25日の米国株式は、続伸した。NYダウが前日比322.55ドル高の3万3291.78ドル、ナスダック総合指数が同207.737ポイント高の1万2639.265ポイントで取引を終了。相変わらず、コロナ支援でのカネ余りで活況を呈しています。
一方、イギリス、ドイツなどの欧州地域がプーチンのウクライナ侵攻にともなうエネルギー価格高騰の直撃を受けています。追い打ちをかけるようにいま歴史的な猛暑と干ばつが襲いかかっている。欧州で60%以上の地域が渇水による干ばつの危険にさらされている。欧州委員会が23日、8月の観測報告を公表した。欧州のほぼ全ての河川が何らかの形で水位が下がるなど、過去500年で最悪の渇水状況が続いているという。
ドイツでは物流の大動脈であるライン川の水位が記録的な水準にまで低下していて、水位の低下で石炭や石油製品などを運ぶ船の航行が困難になり、エネルギー価格の高騰に拍車をかける懸念が生じている。
今年の秋以降、さらなる「エネルギー地獄」が現実味を帯びてきた中で、欧州発の経済危機が起こる可能性すら出てきた。こうした状況を「プーチンの呪い」だと指摘する声もあがってきている。
エネルギー価格の高騰は当然のことながら景気の足を引っ張る。第2四半期にマイナス成長となった英国経済は第3四半期に景気後退(リセッション)入りすることが確実視されており、リセッションの長期化が予測されている。
欧州の金融センター(英国)と最大の経済大国(ドイツ)が景気後退すれば金融市場に悪影響が及ぶが、世界の金融市場ではこのところゾンビ企業の存在が頭痛の種になっている。
ゾンビ企業とは本業の利益を示すEBIT(利払い・税引き前利益)が3年連続で支払利息を下回る、設立10年以上の企業のことだが、全体に占める比率は昨年度に金融危機後で最も高い16%になっている。
リーマンショック後に世界の中央銀行が一斉に金融緩和を実施したことがゾンビ企業発生要因だが、コロナ後、引き締めモードに転換したことで警戒感が高まっており、中でも景気が急減速している欧州企業の信用不安に対する懸念が頭をもたげている。
欧州企業の信用リスクを敏感に表しているのは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」市場だ。
自動車、小売り企業に「危ないシグナル」
CDSは「企業が破綻すればお金がもらえる」という保険に類似した金融派生商品(デリバテイブ)だ。
対象となる企業が社債などの元利払いができなくなった場合に買い手が売り手から支払いを受けることができるよう、買い手は売り手に対し事前に保証料を支払っておくという仕組みだ。
対象企業のデフォルトの可能性が高まれば、保証料率は上がることになる。
足下の100社超の欧州企業のCDS保証料率を束ねた指数「アイ・トラックス・ヨーロッパ」の5年物は1.0%程度と半年前の2倍に近く、コロナ危機が深刻だった2020年3月以来の高水準となっている。
エネルギー企業や化学企業の保証料率の上昇に加え、自動車企業や大手小売企業の保証料率も急上昇している。
資金がもう確保できない…
7月に11年ぶりの利上げに踏み切った欧州中央銀行(ECB)は景気不安が強い中でも高インフレ対応の金融引き締めを進めており、欧州経済全体に対するセンチメントの悪化が影響している形だ。
ドイツ連邦金融監督庁は8月13日に「エネルギー危機により金融部門は先行き不透明感に見舞われ、貸し倒れに苦慮している銀行があるが、今のところ金融システムは強固だ」と楽観的な見方を示している。
しかし、資金の確保が困難になっているゾンビ企業には要警戒だ。
好景気が続いた英国やドイツでは景気が過熱化しており、ゾンビ企業が少なからず存在している可能性が高いからだ。
下手すればリーマン級のパニックも
金融分野の「大量破壊兵器」と呼ばれるCDSがリーマンショックの直接の引き金になったことは記憶に新しい。
欧州のゾンビ企業のCDS市場にパニックが生じ、新たな金融危機が起きる――。
そう断言するつもりはないが、「弱り目に祟り目」の状態にある欧州企業の動向について警戒を強めるべきではないだろうか。
歴史的なインフレの勢いが止まらず、米連邦準備理事会(FRB)など米欧の中央銀行は想定を超える急ピッチな利上げを迫られている。今後、深刻な影響を受けるのは膨大な債務を抱える新興国だ。インフレと景気後退が同時に起こる「グローバル・スタグフレーション」に警鐘を 80年代だと言えば、日本に長期低迷をもたらした元凶、89年12月に日銀総裁に就任した当時、バブル退治のエースとして「平成の鬼平」と喝釆された三重野康だったが…。バブル崩壊後、日本経済は今や戦後最大の危機に直面。日本経済の舵取りに失敗、その責任を問われ、「悪代官」呼ばわりされるまで評価は一変した。