福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の9/13

2024-07-22 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の9/13

九、急難を救ひ給ふ事。

但州(兵庫県)山森と申す所に住みける男に山口七郎包房(かねぶさ)とて貧道にして何事も心に叶はぬものあり。思ひのあまりに人の財を我物として便宜にしたがひ貴賤男女の隔てなく佛閣僧坊の所に嫌ひなく或は殺しては剥ぎ取り、或は威しては奪ひて渡世を計りごとにぞしける。此の事の風聞世にかくれなかりければ、天地廣しといへども五尺の身の居処なく、一族に別れ、徒に山林廣野に忍び行ければ、飢寒も忍び難く妻子の事も思ひやられて、天晴願はくは我身も人も心安くあれかしと念願新たに発す。されども天質として事隔てぬればこりもせず便宜をねらひありきけるが或日の暮方に若き女房の色よき小袖を着、下女に何やらん包たる物もたせて来るを山陰にて見て、これぞ天の「あたふ禄なりと二人ともに打ち殺してはぎとりて心静かに行く所に、武者五六騎馬をはやめて追い来たるが二人の躰を見て落涙して一度に馬より下り、死骸ををさめる躰の見へければ天晴大事こそ出来れと急ぎ逃げ去んとするを件の者ども見付け、己こそ曲者よと一度にどっと追かける。彼の男あまりの詮方なき方侭に山中に地蔵堂のありけるに走り入り地蔵の御後ろに隠れぬるが願くは今度の命を助け給へ、今より後は諸悪をやめて一心に信心をなし奉らんと誓ける処に追手の者、たしかに爰に入りたりとて堂の中をめぐり長刀のさきにて戸帳を上げて見んとしけるに積たるほこりの霞の如くにたちて此の者どもの目中に入りければ涙眼に塞がりて蝙蝠と云もの飛び出てあなたこなたへさはぎぬれば、此には居らざりけることぞと申して却って礼拝して退散しける。危き命を助かりて夢の覚めたる心地して、是偏に地蔵薩埵の御加護に依るところなりと伏して発露懺悔して自今以後堅く悪行を止め修善の行人となるべしとて、彼の盗物を持ちて故栖(ふるす)に皈り妻子を招き寄せ、ある山家に篭居し中々心安くぞ世を渡りける。元より薩埵の方便によりて圖らざるに命を延べるたり。何ぞ此の義を思はざらんやと一心不乱に名号を口唱して且た供養形の如くなり。又此の如く功を積み徳を累ぬる験にや或夜の夢に若き僧来現して、あら浅間敷(あさまし)汝明日官人の為に罪科に値ふべしとの玉ふ。彼の男思ひ寄らぬ事ながら虚(そら)をそろしく南無地蔵薩埵助給へと歎きければ、随分に寶号を念ずべし、此僧が有ん限りはたのもしく思ふべしと宣べたまへば夢さめける。されば次の日官兵ども此者を尋ね来り、何の子細は知らねども罪ある由にてからめとりて此者急度(きっと)糺明して問へ、とて木を二つに破て脚を挟みて問へとぞ申し合ひけり。此のやうをみて一心に地蔵を念じけり。假令今生こそ如是に呵責せらるとも後生の程を偏にたのみ奉ると心中深く祈念し奉る。かくて足をはさみけれども痛みもなく夢の如くにぞありける。兎角する所に奉行人評定して罪無き者なりとて免すべき由に一決しけり。さるほどに虎の害を免れて吾栖に皈りぬ。誠に斯の如きの悪人なれども一念の善心によりて悪を止め善人になりぬ真実の志をもて祈求し改悔せば何ぞ利生の功なからんや。増して日比(ひごろ)の悪行なく、三宝に皈依し申さば願ふにしたがひ益を得べし。されば修得の人を智識と名け、懈怠の人を凢夫と申すとなん。本来賢愚の分なし。無學と有學との中より是非のちまたをこり、佛と衆生と本来同一也。經に云く、心佛衆生是三無差別と(大方廣佛華嚴經夜摩天宮菩薩説偈品第十六「心如工畫師 畫種種五陰 一切世界中 無法而不造 如心佛亦爾 如佛衆生然 心佛及衆生 是三無差別」)。佛は無明の中より出給ふと古徳も曰へり。真に以て勤行せよ。佛果に至ん事疑ひ有るべからず。

引証。

延命經に云く、未来の衆生、発心すること能ず。但し當に一心に延命菩薩を禮拝供養すべし。刀杖も加はらず毒も害すること能はず云々(仏説延命地蔵菩薩経「未来の衆生発心すること能ずんば但だ當に一心に延命菩薩を禮拝供養すべし。刀杖も不加、毒不能害にして、厭魅咒詛・起屍鬼等も還りて本人に箸かん。天に吐唾し向風投灰し其身に還飜するが如し。」

 

 

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