まれる。ここまで111回を投げているので残りは51回。1登板あたり5回3分の2を投げると、ちょうど162回に達する。今季はここまで、1試合当たり5回3分の2を少し上回るペースで投げているので、これまで同様の投球を続ければ、達成できることになる。
休養が少なくても変わらぬ投球ができるのか。それについては、こんなデータがある。今季、中5日と中6日以上の登板成績を比べると、中6日以上を空けた13度の登板では、防御率3・44で平均投球回数は6回に満たないが、中5日の6度の登板では、防御率1・19で平均投球回数は6回を超えている。昨年も同様の数字が残る。
■1918年のルース、惜しくも…
では、ルースは規定投球回と規定打席を同時に達成したことがあったのか。主要記録サイト「ベースボール・リファレンス」によると、現在の「規定」の考え方は1950年代に定められたが、現在の基準に従えば、ルースに同時達成はなかった。「13勝、11本塁打」を記録した1918年は、試合数(126)以上の166回3分の1を投げた。しかし、打席数が「試合数×3・1」に、わずかに足りなかった。
大谷は10勝目を挙げた後、こんなことを言った。「ピッチングに関しては、イニング数をしっかり投げて、WHIP(1回当たりのヒットと四球数)を低く抑えることが大事」
ルースもなしえなかった、二刀流フル回転の証しとも言える偉業へ、大谷の投球回に注目だ。